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性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第1章 VS.アルウゥス 厘月町・貝釣大学編
2/8

第1話   商店戦士トリニティ

 日本は某県、虚幌須うろぼろす市。

 その形は「地図上に浮かぶグラマラスな妊婦にんぷ」にたとえられる。


 また、かつての火山活動によって形成された地形や、北部に1(わん)と3、市を縦へとつらぬく長大な河川など、豊かな自然にもめぐまれていた。



 妊婦の腹部にあたる、りんげつ町。


 拡大して見ると、住宅立ち並ぶベッドタウンの様相ようそうていしていることがわかる。


 ところがショッピングモールといった大型商業施設が見当たらない。


 なぜなら、厘月りんげつ町には歴史ある巨大な屋根付き商店街(アーケードがい)「みもみじ商店街」が存在するためだ。


 住民は日々の買い物に限らず、いこいのために商店街をおとずれる。

 大路おおじはいつでも人でにぎわっていた。



「トリニティいぃぃーッ!」



 男の野太のぶとい大声が、人混みの喧騒けんそうを切りさいてひびきわたる。


 声を聞いた通行人は何事だろうかと興味をもって、見物人けんぶつにんとなり近づいた。


 見物人たちが声のした場所へ着くと、大路のわきでささやかなステージがもよおされている。


 ステージとは、広さ3じょうほどの台座とまくの代わりに病院のカーテンが取り付けられた、手作り感満載(まんさい)のしろものだ。


 そこからシャーッ! と音を立て、ようやく主役が登場した。



「俺の名は『商店戦士しょうてんせんし()()()()()』ッ、みもみじ商店街の平和を守る正義のヒーロー!」



 主役は口上こうじょうに目新しさもない、ご当地ヒーローといった風情ふぜいだ。


 みもみじ商店街のトレードマークである鶏足もみじ鶏冠とさか肉垂にくすいをあしらったマスクは色(あざ)やかな反面、グロテスクにも映る。



「ある日、町の空に出現した宇宙船から、人間をおそうバケモノが降ってきた! 俺は戦った。けど、なんとバケモノをあやつっていた連中は俺とうり二つの姿をしていたんだッ!」


(なんか思ったより壮大なストーリじゃん……)



 見物人がポカンとして見ていると、再びシャーッ! とカーテンを開け、主役のトリニティと色違いの衣裳アクタースーツを着た怪人が登場する。



「トリニティ? ふざけた名だ。ワレワレは起源をともにする()()()()()()


「俺とお前が、同類だってッ?」


「さあ、この惑星ほしの文明と生命体を資源とし王へささげるため、手を結ぼうではないか」


「そ、そんなッ! 俺はこの町で育って……けど、俺に親はいない、人間と姿かたちも違う! くそッ、俺はどうしたら……」



 苦悩を演じる主役・トリニティ。

 すると、ステージそでのスピーカーから怪獣の絶叫が鳴り出す。3たびシャーッ! と、二足歩行の怪獣が登場する。



「グオオオぅ!」



 怪獣はスピーカーボイスで鳴き、主役・トリニティに攻撃を繰り出す。


 特撮映画のそれではなくヒーローショーにおける殺陣たてのものだ。


 トリニティは葛藤かっとうのため怪獣の攻撃を防ぐばかりとなり、一方的で不利な戦いをしいられる。


 しばらくして、サクラの男が「がんばれトリニティいぃッ!」と声を上げる。

 声援はためらいのない大声によって、なく続く。


 やがてステージは通行人の数組、親子から子どもを引き込んでみせた。


 子どもは目を輝かせ、背が高い衣裳アクタースーツの男が「うっ!」「あっ!」とうめき、いかめしい怪獣から攻撃を受けているシーンに釘付けとなる。



「がんばえー!」



 感極かんきわまり子どもが叫んだ。何度も何度も。


 声が呼び水となってさらに通行人を見物人へと変えていった。

 サクラの男がまた叫ぶ。

 その声援に連なり、ステージ上はいっせいに山場を迎える。



「そうだッッ! 俺はウコッケイ人なんかじゃない。どんな生まれだろうと、俺を育ててくれた商店街の人たちが、俺の起源ッ! みんなのために俺は戦うんだッ!」



 苦悩から覚めた主役・トリニティが雄叫びを上げ、ステージ外一円(いちえん)を指さす。



「いくぞ!」



 力みなぎる合図! 

 怪獣への反撃を開始し、防戦一方の局面をくつがえす。


 トリニティの猛攻に、怪獣が大きくひるんだ。

 後方でトリニティそっくりの怪人があわてふためく。



「待て! ワレワレは王の名のもとに、人間との共生を望んでいるっ。無益むえきな戦いはやめてッ」


「うるせえ! 食らえッ、必殺・厘月りんげつ隕石いんせきストライぃぃぃぃクぅッ!」



 トリニティはその場で垂直ジャンプからキックのポージングを決める。


 ドガビシャア! 

 けたたましい効果音が、スピーカーから放たれる。

 怪獣と見物人の鼓膜こまくにすさまじいダメージが及ぶ。



「――お母さん! 隕石いんせきだよ!」


「そうねえ、カッコイイわねえ」



 ステージを人混みの外からながめていた親子。

 母親は、手をつないだ息子の興奮ぎみな評価がトリニティの必殺技に対するものと思い、あいづちを打った。



「違うよっ、お空にインセキッ!」



 今度、男の子は母親の頭の上を指さしながらうったえる。


 母親はそれにしたがい、空をあおぐ。

 ステージの見物人の何人かも男の子につられた。



 商店街の屋根を外れた青空に、()()()が流れていた。

 太陽の光とまったく別の、はげしく点滅する光だ。

 燃えているようにも見えた。



 突然あらわれた光が、本物の隕石であるのか――確かめる手段はないが、その場に居合わせた民衆の関心はことごとく光のとりことなる。


 まるで、トリニティの見せ場たる必殺技が、怪獣だけではなく見物人すらもステージから消し去ってしまったように。



 いつの間にか『商店戦士トリニティ』のショーは終了し、ステージも跡形あとかたなく消えていた。


 翌朝、地元新聞によって、ナゾの光をめぐる()()()に近しい記事がなされた。


 商店街の風景と、光を見ようとできた人だかりの写真も掲載されたものの、その中にトリニティの姿はなかった。

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