No.9 動画を撮ろう
星司さん本当にどうしようかな…
いきなり意識の中に現れたので私は何も考えてないですよ…?
今後どうするかは本当に後で考えておきます…
………何があった?
いや、本当に何があった?
「……一晩寝ただけで何でこんなに登録者とフォロワー増えてるんだ…?」
昨日は自己紹介動画を投稿して、奈々達に報告して、餃子の材料買いに行っただけなんだが……僕、何かしただろうか。
「奈々と愛海が引用しているわけでもなし……香月先生とゆな先生は引用しているとはいえ、ここまで増えるか…?」
スマホでレスパーティを見ているから性転換はしていないが。…なんだこれ。奈々と愛海が何か言ったのならまだ分かる、あの二人は現代絵師二大巨頭だからね。だが、僕がお願いしていた通り何も言わずに共有してくれているみたいだ。お願いしたのは変に暴走しそうな予感を感じたというのもあるのだが。ともかく…なんで、フォロワー100人越えているのか。……どこかで見たような現象だな………どこだったか。
「………まぁ、いいか…」
少なからず疲労を感じた。まだ朝で、お風呂から出てご飯を作った後だというのに。…そのせいで、自然に性転換しちゃった。“疲労する”のトリガーを踏んじゃったみたい。いや、今日は通信授業の予定が入ってるから“PCの前に座る”トリガーを踏む時点でだけど。
「……そういえば、低音で対応しなきゃいけないんだっけねー。」
未だ通信授業の相手に対して私がこうなったことは知らされてない。にも拘らず今回通信授業入ったのは割と緊急だったからなんだけど。幸いなことに、性転換前から広かった音域はそのままだったから低音対応は可能。……カメラの不調とかで立ち絵で対応させてもらわないとね…あとの問題は口調かぁ…維持できるかな。
「っと、返信返さなきゃね。」
性転換してしまったのはもう仕方ないから、PCの前に座って返信作業を行う。……なんだか昔を思い出すなぁ、これ…
…昔……か。
「これでよし…と。」
可愛い、とか応援してる、とかの言葉が多くて嬉しいかな。元々可愛いって言われるのは好きな方だったから性転換前でもノーダメージだし。
「…お風呂入ってこよっと」
おじさん側では既に入ってるけど、女の子側では今日はまだ入ってなかったから。片方で入ってももう片方で入ってないと…なんか、精神的にやだし。
「…ふぅ」
着替えを用意した後、“私は女の子”っていう性転換トリガーである“役作りのための自己暗示”にギリギリ引っかかる非常に軽めの自己暗示をかけてお風呂中におじさんに戻らないようにする。流石にお風呂中に戻って新しく着てた服を濡らすのは嫌だもん。
…最初こそやり方とか分からなかったから愛海や結と一緒にお風呂に入って身体の洗い方とか教えてもらったけど、今はもう慣れたもの…というか、元々女装にそこまで抵抗なかったし、昔は女の子に見られやすかったし、髪長くしてたし……そこまで教えてもらうことはなかったっけ。
…お兄ちゃん慣れるの早すぎ、もっと恥ずかしがってるの見てたかった!…って言われたときには私がどうすればいいのか分かんなかったけど。別に女の子の服を着る羞恥心じゃなくて、何も分からずに妹や娘に任せるしかないっていう部分での羞恥心だったからなんとも。
だって、性転換して14歳の女の子の身体になって、それに感性が引っ張られてるとは言ってもその前に32年生きてきたことには変わりないから無知による羞恥心は仕方なくない?
…まぁ、同意求めても他に突発性性転換症候群になった人と知り合いじゃないから同意得られるとは思えないけど。
「これでよしと…」
お風呂から上がって身体を拭いて、服を着てから髪を乾かす。外見からたまにもう奈々の娘でいいんじゃないかなって思うことあるけど、あまり気にしないようにしてるところはある。でもまぁ、本当に娘みたいだけどね。Vtuberとしては娘……た、多分、娘になるし。
そんなことを考えながら洗面所から出ると、ちょうど起きてきた結とばったり会った。
「おはよー…お姉ちゃん…」
「おはよ、結。ご飯はできてるからお風呂入ったら食べてね。」
「んー…」
昨日は結の方が起きるの早かったけど、今日は結の方が遅かった。…何か理由でもあるのかな、これ。性転換してるか否かはあまり関係ないっぽいのは分かってるけど。
「…それではこれで、本日の授業は終わりにします。お疲れ様でした。」
〔お疲れ様でしたー!…と、かなた先生〕
「はい?」
〔確か、来月には…いなくなっちゃうんですよね?〕
相手している生徒が不安そうな声で聴いてくる。すでに私が別の人に代わるという話は通信授業大元側から通っていたみたい。いやまぁ、結局担当するのは私だから無駄な足掻きな気もするけど一応ね?モデル一新されるし声も変わるわけだから。
「そうですね、来月には僕はもう担当できませんね。最後まで見ていられず、申し訳ありません。」
〔い、いえ…〕
「後任の方には情報を残しておきますので、君のことはよく分かってくれるはずですよ。」
〔……だと、いいんですが…〕
不安なのは分かる…担任の先生がいきなり変わるとか怖いとしか言いようがないし。
「いつものように復習用のデータは送りますので、分からないときはそちらでお願いします。」
〔はい……〕
「……それでは。後任の方にもよろしくお願いしますね。」
そう言って通話、仮想カメラ、録画を切った。……今の私の状態が女の子だからか、長い間続けてると素になりそうだったし早めに切り上げたかったのもあるんだけど。
「学校に授業終了報告を送って……彼女個人用の復習用録画データ送って……次回までの宿題送って……で、全体講座用に録画データから彼女の声と最後の雑談をカットしたものを編集して…と。」
予定してた部分まで終わったから先に用意していた宿題で問題ないのは助かったね。…編集作業は前から苦手だからVtuberとしての動画でも頑張らないと。
「……ん、これでよしと。……うん?」
全部終わらせた頃にコミュニケーションソフトに通知。香月先生から。
「えーと……?あ、足りてなかったものの追加納品だ!」
足りてなかったもの。待機画面と休憩画面の画像、複数種類。あと配信画面とかVR空間上に設置できる小物とかも作ってくれてる…
「んー……無理させちゃったかな?」
奈々からの納品時点で“1枚分しか描けてないのでもうしばらくお待ちを”とかって書いてあったから奈々と愛海が割と無理言った可能性あるよね……ホントごめんなさい…
とりあえずこれで初配信はできるね。でも10日は香月先生が、17日はゆな先生が予定があるって話だから初配信は24日かなぁ…初配信は絶対に見たいってモデル製作期間中に言ってたから、それに合わせてあげたい。
…まぁ、とりあえず。
「動画を撮ろうかな。」
餃子作るぞー。…餃子の皮から。時間かかるなんて分かってるよ?久しぶりに作りたくなったんだよ…
「……ん、これで良しと。」
2時間くらいかけて餃子を完成。なんか久しぶりに餃子の皮から作ったから調べて自己流思い出しながらになった…昔はよく餃子の皮から作ってたんだけどね。
「動画移して、餃子の皮作りと餃子本編で分けて、編集してクロマキー抜いて…明日は土曜日だから投稿しなきゃねー……」
今は18時だから大体眠気襲うまで2時間くらい。よし、頑張るぞー!
餃子の皮……
人によって強力粉と薄力粉の分量違ったりするそうなんですよね…それでもまぁ、大体1:1になるそうですけど。
ちなみに自分で作ろうと思ったものの食欲と時間が上手く作れなくて作るのを放置してたっていうちょっとした裏話。お味噌汁とか久しぶりに作りたいな…