第25話 結局、一巡
「トリニティ様、吾々の足跡をたどっていただき、誠にありがとうございます」
後継生物たちの「舟」の中。
肉色の巨塔の足元にて。
すべてをさらけ出した巨大魔改造ヘビのテラ・ケルが、礼を述べる。
「テラ・ケル。最後っつったけど、もう1つだけ訊きたい。お前はまだ、後継生物の『楽園』を作るっていうのは、諦めていないのか?」
「もちろん。そしてトリニティ様や地球人が、吾々の移住を望まないことも、承知しております」
テラ・ケルは謙虚な返事をする。
トリニティは静かにうなずく。
「ですから私は、マ・ラを捕らえた暁には、後継生物を連れて新たな居場所を探す旅に出るつもりです。ついでに、例えば地球の生き物や遺伝子を少し、仲間に加えさせていただければ……」
「出て行くぶんには好きにすればいい。けど、地球の生き物を仲間に、ってのはもうかなりの数そうしてるだろ。何なら、俺には地球産の後継生物のほうが多いように見えたぞ?」
トリニティの言葉は、流れる「舟」の景色の中で収容された後継生物についてのもの。
彼には、他惑星から来た後継生物の数より、「地球産の後継生物」の数が勝っていると感じられた。
事実であれば、テラ・ケルの発言とどこかチグハグに感じることはおかしくないだろう。
「マ・ラは配下に命じて、繁殖欲を発散する生き物を連れてくることがあるようです。吾々の想像以上に、精力的に後継生物を殖やしているということでしょう……」
「ハハッ、てっきりそういうねらいかと思った。違うようで何よりだ」
トリニティの長い「舟」の旅は、時に賑やかに、時に沈鬱に、理解という岸を目指した。
岸には大いなる敵がいるはずだった。
しかし、心強い新たな仲間(?)と出会うことができた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
トリニティとアルウゥスとマジモス、他2人は「舟」を降りた。
再度、場所はぷるくら動物園管理棟。
部屋の時計は19時を回っている。
1時間ほど旅をしていた。
「ああ、どっと疲れた……今日の話、あと何日憶えていられっかな……」
「いいえ。忘れてしまっても、構いませんよ」
テラ・ケルが柔和な声質でトリニティへ告げる。
いつの間にか、身長2.5メートルの人間のコスプレに戻っている。
「ここまで色々と話してきましたが、複雑なのは見かけだけ。すべては『マ・ラを捕獲する』ことで解決するのです! はじめから、その目的は変わっておりません」
「いや、元はと言えば、複雑にしたの後継生物だろ」
トリニティの一言。
後継生物たちは返す言葉を失い、情けないとわかりながら沈黙へ逃避した。
「もう俺帰るわ……」
「あ、あぁあ! じゃあ『穴』を出すネ、ちょっと待って――」
「いや。お前のマジカルパウアーは、後継生物の移動だけに使え。俺たちは自分の足で歩く」
マジカルパウアーで穴を作ろうとしたペルウィアを、トリニティは強い口調で制止する。
ペルウィアはセリフを用いず、ただ理解不能を顔面に貼りつけ、トリニティを睥睨した。
「いいか……アルウゥスは戦闘、テラ・ケルは後継生物を管理するために能力が必要だ。対してペルウィア、その『穴』ってのはどうしても使わなきゃいけないもんじゃねえ。移動がラクだって理由だけで使えば、そりゃ町で暴れてる連中と一緒だ。わかるだろ?」
「あっそぉ! いいヨ、好きにすれば。自分の足で帰るといいサ。もう今日のバスないけどネ!」
「はあッ?」
ペルウィアの発言に驚き、トリニティはとっさにスマホを取り出す。
御露出町から双成町の自宅までの、帰宅ルートを検索する。
市営バスの便があれば30分程度で帰ることができる。
……はずだが、ネットは、次に来るバスが朝8時の便だとトリニティへ教えた。
「19時でバスがないって、どんだけ田舎なんだよ……」
「えっと、今日は、ここに泊まっていこうよ? 寝るところもあるし。ボクもそうするから」
アルウゥスが気を遣って、トリニティに優しい言葉をかける。
「お高くとまって、結局ヤドカリなんてお笑いネ! あと、誰も言わなかったケド、あんた半端なく魚臭いから! これだから人間は! 寝るなら外、一夜干ししか許さないからネ」
日中、魚屋のアルバイトで汗をかき魚介の香りを一身に浴びたトリニティ。
体臭をペルウィアに非難されると何も反論できなくなる。
すると、またもやアルウゥスが口を挟む。
「お風呂ッ! ここからすぐ近くに、温泉があるんだ! 一緒に行こう!」
ペルウィアの暴言が止まらなくなる前にと、アルウゥスはトリニティを屋外へ連れ出した。




