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3人で

「それじゃあ委員会を割り振っていくが、委員会の活動そのものは殆どないから、私の方で決めて行ってもいいか?」

「「「はーい」」」


 6時間目。今日の最後の授業は、ホームルームであり担任の相川先生による委員会決めが行われていた。去年から分かっていることで、高校の委員会はあまりすることがない。生徒会になると変わってくるかもしれないが、活動はあったとしても週に1回30分程度。

 ということもあり、どこの委員会に入ったとしても特に問題はない。


 (ただ1つ挙げるなら、それは誰とどの委員会に割り振られるか)


 1年の頃は、同じように根暗な男子と流れで組んだことで何も無く委員会の時間は過ぎていくだけだった。

 相川先生を見れば、次々に割り振ってはいるが生徒達の反応からして相性の良い組み合わせを中心にしているのが分かる。


 (だったら間違いなく、俺のような奴には気を遣ってくれるよな)


 安心とはいかずとも、自分と正反対のような奴とは組まされることはないだろうと心の中で思う。

 

「そしたら次は美化委員だが、ここだけ3人編成になる。理由は分かってるとは思うが、この学校は上履きがないからな。土足だからこそより衛生的に綺麗な状態を保つためにも、ここに人数を費やしている」


 その説明は1年前にもされているため、特に反応を示す者はいない。


「う〜ん……誰にしようか」


 先程までとは打って変わり、クラスを見回しながら何やら考え始める相川。そして、3人の生徒に目配せを送り口を再び開き始める。


 (ガッツリ目が合ったのは気のせいか。まぁ美化委員でも何でも良いんだけど)


 と、思っていると

 


「橋上と結城。2人にお願いしても良いか?」

「良いよ〜」


 橋上さんは2つ返事で、結城さんは反応なし。相川先生はそれを肯定と受け取った。

 この委員会決め。重要なのは委員会では無く、誰と組まされるか。


 (え、てことは……)

 

 相川先生の目が俺を見た後、彼女の口角が僅かに上がったのを俺は幻覚だと疑いたかった。


 (昼休みの感じからして、結城さんて人は間違いなく不良。周りの反応は正にそうだった……怖。そんな彼女とおそらく話していたであろう橋上さん。彼女は周りとも仲は良いみたいだが、新学期初日から今日の昼休みといい結城さんを気にかけている様子がある……怖)


 でもどうしようもない。ハァ、とため息を漏らしそうになりながら、あと1人の結果が誰よりも先に辿り着いてしまった俺は、落胆する気持ちを心の奥底に隠しつつ受け入れることを決める。


「あと1人は鳴海(なるみ)、お前だ」


 分かっていたことであるため、何も驚きはないが相川先生は俺の顔を真剣な表情で捉えながらそう言った。


「はい」

「頼んだぞ…」


 短く答えた後、相川先生は数秒前とは異なり温かさのある眼差しを向けて来た。俺にはそれが、期待なのか或いは信頼かどちらにしても見逃すことは出来なかった。

 まさか、有名な2人と組まさられることになるとは思っていなかったが。


「鳴海って誰?初めて聞いた、知ってる?」

「私も知らないけど……あっ、あの人じゃない?!結城さんの前に座ってるあの男子」

「あー、あいつが。あんな奴いたっけ?初めて見たわ」

「私も全然気にしてなかった。先生の視線があっちの方向いてたから分かったけど」

「うちも初めて見た感じ。あんな人いたんだ」

「そうだね。私もそう思う」

「………え?何それ?どういうこと?」

「「……別に」」

「いや何だよ。教えろよ」


 相川先生が、俺に話しかけたタイミングで他のクラスメイトから何やら物珍しそうな視線を向けられ、コソコソ話をされているのが見らずとも分かったが、だらかと言ってこちらから何かを言ったりはしない。


「じゃあ、次の委員会はーーー」


 そこからは、序盤のようにスムーズに残っている生徒と委員会を割り振っていった。全員分の委員会が決まり程なくしてホームルームの時間は終わりを迎えた。



 

水季(みずき)。これを書いたら放課後、私の所に持って来てくれ。体育職員室にいるから」


 ショルダーバッグに荷物を入れようと、帰り支度のため落としていた視線だったが、突如下の名前を呼ばれたことで視線と共に顔もその方向へと向ける。

 1枚のプリントを渡すため、わざわざ教卓から俺の席まで近寄って来た相川先生がいた。

 美化委員会と書かれた文字の下に、3人分の名前欄らしき空白があるのが渡されたプリントの内容。

 他の生徒達はホームルームの時におそらく書いていたが、相川先生がこちらに来なかったため、橋上さんにでも渡したのかと思ったがどうやら違ったらしい。

 これは、俺が勝手に残りの2人の分も名前を書けば良いと思ったがわざわざここまでするということは、何かしらの狙いがあるのかもしれない。


「分かりました」


 俺が2つ返事で承諾すると、少し驚いたような表情を相川先生は見せた。

 からの、関心したように


「頭がいい奴はやっぱり違うな。まぁ、言葉足らずなところは許してくれよ」

「俺別に成績良くないんだけど……」


 ハハハッそうだったな、と言葉を残し相川先生は再び機嫌良さそうに教卓へと戻っていった。


「今日は華金だからって羽伸ばし過ぎるなよー」


 その言葉を最後に、生徒達は放課後へと身も心も注いでいく。


「なんかあの人、所々親父臭いな。まだ20代だろ…しかも女性だし」


 それが、俺の相川先生に対する現在の印象だった。


 

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