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エルベ

「あー……着いたー」


 エルベに着くと、アズールは薬鞄を置いて肩と腕をほぐす。


「ごめんね、私の荷物なのに」

「いや、別に、お金払ってもらってんだから荷物くらい持つけど」

「平然と持てよ」

「……カイさんに言われるならまだしも王子様に言われたくない」


 ロキの荷が一番軽そうだ。


「ロキ様のおかげで軽装で旅ができているようなものだから」

「確かに村との往復くらいならまだしも長い旅する恰好じゃないですね。言っちゃあれですけど、全然馴染んでないですよ、全員。普通なの俺だけ」

「カイが貴族然としているのが悪い。だいたいもっと安物の剣を持ってこいよ」

「……ロキ様に言われたくないんですが。剣はなるべくローブの下に隠してるじゃないですか」

「徹底して隠せ」

「ではまず所かまわず魔法を使おうとするのをおやめください」

「私普通だと思うんだけど」

「若い女が旅してるってだけで目立つだろ」

「……それもうどうしようもない」


「まあ別に目立ってもいいか。ヘルシリアには許可を取っているわけだしな。そもそも友好国だ」

「目立たないに越したことはないです」


 街に入って被ったフードを取っ払おうとしたらカイに深く被り直させられる。


「俺の顔知ってるやつなんていないだろ。隠してる方が目立つ」


 だからそこまで徹底して隠しているわけではない。

 森の中では普通に外していた。

 もし他の旅人とばったりということになっていても慌てて被ったりはしなかっただろう。


「そうですね。そもそもロキ様の顔を知っているような人は俺の顔も知っています」

「……ではなぜ俺だけ」

「顔を覚えられると面倒だからですよ。魔力がとても高い凄腕の魔法使いなんてそういません。ましてやヘルシリアなら尚更。何よりロキ様のその顔が一番めんどくさい」


 カイは顔をしかめて感情を込めて言う。


「……お前は俺の顔にいったい何の怨みがあるんだ」

「一つ願っていいなら平凡な容姿になっていただきたい」


「さぞかし苦労したんだろうな」

「そりゃこの顔だから、苦労もするだろ」


「……なぜ俺ではなくカイが同情されている。そもそもなぜ探されることが前提なんだ。俺は別に誰かに追われているなどということもなくただ普通に旅をしているだけだ」

「どうしたって今後あなた方が目立つことがわかりきっているからですよ」


 あれ、自分も?と思ったところでサクラはカイにフードを被せられる。

 おとなしく被っておくことにした。


「言っておくが現状探されているのはお前だからな」


 ロキのその言葉にサクラとアズールはカイを見る。


「……きっと炎犬(フラーモ)を倒した“魔法使い”を探してくれていますよ。それにロキ様の方がわかりやすくやってしまってます」

「あれは医者の指示でしたんだ。俺に言うな」


「ところでサクラさん、普通に手当てしただけですよね? 治癒魔法は使っていませんよね?」


 そう聞かれ、サクラは数秒考える。


「た、たぶん」


 自分では使ってはいないつもりではある。


「……明日の朝火傷が綺麗に治っているかもしれない」

「……まさか」

「……どうするんですか三人そろって最初から」


「もう三人そろってフード被っておいてください」


 アズールはカイにフードを被せる。


「……さすがに不審だ」


 カイはすぐ取ってしまう。


「わかったよおとなしくしていればいいんだろ。後ろに引っ込んでるご主人様してやるよ。徹底してやるからな」

「ありがとうございます」


 そこまでは……と言ってほしいのにそう言ってしまうカイに、サクラとアズールは振り回されているようで案外軽くあしらっているのかもしれないと思えてきた。


「じゃあ俺たちは街を見て回るから。ギルドでいいか?」


 言葉はカイに向けられていたが、サクラがリュックにぶら下げていた植物やカゴに摘んでいたものをまとめてアズールが渡される。


「全然引っ込んでないんですが、わかりました。宿は取っておきます。それでは後でギルドで」


 よくわからないがおそらく次の街に行くために必要なものの買い足しをするのはカイの方だろうなと思ったので荷物持ちとしてアズールはカイの方についていく。

 街の入り口のところで二人ずつ二手に分かれた。


「てかこんな植物持ち歩いてたら目立ちますよ」

「採取者だと思われていいかもしれない」

「ああ、なるほど」

「そもそも採取者の振りをしているのが一番自然だ。お金の心配をしないただの旅をしている成人前後の男女四人なんて不自然だろう。お金の心配がないような人間が旅なんてそれだけで不自然だ」

「なんかすげぇ大切な目的持って旅してそう」

「実際王子がいるわけだからな」

「なのに本当にただの旅っていう」


「何か目的は生まれそうか?」


 アズールは顔を上げて街の様子を見る。


「世界って広いんだなって」

「ここはまだ来たことがある街だろう」

「もうすでに知らなかった世界をたくさん知りました」


「お二人の旅はただの楽しい旅で終わることを祈ってるしそうあってもらわなければ困るが、お前もただの楽しい旅で終わるといいな」


 そんなことを言うカイにアズールは微妙な顔で見る。


「……怖いこと言わないでくださいよ」

「少し魔法が使えるようになって、知識を得て、獣やごろつき程度は一人で対処できるようになる。それがゴールの旅ならきっとただの楽しかった旅だ」

「……荷物持ちで終わりそうですけど」

「せめて荷物を任せられる荷物持ちになってくれ」

「……確かに俺一人残されたら盗賊どころかその辺の人にも盗まれますね」


 荷物持ちくらいはしますよと思っていたら、荷物持ちもまともにできていなかったらしく、アズールはさすがに魔法や剣を教えてもらって勉強するべきだろうかという気持ちになってきた。


 あれ、そういえば次の街までのはずだよな……と、まるでこの先も一緒に行くかのような空気感で三人がいることに、自分も自然とそうなっていたことに今気付く。


 *


「楽しそうだな」


 きょろきょろと周りを見ているサクラの表情に、ロキは自然とその言葉が出る。

 サクラは笑顔でロキの方を向く。


「街に来るのは初めてなので。一気に都会になりますね」

「俺からすると何もない小さな街だが」


 改めて周囲を見渡してからそう言う。


「何言ってるんですか、電灯があります」

「何かあるの基準が低すぎる」

「時代がぐちゃぐちゃに交ざってる感じがして楽しいです」

「その楽しみ方ができるのはこの世界でいったい何人いるのか」


 ロキからすれば当然徐々に発展してきた形が今だ。

 何も交ざってなどいない。

 都会では進んでいて田舎ではまだ全然、と思うところはあるが、だからといって時代が交ざっているというような感覚にはならない。


「あ、もしかしてお風呂があるのでは」

「それはまあ、あるんじゃないか?」

「一つ夢が叶います」

「それを夢という括りに入れたらすごいことになりそうだが」

「そうですね、百個くらい夢がありそうです」

「自分で把握できてないじゃないか」


 自分の夢なのに百個くらいありそうという変な言い方だ。


「前世の夢もありますからね。魔法が使えるようになってそれも一つ叶いました」

「そっち側からのもあるのか」

「あ、王子様と知り合ったのも」

「それ今適当に入れただろ」

「ちょっといつか白馬に乗ってみてください。私それ眺めるので」

「……なんだそれ」

「前世の王子様像です。白馬に乗った王子様」

「俺が王宮で乗っていたのは黒毛なんだが」

「……夢を壊されました」

「……それはすまなかった」


 正直サクラに白馬に乗った王子様に夢を見た少女時代などはなかったが。


「まあ黒髪黒眼の時点で」

「お前人が気にしていることを」

「金髪碧眼のイメージが」

「それはそれで平凡だろ」

「私が住んでいた地域には王子様という存在はなくてそういう色を持った人もいなかったんです。だから王子様とは遠い地域の存在、その地域の人は金髪で碧眼……実際はそれ以外の色の人もいますが、まあ、イメージとして。だから王子様は金髪碧眼でイメージされるんです」

「この世界での砂漠の辺りの地域の人は肌の色が褐色というイメージを持っているようなものか」

「あんまり地域ごとみたいなの強くないですよね? 言語もヘルシリアとアマルテアでまったく一緒ですし」

「昔に交ざり合ってるからな。言語も起源はいろいろあるようだが。だから同じ意味を差す言葉が複数あったりする」

「雨とレインみたいに?」

「おそらく元は別の言語だったのだと思うが、今となってはぐちゃぐちゃに交ざったそれが一つの言語だ」


 外国語という概念がないのだと思うとサクラは今世は別に学校に通うわけでもないのになんだか少しホッとする。

 英語は苦手だった。

 ということはどの本も翻訳という作業は必要ないのかとそこで気付く。

 ホッとするのはここだった。


「そういえば海外旅行したことありません。夢の一つにしておこう」

「海外旅行?」

「前世は島国だったんです。だから他の国のことを海外って言って」


 島国と言ったらすぐ海外に察した顔をした。


「つまり俺は今“海外旅行”中か」

「そうですね」

「ではアマルテアに来れば夢が一つ叶うわけだ」

「まあ、そうですね」

「夢と言うからにはもう少し叶えたそうにしろよ」


 あまりに素っ気なかった。


「欲も夢と言い換えると綺麗になりますね」

「言ってしまったな」


「ロキは何か夢はないんですか?」


 言われ、思い出すように少し上を向いて考える。

 今サクラが言ったような些細なもの、叶わなかったらそのときはそれというようなもの、そちらの方が何も浮かばなかった。


「我ながらつまらない人間だな」

「満たされている……わけでもなさそうですよね」

「夢を持つにも、知っていることが前提か」

「確かに、チョコレートを食べたいと思うのはその存在を知っている人だけですしね」

「もうちょっと大きなもので例えろよ」

「この世界にもあります?」

「俺は食べたことがある」

「……王子様の口にしか入らないようなものだったら私の夢は一つ叶わないんですが」

「お前に限っては問題ないだろ」

「今はただの魔法使いですし」

「よく考えてみろ、お前にただの村人に戻る選択肢があると思うか? 旅が終わったら俺の薬医になるのが自然だ」

「でもアズールが魔法使いになったらあの村は魔法使いがいる村ですし、私がそこで医者をしても」

「治癒魔法使いが一介の魔法使い程度の庇護下で大丈夫なものか。そもそも俺の魔力がなかったらまともに治癒魔法も使えないだろ」

「普通の医者をするんです」

「断言してやる、無理だ」


 その言い切りに不満の表情を向けるが、素知らぬ顔でロキが店に入るのでサクラも後をついて店に入る。


「雑貨屋さんですか?」

「瓶を売っているならここくらいだろう」


 たいして広くない店内、すぐに見つかった目当てのものに、ロキは物をサクラは値札をまず見た。


「……高い」

「旅費はカイが管理しているから俺たちが節約する意味もない。好きに買え」


 子どもにお小遣いを握らせるように大金貨を一枚握らされ、サクラは感覚がおかしくなりそうだ。


 旅費はすべて出すと言うのでサクラは一応というくらいの金貨一枚を持って旅に出たので、今朝のものと合わせて手持ちは今金貨二枚だ。


「金貨を後先考えずに使ってしまっていいんですか??」

「それは俺が個人で持ってきている分だからな」

「好きに使いきっていい用?」

「好きに使いきっていい用」

「カイさんのお財布の中のは好きに使ってはいけない用?」

「あれは好きに使ってはいけない用」


「でもお金持ってるのにロキに奢ってもらうのは」

「旅の間のお金はすべてこちらが出すという約束だろう」

「それはそうですが」

「どれがいいんだ」


 パッと見てすぐにこれというものはあったが、サクラは指を迷わせる。


「一番安いものじゃなくて一番欲しいものを選べよ。俺は遠慮を返されたくて買うんじゃない」


 その言葉に、指を止めてロキを見る。

 サクラは差していた場所から一つ右隣の商品に指を動かす。


「これとこれで迷ってて」


 試験管サイズの長細い小瓶が十本縦に並んで入った革のケースと、二百ミリのペットボトルとちょうど同じくらいのサイズの小瓶が五本セットで木箱に入ったものを指差す。


「これを一つずつ」


 買ってくれそうな客というのはわかるのか、特に大きな声で呼びかけたわけでもないロキのその声で近くにいた店員がすぐに来てそれらを紙袋に入れると笑顔で差し出すので、サクラは大金貨と交換にその紙袋を受け取る。

 誰のお金かわかっているのか、店員はお釣りの金貨八枚と大銀貨二枚をサクラではなくロキの方に渡した。


「ありがとうございます」

「ん」


 紙袋を抱きかかえて笑顔で礼を言ったサクラは、にこにことしたまま店内を改めて見渡す。


「こういうところって見ているだけで楽しいですよね」

「そうか?」


 返事こそあったがどこか適当で、サクラはロキの方を見て、ロキが見ている方を見る。


「どうかしましたか?」


 すでに他の客の方に行っている店員を見ているロキに疑問をこぼす。


「魔法使いだ」


 フード越し、耳元で小声でそう言われ、サクラは目をパチパチとさせて店員を見る。


「その辺にいるものですか?」

「こんな街でもまあ金持ちなら。ギルドに行けば一人二人いるだろうとも思っていたが」

「ヘルシリアって少ないんですよね?」

「ああ。だがお前程度の魔法でも魔法使いではあるからな」

「ああ、魔力を意図的に使ったことがある人、という意味での魔法使いですか」


 すごく魔法が使える人……という意味ではないのならそれはその辺にいるのではとサクラはもう店員から意識が逸れる。


「いくらヘルシリアといえどアズール程度の魔力の者も驚くほどではないだろうしな。単純に魔力の量だけなら店員よりあの子どもの方が」


 店員が袋に入れ損なったものが下に落ちた音に店内にいた全員の視線がそこに向き、店員、母子、サクラとロキの視線を集めたそれはころころと転がってロキの靴に当たって止まる。

 この世界でもその名称かはともかくビー玉のようなものとサクラはまず思って、それがほぼ透明な中模様などではなく薄っすら色が付いているのが見えて、店員の瞳と同じ緑色だったので魔色石であることに気付く。


「あ、申し訳ありません」


 拾おうとしないロキに少し変な間が空いてから、店員がカウンターの向こうから出てきたのでサクラが拾ってそれを差し出す。

 店員はお礼を言って戻ると、落としたそれは横に避けてカゴから新しいものを取るとそれを袋に入れて子どもに渡す。


「あるだけすべて」


 親子だろう女性と男の子との応対を終えた店員にカゴを指差してそんなことを言ったロキに、店員とサクラだけでなく母子も驚いた顔でロキを見た。


「え、全部ですか?」


 店員も同じカゴを指差して思わず確認するが、頷かれたのですぐに袋を出してくる。

 サクラがいたからかそれとも全部買ってくれた客へのサービスか布袋二つに分けて入れると、それを差し出してロキからお金を受け取る。


 二人は笑顔の店員に見送られて店を出た。


「……二十七個」


 店を出たところでざっと半分の十数個が入った袋を渡され、サクラはそれを見てそうこぼす。

 ビー玉のような加工してあるものではなく、それより一回り大きい多少角を丸くしてある程度の透明な石といったそれは一個銀貨一枚だったので全部買ったところでとんでもない金額になったなんてことはまったくないがそれにしてもだ。


「……魔法使い?」


 思わずこぼれてしまったのだろうまだ近くにいた男の子は、ロキとサクラが自分の方を向くとビクッとして母親の後ろに隠れた。


「なぜ魔色石を?」


「あ、子どもたちの間で流行っているみたいで」


 それが子どもに向けての質問だというのはわかっていたが、後ろに隠れてしまったので母親が変わりに答える。


「そういえばヘルシリアでも最近流行りだしたって」


 てっきりアクセサリー的な流行り方かとサクラは思っていたが。


「その子の魔力はとても多い。気を付けた方がいい」

「……え」

「高く売れるということだ」


 魔力が多いと言われても、ただただ困惑といった様子だった母親に、わかりやすくロキが言葉を変えれば、母親は強張った表情になって子どもの手を取ってぎゅっと握った。

 魔法使いだと思ったからか、怪訝に思うよりも忠告と受け取ったようだった。


「流行ってるって、友達と交換したりするの?」


 サクラがしゃがんで目線を合わせて聞けば、男の子は頷く。


「自分のと交換してもらって、たくさん色集めるのが、流行ってる」

「お姉ちゃんとも交換する?」


 じーっと目を見てくるその子にそう言えば、パァっと笑顔になって頷く。

 ピンクはまだ持っていなかったらしい。

 握りしめていた空色の魔色石を受け取ると、サクラは袋から一つ取り出してピンクに染めて渡す。男の子は目を丸くして手の中の魔色石とサクラを何度も見た。


「お姉ちゃんも魔法が使えるの!?」

「え?」


「誰でも魔色石を持てば自然と魔力が溜まって色が染まっていくが、意図的に瞬時に魔力を溜められるのは魔法を学んだことがある人間だけだ」

「あ、なるほど。全然意識してませんでした」


 サクラは納得したが、一瞬で染めたことに対して単純にそれを魔法と捉えただけの男の子はロキの言葉に頭にハテナを飛ばしている。


「……普通は魔色石を使ってそういう基本を覚えるんだが、さすが独学は意味がわからないな」

「それ褒められているんでしょうか」

「相当褒めてる」


 その言葉は嫌味っぽくなく心からのようだったのでサクラはそこは素直に受け取っておいた。


「お姉ちゃん魔法使って見せて!」


 さっきまでのおどおどした様子とは打って変わって、母親の後ろから出てきて懇願される。


「私はまだ見習いだから全然魔法は使えないの。魔法なら師匠に」

「いつ俺が師匠になった」

「ノリが悪いですね」

「俺にノリを求める人間は世界でお前だけだぞ」


「師匠! すごい魔法使い!」


「……魔法使いの忠告だ。不審だろうが、気を付けるに越したことはない」


 きらきらした子どもの目はスルーして、母親の方にそう言う。


「は、はい、ありがとうございます」


「子どもから逃げましたね」

「……苦手なんだよ」


「師匠にも魔色石交換してもらう?」

「ううん、師匠の色はもう持ってるから要らない」


 そこは素っ気なく首を横に振った。

 フードを深く被っていても子どもが見上げた目線では見えたらしい。


「子どもって、素直ですから」

「……すみません」


 母親からも謝られる。


「……要らないと言われたことよりそっちに複雑な気持ちになってくる」

「師匠、私と交換します?」

「お前の首に掛かってるペンダントは誰の魔色石だ」


「それ師匠の?」

「そうだよ」


 指差されたペンダントに、サクラは石を手に持って見せるようにして肯定する。


「師匠と同じ眼の色の友達はそんな色じゃなかった」

「師匠の黒はね、特別な黒なんだよ」

「特別?」

「欲しくなった?」


 笑顔で問えば、その子は頷く。


「悪いが、俺はこいつにしかあげないと決めている」


 サクラの腕を引いて立たせると、もうその場を後にしようとする。

 サクラは振り返って男の子に手を振り、妙にニコニコした母親に会釈する。


「私普通にあげちゃったんですけど」


 腕を離されるとサクラはロキを見て言う。


「まだ完全に戻ってないのに減らすなよ」

「ほんのちょっとですよ」


 ロキはサクラの手の中の魔色石をちらっと見る。


「その空色、黒に変えていいか」

「駄目に決まってるじゃないですか」

「どうせ数日もすれば消える」

「そういう問題じゃありません」


「そのペンダント、隠した方がいいかもな」

「え?」

「光の下で瞳を見たときのように色の違いがわかりやすい」

「あ、確かに」

「……俺たちは誰かに追われてるのか」


 ロキは自分で言ってから、なんで隠さないといけないんだよと自分で思った。


「本当ですよ」

「自由な旅とは」

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