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No.80 反撃の狼煙

今回は全文ななみちゃん視点ですー

私をお姫様抱っこしたユウさんはそのまま跳躍してリザードマンロードから離れて、そこで降ろしてくれた。


……意識あるときにお姫様抱っこなんてされるのいつぶりだっけ?とか思ったけど今は別にいいや。


他の人達もリザードマンロードから離れて私達の近くに来たのを確認したところで強く張っていた集中を解く。


『ありがとねー、ユウさん。』


『お礼を言うのはボク達の方だと思うんだけど……本気モード切れてるし、いいのかな…?』


んー…


『私はユウさんがいたから安心して戦えたんだけどなー…』


『え……』


『だって、私が本当に危なくなったら助ける気だったでしょー?』


『気づいてたの!?』


『蘇生中も結構な頻度で視線が私に向いてるの気づいてたよー?それに、ユウさんは自分の仲間の中で犠牲を出すの嫌いでしょー?』


私の言葉に詰まるユウさん。


『…気づいてたんだ…』


『配信見てたら気づくと思うよー?“犠牲の盾”を持ってるくらいだし…でも、いくらユウさんのCLが高いと言っても今回はフルパ体力だよー。それって、ソロ体力から考えて約5倍でしょー?確かにアタッカー構成な私だけど、高レベルタンクのユウさんと低レベルアタッカーの私だけじゃ圧倒的に火力が足りないよー。』


『……そう、だね…』


『だったら、多少リスクを背負ってでも…たった1人、メインアタッカーかバファーの1人だけだとしても蘇生させたほうがいい……そう思わないー?』


『……』


『蘇生と防御が…回復と防衛が1人で同時にできないのなら、誰かがどちらかを受け持たないとねー。』


そこで言葉を切って他のキャラクターさん達を見渡す。


『ユウさん以外は会場で見てたから知ってると思うけど、1回戦のウイちゃんもそうだったでしょー?』


「「「「「あ……」」」」」


『ウイちゃんはあの時、強制気絶になったキャラクターさん達の治療をカナさんに任せて光翼の攻撃への対処を引き受けてたよねー。私はただ、ウイちゃんと同じことをしただけなんだよー。』


ただそれだけなんだよねー。


……あ、今なんか“私と比較しないで”って思われた気がするー。いやでも同じことやっただけだからねー?


……さて、と。


『反撃、するんでしょ?……オーダーは?』


『あ、うん……本気モードに入るの早いね……』


そう呟いてからリザードマンロードを見つめるユウさん。


『……んー。ななみちゃんってさ。』


『うん?』


『もしかしてだけど、リザードマンロードの大技って全部見切れたりする?』


……大技かぁ。


『出来なくはないよ?“魔法剣”があれば“全方位火吹”も対処できるし。』


『“魔法剣”…………ねぇ、確か“全方位火吹”って“魔法破壊”で対処するような代物じゃないんだけど……』


『うん、普通は跳躍で対処する代物だね。』


『…ボクがやった防御での受け切りなんて相当悪手なんだよね……』


『でもユウさんがそれを選択してくれたおかげで私は助かったんだけど……』


『ボクは咄嗟にやっただけだから……』


とは言ってもそれで助かったのは事実だからね。


私としては最初に守護は必要ないとか言っておきながら結局は護られてて情けないというか。


…このあたりは鍛え直さないとね。


『それじゃあ、大技の見切りはななみちゃんにお願いしていいかな。それ以外のななみちゃんの行動は…』


『行動は?』


『……うん、基本的に遊撃でいいかな。危なそうだったらボクが“犠牲の盾”で守りに入るし……その守りに入ったボクを足場にしちゃってもいいから。』


そのユウさんの言葉で他の人達がザワッとする。


『………結構大胆なこと言ってる自覚ある?』


『うん。それに、ななみちゃんならボクが“犠牲の盾”を使うのも察知できるでしょ?』


『できるけど……』


ユウさんを足場にする、ということは地面へとユウさんを蹴り飛ばすことになる。


同じパーティのキャラクターの攻撃は効かないけど、地面への蹴り飛ばしみたいな攻撃後に発生する地形への激突衝撃みたいなのは別なんだよね。


だから空中で誰かを足場にする、っていうのはあまり好きじゃないんだけど…


『あ、激突衝撃を気にしてるなら激突衝撃軽減スキルあるから大丈夫だよ。』


『……そう?』


そういう問題じゃない気がするんだけどなぁ…


『マーカー……特にウィークマーカーを貼れる魔術師さん達はなるべく低いところにマーカーを貼ってほしい。高いところは…ななみちゃん、大丈夫だよね?』


『大丈夫、基本的に急所狙うから。』


『普通おかしいんだけどね、CL1で高所の急所を狙うの……えっと、弱点への攻撃の性質上1人で弱点に張り付かないようにね。』


ユウさんがそう言ったら他のキャラクターさん達が首を傾げた。…これは知らないパターンかな?


『えっと、弱点を攻撃されると一時的にターゲットが向くの。マルチプレイなら代わる代わる弱点を攻撃することでターゲットを一人に絞らせないのが重要だよ。』


『ななみちゃんの言った通りだから気をつけてね……ねぇななみちゃん、これ結構知らない人多いよね?』


『確かに結構知らない人多いね。…なんでだろ。』


…なんでだろ。


『ところでななみちゃん、他に注意点ってある?ボクあまりリザードマンロードに詳しくないから何かあるなら教えて欲しいんだけど……』


『んー……今回はHELLだし、基本的に全部注意したほうがいいといえばいいんだけどね。その中でも絞って注意するなら……大技と……残り体力5割での形態変化に注意するのと……あとは残り体力3割でのアレかな?』


『……“変異”?』


ユウさんの言葉に頷く。


難易度HELL以上のボスモンスターに追加される共通の確率行動、“変異”。これがまたクエストを難しくしてる原因でさ…


『流石に起こるなら“狂暴化(バーサーク)”だと思うけど…何が起こるかも確率だからね。最悪の場合一番面倒なのを引くかも?』


『……そこまでボクの運が悪くないことを願うよ……』


「姫様の運ってどうでしたっけ……」


それを言われて言葉に詰まるユウさん。


『……変動しやすいけど今年は結構悪い。特に今年のおみくじとか凶だったし。』


『あ、なんか前に配信で言ってたような気がする…』


『…言った覚えあるもん。』


…うーん。大丈夫、だよね?…あ。


『あと1つ、ホントにあまり見ないやつだけど体力が0.5割を切ると1度だけ回復行動を起こすことがあるね。』


「え、回復してくるの?」


『うん。基本的には総体力の1割から2割くらい。…ただ、私が一度見たことあるやつだと全回復してくるのもいたから油断は禁物だね。』


「うぇぇ……」


『一番面倒なのを引いてもボク一人で対処できるようなのだったらボク一人でやるよ。…ダメそうだったらななみちゃんに一緒に戦ってもらおうかなぁ…』


『そこで私なんだ…』


「グルルル………」


どうして、って聞こうとしたところでリザードマンロードの声。ちょっとタイミング悪いなぁ…


「グォォォォォ!!!」


『……復帰した直後にもう1つの大技かぁ。ユウさん、タイミングは教えるからカウンターしてみて?』


『え?あ、うん……ボクにできるのかな…“ヘイトデスポイル”』


……さっきから思ってたけどユウさんってリザードマンロードに対してはなんかちょっと弱気だよね。他のモンスターにはそうでもないんだけど。


そう思ってるとリザードマンロードが大きく跳ぶ。大技“ボディプレス”。リザードマンロード自体が巨体、かつWEI400とかいう結構な重量だからその落下攻撃となると相当な威力になるんだよね。


ちなみにキャラクターを持ち上げるのに必要なSTR値は最低でも50。でもこれはあくまで“素の力で持ち上げる”ことに関して。状況によってこの条件は変わる。


『うぅ……』


『…あ。』


ユウさんの身体が震えてる。これは……緊張、じゃなくて……不安?


『……落ち着いて。盾を向ける方向は敵の攻撃を正面から受けるように真上へ。敵のいる方向を真っ直ぐと見据える。』


『ひぅっ…!?』


『大丈夫、ユウさんならできる。落ち着いて───』


そう言った後に人差し指で軽くユウさんの頭を突く。


『───集中。敵との間合いと自分の盾、それから私の合図にだけ意識を絞って。それ以外への意識は、今は全部捨てていい。』


『……うん。』


……うん、緊張が少しずつほぐれてきたかな。


っと───


『───今。』


『“シールドカウンター”!!!』


私の声にほんの少しだけ遅れてスキルを宣言するユウさん。


“シールドカウンター”っていうのは“シールドパリィ”と“カウンターインパクト”を同時に行う大盾のスキル。“カウンターインパクト”の要素があるからこそダメージ判定がある。


そのスキルは正しく起動して、リザードマンロードにダメージを与えた。


「……す、すごい……」


「姫のスキルラグまで読み切って……」


「正確に“シールドカウンター”を発動させたの……?」


「桁外れすぎる……勝てるわけがない……!」


「ななみちゃんと対戦にならなくてほんと良かった……!」


いや私とは対戦にならなくないっけ。


「てか姫さっきの声可愛かった……」


「姫の悲鳴ってレアだよね…」


「ホラー系だとちょいちょいあるけどそれとはまた違った悲鳴で……その、なんというか。…そそる?」


そんな声が聞こえてユウさんの顔が赤くなる。


『も、もう!からかわないでよ!!』


「そして反応もかわいい……」


「姫様ってほんとに男の人なんですか……?」


『れっきとした男だし、既婚者だよっ!』


「嘘だぁ……」


…実際どうなんだろうね。


今回実際に対面して分かったけど、なんか視線から得られる情報には靄がかかったような違和感があるから自己暗示か何かを使って演じてる可能性が高いと思うけど。


なんでそう思うかっていうと視線から得られる情報にこういう違和感がある時は大抵は私みたいに自己暗示を使った演技をしてる最中の人だから。自己暗示を使って“自分が自分ではない”状態になることで自分の情報を隠す小技みたいな感じだね。


『ふぅ……気を取り直して……』


小さく呟いたあとリザードマンロードに目を向けるユウさん。実はちょっと特殊なカウンターをした後だから怯みが長め。


……特殊なカウンターっていうかいくつかある対処法の中でも最善に近い手を打ったからその影響かな。


大技は適した対処をすると大きな隙を晒すから。“全方位火吹”とか使用後に数分スキル封印になるの結構な隙だし。


『とりあえず総体力の3割!!早急に削り取るよ!!』


その言葉を聞いた後、ユウさん以外で顔を見合わせて小さく頷く。


『───それが霊鳴姫の望みであれば、我々は姫の幽騎士となりましょう。』


「我ら霊従者、幽霊姫に忠誠を誓うもの。」


「我らは元より戦わざるもの、主として心に抱くは刃ならず。」


「ただ姫を助け、姫の側に付き従うが我らが使命。」


「しかして姫が我らに刃を望むならば、例え鈍かれども刃を現す。」


「姫の御心に真に応えるべく、我々は個々が抱く心の刃を研ぐ。」


そう言って私達はユウさんの前に跪く。


「姫の導きに従い、我が刃は眼前の敵を狩る鎌となり。」


「姫の示しに従い、我が刃は眼前の壁を砕く鎚となり。」


「姫の調べに従い、我が刃は眼前の謎を解く杖となり。」


「姫の記しに従い、我が刃は眼前の時を著す本となり。」


「姫の望みに従い、我が刃は眼前の門を開く鍵となり。」


『姫の灯りに従い、我が刃は眼前の禍を貫く剣となりましょう。』


「姫の象徴たる盾に我らは集い、姫の護りの裏に潜む隠し刃となる。」


「それは明確な形ある刃にあらず、しかしその刃は全て劣悪ならざるが如し。」


「忠誠に刃など不要、されど研ぎ澄ますは我らが姫様の力となるために。」


「鋭く研いだ護刃はその手に、声に応える誓文はその心に。」


「それは最早従者ならず、騎士の名を冠すべきもの。」


その言葉が聞こえたところで魔術師の女性キャラクターに少し視線を向けると小さく頷いてくれた。


「───誓いを此処に。我は霊界の姫に寄り添い侍る者、我は霊界の姫を守護せんと想う者。されど汝は霊界の全てを守護せんとする者、その守護に我を含まんとする者。我は汝の身を守護せんと望み、願う者也。」


『霊界の、霊鳴の姫君よ。我等従者が貴女の騎士となること。貴女様はお許しくださいますでしょうか?』


そう言い切って顔を上げると、ユウさんがぽかんとした表情をしていた。


『………』


『…姫よ?』


『…なんで』


「「「「「『???』」」」」」


『なんで、合わせられるの……?打ち合わせでもしてたの……?』


『……と、言われましても。』


合わせられたから、としか。


当然ながら打ち合わせなんてしてない。だってここが実質初対面だし。打ち合わせしてたらユウさんも知ってるだろうし。


それでも合わせられたのは……まぁ、リスナーの絆、みたいな?


『……もう!わかったよ!!』


そう言ってユウさんは盾の先を地面に叩きつける。それと同時にユウさんの纏う空気が一変。


『幽霊姫、姫川ユウの名においてここに宣言します!この度の戦において、花園ななみを筆頭騎士とし、皆が私の守護騎士となることを認めましょう!!その代わり、この戦が終わり、守護騎士の任を解くそのときまで、誰一人欠けることは許しません!!よろしいですね!!』


「「「「「『───はっ!!』」」」」」


『………これでいい!?ねぇ!!!』


あっ、ユウさんが耐えられなくなった。恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてるユウさんも可愛いんだけどね。


あと今の纏う空気の変わり方…もう元の空気感に戻ってはいるけど、あれってやっぱり暗示だよね?演劇部に暗示演技使いの人が私以外にもいたからそれと同じだと思うんだけど…


『…じゃ、とりあえずリザードマンロードに集中しよっか。大技は使われる兆候を見たら私が叫ぶからそれで対処してね。』


『うぅ……がんばる…』


『頑張ろうね。』


……私も全力は出せないけど頑張らないとね。


一応切り札に近いものは持ってきてるけど、できれば使わないことを願いたい。今は1回きりしか使えない、言ってしまえば奥の手だから。

大盾、大鎌、大鎚、魔術長杖、魔導書、大秘鍵、細剣。

忘れてましたけどこれが今回のパーティのメイン武器構成です。

大秘鍵っていうのは100cmくらいの長さがある大きな鍵です。

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