表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第2章 VS.マ・ラ 御露出町・御露出コールドロン編
34/45

第33話★ 因縁を爪弾く

「いや、待てよッ? 陥没穴シンクホールってやつがただの落とし穴なら、アルウゥスの言う通りだ。けど、この大きさ……()()()()()価値はあるんじゃねえか」



 虚幌須うろぼろす市は、御露出おつゆで前立寺(ぜんりゅうじ)


 雪景色の中にぽっかり空いた陥没穴シンクホールへ、トリニティとアルウゥス、2人をかかえたマジモスが落ちた。



 ↓ ↓ ↓



 あなの深さ()()()()()()は、7階建てのビル高と考えれば、飛び降りるのにさしてむずかしさもない。


 トリニティの懸念けねんは、下で生えているハゲ木に、上からくししにされることだ。


 穴の中間地点にさしかかったそのとき、マジモスが、うでまたの間に皮膜ひまくを広げる。


 そうして滑空かっくうおこなった。


 滑空は気休きやす程度ていどのものではあったが、位置調整によって木々のあいだを抜け、一行いっこう無事ふじ地面へと着地することができた。


 不安が杞憂きゆうに終わり、安心したトリニティが深く息をいた。


 また深く注意し、周囲を見渡みわたした。


 あな内部の植生と景色は、御露出おつゆで町のいかなる森とも大差たいさない。


 だが、かつての地下空洞(くうどう)とされるつぼ型をした空間は、外側に向けて闇がづいているようだった。



「……何も、ないか?」



 トリニティはつぶやいて、少し歩いてみる。


 陽光ようこう差す穴の入口直下に巨木きょぼく密集みっしゅうしている。


 1本をけても木、また避けても木があらわれる。

 それらはパチンコくぎのように、トリニティたちを思いもよらぬ方向へ進ませた。


 そのとき、マジモス――ムキムキの人間形態の、頭部についた小羽こばねが、かつてない不快ふかいおんを上げる!



「なっ、なんだ! おどかすなよ!」



 トリニティはこの音が、周囲に()()()()意図だと知らなかった。


 アルウゥスだけが音に続いて、あせったようすで視線をぐるりと飛ばした。



「――よお。こんな早くにどうしたんだ、兄弟きょうだい?」



 トリニティは聞き覚えない、それも人間の声よりも()()()()()()めいた調子の呼びかけを耳にした。


 しかもそれは前方からのものだ。


 やがて何者なにものかは、胴太でぶいハゲ木の後ろから正体をあらわす。



 一面の雪に点と浮かぶ黒、色の毛並み。


 もの……そんななまやさしいものではない。


 後継生物こうけいせいぶつ


 そのため体長は大きく、見かけ上2メートル、猫背ねこぜを正せば()()()()()以上もあるだろう。


 それと猫背と評したが、実際は()()()()、ないしはオオカミおとこという見た目だった。


 ひたいから背にかけて毛が鋸刃のこば状に逆立さかだって生えている。



()()()()……だよね?」



 ただし、かの巨大オオカミを、探し求めた「ク・コロ」と呼んだアルウゥスは確信を得るのと同時に、困惑こんわくしていた。


 なぜならば。


 ク・コロらしきけものは、両(うで)、右(あし)が食いやぶられ、内側からナゾの長い物体がはみ出し――、



「テラ・ケルと同じ……『触手しょくしゅ』がえてるのかッ?」



 トリニティが答え合わせとばかりに、ふるえる声を上げる。



 ク・コロの「触手」は()()色と()()()色、2色の個体がからみ合い、手足があるべき場所でDNAの二重螺旋(らせん)めいた構造物をかたち作っている。


 確かに、テラ・ケルと同様、本来の胴体からだに「触手」が四肢の代わりとして伸びているシルエットだ。


 しかしながら、テラ・ケルとは決定的に異なる。

 巨大ヘビのテラ・ケルに対して、巨大オオカミのク・コロは生まれもった手足を捨て、「触手の苗」から生じた「()()」に()()()()()()()のだった。



「そっか……わかったよ。『触手しょくしゅなえ』は力の発散のために、無作為むさくいに生み出されたんじゃない」



 と、寒さでむらさき色の肌になったアルウゥスが声をあららげる。



「ク・コロの一部となって、()()していたんだ。だからHCC(エッチシーシー)が記録した地点で見つけられなかった!」


「ご明察めいさつッ! さすがは後継こうけい生物せいぶつイチの秀才だな、おいアルウゥス。つっても、オレをこんな風にしたのもお前だがな。ケヒヒ!」



 時間をかけず「御露出おつゆでコールドロン」の「触手」捜索劇そうさくげき真相しんそうへと至ったアルウゥス。


 ク・コロが賛辞さんじをおくる。

 毛むくじゃらのマズルからするどい歯をのぞかせ、笑ってみせる。



「どういう意味?」


「ああ? 忘れたのかよ。地球このほしではじめて戦った日だ。お前とそこのハエにやられて、オレはどうにか逃げられたが血を流しすぎて、今にも死にそうな状態だった。生き残るには、『触手』をにえに手足にするしかねえって、そんとき思いついたのさ!」


にえってのはわかるが、どう転んだら自分のからだに(『触手』を)入れるなんつう発想になるんだよ……」



 愉快ゆかいなようすで狂気の自分語りをするク・コロに、トリニティは共感できず頭をかかえる。



「さて。目的はオレだろ? 丸腰まるごし獲物えものを狩るのはシュミじゃねえ。とっとと準備しな、人間ニンゲン?」


「……ハハ! なんだよ。てきながらお前とは気が合いそうだ。いいぜ、その余裕よゆう……正面からぶち破ってやる!」



 トリニティが返事すると、ク・コロが犬面いぬづら喜色きしょくを浮かべる。


 腕から生えた「触手」も(くち)をニタリ笑わせ、いかりのマークにする。



「アルウゥス、マジモス――いくぞ!」



 トリニティの声に応え、アルウゥスが体内から激しいピンクに光りかがやく。


 巨大バエのマジモスも呼応し、トリニティの武器へと変身する。

 その装いはまさに戦闘特化の触手しょくしゅスーツだ。


 トリニティはアルウゥスの出現させた脊柱せぼね戦棍メイスを手に、ク・コロへなぐりかかる!



「おらぁッ!」


「おっと、そういう戦い方か。ならオレも出し惜しみはしねえぜッ!」



 ク・コロの腕の赤黒い「触手」はたやすく攻撃を防いだ。


 巨体らしからぬ俊敏しゅんびんさで後退すると、アルウゥスやマジモス同様のピンクの輝きをからだからはなつ!


 直後、ク・コロの周囲に約8センチけいの物質が複数生成される。


 それこそがマジカルパウアー「触手しょくしゅなえ」の実態じったいだった。



「オレの『触手』は、をすするためなら同類もおのれも食らう、バケモノだ! 倒してみせろ!」



 ク・コロが「触手の苗」を、自身の「触手」ではじき飛ばすッ!


 「触手の苗」は拡散し、ハゲ木や雪の地面に植わるとすぐさま孵化ふかを始めた。


 内部の栄養素かマジカルな何かのみで、()()色の「触手」を生み出し300センチほどまで成長させる。


 (くち)の中にりかえった凶悪な歯が生えそろう。


 かえったばかりの青い「触手」、だが即座にトリニティへみつかんいきおいでせまってきたッ!


 トリニティの右腕みぎうでからケラチンのかたまりブレード状をして伸びる。

 彼はそれをもって「触手」をすべて斬りはらい、ほふった。


 ――ものの、「触手」は第二陣、第三陣と彼のもとへ続々(ぞくぞく)近づいてくる!



「くそッ、っても斬っても手ごたえがねえ! この数で持久戦じきゅうせんに持ちこまれたら、まずいぞ!」



 マジモスと合体したトリニティは頑丈がんじょうな装備、人身を超えた武器を手にできた。


 だが、やはりと言えばよいかク・コロ陣営の「数的有利(ゆうり)」という正攻法せいこうほうの前に、太刀打たちうちするのは困難なのだ。



「……マジモスッ、俺たちも頭数あたまかずをとるぞ!」



 トリニティの号令。


 刹那せつな、彼の頭からマジモスが()()し、ムキムキの人間形態をとる。

 「触手」を素手すでで取り押さえる。


 一方、触手スーツはそのままに、元来のにわとりマスクがあらわになったトリニティは木々の狭間はざまをジグザグに走り抜け、ク・コロを目指す。


 ケラチンブレードを脱落させ、再度空中から脊柱せぼね戦棍メイスをとる。



「おいおい、せっかく弱ってから楽にイかせてやろうと思ったのによッ!」



 ク・コロが息巻いきまいて、両腕の()()()「触手」を広げる。


 トリニティへのあきれからくる発言の格好をして、当事者は全体に喜びか、快楽か、あわれみか……。

 ともかく正反対の色をあふれさせていた。


 ク・コロの「触手」は、からみ合い、鉄拳てっけんという別の「力」に収束する。


 向かい来るトリニティの「力」と交じり合うッ! 


 ――ただし、結果はとうに見えていた。


 トリニティのそれは意志の強さをもっているが、所詮しょせんアルウゥスからのものの「力」。


 対してク・コロはマジカルパウアーと、もってまれたものとしての強さ。

 2つの「力」。


 衝突しょうとつしたとき、それはあっさりと、無情に決した。



「くッ、そ……!」



 苦しさを押しころしきれず、か細い声を上げるトリニティ。


 彼を足蹴あしげにするク・コロは複雑な表情を浮かべ、ブザマなヒーローを雪の大地にほおずりさせた。



「はああ、力を分散した途端とたんにこれたあッ……先が思いやられるってやつだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ