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性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第2章 VS.マ・ラ 御露出町・御露出コールドロン編
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第36話  セッション

 御露出おつゆで前立寺(ぜんりゅうじ)陥没穴シンクホール内。


 トリニティと後継生物こうけいせいぶつク・コロの戦闘のため、らかった雪が、ハゲ木の枝や地面へり直している。



「さてと。お前にきたいことは山ほどある。『ふね』に戻ったら、あることないこと全部(はな)してもらうぞ」



 普段のにわとりマスクでトリニティは、笑いじりに言いつける。


 ク・コロは彼と正面に向かい合い、あさい呼吸をくり返しながら頭垂うなだれている。


 その巨大オオカミは、両(うで)みぎあしを、自身のマジカルパウアー「触手しょくしゅなえ」によって「触手」へとえた。


 しかし意志を強くしたトリニティによって、「触手」は頭をり落とされ、さむさにてつく肉の残骸ざんがいばかりとなってしまった。

 もはや、一切の力ももっていない。


 テラ・ケルが自身の「触手うで」を広げ、ク・コロという敗者を見せびらかすようにかかえ上げる。


 すると、途端にク・コロは身をよじって抵抗ていこうを見せた!


 ちからおよばない抵抗は、ただただみじめで。

 捕食者に足をもがれ、巣に運ばれる小型昆虫のむなしさに似た情感を思わせる。



「待てッ、ここで話がしたい! きゅうようすんだよ。ゴテイチョーに持ちかえってどうこうしてる時間がもったいねえ!」


「どういうことだよ……」



 あわれなク・コロのもうし出に、当然と冷めた反応を返すトリニティ。



「そのまンまの意味だ。つくえの上でアゴつねってオレの信用をはかるより、現場で目に耳、あしを使ったほうがいいに決まってる。なあ? どうせ、陥没穴ここを見つけたのもそれが分かってる人間ニンゲン……お前なんだろ?」



 もっとも、ク・コロの意味ありげな言葉(づか)いは、短時間にしてトリニティの心をかきみだした。


 マスクしに、少しの汗をもよおすトリニティ。

 ク・コロをかかえ上げるテラ・ケル、後方のアルウゥスやマジモスにひととお目配めくばせした。



 ――ク・コロはとにかく面倒めんどう手合てあいだ。


 彼が、欲望よくぼうの向くままに乱暴を振りまく巨大生物に過ぎないのであれば、トリニティ(ヒーロー)一抹いちまつの不安もなく鉄拳てっけん制裁せいさい執行しっこうすることができる。


 だが、実際の彼といえば、人間めいた言論げんろんを用い、また時としてこちらに交渉こうしょうを持ちかけるほど高い知能を有していることが見てとれた。


 そうであるのならトリニティたちも同様な手段で交渉する義務ぎむが生じる。


 ()()()()()()()()だ。



 アルウゥスたちも、ク・コロの取り扱いにこまっているのだろう。

 トリニティの視線に対して、無言ながらに「あとはまかせた……」と、あまったれた消極しょうきょく的姿勢を返してきた。



(なんだその目! くそッ……ことわる理由も、思いつかねえし)



 ひと通りはなやんだ。

 しばしの後、トリニティは観念かんねんし、ひと言「わかった」とク・コロに伝えた。


 ク・コロは敗者であり、同時にわるだくみを自白じはくしなければならないという状況。


 にもかかわらず、巨大オオカミの毛むくじゃらの顔は()()()()()()()()()()を見せていた。



 テラ・ケルが巨大ヘビの胴体からだの、の先でとぐろを巻いて、その上にク・コロの胴体をすわらせる。



「――お前らが知りたいことはわかってる。オレがここで何をしてたのか……」


御露出おつゆで町に落ちたかもっていう隕石いんせきを探してたんだろ?」


「ッ、ヘへ、その通りだ。よくわかったな」



 早押はやおしクイズの回答者を気どって、トリニティが口をはさんだ。


 ク・コロは気を悪くするどころか、それを素直に肯定こうていする。


 トリニティとアルウゥスは合図あいずもなくお互いに振り返り、ほこらしげにうなずいた。



「オレがそんな眉唾まゆつばもんを探してたのは、()()()()()()だ。マ・ラは『()()()』を手に入れて……地球このほしを、支配しようとしてるッッ!!」



 ク・コロがすらすらととなえる。


 トリニティは首をかしげ、疑問を投げかける。



「……『界物種かいぶつしゅ』ってなんだ?」


「おい、マ・ラが地球このほしを手にってのは――」


「そりゃ当たり前のことだろ。くまでもねえ」


「ああ……」



 トリニティのみょう適応てきおう力の高さに、ク・コロはひるみながら説明する。



「マジカルパウアーってのは普通『無から有』って何かを生み出すもんだが、テラ・ケルの『ふね』みてえに原則をやぶるやつがいる――それが『界物種かいぶつしゅ』マジカルパウアーだ」


「いや、テラ・ケルも『舟』を作るって力だろ? 別に何も破ってないと思うが」



 トリニティはさらに追及ついきゅうする。


 これには、ク・コロに代わって、当事者のテラ・ケルが答える。



「私は以前、『舟』の性質は、内部のものに対する『生体活動の停止ていし』とお教えしましたが?」


「そうだったか。悪い。んで、どういうことだ」


「……たしかに、『舟』とは後継こうけい生物せいぶつを収容しているあの空間を指しています。しかし、『舟』の本体は空間ではなく、空間内で作用する()()。『界物種かいぶつしゅ』マジカルパウアーとは、『()()()()()』なのです」



 テラ・ケルが言った「法を作る力」という語を、トリニティは小さな声で、ふるえながらくり返す。



「後継生物には3体、『界物種かいぶつしゅ』マジカルパウアーをもつ者が――()()()()テラ・ケル(わたし)と、ヘレナ、ケリュス」


「……ヘレナとケリュス、どっかで聞いたような。うーん。……HCC(エッチシーシー)、の別名、だったか?」


HCC(エッチシーシー)――()()()()()()()()()()。装置はヘレナの『とおみち』と、ケリュスの『刻印こくいん』……2つの『界物種かいぶつしゅ』マジカルパウアーを利用し、マジカルパウアーの発生源はっせいげんを特定しています。この作製のために、2体はころされて機械化されました」


「……テラ・ケルも、あの惑星ほしから逃げてなかったら、そうなってたかもしれないよね」



 ぽつりとアルウゥスが言う。


 それはテラ・ケルの説明に対する補足のていをした、ただの悲劇的憶測(おくそく)だ。



「おい、急を要すっつってんだろ! 話がぎだ! 博識はくしきぶって、いちいちややこしくしてンなッ!」



 と、迷子になった話を、てきであるク・コロが正論でもって軌道きどう修正する。



「オレもくわしくは知らねえが、()()()()()()()のやつによると『界物種かいぶつしゅ』をむにゃ、()()()()()()()()? がいるらしくてな。マ・ラも、()()()をオレが見つけてくるのを当てにしてたんだろうが、途中で化石骨かせきこつってのが見つかったとかなんとか」


「えっと、それでク・コロから、()()()()とセーメンティスに役割がうつったんだね?」


「そう。オレはおやく御免ごめんになったってことだ」



 アルウゥスの問いかけに、ク・コロは自嘲じちょうぎみに笑いを返す。


 巨大オオカミの、ぎらぎらにぶく光る凶悪なきばがのぞいた、愉悦ゆえつの表情。


 ――トリニティは、()()()()を見せるあどけない子どものような印象を感じ取った。


 そしてク・コロの身の上に、わずかばかりの同情どうじょうねんいだく。



「なんだ。お前、役目も取られて、()()()()()()になっちまってもマ・ラのためにはたらいてたのか……」


「ハハッ、ちげえよ! 元からオレは、やつとえんを切るつもりだったのさ。だから隕石いんせきるなんつうくだらねえ話でも、一番いちばん乗りした。結果、2回しか掘ってねえけどな!」


「マ・ラとえんを切るって……なら、なんでマ・ラに味方みかたしてッ、『ふね』をこわすようなマネをッ!」


「『()()』を得るためさ。ただ『自由』が欲しかった。それだけのことさ」



 ク・コロはふたもない述懐じゅっかいで、これでしまいだと、その場にいる全員の思考をせいしてしまった。



(マ・ラは『自由』になるためアルウゥスたち(仲間)を裏切って。それを手伝ったク・コロも……ッ、セーメンティスも、『自由』が欲しくてマ・ラからはなれた……。ホント、お前らの『()()』ってなんなんだよ!)



 ただ、後継生物こうけいせいぶつの思考が、地球に暮らす人間ホモ・サピエンスには理解できない――それだけの結論で、済ませられる問題かもしれない。


 けれど、トリニティはその結論をこばんだ。


 かなえ方が、め方が違うだけで、皆がのぞむものは「自由」という名の、「()()」に変わりないと。

 信じたいのだ。



「他に、りようはなかったのかよ……」



 ついにトリニティ、アルウゥス……誰も、何もク・コロへ言い返せなくなる。

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