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性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第1章 VS.アルウゥス 厘月町・厘月いんせき公園編
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第8話★  力を使う者、知る者

「アルウゥス、マジモス――いくぞ!」



 トリニティの声に応え、セーラー服のアルウゥスが体内からはげしいピンクに光りかがやく。


 巨大バエのマジモスも呼応し、トリニティの武器へと変身する!


 鶏足もみじ鶏冠とさか肉垂にくすいをあしらったマスクをマジモスが丸ごと呑み込む。

 すると、よりグロテスクな紅玉のひとみするどい触角・たてがみのごとき剛毛をかたどる。


 今日は私服の全身には肉片が張りつき、専用の衣裳アクタースーツのごとくなる。


 かたこしには真っ赤な「手足の意匠いしょう」がからみつく。


 腹部のカサブタからうごめく触手が私服を飛び出し、円環えんかん模様もようかたち作った。


 その装いはまさに戦闘特化の触手しょくしゅスーツだ。



 変身したトリニティが手を突き出したところに、上空からアルウゥスの武装が落下する。


 やり薙刀なぎなたとでも言わんばかりにそれを取って構えるが、見た目は椎骨ついこつがずらっと並んだ脊柱せぼねそのもの(骨盤こつばん付き)。

 まさに現在もアルウゥスの体を支えている内骨格と、同じ構造物だ。



「おらあッ――!」



 トリニティは手の脊柱せぼねを振り回し、ミセ・ヤリへと挑みかかる。

 骨盤の角で、そのナマイキなウマづらをぶっ叩いてやる!


 害意をあらかじめ察知していたのか、攻撃に対してミセ・ヤリはひらりと軽やかにかわして、公園出入口からすみの砂場まで飛び退いた。


「これだから野蛮やばん人は……オレサマは『人間とやり合うつもりはない』と言ったぞ?」


「そうか。そのあと俺は『いくぞ』と言ったぞ?」



 ミセ・ヤリの逃げた先を追って、トリニティが駆け出す。



「やれやれ、オレサマよりけものらしい人間だ。そんなに遊びたいなら……相手をしてやるッ!」



 ついにミセ・ヤリは見識けんしきぶった態度から一転、闘争とうそう本能をむき出しにする。

 筋肉が発達した巨体をわななかせる。


 せまるトリニティ! 

 ミセ・ヤリの頭へ、思いきり脊柱せぼねと骨盤を振り下ろす。


 一方、おの馬体ばたいのみというミセ・ヤリは凶器を寸前まで引き寄せ、避ける。


 反撃のためだ。

 トリニティの脇腹わきばらへ、ミセ・ヤリはうしりをみまう。



大振おおぶりすぎンだよッ!」



 反射神経の鬼! 

 挑発ちょうはつする余裕すら見せながら、体をひねり反撃を空振りさせたトリニティ。


 しかし、彼の高い身体しんたい能力による動きも、ミセ・ヤリは見通していた。


 ミセ・ヤリは体をピンクに発光させる。

 ミセ・ヤリが後ろ蹴りをはなつとともに、足元の砂場から()()()()が舞い上がる。


 子どもが遊びに使うすなは、しゃくしゃくと音が鳴るものでつぶはやや大きい。


 その砂の1粒(ひとつぶ)は、内側から光が浮かび、トリニティが肉迫にくはくしたそのとき――野球ボール大となって襲いかかった。


 トリニティはまばたきをしていなかった。

 つまり、人間が知覚できない速度で、砂の1粒(ひとつぶ)脅威きょういを帯びたのだ。


 飛来物がトリニティのむねに命中する! 


 いきおいと激痛に、トリニティは手から武器を落としてしまった。



いってぇ、くそッ……」


「気をつけてトリニティ! 彼は、『さわったもののサイズを変える力』をもってるよ!」


「見りゃわかる! けど、まさか反応できないほどはええとは……」



 負傷したトリニティが弱々しく言う。


 先ほど、女児がミセ・ヤリによって巨人化される光景を見ていれば、能力の実効果を推測する余地もあったのだが……。


 トリニティたちが現場に着いたころにはもう、巨女児という成果物しかなかった。


 空を見上げる。

 片足で地上10階ものビルを蹴散けちらせるような、あの大きさを実現するのに、1分も要していないことをトリニティは知らない。


 同時に、ミセ・ヤリの攻撃手段に対して、巨女児はある種「大きなマト」となっていた。


 トリニティが無策な戦いをすれば、彼女の身をさらなる危険にさらしてしまう。



「何とか、巨女児あのこが巻き込まれない方法を考えないと……」


「おや。もしや、知らない? オレサマは()()()()()、力の影響を加えられるのさ」



 ダメージを受けたトリニティへ、ミセ・ヤリは追い打ちをかける。



「どういう意味だ……」


「アルウゥスとやら! こいつに教えていないのか? マジカルパウアーには、『とおみち』ってものがある。力を使った者と、対象のものが()()()()()()()()、たとえ離れていようと結びつけ、接触なしに力の影響下とするものだ」



 ミセ・ヤリの体が再び鼓動のごとく発光する。


 ズンッ! 

 と、後方から地響じひびきが立ち、トリニティは音のした方角を振り返る。


 音は、巨女児がさらなる巨大化をしたことで起こっていた……!


 あどけない顔が雲をも穿うがち、空気遠近法にもとづいてやや青みがかっている。

 女児は困惑のあまり、雷鳴のごとく泣き出してしまった。



「――あ、アルウゥス、ホントなのか?」



 トリニティは、ミセ・ヤリの語ったマジカルパウアーの「通り道」について、アルウゥスに問いかける。


 目の前で、証明がなされたばかりにもかかわらず。

 信じたくなかった。

 もし本当なら、あの子どもは……。


 問いに、アルウゥスは真っ赤な前髪を垂れさせ、黙ったまま首肯しゅこうを返した。



「理解できただろう? 触れた時点で、()はオレサマの思いのままなのさ。キサマが動くよりも先に、姫を豆粒まめつぶにして食ってやることだってできる」


「やめろッッ!」


「交換条件だ。手を引け、人間。それだけでいいぞ。姫も元に戻してやる」



 ミセ・ヤリは事態の元凶ながら、善良ぜんりょうさをよそおってトリニティに提案する。


 とうてい受け入れられるものではない。

 では、トリニティに代案やミセ・ヤリの横暴おうぼうに打ち勝つ策があるのか? 


 ……何もない。


 彼は足りない頭で考えているが、何もアイディアが浮かばないのだ。


 正義感だけでは勝てないとわかっている。

 だが、ミセ・ヤリが約束を守る保証もない。


 ここで逃がして一時いっときの収束を得ても、また同じことが起こるのは火を見るよりも明らかだった。



(どうする……トリニティッ!?)

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