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性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第2章 VS.マ・ラ 御露出町・御露出コールドロン編
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第37話  掘り出し物

 ……なぜか、もの言いたげに()()()()が、トリニティを見つめてくる。



「オレはこれからまた『自由』をうばわれる。……なあ人間ニンゲン、ひとつたのみを聞いてくれねえか? もちろんタダじゃねえ。対価に、お前が何より欲しがってる情報をくれてやる」


「やぶからぼうに、なんだよ? それに情報ってのはもう――」


()()()()()()()()を教えてやる、っつってんだ」



 本当にやぶから棒――いな、やぶから遭難そうなん救助の手が差し出されたような感覚がトリニティたちに走ったッ! 


 ……事実としては、「()()()()()()()」といったところなのだろうが。



 腹積はらづもりはどうあれ、マ・ラのため後継生物こうけいせいぶつのシェルターである「ふね」を破壊し。

 ともに地球へとり立ち、隕石いんせき探索へつそのときまでマ・ラの配下に加わっていたク・コロ。


 彼が「マ・ラの居場所」を知っていることは当然だろう。


 そして形だけの役目も、自身の「()()」への願いもたれた今、それをかしてしまおうとする投げやりな心も、理解できる。



「マ・ラの居場所……わかった。内容によるが、そのたのみとやら俺が聞いてやる」



 とはいえ、トリニティの返答はあまりに愚直ぐちょくが過ぎた。


 テラ・ケルが即座そくざに口をはさんだ。



「よいのですか、トリニティ様? この犬は狡猾こうかつです。あとで話を反故ほごにしたり、虚偽きょぎを申したりする可能性のほうが――」


「いいんだよ。ク・コロの言ったことが正しいかどうかなんて、後で考えれば。俺は、自分から弱みを見せてきたこいつの心を買いたいんだ。なっ?」


「そんな、言い方をされてしまっては……わかりました」



 テラ・ケルはトリニティの姿勢を受け入れる。


 彼の蛇尾のとぐろの上で、ク・コロが笑みをたたえている。


 戦いに夢中で気がつかなかったが、陥没穴シンクホールの内部は人間100人……いや、それよりもさらに多くを収容しうる広大さをもっていた。


 さらに、空間にはいくつかの横穴よこあながあった。

 そのすべてを住居にしていると、ク・コロは話す。


 トリニティと、アルウゥス、マジモス。

 「触手」の両(うで)右脚みぎあしを失ったク・コロ。

 それを「触手うで」にかかえたテラ・ケル。


 珍妙ちんみょうな集団は、ある横穴へと入った。


 おく暗闇くらやみで見えない。

 ……かに思われたが、ガス式のランタンが設置され、長さ10メートルほどの距離をほそぼそと照らしている。



「どこぞの炭鉱たんこうみたいだな。行ったことはないが」



 相手が後継生物こうけいせいぶつとはいえ、他者の住居に対して、無礼ぶれい比喩ひゆを言うトリニティ。


 やがて5者の前に私室らしい空間があらわれる。

 家具も置かれた、存外(さま)になった居住空間だ。


 赤いソファベッド、書棚しょだな、ローテーブル、電子でんしレンジ型の金庫……。

 これだけでも、家具入り物件として充分じゅうぶんなものがある。


 すべて土汚つちよごれやほつれをていしているものの、人間によって気にならないだろう。


 むしろポスト・アポカリプスのおもむきが深い逸品いっぴんだ。



もんを探してると、ときたま人間の道具が手に入ってな。しかもこれが使えるのなんの!」


不法ふほう投棄とうきのゴミか……まさか、後継生物に利用されてるとは。頭がいてえ……」



 トリニティは行政機関へ、不法投棄のゴミ発見について通報しようとスマホを取り出す。


 ただ、道路(わき)や森のひらけた場所であれば問題も少なかった。

 問題は、この場所が深さ20メートルもの陥没穴シンクホールの下ということ。


 果たして回収の手が届くのか? 

 現実的な不安が、トリニティの脳裏のうりを満たしていた。


 ……いったん、正義感にさからい不法投棄は見逃すことにしよう。

 時機を見て、かならず! 処理すればいいのだから。


 ク・コロの指示で、トリニティは室内の一角いっかくにできたもうひとつのスペースに立ち入る。

 とびら代わりののれんをくぐった。



「――トリニティたち(お前ら)にバレないよう、鳴くなっつってたんだよ。ちゃんと言いつけを守ってたみたいだな」



 ク・コロはこれまでになかったおだやかな声でつぶやく。


 その姿から、恐怖めいた感情を覚えたのだろう。

 スペースの中に密集していた「小さな動物どうぶつ」が、一斉いっせいにキャンキャンと騒ぎ始める。



()()()()()がいっぱい……」



 正体は子犬こいぬだ。


 見ただけで10頭以上の子犬がそこにいる。

 犬種に統一感はなく、ほとんどが雑種ミックス


 アルウゥスはリアクションの後、さわりたいのか子どもらしい顔つきになっている。



ク・コロ(お前)、まさか食うつもりでこんなにッ?」


「ハハ、どうだろうな。もう忘れた。ここだけじゃねえ、他の穴にもっとデカいのもんでる」



 ク・コロは笑いじりに、恐らく野犬だろう存在もかくまっているとほのめかす。


 また不法投棄ゴミの利用に味をしめ、探し回るうちに捨て犬や死にかけの野犬を見つけて保護した、と説明した。



「……オレが『ふね』にもどれば、こいつらは死ぬしかなくなる。別にいいけどよ。でもどうせなら、トリニティ(お前)みたいなやつに引き取ってもらったほうがいいだろ。なあ、断らねえよな?」


ことわれねえ、けど……」



 トリニティは言葉にまる。

 ク・コロの、たのみの内容は理解した。


 しかし、不法ふほう投棄とうき問題に加えて数十頭におよぶ野良犬の保護まで……。


 すでにこの場のくち約束だけで解決する話ではなくなっている。


 後継生物こうけいせいぶつを相手するのと同様、正義感だけでかたづけられないのだ。



「ク・コロ? 実はマ・ラを捕獲ほかくした後、地球のものを『舟』に加えようと考えているのです」


「そッ、そうなのか?」


「ええ。ですからこの野良犬いぬも、一緒に連れて帰ればよいのではないですか」



 膠着こうちゃく状態を見かねてテラ・ケルが提言ていげんする。


 それは、トリニティにとっても悪い話ではなかった。


 内心では野良犬たちとはなれるさびしさもあるだろうク・コロの心情をみ、なおかつ人間側の大問題の1つを解決できるためだ。


 ――ところがク・コロはオオカミめいた首を、横に振ってしまった……。



「ダメだ。野良犬こいつらは人間が勝手に作ったもんで、後継生物オレたちのもんじゃねえ! 後継生物オレたちは勝手にやる。人間の勝手なんか背負ってたまるか。食うなりうなり、トリニティ(お前)がどうにかしろ」


「暴論だな……けど一理いちりある。わかったよ。俺にまかせろ」



 トリニティが返事をし、危険をおかしてえる子犬の1頭を胸にき上げる。


 子犬は吠え続け、みつこうとするがク・コロの顔を見るなりおとなしくなる。


 ついにアルウゥスも我慢の限界をむかえ、中でもひと回り大きい、一番毛並みの綺麗きれいな子犬にきついた。



 子犬はモフモフの体毛の首元に、人名と住所、電話番号が書かれた()()をつけていた。



 ◆



たのみは聞いたぞ。それで?」


「へッ、わかってるさ」



 精一杯せいいっぱいを交わした戦いの果て。

 ク・コロの願いを聞く交換条件として、トリニティは約束をした。


 ()()()()()()()

 思いもよらなかった――しかし、今のトリニティたちが最も知りたかった事柄ことがらだ。


 ク・コロは後悔のひとつもないような、せいせいしたと言わんばかりの表情で口を開いた。



「マ・ラがいるのは――双成そうせい町にある、鍾乳洞しょうにゅうどうだ」


「しょう、にゅうどう……」



 トリニティがおうむ返しする。


 ただ、いかなる感情もともなわない。

 はだかの情報をポンと投げ込まれただけ。


 その場には静寂せいじゃく波紋はもんが広がるばかりだった。



「信じられないか? オレのことも、(マ・ラが)こんな、すぐ近くにいたことも。……信じなくていい。勝手にすンのが一番だ。勝手にやって、トリニティ(お前)が感じたもんがすべてだ。生き物(オレたち)はそういうふうに出来てる。だろ?」


「……ハハ、そうかよ」



 冬の冷え冷えする静けさの中で、トリニティは熱をもった嘆息ためいきく。


 まるで、体内機関にぐつぐつ煮えたぎる燃料ねんりょうを入れられたかのように。



人間ニンゲン、うまくやれよ?」


「ああ!」



 威勢いせいよく告げたク・コロに、トリニティも応じる。


 本当の戦いはこれからだ!

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