表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第1章 VS.アルウゥス 双成町・第二みもみじ商店街編
17/45

第16話  雌雄決意

 11月を迎えた。


 トリニティは、それまでに2体、つきはじめに1体――合計3体の後継生物こうけいせいぶつ殺害さつがい

 いずれもコミュニケーションを取る時間も与えず、発見しだいころした。



 3体目、齧歯げっし目ビーバー科ビーバー属。

 さしずめ()()()()由来の後継生物を、打倒して数日の、とある夕方。


 トリニティの食卓には毎回、ビーバーのジビエくさい肉料理が上り、彼もそろそろ食事をとることにうんざりしてきた。



「――アルウゥス、どうしてるかな」


「急に、どうした、の?」



 トリニティと向き合って食卓につく、赤褐あかちゃ色の肌をしたセーメンティスはいぶかしむ顔でたずねる。


 食が進まないトリニティに対して、セーメンティスは料理をつぎつぎ口へ運んだ。


 ビーバーのカレーいため。

 セーメンティスが悪食あくじきであるだけで、市販の香辛料こうしんりょう程度でジビエ肉がどうにかなっているはずはなかった。


 トリニティは皿2分目にしてすでに食器を置いている。



「ここ最近、町に出てくる後継生物が多い気がする。俺が遭遇そうぐうしただけで、5体……人目ひとめがない場所も考えると、もっといるはずだろ。何か知ってるんじゃないか?」


「特別なことは、ない。マ・ラが、ども、作ってるだけ」


勘違かんちがいするなよ? 5体って言ったのにはセーメンティス(お前)も当然入ってる」



 トリニティの容赦ようしゃない言葉を聞いて、セーメンティスは口をつぐむ。



「それに、万が一マ・ラに目的ってのがあって、セーメンティスが知らないとしても……1つだけ、お前が()()()()()()()ことがあるだろ」



 トリニティはじれったい言い方で牽制けんせいする。


 これまで、散々(さんざん)はぐらかされてきたゆえの、強調だ。



「お前たちの行動に、大学からぬすんだ化石骨かせきこつは関係してるのか?」



 彼のその質問を聞き、食事の手を止めるセーメンティス。


 顔に仏頂面ぶっちょうづらを貼りつける。



「……本当に、わからない。でもセーは、マ・ラと約束して、『自由』になった。あのホネを、手に入れたら、ゲノム、()()()()。だから、今のセーは、『自由』」


「それは、要するにマ・ラの目的のため手伝いはしたが、目的の詳細は知らないって意味か?」



 トリニティが簡単に言い換えて問い直す。

 セーメンティスはおずおず首肯しゅこうする。



「なんで、お前は『自由』になりたかったんだ。『自由』ってのは、家族を作ることと真反対の望みだろ?」


「反対じゃない! 『自由』、だから、家族になれる。『自由』じゃ、なかったら、ひとりぼっち……」



 いっとき感情的になったセーメンティスの声が、最後には消え入る。


 トリニティは思い返す。


 巨大バエのマジモスから記憶を流し込まれた際、1つ目に見た光景を。



(アルウゥスは人体じんたい実験にあっていた。なら、セーメンティスも当然、そうか。いや……こいつの力を考えたら、もっと……)



 それより先の考察は、妄想のいきに踏み入ってしまうため、トリニティは思いとどまる。


 セーメンティスの主張が、彼自身の経験に根差していることは明白だった。



「セーメンティス、その『自由』は、『好きにする』ってのと、ホントに一緒か?」



 だからこそ、トリニティは問い直す。


 今、セーメンティスの行動原理の根底こんていにあるものが、願望か、過去への清算せいさんか、と。



「わからない。わからない! 気持ちは、遺伝子じゃない。セーは、あやつれない。いらないもの!」


「そうか……けど俺にはわかる、少しだけな。俺も家族が欲しかった。ガキみたいだけどさ……セーメンティスに『家族になって』って言われて、ちょっと嬉しかった」


「トリニティは、ひとりぼっちじゃない」


「ひとりぼっちだよ。俺は親もいない、()()()だからな」



 マスクをかぶったままトリニティが打ち明ける。


 一度、彼のあゆりを拒もうとしたセーメンティスは、思いもよらなかった告白に息をのんだ。



「すて、ご?」



 ――セーメンティスは踏み込んでたずねなかったが。


 トリニティの告白は、彼がふんした『商店戦士トリニティ』の設定などではない。

 まごうことなき「彼自身」に起こった事実だった。



「商店街はさ、こんな得体えたいの知れない捨て子を拾って、誰となくおやわりになって、育ててくれた。だから俺はここまでやって来れた。……それでも、ひとりぼっちではあった。それで、俺は()()()()()()()()と思ったんだ」


「意味が、わからない」


「ヒーローってのは、誰もへだてなく守らなきゃいけない。ひとり、って『自由』を捨てることにもなる。けど、それは『みんなと家族』になるってことと、同じなんだよ」


「そんなこと、セーは、思いつかない……求めてくれる人、家族って、思ってた」


「一緒だろ。俺はトリニティを、お前はマジカルパウアーを、求める人へしめし続ける。俺にとってそいつがヒーローで、()()()()()()()()()()()()()()! それで良くないか?」



 トリニティは底抜そこぬけに明るい声で、セーメンティスへ語りかける。



「……ごめん。セーは、まだ、考えてる。わからない」


「別にいいよ。好きにすればいい。『自由』なんだろ、セーは?」


「セーの、真似しない、で!」



 意趣いしゅがえしのようにトリニティが言うと、セーメンティスは不満げに返事する。


 けれども険悪けんあくさはまったくない。


 そのとき、2人の間にはきずなと呼ぶべき、心の通路が生まれていた。


 絆が、「家族になったあかし」なのかはわからかったが。



「あーあ。結局、化石骨かせきこつについてはわからずじまいか」


「でも、戦い続けていれば、わかる。いつか」



 セーメンティスの根拠もないなぐさめ。


 トリニティははなを鳴らして笑う。


 食後、セーメンティスは「最後の()()()」としょうする注射器を取り出す。


 これまでのものと形状が異なり、容器内部は見えない構造で、はりもやや太い。



「これ注射したら、アルウゥスのカサブタ、マジカルパウアーに完全なじむ。セーが、ちから使っても細胞死なない」


「ああ。わかった」



 うたがう余地なく、トリニティは上着をまくり上げ、注射器の針を受け入れる。


 そして、腹部のアルウゥスのカサブタ――今は、元の色とセーメンティスの体色とが混ざり合っている――へ、針が入った。


 トリニティの筋肉が強張こわばる。

 また、清栗きよくり駅の戦いと同様に、腹部へ強い刺激が走る。



「トリニティ。セーの、家族になってくれて、ありがと」



 セーメンティスがたどたどしく礼を言う。


 何事かと、トリニティは落ち着かない気持ちになる。

 すると、トリニティの鶏冠とさかにとあるアイディアがひらめいた。



「……前に、お前らの性別がどうのってはなししたよな? 思いついた。約束しろ、セーメンティス! 俺が、全部の後継生物をかたづけたら、お前は()()()()()!」



 セーメンティス以外の、一般人が聞けば関わり合いを断とうとされる発言を、堂々(どうどう)と口にするトリニティ。


 地球単位の常識もすこし持ち合わせたセーメンティスも、思わず失笑する。



「全部……セーも、後継生物」


「いいや! マジカルパウアーが使えなくなれば、お前はただの『フツーの女の子』になる。そうすりゃ、俺はお前を何があっても守る。家族としてな」


「それまでは、家族じゃない? セーの手、とったのに」



 トリニティの提案は、窮地きゅうちすくったセーメンティスの願いを反故ほごにするものでしかなかった。


 当然、彼は理解している。


 その上で――反感を買うおそれがあるとしても、伝えるべきだと判断したのだ。



「悪い。……でも、()()だ! 家族になるまで期限付きの、だ。俺は……お前と、家族になりたいと思ってる! だから、頼む!」


「……わかった」



 セーメンティスは不満を顔ににじませながらも、最後は言葉を了承りょうしょうした。


 交渉は円満解決と言えずとも、穏当おんとうに済んだ。


 とはいえ、やりとりを終えたトリニティは自身の行いが、ドラマにありがちな結婚けっこん詐欺さぎの手口のようだと気づき、ふかく反省していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ