Vの絶望
あれは、私がまだトムと呼ばれていたころ、H魔法学校での生活は退屈で、つまらないものだった。
いつものように授業をさぼって森へ散歩に行くと、一匹の美しい子蛇と出会った。
その頃の私は自分の魔力をより強化する方法を模索しており、毒蛇を集め毒を取り、独自の方法で毒薬を作り、それを自分、時には他人に試していた。
多数の毒蛇を収集したが、その美しい子蛇は特別だった。
彼女をNと名付けた。
Nは私の言葉を理解し、話しかけると、はじめは返事をするときに舌をちょろちょろと出したが、すぐに念話を覚え頭に言葉を送り込んでくるようになった。
彼女のおかげで私は両親がいない寂しさを忘れ、孤児院時代の不幸な境遇を忘れることができた。
彼女を愛し、彼女が私に答えてくれることが唯一の安らぎだった。
同級生は皆、低能か優等生ぶった偽善者だったので対等に話せるのはNだけだった。
私にはもともと人を惹きつける魅力があり、表面上は成績優秀な模範生を演じていたこともあって、父親譲りの端正な容姿と不幸な境遇、決して驕らない謙虚な態度により、教授陣や同級生から絶対的な信頼と同情を集めた。
この頃「分霊箱」の存在を知り、Nを分霊箱にしようと思った。
彼女に私の魂をそそぎこみ、一体化する作業はとても心地よかった。
これで私の本体が滅びても復活できるのだ。
他にもいくつかの分霊箱を作ったが、Nはやはり特別だった。
その後の私の数々の輝かしい功績は数冊の書籍になっているので皆が知るところであるが、私を真の絶望から死に至らしめたものはやはりあのH.P であった。
H.Pとその仲間たちは事もあろうに、私のNを攻撃したのだ。
私の魔力は史上最強であることは周知の事実だが、その上、私の崇拝者たちは頼もしい味方となって奴らと戦った。
その揚げ句、奴らは正々堂々と魔力で対峙することをやめ、卑怯にも、私の愛する分身、魂の受け皿であるNを攻撃したのだ。
私が唯一愛情を注いだ存在。
人は誰でも最愛のものを亡くした悲しみを知っているだろう。
自分のそれまでの人生の喜びも悲しみも共に分かち合い、傍にいることが必然となった存在。
そんなパートナーを持ったことがある人々はそれを失う絶望を思い出してほしい。
自分の半身を引き裂かれ、殺された苦痛を。
H.P達は、私に対して残虐だの極悪だのというが、彼らも同じことをしたのだ。
私はNを惨殺されたときから、絶望し、H.P達に対抗する気力を失った。
この世に生きる意味を失ったからだ。
思えば、生後すぐ両親からも捨てられ、就職の際も志願した「闇の魔術に対する防衛術」の教授職もA.Dによって拒まれた。
私が世の中に生きる意味をみつけようとするたび拒まれ続けて、ついに見つけた仲間たちと人生の目標をH.PとA.Dとその仲間たちは、否定し排除しようとした。
まるで、私がこの世にいること自体が間違っているといわんばかりに。
だがそれも、もういいだろう。
Nのいないこの世界に何の未練もない。
H.Pは自分の魔力が私に打ち勝ったと思っているが、私は愛するものを失った悲しみでもう立ち上がれないのだ。
彼らは私を『史上最も邪悪な魔法使い』と呼ぶが、私がこうなった責任が彼らにないだろうか?
N以外に、私に手を差し伸べたものがいただろうか?
私に愛情を教えてくれたものがいただろうか?
そして、奴らはこの戦いに勝った。
奴らの作戦は、私が奴らに対して行ったものと同じく、卑怯な方法だった。
そして、奴らには愛してくれる存在が多数あったが、私を愛してくれたのはNだけだった。
私の邪悪な本性を見ても、愛してくれたのは彼女だけだった。
彼女を失った今、私はただ、死、という安らぎの中で眠りたい。
二次創作は世界観や登場人物の肉付けなど面白さの半分以上を一次創作に依存しているから『手抜きですよね?』という意味で禁じられていると思う。
でも、ハリーポッターを見て思ったことをこんな感じで表現したら二次創作ですかね?
「ダメだよ!アウトだよ!」と教えていただけましたら削除します。