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メーレスブルクの秘録  作者: ヒロセカズヒ
クラーケンの真実
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第1話 クラーケンの真実 4


 翌朝。城の地下の牢に、昨夜捕らえられた男たちが閉じ込められていた。


 三人の男。一人はヴォルフという漁師。一人は港の労働者。もう一人は、元船乗りだという。


 伯爵様は、朝早くから尋問を始めた。しばらくして、伯爵様が出てきた。その顔は、とても複雑だった。


「アンナ、奥方様に伝えてくれ。話がある」


「かしこまりました」


 奥方様のお部屋に向かうと、奥方様はいつものように窓辺にいらっしゃった。


 しばらくして、伯爵様が部屋に入ってこられた。


「彼らは...こう言っている」


 伯爵様は、苦しそうに言葉を選んだ。


「自分たちは、ゲオルクを傷つけていない、と。爆発で怪我をしたのだ、と。そして...ゲオルクは、自分たちの仲間だったと言っている」


 私は、息を呑んだ。ゲオルク様が...仲間?


「信じられない」

 伯爵様は頭を振った。


「ゲオルクが、窃盗犯の仲間だったなど...」


「でも」


 奥方様が、静かに言った。


「それは、本当のことかもしれません」


「何?君は、信じるのか?」


「ええ。全てが、繋がるからです」


 奥方様は立ち上がった。


「あなた、少し時間をいただけますか?お話ししたいことがあります」


「分かった」


「アンナ、お茶を淋れてくれるかしら」


「はい」



* * *



 夕暮れ時。奥方様の部屋には、伯爵様と私だけがいた。窓から、赤く染まった空が見える。


 奥方様は、ゆっくりと話し始めた。


「では、お話ししましょう。あの日、海岸で本当は何が起きたのか」


「まず、あのクラーケンとされたものは、鯨の死骸でした」


「ああ、それは確認した。尾びれがあったそうだ」


「鯨の死体は、腐敗すると内部にガスが溜まります。そして、膨らむのです。だから、クラーケンに見えた。でも、実際は鯨でした」


 奥方様は、お茶を一口飲んだ。


「そして、鯨の体内には、龍涎香があります。金よりも高価なこともある、貴重な品です」


「その龍涎香を、誰かが狙っていた」


「そうです。昨夜捕らえられた男たちが。おそらく、ゲオルク様は彼らに誘われたのでしょう」


 奥方様は、窓の外を見た。


「ゲオルク様には、病気の奥様がいらっしゃいました。治療費が必要だった。でも、騎士長の給料では足りなかった」


 伯爵様は、苦しそうな顔をした。


「そこに、幼馴染の漁師が現れた。『龍涎香があれば、すぐに払える』と」


「ゲオルクは、迷ったでしょう」


 奥方様は続けた。


「でも、最後には、家族のために引き受けた」


「そうだと思います」

 伯爵様は小さく呟いた。


「だから、ゲオルク様は人を遠ざけた。仲間たちが龍涎香を探せるように」


 部屋に、静寂が落ちた。私は、胸が痛かった。


「では、爆発は?」


 伯爵様が聞いた。


「腐敗した鯨の死体は、爆発することがあるのです。内部に溜まったガスが、ある時、一気に破裂する。骨や内臓、そして龍涎香が飛び散る」


 伯爵様は、息を呑んだ。


「ゲオルク様はその爆発に巻き込まれた。飛び散った破片が当たって、重傷を負った」


「事故...だったのか」


「はい。誰も、意図的に傷つけてはいません」


 奥方様は、静かに言った。


「ゲオルク様も、仲間たちも。ただ、龍涎香を探していただけ。でも、鯨が爆発した」


 伯爵様は、顔を覆った。


「なんということだ...」


 しばらくの間、誰も何も言わなかった。ただ、時計の音だけが聞こえていた。


「なぜ、相談してくれなかったんだ」


 伯爵様の声は、震えていた。


「妻の治療費くらい...私が何とかしたのに」


「きっと、あなたに迷惑をかけたくなかったのでしょう」

 奥方様が言った。


「誇り高い人でしたから」


「誇り...その誇りが、彼を追い詰めたのか」


「いいえ」


 奥方様は首を横に振った。


「誇りではありません。愛です。家族への愛。妻を救いたい、娘を守りたいという愛が、彼を動かしたのです」


 伯爵様は、また黙った。私も、涙が出そうだった。



* * *



 翌日。


 伯爵様は、捕らえられた男たちに判決を下した。


 ヴォルフは、泣きながら言った。


「俺たちは、ゲオルクを傷つけるつもりなんか、なかった!友達だったんだ、一緒に育った、大切な友達が...!」


「お前たちの罪は重い。領主の財産を盗もうとした」


 伯爵様は言った。


「だが、ゲオルクを意図的に傷つけたわけではない。それは、認めよう。お前たちは、しばらく牢に入った後、追放とする」


「ありがとうございます...」


 男たちは、頭を下げた。



* * *



 ゲオルク様は、三日後に意識を取り戻した。


 伯爵様が病床に呼ばれた。私は廊下で待機していたが、扉越しに、かすかに声が聞こえた。


 ゲオルク様の、震える謝罪の声。


 伯爵様の、長い沈黙。


 そして、静かな言葉。


「お前の罪は重い。でも...家族を守りたかった気持ちは、分かる」


 しばらくして、伯爵様が部屋を出てきた。


 その目は、赤かった。


「奥方様に、伝えてくれ。ゲオルクの妻の治療費は、私が出す。ゲオルク自身は、騎士長の職を辞してもらう。でも、追放はしない。城下町で、静かに暮らせるよう、手配する」


「...かしこまりました」


 伯爵様は、廊下の窓から海を見た。


「あいつは、二十年間、誠実に仕えてくれた。一度の過ちで、全てを奪うことはできない」



* * *



 奥方様のお部屋に報告すると、奥方様は静かに聞いていた。


「それで良かったと思います」


「ええ。ギュンター様らしい、判断ですわ」


 奥方様は窓の外を見た。夕日が、海を柔らかく染めている。


「アンナ、あなたはこの事件をどう思いますか?」


 私は少し考えた。


「悲しい事件だと思います」


「そうね」


「でも...ゲオルク様の奥様が治療を受けられるようになった。エマちゃんが、お母様を失わずに済んだ。それだけは、良かったと思います」


 奥方様は、微笑んだ。


「人は、時に間違いを犯します。でも、その間違いの裏には、必ず理由がある」


「はい」


「ゲオルク様の理由は、愛でした。間違った選択をしてしまったけれど、その愛は本物だった」


「奥方様は、それを責めますか?」


「責めません」


 奥方様は、静かに言った。


「でも、だからこそ、もっと早く誰かに頼れば良かったと、思います」


 私は頷いた。


「一人で抱え込む必要は、なかったのですね」


「ええ」


 奥方様は、また海を見た。


「それは、誰にとっても同じことですわ」

本作品は、AIを使って執筆した第2作です。

このエピソードは完成しています。

順次投稿してゆく予定です。

よろしくお願いします。

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