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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

彼岸花と蝶

作者: タイ
掲載日:2026/01/13

プロローグ

眩い光の中に赤く染まった友人が寝ていた。

「何してるの?早く起きて向こうに行こうよ。」

私が声をかけても返事をしてくれない。

いや……

声を出せなかった。

赤く染まる光の中で動かない彼女を見つめて、一言放った。

「なんで死ぬんだよ。」

本編

 私の名前は谷口あまね。今は学校に登校中なのだが、とても気分が悪い。私は朝が嫌いだ。理由は色々あるのだが、朝はとにかく起きられない。ゲーム好きの私にとって夜はネットの仲間がたくさん集まる。気づいたら二時とか四時とかまでゲームをしている時もある。今日も三時過ぎぐらいまでやっていたのかな?必然的に睡眠時間が削られ、朝はいつも最悪だ。かと言ってゲームの時間を減らすわけにはいかない。私は夜の人間だ。夜にしか生きることができない。そんな自分の存在を確かに実感できる場所を手放すなんてことはしない。そんなことを考えている内に学校へと着いた。私の通っている高校は特別頭がいいお嬢様学校でもなければ、ヤンキー校と呼ばれるような学校でもない。普通の高校だ。下駄箱で上靴に履き替え、私の居場所の一つでもある二年三組へと足を動かした。階段を登り、教室の扉をガラガラとゆっくり開け、静かに奥の席に座ると同時に眠る。これが毎朝の日課と呼べるかはわからないが、私の日常だ。ここで十五分ほど仮眠を取ればホームルームが始まる。ただ今日は仮眠はできなかった。何故だかは分からなかった。周りはいつも通りの感じだったし、おかしいところもない。自分自身も興味がなく知ろうともしなかった。

 その日の午前中はなぜだか調子が上がらなかった。居眠りもいつもより多いし、休み時間もゆっくりできなくて、頭がフワフワしてしまう。とうとう昼休みに激しい頭痛に襲われた。教室の隅で吐き気がして、きつい状態に陥っていた。

(誰か、助けて!)

そう心の中で叫んだ時私の意識は途切れた。

その刹那、こちらをみている女子がいたような気がした。

 

 気がついた時私はベッドで横になっていた。保健室だろうか。消毒液の匂いが充満している。

「あれっ、起きた?」

と聞こえてそちらに目がいった。

頭がぼんやりとしていてよく分からないが、女の子だとわかった。

「う、うん。ありがとうね、こんな所でみてもらって。」

と返事を返すと、

「そっか、なら良かった。君が教室で机から頭を落とした時はびっくりしたよ。とりあえず話は後にして先生呼んでくるね。」

と、言ってカーテンの外側に出てしまった。やはり、気を失っていたのか。目が覚めたばかりで何も考えられないまま先生に診てもらった。

「睡眠不足で体がおかしくなっただけだね。ちゃんと睡眠を取るようにしてね?睡眠の質が悪いとかだったらまた相談にのるから。」

と、保健室の先生から説明を受けて、私は六限から授業に戻った。気がつかなかったが、私を見てくれていたのは同じクラスの優華という女の子だった。綺麗な黒髪をしていて、顔もとても可愛い。頭もいいし、性格もいい。私とは真反対のような人だ。他には体型も……私の方が胸ありますけど!

そんなことを思ってるとチャイムが鳴った。

荷物を片付けていると、優華さんが近づいてきた。

「あまねさん大丈夫だった?」

「ありがとう。もう全然平気だよ!」

「そっか!なら安心だね!あの後普通に教室戻ってきた時は大丈夫なのかめっちゃ心配だったよ。」

「ごめんねぇ、心配させちゃって。」

と、二人で軽い会話をしながら少しだけ一緒に帰る話になった。私は優華さん、いや、優華ちゃんと段々話すようになって友達と呼べるくらいになっていった。放課後一緒に帰ったり、パフェとか食べに行ったりもするようになった。休日もたまに二人でおでかけすることもあった。優華ちゃんと出会って二ヶ月が過ぎた頃、帰り道で突然優華ちゃんから

「急だけど、明日の予定空いてるかな?」

「え?全然いつでもいけるけど。」

 明日は土曜日だ。基本的に休日の予定の約束はもっと早めに決まったりしていたのだが。

「えー、何、好きな人でもできたの?」

「全然チガウ。」

この反応は彼氏だな。うん、それにしか見えない。くそっ、優華ちゃんにとうとう彼氏ができたのか。先を越された。なんて思いながら帰った。私は優華ちゃんが私から離れちゃうのかなと少し不安になった。その日の夜は特に優華ちゃんから連絡は来ず、一時にいつもの駅で待ち合わせとだけメッセージが来た。

 私は、しっかり一時に間に合うように用意をして家を出た。何を話されるのかなぁ、あの姫は。彼氏くんと初デートの相談受けちゃったり!?なんて妄想を待ち合わせ場所で繰り返すと同時に寂しい思いも感じていると、優華ちゃんが来た。

「待たせちゃった?」

「そんなことないよ!じゃあ行こっか!」

と、軽く挨拶だけして目をつけていた近くのカフェに行った。私はイチゴののったパンケーキ、優華ちゃんは生クリームたっぷりのパンケーキを選んでいた。二人でそれを頬張り、堪能したのち、優華ちゃんから本題に入るねとだけ言われた。何を言われんだろう、やっぱ彼氏?なんて思っていると

「あの、あまねちゃんってさ、人殺したことある?」

「え?」

思わぬ質問に体が固まって声を出せない。

人を?殺したこと……?

「私さ、実は先週人を殺しちゃったの。」

「は?」

待て待て待て待て。今なんて言った……?

「先週の日曜一人でお買い物行ったの。その帰りに男の人にストーカーされてるのに気づいたんだ。怖くて走って逃げようとしたけど捕まっちゃったの。」

状況が把握できないまま優華ちゃんが続ける。

「それで思わず持ってた鞄を振ったらその人の頭に当たって。多分倒れた時に頭を打ってそれで……

中には本とかたくさん入ってて重かったから……」

「待って。その後はどうしたの?」

焦っている優華ちゃんを落ち着かせてゆっくりと説明してもらおうと思った。私は焦っていたが落ち着いている部分もあった。

「とりあえず目の前の公園に人がいなかったから運んで……」

話もうまく聞けず本当に状況が理解できなかったが、私は警察に相談するということが最善だと分かっていた。私が警察に言えば優華ちゃんは捕まっていなくなってしまう。私の友人が消えてしまう。だが、私の脳内とは真反対の言葉が私の口からは出た。

「それを遠くに隠しなおそう。

大丈夫、私が味方にいるから。」

自分でもよく分からなかった。なんでこんなことを言ってしまったのか。何も考えられなかった。だが、この状況は少しだけ楽しかった。誰にも言うことができない、本当に二人だけの秘密のように。

 今日はそのまま解散して次の日にもう一度会おうとだけ約束した。ここで警察に行けばいいのかもしれない。だけど、私の足は動かなかった。家に帰り鏡で自分の顔を見ると私の口角が上がっている気がした。

 翌日、私たちは駅で集合し、優華ちゃんの言っていた公園へと向かった。

「ここが昨日言っていた公園?」

うん、とだけ会話をして埋めたという場所まで案内してもらった。着いた場所にはハエが集まっていたし、腐敗臭がひどく吐き気が込み上げてきた。優華ちゃんが

「大丈夫?」

と、声をかけてきたが私は

「うぅん、気にしないで!」

と、返事をしてしまった。本当は今すぐにでも逃げ出したかった。だが、私の心の中で何かわからないものが生まれてしまった気がする。この状況をさらに楽しんでる自分がいた気がしたこと。それに加えて優華を守らなくてはいけないと強く感じた。

 確かにここは人気が少なく、周りには何もないため近づかない限り分からない。少しの間は安全だと分かった。私達はその死体の袋などを替えたりして指紋などでバレないようにした。それから私達は普段の生活に戻った。いや、戻ろうとした。だけど前と同じようにはできなかった。私は、常に優華の隣にいた。殺しをした彼女を一人にさせるわけにはいかない。私は優華のたった一人の支えになろうとした。周りの人間関係をできるだけ減らして、優華ちゃんの交流を制限しようとした。LINEを消すように指示し、学校でも話すことを避けさせるように伝え、私にしか頼れないように仕向けた。そんな生活を始めて二週間が経った頃、ニュースでとある男性が行方不明だということを知った。私は、まさかと思い少し浮かれ気味に優華に聞くと、

「その人だ。」

と、返事が来た。まずい、警察にバレた。死体の場所もバレるのは時間の問題かもしれないと知った。私は前よりも笑いが止まらなかった。しかし、今下手に動けば警察に話しかけられるかもしれないと思い、何もすることはなく、日常を送った。普通の女子高校生のように何気なく授業を受けて、休み時間には友達と話したり、買い物に行ったりした。優華の隣に立って見守りながら、とにかく二人で普通を演じた。二人だけの世界へと入ったつもりだった。しかし、数日後に死体が公園から発見されたという報道が出た。

「そうか、身元もこの男で正しい。そして、この男を殺したのはおそらく女性だろう。」

「先輩もそう考えていますか。」

「あぁ、こいつは何度もストーカーなどの容疑でうち(警察)にお世話になっているらしい。調べた部屋からも大量の女性の盗撮された写真や動画が出てきたらしい。」

「普通に犯罪者だったんですね。犯罪が一つ解決されたけど、また犯罪があるんですよねぇ。一応、今犯人がどんな手口で殺害をしたのかなど詳しく調べている途中らしいです。」

「情報共有ありがとう。また何か分かったら教えてくれ。私は仕事に戻るよ。」

 後輩の汰木と別れて椅子についた。手元の書類を見返す。

(死亡時期は約三週間前から一ヶ月か。)

ページをめくり、もう一度読んでみた。やはり犯人は女性なのだろう。そう考えていたのだが、翌日それがひっくり返された。なんとある男性が自分がやったと言って自首をしたらしい。本多の頭には疑問が残った。なぜ、普通の男性があの男を殺すのだろう、と。説明を聞いても動機がごちゃごちゃしていてまとまらない。殺したのなら殺し方とか殺した理由などがあるはずなのだが。精神的に不安定だったようにも見えない。本多は信じきれなかった。この事件はまだ本当の犯人がいるはずだと。私だけはまだ真犯人を捕まえるまでは戦い続けると心の中で誓った。

あの事件の犯人が捕まったという報道が出た。やった、上手くいった。私たちの勝ちだ。これで優華の安全を保証できる。優華を離すことはない。あの男を使って正解だった。男なんてチョロい。私を売るだけで好きなように動く駒のようだ。

 その時優華から電話が来た。

「もしもし、あまねさん?あのニュースはどういうことなの?なんで知らない男性が自首してるの?」

「優華ちゃん?優華ちゃんは何も知らないふりをすればいいんだよ。」

優しく言うつもりだった。

「私が全部守り続けるから。私だけが優華ちゃんの味方だから。」

そう言って電話を切った。今の私は優華に話す必要はない。あの姫は美しく輝き続ければいいんだ。私はそれを支える汚れ役。優華を守るためだったらどんな手でも使う。私だけがおかしくなってしまったのだと思う。だけど、この手は止められない。もう誰にも。

 それからというもの私と優華の関係は変わらなかった。ただ、たまに話す言葉がお互いに詰まるだけ。だけど関係ない。私の言うとおりにしていたら優華は安全なんだから。警察も今は事件が解決されて動いてないらしいから今度二人で遊びに行こう。そう決心して帰る途中だった。

「ちょっと良いかな?」

と声をかけられた。振り返ってみると、しっかりとしたスーツを着た女性が立っていた。

「何か用ですか?」

「えぇ、私は刑事なんだけどさ、最近少し離れたところで事件が起きたよね?その事で少しだけ質問させてくれないかな?」

 まずい、刑事か。よりにもよってこんな時に声をかけられるとは。私は普通をしっかりと演じた。

「良いですよ。答えられる限り頑張ります。」

「ありがとう。じゃあ早速なんだけどさニュースで報道されてた殺害された男性のことで知っていることある?」

「いえ、この近くに私も住んでいますが、あの男性のことは知りません。ニュースでこの近くに住んでいたということだけって感じです。」

私は知らないという答えを出した。焦りや緊張を感じさせない口調ではっきりと。

「そっかぁ。なら何か聞いても無駄だなぁ。」

とため息をついていた。

「てか、その事件の犯人は捕まったんじゃないんですか?なぜ今更聞き込みを?」

「あぁ、私はまだあの男が犯人だなんて信じられないんだ。長年の刑事の勘ってやつ?」

 私は少し冷や汗をかいた。この人はやばい。すぐにバレる。早く会話を終わらせる流れに持っていかないと……

「真犯人ってことですよね。すみません、お力になれず申し訳ないです。」

「いや全部気にしなくて良いよ!私一人で動いてるだけだから。あと数日続けて何もなさそうだったら私の勘は外れただけだから諦めるよ。」

刑事さんはそれから別れの挨拶をしてどこかへ行ってしまった。危なかった。あの人の前に立つと全てを話しそうになってしまった。あの女刑事さんには気をつけていないとな。私はそんなことを考えながら家に帰り着いた。

「あの子は怪しい。」

「え?今日質問をしてきたという女子高校生の子ですか?」

汰木がポカンとした顔をして聞いてきた。

「あぁ。質問の内容に加えて……ましてや、急に刑事から声をかけられたというのに、普通に答えていた。いや、普通にしすぎていた。」

「何か隠していたから普段を演じていたと?」

「ただの想像だがな。まぁ少しだけ頭の片隅に置いておいてくれ。」

「わかりました。今日は先輩、ゆっくり休んでくださいね。じゃあ僕は帰ります。」

「ありがとう、汰木。また明日からも頼む。」

汰木は私に感謝されたことが嬉しいのか少しテンションが高かった。

(あれから殺人が続いているわけではない。今はゆっくり休んで真犯人を捕まえるための体力を改革させたほうがいいのではないのか?)

だけど、本多は帰らなかった。なぜかはわからない。何かに取り憑かれているみたいに仕事を続けた。

-数日後-

 あまねさんに殺人を犯してしまったことを伝えた日からあまねさんの様子が変化していった。あまねさんが私は怖くなっていった。普通に話す時は何ともないのだが、放課後や休み時間など私を一人にさせないように監視されているような感覚だった。他にも知らない男性が自首をしたなんていうことも起きた。何かを隠している。今のあまねさんは何かがおかしい。あの人が今何をしているのか、何を考えているのかが分からない。その恐怖が私を普通にはさせてくれなかった。だけど、私は少しずつ心の中で決心していたことがあった。

(警察に言って全て終わらせよう。)

その日の夜私はあまねさんにメッセージを送った。

「明日の十時から少し会える?」

優華ちゃんからメッセージが届いた。私は何かあったのだろうかと不安に思いながら大丈夫とメッセージを返し、布団に包まれた。

 私は今日あまねさんの返答次第では彼女を止める。私の手で。私が犯してしまった罪を背負う手で。最悪彼女を自分の手で殺しても構わないと軽く決心していた。

十時を少し過ぎた頃、あまねさんが家にやってきた。

「ごめんね、急に呼び出して。早く上がって!」

私は楽しみにしていたかのように振る舞った。

「全然大丈夫だよ!こっちこそ優華ちゃんのお家に来てテンションあがってる!」

と、軽く会話をした後お邪魔しますと言って彼女は階段を登り始めた。

私はジュースとお菓子を部屋に持って行き二人で食べ始めた。最初は悟られないように緊張していたが、段々といつもみたいに話せるようになった。あまねさんが家に来て2時間ほど経った頃、私はまた緊張しながらも本題に入った。

「ねぇ、あまねさん…」

首を傾げて見ているあまねさんに一言。

「あの犯人はあまねさんが代わりに自首させたんだよね。」

あまねさんの表情は一切変わらない。

私はそれを見続けた。

「分かってるから。私を守るためにしてくれたんだよね?」

あまねさんは黙ったままだった。沈黙が続き、私はこれに耐えられなくなった。

「私が犯したのは殺人なの。どこかで私は罪を償うべきだった。けど、あまねさんが身代わりを出した事で私の罪はもっと大きくなった。」

私は全ての感情をあまねさんにぶつけた。

「あまねさんが私に執着することで私の罪悪感が膨れ上がっていくだけなの……

もう辞めよう?今日私は警察に行くから。」

私は泣きそうになりながら伝えたが、あまねさんの表情が一気に怖くなった。

「あ、そう。優華ちゃんの為にしてきた事なのに優華ちゃんが警察に行ったら全部パーじゃん。」

あまねさんの目つきが違う。いや、目つきだけじゃない。雰囲気も何もかも今まで見てきたあまねさんじゃない。怖いなんてものじゃ計り知れない。純粋な「アク」というものなのだろうか。私の中の恐怖という感情が強く大きくなっていくのを体の震えと共に感じた。脳内は、あまねさんを止めるという計画を断念しようかと考えた。

そんなことを考えているうちに私の体は倒れていた。

「痛っ!」

背中に激痛が走る。私はあまねさんに押し倒されていた。腕や足を押さえ込まれ、身動きができない。

「優華ちゃん。私はね、あなたとずっと一緒にいたいの。あなたは私の唯一無二の存在なの。ずっとずっと、夜のネットの世界に住んでいた私を光の世界へ連れ出してくれたの。」

あまねさんは黙り込んで、私の腕を強く掴みなおした。

「そんな大切な人を警察なんて奴に渡せないでしょう?」

あまねさんは笑っていた。自分が女王として生きているかのように、私が犯してしまった罪を楽しんでいるように。あまねさんの表情を見て私は素直に質問と一つの感情が生まれていた。

「そ、そんなことをしても誰も幸せになんてならないよ……」

 私は最後の望みをかけた。この悪魔はもう戻らない。そう感じていたから。これでもし彼女に変化がなければ私は罪をまた一つ背負う覚悟ができた。予想通り、私の手を掴んでいる悪魔は変わらなかった。

(あぁ、この人はいくら言っても変わる事ができなくなるまで堕ちてしまったんだな。)

そう思うと私の中で一本の細い糸が切れた。

「そっか。あまねさんは変わらないんだね。」

私は全てを諦めた。最後に賭けていた望みすら捨てた。そして体を全力で動かして、もがいた。あまねさんは驚いて体勢を崩した。私はその隙に隠していたナイフをあまねさんに突きつけた。それを見てあまねさんはニヤリと笑った。

「そんなおもちゃで私を止めれると思ってるの?」

あまねさんは自分は死なないと確信している。

私はあまねさんにゆっくりと近づいて一言放った。

「あまねさんは、私といて楽しかった?」

あまねさんの返事が来る前に私はあまねさんのお腹にナイフを突き刺した。

「え……」

あまねさんは驚くと同時に倒れこんだ。

「あまねさん、私はね、あなたといることがとても楽しかった。何気ない会話も放課後遊びに行ったりすることも全部が輝いていたんだよ。」

私の目には涙が浮かんでいた。

「私はっ、私はっ。あまねさんが大好きだっ。」

目の光がなくなっていく彼女の前で泣き叫んだ。私は自分が犯してしまった罪を恨んだ。あれが全部の元凶だ。私さえいなくなれば私もあまねさんも救われる。

 静かな部屋の中でただ座っていた。三十分ほど経った頃、私は赤く染まって動かない友人からナイフを取り出し、自分の首に持っていった。

「あまねさん。私もそっちに行くから、一緒に罪を償おうね。」

私は静かに自分の首を切ろうとした。

「待てっ‼︎」

私は押し飛ばされた。

「ナイフを抑えろ‼︎

君はまだ死ぬべきじゃない。生きて罪を償い、残りの人生を生きていくべきだ。」

私の自殺は刑事によって止められた。私は死ぬべきではないのだと強く思わされた。

「くそっ‼︎なんでもっと早く気づけなかった…‼︎」

「先輩落ちてください‼︎あなたが冷静ではないと僕含め落ち着けません。」

汰木が落ち着かせてくれた。

「私の勘はあっていた。もっと早く調べておけばこんなことには…」

本多が落ち込んでいるが、汰木にそれをサポートする力はない。

「先輩、今起きていることを終わらせましょう。そるが今の自分たちにできることですから。」

 

 私は死ぬことができなかった。私の犯した罪はあまねさんが一人で背負って一人で死んでしまった。私はこれからどうなるのだろう。手錠がかけられた腕を見ながら部屋を出る。

眩い光の中に赤く染まった友人が寝ていた。

「何してるの?早く起きて向こうに行こうよ。」

私が声をかけても返事をしてくれない。

いや……

声を出せなかった。

赤く染まる光の中で動かない彼女を見つめて、一言放った。

「なんで死ぬんだよ。」

-二年後-

 あれから佐々木優華は判決で当時の年齢と谷口あまねという人物の影響で正常な精神状態ではなかったことから一年の執行猶予が与えられた。しかし、彼女は四ヶ月が過ぎた頃行方不明となった。警察が全力で彼女を探したが、見つからなかったそうだ。そして、先輩はあの事件以降、二、三ヶ月で刑事を辞め、行方をくらました。先輩もあの事件以来精神的におかしかった時期もあった。正義感に満ち溢れていた人物だったのにどうしてだろうと今でも考えている。この事件は俺たちに大きな傷を負わせた。俺自身もあの事件を忘れる事はない。いや、忘れようとしても谷口あまねという一人の狂った人物によって忘れることができない。ただ、一つだけ言えることがある。それは、彼女自身もたった一つの出来事によって人生を狂わされた可哀想な人物でもあるということだ。俺は、生きている限りこの呪いを背負い続けなければならない。永遠にどこまでも続く、毒を持った呪いを。

                    完


いかがだったでしょうか?

ほぼ初めて物語を書いてみたんですが、内容的に面白いと感じてくれたのであれば嬉しいです。

ぜひ感想も欲しいです。お願いします!

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