表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第2章 VS.マ・ラ 御露出町・御露出コールドロン編
32/54

第29話  場外戦 前

 後継生物こうけいせいぶつ()()()()のマジカルパウアーで出現した「触手しょくしゅ」を倒したトリニティ。


 ついでに発見してしまったゴミの不法ふほう投棄とうきの現場も、証拠写真をとり通報した。



 同日、現場となった御露出おつゆで士里七(しりなな)からぷるくら動物園へ、小型バイクで向かっていた。


 当初、トリニティは男児から引き受けた「おっきなヘビ」退治は完了したものの、彼にとってはより大きな問題を引っ張り出してしまった状態だ。


 あの()()()色の「触手」がマジカルパウアーの産物さんぶつに過ぎない場合、元凶げんきょうのク・コロを制圧せいあつしなければ根本的解決にならない。



「……事情はわかったヨ。また厄介やっかいなものをり当てたネ」



 トリニティたちは、来客数増加のピークを過ぎ、元のさびれた場所に落ち着いたぷるくら動物園へ到着。


 管理棟へ直行し、ペルウィアに状況説明する。

 すると予想通り、億劫おっくうな表情を返された。



「あの後、まわりを探したがク・コロはいなかった。どうやってあの『触手』をあやつってたんだ?」


「んー、人間、なぜク・コロが操ってると思うノ?」


「違うのか? 俺はやつが、縄張なわばりを守ろうとして『触手』を武器()わりに置いてると思ったが」


「ふうん。らちが明かないネ。もういい、説明する」



 白色の髪をかき、あきれた顔を浮かべるペルウィア。

 管理棟で一番大きな、高級感あるロッキングチェアにどかっとすわる。



「大前提として、マジカルパウアーは()()()()()()()()()()。これはいいネ?」


初耳はつみみなんだが……」


「何回も戦ってるならわかれヨ!」



 トリニティに対し、やけに当たりが強いペルウィアの幼声おさなごえが部屋にひびいた。



「コホン。マジカルパウアーの表現型ひょうげんがたは、主に2種類。『無から有』か『有から別の有』がある。仮にク・コロが『触手』をあやつる力をもっているとしたら、それは操ること――『有から別の有』が本質だから、先に『触手』ないしは『触手』に置換ちかんする物体が必要になるんだヨ」



 ペルウィアはくどい論理的な言い回しをし、トリニティの考えを丁寧ていねい粉砕ふんさいする。


 トリニティは釈然しゃくぜんとしない気持ちを押しころし、相槌あいづちを打って理解を示す。



「そりゃ、テラ・ケルの話と矛盾むじゅんするな。『()()()()()()()()()、って言ってたらしいし……」


「らしい? まあいいや。つまりク・コロのマジカルパウアーは、自律じりつする『触手』を生み出す力ってことヨ。それは『触手しょくしゅなえ』という形であらわれる。ク・コロは『触手の苗』を植えつけることで、『触手』を孵化ふかさせるのヨ」


「『触手しょくしゅなえ』って……あの地面に埋まってたやつか」



 トリニティは思い出す。

 大小さまざまの「触手」が根本を同じくしていた、かぶのような組織。


 現場に置いてきてしまったが、外見はおぼえていた。



「ひとまず、敵のことは理解できたネ。で、肝心かんじんなク・コロの居場所はわからないと?」


「ああ。アルウゥスに聞いた、(今まで)後継生物を見つけてきたのはペルウィアだって。頼む、力を貸してくれ! 俺は、これ以上被害者を出したくない!」


「はいはい、クサいセリフは結構ヨ。……どうせはなっから調べるつもりだったし」



 気の抜けた返事をして、ペルウィアが席を立つ。

 別の部屋にトリニティたちを手招てまねきする。


 管理棟の警備けいび室。

 2台のモニターが設置され、ぷるくら動物園内の様子をカメラで監視かんししている――はずもなく。

 接続されているのはテレビレコーダーほどの大きさの、しかしトリニティが見たこともない機械だ。


 モニターにも、園内映像ではなく座標図ざひょうずとナゾのアーカイブがうつし出されている。



「人間、『HCC(エッチシーシー)』って聞いたことあ……るわけないか。ヘレナ・ケリュス装置そうちとも言うんだけど。ワタシたちの惑星ほしで作られた、()()()()()()()()()()調()()()()()みたいなものヨ」


「待てって! アルウゥス、こんな都合いいもんがあるのに、なんでさっき使わねえんだよ!」


「アルウゥスは機械オンチだからネぇ」



 ペルウィアがたしなめるも、士里七しりななでの移動がムダあしだと知ったトリニティの怒りはなかなか収まらない。


 しゅんとしおれたアルウゥスを強めに見つめると、もう怒鳴ることはしなかった。



HCC(エッチシーシー)では、マジカルパウアーごとに使用された日時にちじ座標ざひょうを管理してる。この点を見て欲しいんだケド……さっき、2人が戦った『触手』ネ? 御露出おつゆで士里七(しりなな)、8月9日」


()()()()!? そんなわけ……」



 動揺するトリニティだが、うかつにも「おっきなヘビ」退治を依頼してきた男児から、「触手」が子どもをおそった事件はいつのことかと聞きそびれていた。


 以前、後継生物と戦っている姿を目撃した男児が、その後に起こった「触手」の事件について「トリニティなら解決できる」と考えたため、彼に依頼をしてきたと。


 トリニティはそのように想定している。


 こちらが真実とすれば、時系列があべこべになる。


 なぜなら、トリニティの戦闘を、男児が見たのは()()()なのだから。



「さっきも言ったように、ク・コロは『触手の苗』を()()()()()『触手』を孵化ふかさせる。その関係で、『触手』は生まれた場所から()()()()()()()()()()()ワ。植えつけたのが森の深いところなら、最近まで人間の子どもが『触手』に遭遇そうぐうしなかったとしても不思議じゃないネ」


「なるほどな、それなら納得がいく。でも、4か月前か……」


「フフッ……アルウゥスおぼえてるかナ? これ、君がらした『触手』だヨ」



 ペルウィアはほくそ笑み、口を開けたアルウゥスに視線をる。


 HCC(エッチシーシー)のデータを確認する前から、ペルウィアは察していた。


 一方、指摘してきされてもアルウゥスは理解するまでに時間を要した。



「えっと……討ち漏らしたって、前にク・コロと戦ったときに、ってこと? ……そうだ、うん、たしかに暑い日だった。思い出した。つまりボクは、あのときク・コロに逃げられただけじゃなくて、途中でまかれた『触手の苗』も処理しないまま4か月間放置(ほうち)してた、ってこと?」


「その通り! このお間抜まぬけさんめ!」



 にぎやかに失敗を茶化ちゃかされたアルウゥスは、言葉を失い、すっかり意気消沈(しょうちん)してしまった。


 ペルウィアは一度立ち上がって、てきとうな椅子をとなりに移動させると、トリニティに向かってそこへ座るようハンドサインを送る。


 トリニティはしぶしぶその椅子に腰かけた。

 暗い部屋の中でもじゅんな色の、白いセミロングヘアが接近する。

 そこからさわやかな薬草やくそうのような香りが立つ。



「この装置は、マジカルパウアーの発生源はっせいげんを特定するもの。ク・コロの能力で言えば、『触手の苗』を生成した時点の、位置を特定するワ。つまり、今もそこにいるとは限らないノ」


「なんでそう融通ゆうずうかないんだよ! くそッ、結局ク・コロがどこにいるかは、わからないままか……」



 後継生物を捕獲したいトリニティたちにとって、これ以上ない有用なツールであるHCC(エッチシーシー)

 だが、それは誰かを監視者かんししゃ司令塔しれいとうとして常に置くことを前提とした、即時性のないしろものだった。


 明らかになったアルウゥスの失態も合わさり、トリニティのあせりはす一方に思えた。



「……よし。ひとまず、今わかる範囲で『触手』が使われた場所を見せてくれ。もちろん地球の中でな?」


「何する気なノ?」


「本体がどこにいるかわからん状況で、できることっつったら野放のばなしの『触手』をつぶして回ることくらいだろ。脅威きょういは、可能な限り減らしておきたい」



 トリニティは自身の頭で考え、ペルウィアに合理的らしい説明をする。


 もっとも彼の思惑おもわくは、まるで計画性のない「しらみつぶし」でしかなかった。

 さすがにペルウィアもひとつ返事で納得するわけにはいかない。



「そんな原始的な方法って……たとえ話として、()()()()ルみたいにもののからだに『触手の苗』が植えつけられた場合は、この座標から『触手』が移動している可能性がある。そうなったら最後、HCC(エッチシーシー)では『触手』を追跡ついせきできないワ。だから闇雲やみくもに探すよりも――」


「ああ、わかった。よろしく」



 トリニティは平然と即答する。


 ペルウィアは呆れてため息をつき……小さく笑った。



「人間、アルウゥスが好きそうな性格してるネ。色々考えてるようで、結局は無謀むぼうぱしる」


めてないだろ、それ」


「まあネ。ほら、これを見て?」



 トリニティの思いつきに乗っかってかどうか、浅黒い梅鼠うめねずみ色の肌を血色けっしょくよくしたペルウィアがうながす。


 画面に映し出されたものはアーカイブの表示(らん)

 欄上部に「ク・コロ」と名前の載った、要するにク・コロのマジカルパウアー行使履歴(りれき)だ。



「『触手しょくしゅなえ』は、地球での使用回数が38回。うちアルウゥス相手は31回で、人間が倒したのはその残党ざんとう5回分。残る()()は、全部虚幌須(うろぼろす)市内だネ」


「ざっくりしすぎだ、市内どころか双成そうせい町と御露出おつゆで町だけだろ! なんでこんな()()()()……」


「どこで力を使うかの理由なんて、わかんないヨ。使わない理由もわかんないケド」


「よし! アルウゥス、行くぞ! ペルウィアは何か動きがないか、HCC(エッチシーシー)を見ててくれ!」


「……ホントに、ワタシの『ちから』は使わないノ?」



 席を立ち、これから出かけようとしたトリニティを、ペルウィアが引き留める。


 トリニティの服のそでを引っ張る、ペルウィアの顔はいかなる感情より、興味本位といったものだ。



「ああ。お前のマジカルパウアーは強すぎる。だから信用できない……けど、それはお前の強さを、俺がまだ使いこなせないからだ。あのときは言い方が悪かった。今のが本心ほんしんだ」


「あっそ。……じゃ、まあ、頑張ってネ」



 ペルウィアは、つかんだトリニティの服のそでをはなす。


 無謀むぼうなコンビと巨大バエ1匹を見送ると、すぐにもHCC(エッチシーシー)と接続した液晶モニターへ向き直った。



「どうせ、ムダだと思うけどネ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ