牧場実習最終日ですわね
8/9 17:00過ぎ
今日は、余った素材の玉ねぎとジョールベーコン、そして、先人が残したクンチ飯の物なるものを合わせて丼の完成である。クンチとは、異世界特有の言語であり、力、すなわち根気やスタミナを意味するようだ。
最終日前日に、根気やスタミナを補充したところで何だというのだが、まあ、上手ければ良し。
それにしても、レトルトタイプの包装物が、賞味期限2023/08までであったのは、かなり前からこの冷蔵庫内にあったという証拠であろう。これは、これ以上後世に残しても意義がないので、消費しておいていいだろう。
それにしても、スタミナ丼系統にはやはり…。遺物には遺物を合わせるのがベスト。これはどこの世界でも常識である。
さて、風呂に入って自室に戻ろうとすると、宿舎の通路の奥から、私の後ろにある階段へと向かって、謎の四足動物が横切っていった。私は、夜の暗闇に乗じて前方から猪突猛進してくる謎の生物に恐れを抱いたが、すぐに正体が分かった。超危険外来種、野良猫である。それも、子猫。
咄嗟に部屋に戻りスマホを取って、外へと追いかけた。
逃げるなら逃げるがいい、こちらも全力で追いかけるのみよ。
久しぶりに全速力で走ったので、良い運動になった。ウーシを全力で捕縛するのとは、また違った運動形態である。これは、よく眠れそうだ。
8/10 7:00
おはよう。
いよいよ今日は、牧場実習最終日である。
どうやら、最後には食事会があるとの事であるので、より一層労働のしがいがある。この牧場にて飼育されているウーシの肉を食べに行くのが、これまた感慨深い。
さて、今日のタスクは…。の前に、現場へ向かう途中で、異世界特有生物のドラゴンに出会った。電柱を登ろうとしていたその姿は、緑色の下地にしっぽは黒を含んだ縞々模様。なんとも美しい。
そして今日のタスクは、飼料の箒掛けと混ぜ、そして一部のウーシの治療と、粉かけなどなど。
初日に一通り見た業務の、完全版であった。
やはり、勇モーションタグを取り付けるためのウーシの捕縛が、一番の疲労要素であったが、それでも、普段の業務も非常に疲れる。いつの間にやら時間が過ぎているのが、業務の難易度を物語っている。
本当に、勇モーションタグの取り付けが、一番の…。ぴえ…。
ウーシの治療に際して、一部のウーシを捕縛することがあったが、6頭中3頭はなんとか投げ縄で捕縛することができた。この4日間ウーシの捕縛を連続してやってきたために、少しは投げ縄の技能値成長があったようである。
やはり、ミスと継続は、成功を実らせるというものなのである。まあ、そのミスと継続による成長は慣れによるものであるため、すべての業務を手慣れたものとするには、数年を要するのが常である。
英雄と呼ばれるまでには、それ相応の研鑽が必ず必要なのだ。
12:00頃
時は昼休憩。今日が牧場自習最後の昼ご飯となるのであろうことが、少し寂しい。
高校野球もこのような場でしか見ることは無く、普段はあまりテレビは見ないので、ニュースやSNSで最終結果を見るまでは、「おっ この高校はどうなるのかな。」「お~ いい球投げたなぁ」「あ~ 抜けたぁ やってもうたなぁ」と一喜一憂することは無くなることであろう。
特に一人暮らしとなると、食事中に話す人もいないので、静かなこと。だが、それがあってこそ、誰かと食べる食事がより一層の楽しみとなるのも言うまでもない。
それもひっくるめて、よい1週間であった。
午後は、治療を推し進め、飼料を混ぜ混ぜし粉をかけかけした。
治療には、昨日同様にビタミン剤を飲ませて、下痢をしていたものがいたので、その個体に下痢止めを飲ませた。
そして昨日書くのを完全に忘れていたが、外部寄生虫駆除薬を背中や毛が剥げている部分にかけた。シラミが付いてかゆみを引き起こしているらしい。確かに、飼料をかき混ぜたりしているときにウーシの様子を見ると、鉄格子に体をこすりつけたり、角や顔で背中部分をつついたりしていた個体がいたが、これはそういうことのなのである。
寝転がっていたら別固体が上から糞をしてくるような世界であるために、仕方のないこと100%だ。
今回も注射は、慣れている人に任せた方がいいので、英雄にお任せした。皮下注射か筋肉注射か、判別は出来なかったが、表層に打っていたのは間違いない。
今回の注射は、ビタミンの注射である。それに加えて、亜鉛不足らしいので、亜鉛を摂取できる粉末を水に溶かしたものを口に流し込んだ。私の過去に飼っていたカメレオンは、水を上げる際に口に流し込みすぎて、気管へと入ってしまっていたためにむせていたが、その記憶がよぎってしまい、少しずつ流し込むようにしていたら時間がかかってしまった。
治療を終え、飼料のかき混ぜや粉をかけ、今日の、そして牧場実習最後の業務を終えた。
終わったら早速風呂に入る。
今日は夕食を作る必要が無かったから、18時には風呂に入り終わった。
これより、食事会へと向かうところである。それはまた、次のお話で…。
次の話が最後になるであろう。
それでは、おやすみ。
異世界特有のドラゴン:オキナワキノボリトカゲ