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性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第2章 VS.マ・ラ 御露出町・御露出コールドロン編
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第31話  場外戦 後

 後継生物こうけいせいぶつク・コロを捕まえる手がかりはないかと、厘月りんげつ町の貝釣ばいづり大学附属(ふぞく)図書館としょかんへと訪れたトリニティ。


 館内をさまよっていたところ、2階の読書スペースに見知った()()()()()()を見つけた。



「アルウゥス?」



 その人物はいくつか書物を積み上げ、つくえの前に張りついている。


 燃える炎のかみに、真っ赤なはだ

 大きいオレンジのような髪飾かみかざりが2つ、髪をツインテールにたばねる。

 セーラー服にスカートを穿いた、少女らしい見た目。


 特徴を列挙れっきょして、そこに「生物学的オス」だと注釈を入れれば、人物――アルウゥスはただの女装性癖(ヘキ)変態へんたいのようだった。



園治えんじッ! え、っと、奇遇きぐうだねこんなところで、アハハ……」


「ク・コロのことで、何か調べられないかと思ってな。ってかなんでセーラー服()てんだよ」


変装へんそう、みたいな?」


違和感いわかんふくて歩いてるってのに、服まで違和感にしてどうする!」



 トリニティは声をおさえながらツッコミを入れる。

 アルウゥスが椅子いすの背もたれにかけた上着を、無理やりセーラー服の上から着せる。


 よく見るとふとももの上を、巨大バエのマジモスがあたためている。



「ペルウィアが後継生物の場所をだいたいしぼったら、ボクはそこに行って周辺を調べたり、本体を見つけたら戦ったりする役割だったんだ。その場所になじむよう色々(いろいろ)変装とかもしてて」


「ああ、だから最初会ったときもセーラー服だったのか……って、納得はできないが」


「でも……びっくりした。園治えんじのことだから、自分1人で何かすると思ってたけど、まさか図書館でばったり会っちゃうなんてね。ンフフ」


「考えなしに森ん中(さが)し回ってるとか、思ったか? そりゃ合ってるな。このあと行こうとしてた」


「そっか、アハハ! ボクは園治えんじのそういうとこ、好きだよ?」



 図書館で目的迷子になった自身を振り返り、トリニティは自虐じぎゃくを言う。


 アルウゥスは上機嫌に笑いを返す。

 そして、突っ立ったままのトリニティをとなりへ座らせる。



「ずっと疑問だったんだ。園治えんじもだと思う。ク・コロがマジカルパウアーを使った場所が、双成そうせい町と御露出おつゆで町ばかりなのは、なんでだろうって。普通なら、このあたりに棲処すみかがあって、『マジカルしょう』にならないよう()()()()をしてるっていうのが理由、なんだろうけど……」


「『マジカル症』って、あれだろ? マジカルパウアーを長期間使わなかったらなる病気」



 恐らくテラ・ケルの話だろう、記憶を思い起こしてトリニティが言う。


 アルウゥスは首肯しゅこうする。



「うん。ほとんどの後継生物は、少なくとも()()()()()()()マジカルパウアーを使わないと、『マジカル症』になる可能性があるの。ボクはマジモスと分担ぶんたんできるから、もっと少なくてんでるけど。ボクたちが地球に来て1年とちょっと……その間に()()、ク・コロは力を使ってる。少ない気はするけど、発散の回数としてはあり得ると思って」


「わかった。ちなみに、アルウゥスは図書館で何調べてるんだ?」


「もちろん園治えんじと一緒! ク・コロについて……力の発散をした場所に共通点がないか、調べてたの」


「共通点、か……」


「そしたら()()()! って、使い方合ってる? とにかく、この地図を見てッ!」



 アルウゥスは隣のトリニティに、手書きの用紙を見せる。


 「グラマラスな妊婦にんぷ」たる虚幌須うろぼろす市の会陰えいん部。

 ……と言うと聞こえは悪いが、そう言う他にない場所に位置している、双成そうせい町と御露出おつゆで町をピックアップした地図だ。


 ク・コロがマジカルパウアーを7回行使した、地点と日時が記されている。



「この地図自体は、ペルウィアからHCC(エッチシーシー)で同じものを見せてもらったと思う。この中の()()()――去年2月9日御露出(おつゆで)牛巴(かうぱ)と、4月15日御露出町(ぬう)に、共通点があったんだ!」



 はしゃぎ回るアルウゥス。


 もたついた手つきで、御露出おつゆで町の「()()調()()()()()」と名前のついた冊子をとり、目当てのページをめくって探す。



園治えんじ、この2つの町にまたがってる『御露出おつゆで()()()()()()』って知ってる?」


「いや、知らな……ってるか? なんか中学の、社会の授業で聞いたような気がしてきた」


「えっと、コールドロンっていうのは()()()()()()()()()()()()()のことらしくて。色んな自然現象がかさなって、今はその名残なごりだけになってる。でも大事なのはそこじゃない! なんと『御露出おつゆでコールドロン』ができた一因として、()()()()()()()()()()があるらしいんだッ!」


「なッ、なんだってえ!」



 驚愕きょうがくする2人。


 さすがにうるさすぎた。

 図書館職員が飛んできて、2人は注意を受ける。



「……ホントなのか? い、隕石いんせきって、厘月りんげつ町に落ちたってむかしから言われてるが。ホントだったとしたら、2つあったってことか?」


「……そこまではわからない。でも、この報告書では隕石の落下があった前提で、発掘調査がされたって書いてある。そしてその場所こそ、御露出おつゆで町の牛巴かうぱぬうなんだよ!」



 アルウゥスが断言だんげんする!


 かつて彼が爆破した貝釣ばいづり大学の()()()()()は、当然ながら隕石が「厘月りんげつ町に落ちた」という認識にんしきあっての存在だった。


 多くの町民・市民はこの認識を共有していた。


 ところが、同大学の附属ふぞく図書館には、隕石が「御露出おつゆで町に落ちた」という立場で、発掘調査を行った報告書が蔵書ぞうしょされているという。


 矛盾むじゅん……とまではいかないが、トリニティの頭に違和感いわかんとオカルトを誘発ゆうはつするには充分な事実だった。



「忘れてたけど、マ・ラは隕石いんせきが関係してる化石骨かせきこつを欲しがってたんだ。それでコ・キユ(部下)に大学を襲撃させて、セーメンティスに運ばせたッ。……見えてきたな!」


「でも化石骨かせきこつ厘月りんげつ町で見つかったって、どの本かで読んだよ?」



 興奮こうふんした情緒を声ににじませるトリニティへ、アルウゥスがおずおず疑問を差し出す。



「ああ、そうらしい。だから、今思ったけど……たぶん()なんだ」


ぎゃく、ってどういうこと?」


一言いちごん一句いっく正しくはないと思うが、セーメンティスはこう言っていた――『あのホネを手に入れたら、ゲノム採取さいしゅする』って。()()()ってのは、ものの遺伝子がまとまったもんだよな?」



 トリニティの言うゲノムとは、「遺伝子いでんし総体そうたい」とも呼ばれるように、生き物を構成する()()()()()()を意味している。


 以前トリニティに、セーメンティスはそのゲノムを、マ・ラの目的のために化石骨かせきこつから採取したと話したのだ。



「そっか……化石骨かせきこつのゲノムには、()()()()()()()()()()()()()()()()が入ってて、一時期厘月(りんげつ)町で『宇宙人の化石』って話題になってた、って記事で見たよ!」


「れ、レト? まあいい、それだ」



 理解力のある、なおかつ図書館で関連資料を精密せいみつに調べ上げたアルウゥスの言葉を、トリニティは真正面ましょうめんから受け止めることができない。


 しかし、2人は意志をかよわせ、ともに同じ結論にたっしようとしていた。



「要するに……マ・ラの標的は化石骨かせきこつそのものじゃなく、そこにあったウイルスの遺伝子とやらなんだよ。んで、それは隕石に付着いてきたもんだと。もうわかるな?」



 トリニティがそこまで言うと、彼の心をアルウゥスも察知する。





「「ク・コロは『触手しょくしゅ』を使って、()()()()()しようとしていたッッ!」」





 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 トリニティとアルウゥスは自宅までの帰途きとにつく。


 2人で叫んだ後、図書館を追い出された。


 アルウゥスは図書館へ、輸入雑貨屋のアルバイト終わりに来ていた。

 帰りはラーメン屋のアルバイト終わりのトリニティと小型バイクに同乗した。

 マジモスをヘルメットにしてかぶる。



「まだ話したいから、ゆっくり帰ってね?」



 たそがれどきの16時半。


 二車線の道路は空いている。

 しかし、アルウゥスにしたがい速度を落としてちんたら走っていると、商店街への買い物客やビジネスマンで込み始めてしまう。


 トリニティは普段利用する一般道ではなく、河川かせん沿いの田舎いなかみちから遠回りするルートに入った。



「ク・コロがやってたことはわかった。けど、セーメンティスが化石骨かせきこつをもって帰った今、ク・コロ(あいつ)御露出おつゆで町に残る理由はないはずだよな……」


「うん、ボクもそう思う。でも引っかかる……ク・コロが、ボクと戦う以外で力を使ったのは全部で7か所。そのうち()()()()()に(牛巴・縫の)2か所使ったとして。()()()()()は、8月以降に集中してるんだ」


「別の目的で動いてる……?」


「ク・コロはマ・ラへの忠誠ちゅうせい心が強かったから、ありえるかも。……ううん、そう思いたい。たとえば、マ・ラが繁殖はんしょく欲を発散するためのものつかまえてる、とか!」


「あんな『触手バケモン』を使ったら、捕まえるどころかころしかねないだろ……」



 トリニティがうんざりした表情で口にする。


 アルウゥスの考えはいつも理にかなっているが、後継生物が、人間もそうだ……かならずしも合理的な動機のために生きているわけではないだろう。



「もし、隕石を掘り当てようとしてたってのが真実だとして……今のク・コロが何のため動いてるかは、結局わからん。だからこそ、俺たちは御露出おつゆで町を徹底的にさがす! せっかくの手がかりだ、こじつけだろうが使い倒してやろうぜ!」



 外灯がいとう少ない田舎道を、ヘッドライトの明かりがみちびく。


 ようやく2人は自宅近辺の道へと出る。


 トリニティの見知った道。

 トリニティを見知った人々。

 たとえヘルメット(マジモスではない一般的なもの)の下に鶏冠とさかを隠していても、彼のシルエットにしたしみを覚えた通行人は、みな小型バイクに振り向いた。



「ボクらの惑星ほしの後継生物は、()()()()()()()で育ったから、寒さとか雨風あめかぜをいやがるはず。あやしい場所がないか、明日もう一回図書館で調べてくるよ!」


みずくせえな……ゴールまで2人で近づいてきたんだ、俺にも手伝わせてくれ」


「うん……うんッ! やろう、園治えんじ!」



 アルウゥスが急に、後部座席からトリニティに強くきついてくる。


 なんとなくいい雰囲気になる。

 もっとも、2人がただのカップルであれば、誰も気にめないだろう。


 2人の乗る小型バイクは、自宅目前という清栗きよくり駅前で、信号待ちにあった。

 駅前は利用客で混雑こんざつしている。


 トリニティは挙動きょどう不審ふしんに見回した先で、ニヤニヤ笑う何人かと目が合った。

 そして寿命じゅみょうちぢむ思いをした。

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