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性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第2章 VS.マ・ラ 御露出町・御露出コールドロン編
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第34話★ 因縁を奏でる 前

「はああ、力を分散した途端にこれたあッ……先が思いやられるってやつだな」



 ク・コロは複雑な表情を浮かべ、足蹴あしげにするトリニティを雪の大地にほおずりさせた。



「――どうでしょう。私は、先ほどの()()()、好判断だったと思いますよ」



 声。ク・コロにつづいてはっせられた。


 うすら笑いを含んだ、何か「かぶり物」をしているようなくぐもったひびき。

 機械音声ではないものの、そうした作り物という印象すら与える。



 何者だろうか。


 トリニティばかりではない。

 陥没穴シンクホールの雪底につどった全員が、示し合わせたようにそっくりその方角ほうがくを向いた。


 声は、ク・コロの粗野そやな鳴き声めく声とはまったく異なるものだった。

 だから、場所に、巨大な1つの影がたたずんでいることもまた当然の事実だ。



だれだ? どこから来たンダ……?」



 凶悪きょうあくけもの面構つらがまえをしたク・コロも、不意を突かれたことで戸惑いのようすをにじませている。


 無理もない。

 あまりに脈絡みゃくらくのない、不作法ぶさほうな登場だ。


 現実味を最重視する者がこの場にいれば、遠慮えんりょなく野次を飛ばすに違いなかった。


 それでも、乱入者らんにゅうしゃは弁明することもなく。

 ゆったりした口調のまま、ク・コロに講釈こうしゃくれる。



ものがなんの障害もへずに能力を得ることなど、しゅけがすがごとき行い。そうでしょう、ク・コロ。……その『触手』がなければ、今ごろ地にせっているのは貴様きさまのはずです」



 乱入してきた何者かはこの地の支配者きどりで、ました笑顔を顔面に貼りつけている。


 おまけに当事者全員を見越す約()()()()()()()の身長と、戦場に不釣ふつり合いの紳士しんし的な()()()風貌ふうぼうなのだ。



 ク・コロは動揺を隠しきれず、両腕と右脚の「触手」ごと固まった。



「何だお前ッ。人間、だよな?」


「な、んで、ここに……()()()()()?」



 地にほおし、意識もうろうとしたトリニティが、何者かの正体を明かしてしまう。


 真なる名を呼ばれたそれはスーツの下から、不気味なうろこめられた胴体、()()()()」の四肢。


 そして――人間のフェイスマスクの下から大蛇だいじゃの頭を披露ひろうする。



「ペルウィアに無理を言ってさんじました。トリニティ様を助けるため、ではありませんが」



 すべてをさらけ出した、巨大ヘビ(シルエットはトカゲ)の後継生物テラ・ケル。


 対してク・コロは、また新たな動揺をきたしていた。



「ああ。な、るほどな……また、人間にけるのがお上手なもんで。においでも気づかなかったぜ」


「おや……少し、()()()()()()()()とは違いました。生きていたのか! なぜ貴様きさまもその姿をしている! と、こうばしい文句を期待していましたが。言うに事をいて、世辞せじとは。ク・コロ?」


「あッ、ああ、そりゃお前! アルウゥスに会ったときにゃ、生きてるだろうとは思ってたさ。ただテラ・ケル(お前)も『触手』を利用してたってのは、おどろいたぜ。現にこうして2体(ふたり)ともども生きてるとは、まったく不思議なもんだよな!」


白々(しらじら)しいいぬ芝居しばいですね。……しかし、いいでしょう。私は報復ほうふくしに来たのです」



 テラ・ケルはヘビの胴体を食い破って飛び出した、青い「触手」の両(うで)を、つばさと広げる。


 青い「触手」が伸びた先には、別の青い「触手」がいる。

 ク・コロが生み出した「触手」だった。


 ムキムキの体で抵抗するマジモスへ徐々(じょじょ)にまとわりつき、かじりついて制圧しようとしていた。


 テラ・ケルの青い「触手」も同類に加勢するような形で近づく。


 次の瞬間、テラ・ケルの「触手」は、同類であるはずの「触手」を捕食ほしょくした!


 一切の計略、小細工こざいくもなしに真正面から。

 強い者が弱い者を食らう必定ひつじょうのように。



 ク・コロの青い「触手」から新鮮な血がき、テラ・ケルの青い「触手」に浴びせると――「触手」の体色はおぞましく変わり、真っ赤な色へとめ上げた。



貴様きさまらったこの力で、今度は貴様を食らいましょう。さあ、私が相手です」



 テラ・ケルの芝居しばいじみた言葉が、ク・コロをきつける。


 そこへトリニティは待ったをかける。



「待てッ、テラ・ケル! 手を出すな。ク・コロの相手をするのは俺だ!」


「トリニティ様……心配されているのですか? 私が、戦いに向いたマジカルパウアーを有していないことを」



 予測しなかったトリニティの発言に、テラ・ケルがたいらなヘビづらをしかめる。



たしかに私も、ペルウィアも後継生物の中では弱者に分類される。マジカルパウアーを使った戦いで、まともな戦力とはなりません。ですが、それが何か?」



 テラ・ケルは、自身が実力不足だと追及ついきゅうされている、そう受け取ったようすだ。



「ここは純然じゅんぜんたる『暴力』が勝敗を決する場。私とてク・コロにおくれは取りませんよ。それとも……ご自身よりも弱いと、私をあなどっておいでですか、()()()()?」


ちげえよ。これは、俺がアルウゥスとの()()を果たす戦いでもあるんだ」


「約束?」


「ああ……俺は、人間も後継生物(お前ら)も、誰ひとり死なせねえ。()()()ッ、まとめてしあわせにする。――ってな!」



 きずまみれになり敵の足元で倒れ伏してなお、トリニティの正義による闘志とうしたけっている! 


 拘束こうそくかれたマジモスは人間態を切り離し、巨大バエのひとつでク・コロに突撃ッ! 


 時間をかせいだ。

 これにじょうじ、あらためてトリニティのにわとりマスクと合体するッ!


 わずかな時間に起きた、一連の出来事に立ち会ったテラ・ケル。

 人間ほど発達した表情筋をもたないながらに彼は、はっきりと笑った。



「ようやく、アルウゥスがあなたを選んだわけを理解しました。それも、好判断だったようです」


「選ばれたっつか巻き込まれたんだけどな、ハハ……」


妥当だとう性がすべてです。……ク・コロはまかせました。『触手』の処理はどうか、この私に」


「ああ!」



 トリニティが武器を構え、背中を異形の巨大ヘビ(テラ・ケル)に見せる。

 真正面に異形の巨大オオカミ(ク・コロ)を見すえる。


 もう、いかなる合図もなしに戦闘は始まった。

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