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No.91 霊界の姫

大変遅くなりまして申し訳ありませんっ!!(本来の投稿予定日:12/18)

いやもう本当に申し訳ないのです…

それと、あと二話でこの章は終わりにしますっ!

〔スーゲ……ナンだあの剣技…〕


〔HPは減っていませんが本来ならかなりの想撃火力を出しているのかもしれませんね…〕


実況席の人達が驚いた表情でそう言う。


でも……私は驚きどころじゃなかった。


「ま、愛海お姉ちゃん……今のって……」


「“湊留(みなとどめ)”…間違い、ない……でも、どうして……?」


どうして。


どうして───


「「どうしてユウさんが“花神流”を知ってるの……!?」」


花神流鳴剣術(めいけんじゅつ) (そう)(じん) 湊留(みなとどめ)


正確には、“花神流鳴剣術 蒼の刃・()() 湊留・純水(すみみず)”!!


霊力を用いることで真価を発揮する花神流において、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()…!!


“湊留”の分類は言わずもがな“水”!!湊……港へと強く打ち付け、跳ね上がる波を表現したような水の技の中でも攻撃性の高い技…!


このゲームでも想の刃として使うことで花神流を真の姿で使えることは知ってたけど……!!


「どうして“真打”を……?」


〘───まだまだ…!“魔力纏”!!〙


そのユウさんは空中で体勢を立て直して───その背後から水色の波紋。


「「───!!」」


波紋から現れた魚に息を呑む。


あれは…


あれは───


「「ひ、“姫金魚(ひめきんぎょ)”……!?」」


花神流鳴剣術 群青(ぐんじょう)の刃・真打 姫金魚・流川(ながれがわ)!!


これも水の技の1つで、真の姿にすると波紋から現れた金魚とともに相手に襲いかかる技!!


花神流の奥義ともいえる“属性活性”が使えるのもそうだけど、どうしてユウさんが花神流、それも鳴剣術を知ってるの!?


「ユウさんって……うちの門下生だったの……?」


「愛海お姉ちゃんは、心当たりある…?」


私の問いに愛海お姉ちゃんが首を横に振る。


「ない……けど、あれはどう見ても花神流……どういうこと……?」


……加奈お姉ちゃんに聞いてみないとわからない、かなぁ…


「……」


そもそもの話をすれば。花神流は別に門外不出というわけではないんだよね。


愛海お姉ちゃんが“門下生”と言ったことからも分かるように希望者には教えてる、ただそれだけのもの。


……問題は、ユウさんが“花神流鳴剣術”を使い、“属性活性”を使ったということ。


属性活性は花神流の中でも奥義に近い技術。霊力を以て常識を捻じ曲げ、各属性に変換して現実に現す技。


それをゲームの中とは言え実際に使ってみせたということは花神流を習う者……それも上位層に限られる。


おまけに使った技は鳴剣術の1つだった。


花神流は全部で6種類。


他者や自分を護るための活人拳、護身術。


相手の身を滅ぼすための殺人拳、滅敵術。


他者を魅了し感情を動かすための舞踊拳、舞踏術。


正確な狙いとともに部分的な被害を及ぼす活人剣、礼剣術。


粗雑な狙いとともに範囲的な被害を及ぼす殺人剣、鳴剣術。


鞘から抜く動作と共に攻撃に転じる抜刀剣、抜刀術。


殺人剣たる鳴剣術……それをユウさんが知っていて、かつ真の姿まで知っていたことに謎が残る。


…もしかして。ユウさんって霊力を扱えるからこそ霊界の姫、だったりするのかな。


「……まさか、ね。」


「「「……???」」」


「…あ、なんでもないです。お気になさらず。」


そんなわけないか、と思って呟いたのが聞かれてたみたいで、手を振って何でもないことを示してから配信に目を向ける。


〔しっかシ……今回スゴい編成だヨナァ。〕


〔そうですね……童話詠み、深淵渡り、収集家に加えて死神と魔女、守護者に精密剣……通り名を与えるならこのあたりになるのでしょうか。〕


〔……一瞬深淵歩きって言うかと思って身構えたぞオイ…〕



コメント:


:草

:いや草

:アル〇リウスじゃんか

:確かにそれっぽいけども

:大剣じゃなくて大鍵だもんなぁ

:一応キー〇レードなるものも存在するけども

:あー……

:どっちかというと“深淵歩き”というより“深淵住まい”?

:魔術師だし“深淵呼び”の方がそれっぽいかも

:あー……

:魔法で深淵にいるモノの一部を呼んでるわけだもんねぇ

:それもそれでおかしいんだけどね、多分

:てかななみちゃんは実際通り名持ってそうだけどなぁ

:わかる

:それな

:あの強さで有名にならないわけがない

:ただ新しく取得したアカウントだからその通り名を誰も……いや日奈子ママ以外?誰も知らないっていうね

:そーね



〘ゴァァァァ……!!〙


〔……ン?ナンか弱ってきてね?〕


配信画面にはリザードマンロードと戦ってる人達だけじゃなくて待機してるななみお姉ちゃんの姿も映っていて、咆哮を聞いたななみお姉ちゃんが表情を歪めた。


〘……ちょっと、まずいかも。リリアンさん、あとどれくらいかかりそう?〙


〔あともう少しなんですけど……!〕


〘ごめん、無茶言うようだけどできるだけ急いで。こっちも時間かけずに撃てるように準備しとく。〙



コメント:


:まずい?

:何がまずい…?

:何がまずい?言ってみろ

:唐突な無〇様やめーや

:唐突すぎてびっくりするわ

:そういやあれって10年前なんだよなぁ

:魔剤!?

:魔剤!?

:ダニィ!?

:なん……だと…?

:嘘だッ!!

:うせやん

:時間の流れ早すぎんか



〔……テカ、何がマズいんダ?〕


〔確かに…何がまずいのでしょう、ななみちゃん?〕


〘ウグルルル……〙


解説さんの問いに目を閉じてリザードマンロードの声を聞いたあと、息を吐いてから口を開いた。


〘…解除条件を持たず、死ぬことがない不死状態。それによって作り出された死にたくても死ねない状況、今ここにいるリザードマンロードにとって不必要な永劫の命という苦痛によってリザードマンロードのAIが崩壊し始めてる。〙


〔ナッ……!?〕



コメント:


:えっ!?

:AIが崩壊!?

:どういうこと!?



〔ななみちゃん、それは本当ですか!?〕


〘うん。若干だけど声にノイズが混じり始めてる。狂化状態でもないのに声にノイズが混じるのはモンスターのAIが崩壊……そのモンスターを動かすシステムに異常を起こし始めてる証拠だよ。〙


〘ウグルルルル………〙


……確かにすごく聞こえにくいけど咆哮にノイズっぽいの混ざってる。


……こんなのよく気が付くよね、ななみお姉ちゃん…


〘今はまだ本当に聞こえにくいから許容範囲かもしれないけど…放置しておくとゲームシステムそのものに重大な障害をもたらす可能性がある。それは解説さんは知ってるよね?〙


〔……はい。メンテナンス中にそこの修正もしておきましょう。〕


〔ナンでいきなり……〕



コメント:


:確かに

:結構いきなりよね

:AIの崩壊……言ってしまえば精神崩壊。ここまで普通だったのになんでいきなり…?

:てかそれに気付くななみちゃんもななみちゃんよ

:視線から情報得てそう

:あー

:ありそう

:目は口ほどに物を言うってか



〘…実際、予測できたことではあるからね。リザードマンロードのAIは長期的な不死には向かないし。〙


〔……どういう意味です?〕


〘そのままの意味だけど……〙


〔……説明もらってもイイか?〕


〘……解説さんの役割じゃないの、それ…まぁいいけど。使う武器取り出してから説明するね。〙


そう言ったあとななみお姉ちゃんはストレージから1振りの刀を取り出した。


〔その刀は…〕


〘“粗鉄刀”。粗雑な鉄を用いて鍛えられた刀。非常に脆いが武器として使えないことはない。〙


〔フレーバーテキストそのまま読まンでクレ……今のななみちゃんに粗製系のテキスト読まれんのスッゲェ凹む…〕


凹んだ実況さんにななみお姉ちゃんが苦笑い。


〘じゃあ改めてAIの話ね。このゲームのAIにはそれぞれ元となる“背景”と“性格”が設定されてるの。“背景”は精神的な耐久力に直結し、“性格”は戦闘時の行動傾向に直結する。これはクエストごとに違うんだけど……解説さん、引っ張ってきたこれってどこのクエストのやつ?〙


〔えっ…と、これは普通の討伐クエストから引っ張ってきてますよ?〕


〘ん……やっぱりね。今回の場合だと背景が“民を守るために力を振るう君主”、性格が“暴力的”になってるはず。ただこれって、“力を振るう”なんだよね。〙


〔……ン?どういうコッタ?〕


〘こういうタイプは守護……“受け型”には向かないの。攻めて攻めて、相手を陥落させることで守護を成立させる“攻め型”。これじゃあ不死性は活かしきれない。不死性を活かすには……〙


そこで一旦切って目線をユウさんに向けるななみお姉ちゃん。


〘例えば、ユウさんをこのゲームのAIとして登録したと仮定するけど。その場合ユウさんを完全に再現するなら背景に“民を守るために総てを受け止める姫”、性格に“献身的”というものが設定されるはず。同じ守るためであっても“どうするか”が違う。〙


〔どうするか……〕


〘こういうタイプは不死性を活かしやすい。何故かというと背景の深いところまでいくと“自分はいくら傷ついても構わないから皆を守りたい”があるから。従者の皆は心当たりない?〙



コメント:


:…!!

:あっ…!?

:言われてみれば……

:確かに姫ってそういう所ある!!

:すっごい無茶するけど確かにそういう無茶するときって誰かを守るためなのがほとんどだ!?

:結晶化した時のアリナさんを守ったのとかそうじゃん!?

:そういえば姫様がずっと使ってる“犠牲の盾”って“自らを犠牲にしてでも味方を助ける”っていうコンセプトのスキルだもんね…!?



〘もちろんAIにも個体差はあるから絶対に崩れないとは言い切れないけど。多分ユウさんは肉体への痛みでは絶対に崩れないタイプだよ。〙


〔……そう言い切れんノカ?〕


〘言い切れないから…多分としか言えないし予測でしかない。…予測だけど、崩れるとしたら……一番可能性が高いのは味方が全滅した時。だから今回の犯人がやった方法はユウさんの弱点を的確に突いてきてるかもしれないね。〙


それに対して、とななみお姉ちゃんが続ける。


〘今回のリザードマンロードは同じユウさんと同じ“守ろうとする者”でありながらも攻撃性に重きを置いた攻め型。味方に被害がある前に相手を潰してしまえば結果的に味方を守ることに繋がるというもの。重い一撃や怒涛の連撃によって早期決着を狙うタイプだからその対極である長期決着に向いてないし、許容量以上の攻撃を受け続けることに対しての精神耐性が低い。だからこそ、このまま攻撃を続けていればリザードマンロードを動かすAIは崩壊する。〙


〔……っ、ソレナラ、止めたほうが……〕


〘このゲームのシステム上、そうもいかない。攻撃していないと時間経過でヘイトが消滅するこのゲームは基本的に攻撃し続けることが求められる。特に、リリアンさんが動きを縛っていた時間でヘイトが消滅してる可能性があるからそれを溜め直す必要があった。ヘイトが消滅すると待っているのは遊撃モード…標的非固定の攻撃。その場合対象になるのは私まで含まれるからそれを留める必要があったんだよ。〙


〔う……遊撃モードの実装は悪手でしたかね…〕


〘私は攻撃の順番とか考えるの楽しいからいいんだけどね。……それはそれとして、リザードマンロードもいい加減止まりたがってる。戦ってて崩壊し始めてるってことはもう戦いたくないのに戦わされ続けてるってことにも繋がる。リザードマンロードの立場としては相手を倒すために戦い続けなければならず、リザードマンロードの本心としてはもう戦いたくない。そんな矛盾がリザードマンロードの精神を傷つけている。…ある意味リザードマンロードも今回の被害者だよ。〙


そういったあとにななみお姉ちゃんが大きくため息。


〘…犯人にとって不死性はリザードマンロードへの祝福だったのかもしれないね。でも、祝福と呪詛は紙一重。望んでいない祝福なんて大抵の場合呪詛にしかならないと思うよ。〙


〔……そう、ですね…〕


〔てか詳しスギんだろ…なんでここまで詳しいんだヨ……〕



コメント:


:ほんと詳しすぎんだろ……

:んね

:てかAIの本心まで見抜くんやな、ななみちゃん…

:んね

:すごいよね…

:それにしても…祝福と呪詛は紙一重、ねぇ

:なんか重みみたいなの感じた気がするんだけど?

:わかる

:わかる…

:なんだろうね、うまく表現はできんけど言葉に重みがあったよね

:なんか過去にあったんかなぁ…



「……あの、結さん。」


「どうしました、奏さん?」


「…えっと、その……」


躊躇っていたようだけどそのまま口を開く奏さん。


「…先生ってどうして無能と呼ばれているんですか?…あんなに強くて、あんなに凄くて……結さんが異次元と言ったのも納得できるレベルなんですが。…一体、どうして……?霊能力がないだけで無能扱いされるのにどうしても納得がいかなくて…」


「……あぁ」


それかぁ……


「……すみません、それは私の口から話すことではないと思います。……どうしても知りたいのなら、加奈お姉ちゃんに直接聞いて下さい。」


「せ、先生に……ですか。…答えてくれるのでしょうか…」


……加奈お姉ちゃんなら…


「…答えてくれるわよ。」


「え…?」


「あの人なら答えてくれるわよ。“無能”である事に対し若干の引っかかりは残っていてもほぼ気にしていないあの人ならちゃんと、ね。」


そう言ったママは少し辛そうな表情をしてた。


「花神家からすれば私も無能だから私が説明することもできなくはないわ。でも、奏さんが知りたいのは加奈のことなのでしょう?だったら私や結、愛ちゃんから聞くより加奈本人の口から聞くべきよ。」


「奈々さん……」


……無能=霊能力非保持者だけではない、か…


そんな事を考えてたら配信画面内でリリアンお姉ちゃんが顔を上げた。


〔───準備、できました!!すみません従者の皆さん、連絡お願いしてもいいですか!?〕



コメント:


:はいさ

:ほいほい

:はいやー

:伝令起動します

:連絡班行ってきまーす



その行動を見て思い出す。


「……あ、そっか。新たに回線開くより伝書鳩飛ばしたほうが早いのか…」


ユウさんはVRゲーム配信の時、かなり高頻度で視界橋に表示させたチャット欄を見てるタイプの人。


新たに回線を開いていきなり驚かせるよりもチャットに流して気付いてもらうほうが色々安全だし、タイピング速い人がいるならそっちのほうが速い。


あとユウさんは自分に強く関わる報告に関しては伝書鳩許可してるからこれに関して強く言う人はいない……んじゃないかなぁ


「…どうなるんだろうね…」


ななみお姉ちゃんの想の刃。花神流を除いてもいくつもあるけど…


使われるのは多分あれかなぁ…




───姫川ユウside




『う、わっ』


「姫っ…!あ、“主を守る拒絶の茨”!!!」


ボクが若干体勢を崩して一瞬動けなくなってるところにラブラさんがスキルでボクの周りにイバラを発生させて、ボクを守ってくれた。


イバラ……いまのって“眠れる森の美女”?“いばら姫”の方が分かりやすいかもだけど…


『童話スキル使えるのすごいなぁ…』


体勢を立て直したあとにラブラさんに会釈をしておく。後でちゃんとお礼言わないとね。



コメント:


:童話スキルも割と難しいはずよね

:ねー

:確かに

:それを軽く使ってるラブラさんの実力よね

:ルーン魔術よりは難しくないらしいけどねぇ



結構難易度高いスキルって多いんだよね、このゲーム。その中でもルーン魔術スキルは最たるもので、ボクも使える人は少ししか知らないし。


実際のところ、なんか学校で……理解力・想像力関係の授業や試験でこのゲームが使われてるとか聞いたことがあるようなないような……


……ん?



コメント:


:姫ー!リリアンさんの準備できたってー!

:準備完了報告ー!

:リリアンさん準備完了ー!

:おわ

:びっくりした

:終わったんか

:鳩感謝

:伝令班役割御苦労



準備が終わった…ということは。


『───!みんな!!アレを使うから20秒稼いで欲しい!!』


「「「「「御意!!」」」」」


みんなが答えたのを聞いてから後ろに跳び、着地した場所で座る。


『“ギルティクロス”』


ボクのスキル詠唱に呼応して手元に黒い剣が現れる。



コメント:


:ギルティクロス?

:って?

:聞いたことない…

:ギルティクロス……“罪の十字架”。“セイントクロス”の反対で闇属性の黒い短剣を出現させる魔法やね

ちなみにセイントクロスの逆だからか“黒十字”とも呼ばれる

:セイントクロスは白十字……じゃなくて“銀十字”だったか

:んだんだ

:せよ

:似た感じで火属性のやつは赤十字ならぬ“紅十字”、木属性のやつは緑十字ならぬ“翠十字”と若干色が違うのよね

:ほへー

:実は姫ってこれ得意なんだよね

:ねー

:意外と姫って闇系だよね、魔法構成

:闇系統だからって別に悪いわけじゃないけど結構意外よね



闇系統魔法っていうのは超高範囲系破壊を引き起こしたり負の概念を持つ魔法のことを言うんだよね……なんかよくわからないけど闇系統が多くなった感じだし…


そもそも光系統が少ないというか……代表的なのは回復魔法や蘇生魔法、状態異常解除魔法だけど……うーん。


『“ギルティクロス”、”ギルティクロス”……』


そうしている間にも詠唱を続けて“ギルティクロス”を量産する。


ギルティクロスに限らず魔力から武器型を構築し、武器として使用する魔法は武器が役目を終えるまで消えることはない。


もっと言えば武器に込められた魔力が尽きるまで存在し続けるのが武器を構築する魔法で、武器として使われた際に込められた魔力を解放することで一撃の破壊力を引き出していて、魔力を解放するからこそ武器が消滅する。


なら、作成した武器を武器として使わずにその場に放置しておけばどうなるか。


答えは単純で、その場に存在し続ける。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


とはいえ放置している間も少しずつ魔力は放出してるから耐久力無限というわけじゃないんだけど。


『……よし』


生成できたのは50本。ボクが最速で起動できるギルティクロスのスキルレベルは9で、もうちょっとスキルレベルが高ければ1度の詠唱で3本ずつ生産するとかできたんだけど仕方ない。ボクの鍛錬不足。


剣はその場に放置、ストレージからとあるものを取り出して服のポケットにしまい、立ち上がる。



コメント:


:多くね?

:多いなぁ

:まぁアレを使うなら多いほうがいいから

:まぁねぇ

:せやねぇ

:久しぶりに見られるのか、姫のアレが……



『いいよ!!』


「「「「「御意!スイッチ!!」」」」」


『スイッチ!』


武器や魔法で小さい怯みを引き起こしたのを見計らってボクが羽で加速して飛び込む。


「ギャォ■ォァ■ァ!!」


『っ!!』


怯みが小さくてすぐに復帰してきたから一度武器を避ける。


…ノイズが激しくなってきたな……確か師匠が言ってたけどノイズ混じってるのは精神崩壊起こし始めてる証拠なんだっけ?


対人の不死なら精神崩壊起こすまで痛めつけ続けるのがボクや師匠なんだけど対AIの不死だとゲームシステムに直結しやすいからそうもできない…


『───ふっ!!』


空いた横腹に蹴りを叩き込み、そのままリザードマンロードの身体を駆け上る。


そしてリザードマンロードの体を越したあとに羽で制御して更に上空へ。


リザードマンロードに狙いを定めて───


『───“ライダーキック”!!』


体術中位スキル“ライダーキック”。正直その名の通りの飛び蹴り技。空中でしか発動できない制約があるけど中位スキルにしては火力が高め。初期の頃はこれが中位スキルであることに不満がある人多いらしかったんだけど強化版あるんだよね、このスキル。


そのスキルでリザードマンロードの頭を叩くと同時に───


シャン、と。


───鈴の音が、確かに鳴った。


鈴の鳴ったのを聞いて即座に再跳躍。


そのまま羽で体勢を立て直して───


『───“天変地異・焦土(スコーチドアース)”!!!』


火属性の天変地異魔法を詠唱し、周辺を焦土へと変化させる。



コメント:


:うおっ

:すご……!?

:これって天変地異魔法の中でもかなり上位の…!?

:すごい、けど……!!

:リザードマンロードに火属性は効かないんじゃ……!



そんなのはボクだってわかってる!!教えられてすぐに忘れるほどボク馬鹿なつもり無いからね!?理解できてないことはあるけどさ!!


けど今回に関してはそういう意味じゃなくて───!!


「「「「「“スロー”!!」」」」」


……待って?


───なんで魔術師物理師問わず全員投擲スキルの“スロー”持ってるわけ!?


「「姫っ!!」」


ハドラーさんとアリナさんの声に、ポケットに入れていたものを取り出す。


『───“リリース・リコレクション”!!!』


ボクの口から紡がれるはななみちゃんがさっき宣言してた言葉と同じ言葉。それによって取り出していた記術石が光を放つと同時に幾何学模様が現れる。



コメント:


:来るぞ…

:ざわ…ざわ………

:姫の記術石……使うとしたらあれだよね…

:あれだよなぁ

:むしろこの状況だとあれ以外ありえん希ガス

:確かに



……ボクの記術石は、多分ななみちゃんの使った記術石よりはランクも火力も低い。


でも───火力を底上げする方法は確かに存在する。


『───お願い』


手を前で合わせて言葉を紡ぐ。


『みんな、力を貸して!!』


記術石から生まれたその淡い光がボクの声に反応して揺れ動く。


───()()()()()()()()()()()()()()()()()()



コメント:


:……!?

:なにこれなにこれ!?

:武器が…浮いてる!?

:出たー!?

:なんかおばけ見たー、みたいな反応やめーや…

:幽霊姫のとこにいるのにその反応はなんかおかしいでよ……

:へたすりゃ姫凹むでその反応…



“幽霊”姫だもんね……オバケだもんね、ボク…


…それはさておき現状。


剣や鍵はリザードマンロードに切っ先を向け、本はひとりでにページを捲り、鎌や鎚は振りかぶったかの様な状態で空中に浮遊し───


ボクの下へ、集う。


その中にはさっきボクが回収しなかった“エンジェルフェザーフルーレ”も。…待たせてごめんね?


……この、術式の名は───


『───“霊的移動現象”!!!』


ボクの宣言と共に───


物理武器55振り。魔法65術式。


総数110。それだけの数の攻撃が一斉に、リザードマンロードへと叩き込まれた。

ちなみに、チートとか使って不死になってる存在が現れた時のななみちゃんの対応もユウさんと同じ“精神崩壊起こすまで痛めつけ続ける”だったりします。

Xでも呟いてたんですけど対応がアー〇ード・コアのプレイヤー達がチーターにとった行動に似通ってるというかそれ以上に怖いというか…

流石はフ〇ム民のお2人というか。…フ〇ム民でもここまでしないのかな?

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