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同郷

「美味いな」


 ちょっと面白そうにナツミカンを食べているロキに、サクラはなんだか変な感覚になってきた。

 王子ってなんだっけという気分だ。

 そういえばハルミカンを一緒に食べようと言っていたのに結局食べなかったことを思い出す。


「王宮では出ませんか?」

「柑橘は料理の横に付いているのと皮が付いてるやつだけだな。なんだかこんなに綺麗に剥かれて出て来るとこちらの方が贅沢品に思える」

「普段は自分で剥くから食べるの面倒ですよ。あ、でも王子様なら剥いてもらえるか……」


「体はもう大丈夫か?」


 お皿を横に避けて、真面目な顔で聞かれる。


「怠いくらいですね」

「それは魔力を使い切ったからだろう」


 サクラは自分の体調不良を魔力を使い切ったことによるものだと思っていたが、その上での昨日の精神的疲労が重なっての熱だったのかもしれないなと、治っても治っていない不調に考えを変える。


「薬を飲んで少し経ってからの後追いでも効果があったみたいです」

「それは治癒魔法使い自身だからなのか、それとも他の人でも同様なのか」

「いろいろ試してみたいことはありますが、こういう検証は簡単にはできませんしね……」

「俺も例外枠だろうしな」

「薬の効果を高めるならその分副作用も強く出るはずな気がするんですが、そこが不思議なんですよね」

「魔法とはそういうものだ。だからお前は薬を上手く作れる人ではなく治癒魔法使いなんだ」

「そう言われると確かにそれでいいような気もしますが」


 話せる相手がいる。

 それがどれほど心に充足を与えるか、サクラは今知った。

 話したいことがたくさんある。

 この時間ではとても話しきれない。


「王子様、あの話はまだ本気ですか?」

「でなければここにいない」


「長雨が明けて夏が来ても王子様が来られなければ、旅の話は忘れようと思っていました」


 前世の梅雨と同じように、この世界でも六月頃に雨が長く降る期間がある。

 ただ梅雨が一ヶ月ほど続き夏の間に挟まっているのに対して、この世界では長雨前までを春、明ければ夏と明確な基準にされている。


「……確かにすぐ戻るとは言ったが、もう少し待ってくれてもいいんじゃないだろうか」


 割とぎりぎりだった。


「王子様は本気に見えました」

「あのときもそう言っただろ」

「でも、信じられなくなるんですよ。王子様だから」

「得体の知れない人間よりは信じやすくはないのか?」

「だって、王子様が自分をまさか、って、どうしても思ってしまうんですよ」

「……それは」


 どうしようもないことだと理解してしまって、何も言えなくなった。


「だから、これからはあなたを信じたいです。一緒に旅をしたいのも、たくさん話したいことがあるのも、王子様だからじゃなくて、あなただから」


 真っ直ぐ見つめられ言われたその言葉にロキは目を見開く。


「……ああ」


 言いたいことはたくさんあるはずなのに、何も出てこなかった。

 

 ただどうしようもない嬉しさのようなものが確かにその瞬間、心を埋めたことだけはわかった。

 

「あの、不敬なら今のうちに言っていただく方が……」

「今更だろ」

「……それには反論できませんが」


 初対面のときは王子様という実感が薄かったからという言い訳は喉元まで出かかったのだが、サクラはそれを飲み込む。


 とりあえず〈王子様〉という呼び方をやめて以前最後にそう呼んでくれたように名前で呼んでほしいとロキは言おうとして、これからはそう呼んでくれる気がしたのでわざわざ言うのはやめておいた。


「魔力の相性がいい者は魂の相性がいいと言ったが、魂において同格だとも言われる。だから俺たちの間でそういうことは気にする必要はない」

「その文化大丈夫ですか?」

「なんせ魔力の相性がいい相手なんて滅多に見つかるものではないから」

「……世界でも十組くらいでしたっけ」


「そうだ治療のお礼を」

「それはもう頂きました」

「お前仮にも王子がセミの抜け殻一つで命の恩人への礼を終えるわけにはいかないだろ。しかもあれはそもそもお前が見つけたものを取ってやっただけに過ぎない」

「これは?」


 木箱の中に戻した髪飾りを指差す。


「これはお金に困ったときに好きに売ってくれ」


 ロキは木箱を横に避ける。


「……王様がくださったものをそんなことしていいんでしょうか」

「これはアマルテア王が治癒魔法使いはうちのものだって言いたいがための道具だ」

「……治癒魔法使いなんて言ったってどのくらいのものか全然わかってないのに」


「俺はそもそも結婚に対して国が慎重になっていたから婚約者などもいなかったんだが、そこに魂の片割れが見つかって、しかもそれが治癒魔法使いと言うから、まあみんな大喜びだ。アマルテア王……父は、たぶん、俺の運命の相手が見つかったことに純粋に喜んでもいる」

「……他国の平民なのにですか?」

「次期国王の第一王子ならまた話も違ったのだとは思うが。平民なのはむしろよかったくらいだ。他国の貴族の方が面倒だった」

「魔力の相性がいいというそれだけのことが、それほどの意味を持つのは少々理解に苦しみます」

「文化の違いだな」

「ロキも大変ですね。でも私にはそんな気はないですし、運命の相手とか言っても別に他の方と結婚してくださって全然構いませんので」

「だから無理なんだよ。運命の相手がいる人間と結婚しようと思う人なんていない」

「……だから諦めないでくださいよ。私まだ諦めてませんからね」

「お前の選択肢は俺で諦めるか結婚を諦めるかの二択だ」

「…………」

「だが俺は別にお前と違って結婚願望はなかったから、そこに関してはお前の自由にしてくれれば。俺に結婚を強いる意思はない。というわけでこれは売ってくれ」


 木箱をもっと遠くに避ける。


「賢者の配偶者が付ける伝統的なものとかなんですか?」

「いやそんなものはない。賢者に男という縛りはないしな。先代は女性だった」

「ところで賢者とは」


 聞き流していたがわかっていなかった。


「魔導士の長だ。騎士団長のように魔導士団長とは言わないのは魔導士が集団で動くことが少ないからだろうな。魔導士の影響力が強いこともあってそれなりの地位ではある」

「へー」

「今は空席で先代は俺の祖父の妹、先代アマルテア王の妹だった。そして自分以外で唯一黒い瞳に氷魔法が使えるアマルテア家の人間だ。過去を遡れば何人もいるがな」

「その方は引退されたんですか?」

「亡くなったよ。とは言っても戦死や病死をしたわけではないから」


 まだ兄の先代アマルテア王が健在であるくらいの年齢なのにと、サクラの表情が曇ったのを見て、ロキはそう付け加える。


「その方が使っていたもの……というわけでもないですよね。新しく見えます」

「そういうわけでもなくて、これは髪飾りだろ?」

「そうですね?」

「男が家族や小さな子ども以外の女性の髪に触れることを許されるというのは、貴族の間ではそういうことを許される関係であることを暗に示している」


「……そういうこと」


 サクラもそれがどういうことかわからないほど子どもではない。

 今も来年には成人しようかという歳だが、前世では二十半ばまで生きている。


「……魔力の相性がいい魔法使い同士ということは魔力を魔色石に溜めて贈り合うというだけでなく、相手が持つ魔色石に魔力を溜める、ということもあるだろう。そうすると魔色石の髪飾りなんて付けさせれば、まあ、自ずと、髪に触れることも」

「…………」


「……なんで俺はプロポーズで用意するようなものを恩人に渡してるんだ?」

「……ロキが疑問持たないでくださいよ」


「俺はちゃんともっとサクラが喜んでくれそうな礼を持ってきたんだ」


 木箱は蓋を締めて遠くに追いやり、黒いジュエリーボックスを出す。


「……私が喜びそうなものですか?」


 アクセサリーは嫌いではないが、高そうな宝石を渡されても正直受け取りづらい。


「ヴァルカンという有名な工芸家がいるんだが、魔色石作家で、たまたま助ける機会があって礼で作ってくれると言うからこれを作ってもらったんだ」


 前回持っていたような長剣は持っていなかった代わりに持っていた短剣を抜いてその刃を見せる。

 鞘にも魔色石だろう飾りは散見されたが、それは一目見てそうだとわかるロキの瞳の色と同じ漆黒の刃だった。


「ロキだからこそですね。他の人だと微妙な剣になってしまいます」


 サクラは自分で想像してピンクの剣は微妙だなあと思った。


「特殊な作りになっていて意図的に一部の魔力だけ使うと王家の紋章が浮き上がる。自然に魔力が抜けたときは全体で薄くなっていくからわからない」

「……高そうですね」

「他に感想はなかったのか」

「今度は王子だとバレなさそうでよかったです」

「今回はちゃんと庶民で通る恰好をしてきた」


 ローブを見せるようにしてそう言う。

 真っ黒の中に多少の模様と飾りが付いたシンプルなそれは確かにサクラの目にも高価なものには見えなかった。

 フードを目深に被っていれば視線は向くかもしれないが、そうでなければただの旅人の恰好だろう。


「それで、ヴァルカンの話だが、その腕は世界一、発想は、まるで異なる世界を見てきたかのようだ……と」


 サクラは目を見開いてロキを見る。


「ただの称賛の言葉だと思っていた。だがお前のことがあったから、いろんな国を旅していると言う彼に、桜の花を見たことがあるかと聞いたんだ」


 サクラは固唾を飲んでロキの次の言葉を待つ。


「ヴァルカンは知らないと言ったが、彼の妻が目を見開いてどこでその話をと」


「……え」


「夫婦で旅をしているらしい。彼女がこれをお前にと」


 ジュエリーボックスの上に手紙を置いて、ロキはサクラの方に押す。

 サクラはそこに一度視線をやってからロキを見る。

 ロキに頷かれ、手紙を手に取った。

 今までにない緊張をしていた。

 ドキドキする胸に手を置き、一度深呼吸してから封を開け、中の紙を取り出し、半分に折られた白い紙を開く。


【さくらさんへ】


 ひらがなで書かれたたった六文字に、涙が出た。

 目を閉じ、この事実を深く噛み締める。


 少し落ち着いてから、再度手紙に目を通す。

 冒頭に、こちらの世界の言葉で、下記の文章が読めない場合はこの手紙は破棄して忘れてくださいと書かれていた。


【はじめまして、私は楓と言います。同じ植物の名前なのは運命でしょうか。さくらさんの瞳の色はピンク色だとロキ殿下から伺いました。私は紅葉したカエデと同じ、赤色の瞳です。とても不思議ですね。】


 カエデさん……とサクラは心の中でその名前をなぞる。

 赤い瞳の女性を想像してみる。

 不思議ですねという文に、本当にと笑みをこぼす。


【日本語を書くのは久しぶりで、まさかこんな機会があるとは夢にも思っていませんでしたので少し変な部分もあるとは思いますが、お許しください。】


 サクラも、日本語を読んでいる今に、まさかこんな機会があるとはという思いだ。


【前世を覚えている人、それも日本人がこの世界にいる可能性に、思わず筆を取ってしまいましたが、正直どうしても会いたいという感情はないように思います。前世はあくまで前世で、今はこの世界に生きている人間だからでしょうか。殿下の話を聞いていると、あなたもそうなのではないかと思います。】


 サクラは確かにと、思った。

 ロキにカエデのことを聞いて……今もアマルテアにいますか、どこに行くと言っていましたか、どこの国の人ですか……そんな言葉は、何も出てこなかった。


【ですがもしお会いする機会があるなら、ゆっくりお茶でもしながら話ができたらなとは思います。】


 それには笑みがこぼれる。

 サクラは同じ思いですと、心の中で返事をする。


【殿下から聞いているかもしれませんが、私の夫はヴァルカンという魔色石作家で、私は今まで前世の話を彼にだけしていました。世間で言われているヴァルカンのまるで異なる世界を見てきたようだという発想は、私の前世の知識によるものです。ですが彼の腕は本物です。殿下から、桜の花を知っているなら桜の花で魔色石のアクセサリーを作ってくれないかと頼まれ、喜んでと返事をさせていただきました。私が彼にこういうことを頼むことは滅多になく、また変わり者の彼には珍しく殿下とも気が合ったようで、頼まれたのは一つだったのですがこの数になってしまったことは完全にこちらが理由ですので、殿下の礼を過剰だとは受け取らないでいただけると幸いです。】


 サクラはクスッと笑う。

 確かに一つアクセサリーが入っているだけの大きさのケースではない。


【殿下は直接は言葉にされませんでしたが、殿下のペンダントの色と、貴族は普通家族以外には魔法使いに仕事に使うようなものを贈る以外では魔色石をプレゼントすることはないことから、さくらさんが殿下の魂の片割れなのだと推測しました。私とヴァルカンも、魔力の相性が合った者同士です。】


「えっ」


 サクラは思わず声を漏らす。

 急に声を出したサクラに、静かに見守っていたロキもサクラの顔を見る。


【今となっては夫婦ですが、魔力の相性が合うとわかってからも別に愛しく思えたりはしませんでした。】


 サクラはそれには思わずフッと笑いをこぼしてしまった。

 

 みんな考えることは同じらしい。

 ロキは怪訝な顔でサクラを見る。


【魔力の相性が合うというのは明確な事実で、魂の相性が合うというのも運命の相手というのも、わかるような気はするとは思いますが、それは恋愛的な意味でというより、人生的な意味で。工芸家のような器用さを求められるタイプの魔法使いは魔力が少ない方が望まれます。しかし魔力が少なければ当然多くは作業できません。ヴァルカンは魔力が少なく、私は魔力が多い方なので、ヴァルカンは細かい作業を長時間続けられます。そういう意味では間違いなく運命の相手だなとは、思いました。殿下がさくらさんを婚約者ではなく薬医にと望んでいるという話を聞いて、やはりそういうものなのだなとも。】


 なるほどそういう解釈が、とサクラはそれには少し納得する。

 確かに魔力を多く消費する治癒魔法使いの自分の魂の片割れは桁違いの魔力の持ち主であるロキ、それはとても上手く噛み合っている。


【ただ自分たちでどう思っていようと、運命の相手がいる人と恋愛をしようと思う人はまずいないと思うので、それはもう本当に心からの同情を。この先お二人の感情がどうなるかはわかりませんが、似た立場の者としてお二人の納得のいく形での幸せを願っています。】


 サクラは手紙を閉じると大切に封筒に入れる。

 ロキを見る。

 目が合った。


「なんと書いてあったんだ?」

「カエデさんとヴァルカンさんも魂の片割れだって」

「だろうな」

「気付けるものですか?」

「夫婦で互いの色の魔色石を身につけ合っていればな。いくら庶民とは言っても、魔法使いで魔色石にも詳しい者なら普通そういう関係で贈り合うものじゃない。それに、ピンクの魔色石を持つ俺に二人とも何かを察したような様子だったからな。そういう発想がすぐ生まれるのは同じ立場の者だからだ」

「そういうものですか。あ、アマルテアの旅の人が、自分の瞳の色に染まった石を贈るのは告白みたいなものだって」

「庶民の間ではな」

「じゃあ旅の間つけ合っていても魔力の相性がいい関係だとは思われないんですね」

「まあ、そうだな。ヴァルカンとカエデもだから気にせずつけ合っているんだろうし」


 だがそういう関係だとは思われるぞ……とロキは言わなかったが思った。

 実際に夫婦のヴァルカンとカエデはそこも気にする必要はないが。


「ロキはもう見ましたか?」


 ジュエリーボックスに手を置く。


「いや、一緒に見ようと思って」

「開けてもいいですか?」

「お前のものだ」


 サクラはわくわくと蓋を開けて、そして中に入っていたものにぱあーっと目を輝かせ、本物ではないがこの世界で初めて見る桜にまた涙が出そうになり、そして冷静になってロキを見る。


「桜の花はこういう感じか。今は色が付いていないからまた趣は違うのだろうが」

「……多くないですか?」

「それはな、俺も言った」

「……ですよね」


 カエデがわざわざ手紙の中で数が多いと言及するのも納得の数が入っていた。


「もう二度と会うことがなかったら、桜の花が見つからなかったら、一つが壊れてそれでなくなってしまったら悲しいから、たくさん用意したとヴァルカンが言っていた」


「ありがとうございます」


 心からの礼が、自然とこぼれた。


「俺は金を出しただけだ」

「いいえ、あなたが言ってくれたから、作ってもらえた。あなたがいたから。カエデさんのことも」

「お互いさまだ。お前がいなければそもそも俺は生きてない」


 笑って言われ、サクラもそれに笑顔を返す。


「つけたいですが、旅の間につけて壊したりしたら。それに高価なものでしょうし、旅でつけるようなものではないような気も」

「一つだけつければいい。全部ずっと大事に取っておいても仕方ないだろ」

「それもそうですね。じゃあどれを……」


 ブレスレットとピアスと指輪がすべて二種類ずつ、ピアスは穴が開いていないので今は選択肢から外れるとして……とサクラが考えていたら、ロキの手が伸びてきて、唯一同じ種類のものが二つあった指輪を一つ取っていく。


「魔色石はお互いにつけ合うものだから俺の分も一つ、花のデザインだが男でもつけやすいようなものを作っておくと言われたんだが、これは俺がもらっても?」

「それはもちろん、一つと言わずいくつでも」

「……いやちょっと他は俺には可愛すぎる。これもギリギリだろ」

「ピンクになるとそうでも黒になると全然大丈夫ですよ」

「こういうときは瞳の色が黒でよかったな」


 魔色石が銀で覆われた指輪で、銀の部分は桜の花と花弁の透かし彫り模様で、内側の魔色石が見え、染まると模様が目立つようになっている。

 指にはめていないときは内側に魔色石が見えていて、魔色石の部分は決して少なくないようで、そもそもの魔色石の魔力貯蔵庫の目的を見失っていないことが見て取れた。


「これ裏側は魔色石なんですね」


 サクラは同じデザインのもう一つの指輪を持って内側を見る。


「魔色石のアクセサリーでは定番の工夫だな。同じ色ばかり身につけるとさすがに微妙だろう。だから一見わからないようになっている。そういうものは一般人向けではなく魔法使い向けだな。ただの銀の指輪だと思ったら内側は魔色石だったなんていうのは定番中の定番だ」

「……一般には瞳の色に染まる石というところに価値があっても、魔法使いにとってはあくまで魔力が溜まる石ということですね」

「魔力の相性がいい相手がいると二色使えるから、そこに羨ましいなんて言っている魔導士もいる」

「……ピンクですみません」

「こちらこそ、黒で申し訳ない」

「いや黒は一番使いやすい色じゃないですか」


 ピンクは扱いづらいだろうなと、サクラはちょっと本当に申し訳なくなる。


「俺はサイズ測ってるから合うが、お前は合わなかったら直せる造りにはなってるらしいから次の街で」

「あれ、ロキって左利きじゃありませんでしたっけ」


 右の人差し指に指輪をはめたらサクラに不思議そうに言われ、ロキは「あー」と指を見る。


「一番魔法を使うのがそこだから、確かに利き手の人差し指にまずつけるものだが、俺は利き手の左で剣を扱うから基本的に魔法は右手側で行う」

「なるほど」


 サクラは普通に利き手、右手の人差し指に入れる。

 ピッタリだった。


「とは言っても、魔導士の仕事中は大量だし、俺もたぶん複数つけるが」

「私は他にもつけることがあれば左手にしようかな。利き手に指輪たくさんあると作業しづらそう」

「片方だけに偏ると変だから段々見栄え気にしてやっぱり杖持ってる方にも、とかやり始めて、そこ通り過ぎるともうどうでもよくなって気にせず魔力貯蔵アイテムだ、仕事中だ、どうでもいい、となっていくらしい」

「……なるほど」


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