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No.76 地獄という名の脅威

今回は姫川ユウさんの視点でお送りします。

「ポ、“ポイントマーカー”!!」


「重ねるね、“ターゲットマーカー”!!」


「その上にさらに重ねます、“ウィークマーカー”!」


クエストが始まったことで決定したクエストに対する衝撃から全員が復帰、3人の魔術師が“特定部位弱体化”のスキルを使ってくれる。


特定部位弱体化スキルの使用は高難易度クエストの最初の行動としては基本ではあるから、切り替えが早いことから見てもみんな結構やってるプレイヤーさんたちだね。


それに反応するかのように魔術師以外の3人も動き出す───その中には当然ななみちゃんの姿も。


『ななみちゃん、無理はしないでね!?』


『私のことは気にしないで大丈夫だよー!さっき言ったでしょー!?』


ボクの言葉にマーカーのついた場所と弱点以外を攻撃しながら返すななみちゃん。それは他の人と比べると本当に小さなもので、ダメージを与えているかも怪しいもの。


…実際、ダメージエフェクトは出てるからダメージそのものはあるんだけど…


『……ななみちゃん、多分ボク達の不安に気づいてるよね……』


多分この動きはそうだと思うんだけど。



コメント:


:そうね

:そうだねぇ

:ななみちゃんの動画と比較してもなんか動きが悪いというか…

:弱点をちゃんと攻撃できてないというか…

:完全接続型の初心者みたいなぎこちなさじゃないからなんか違和感がすごい…

:どちらかというと熟練者の動き方だよね…

:……ねぇ、弱点を把握してないというかコレ弱点を意識的に避けてる?

:言われてみれば?

:ななみちゃんの攻撃箇所、弱点マーカーをほんの数ミリズレてるね

:突き技だから弱点を攻撃するのが難しいのはわかるけどこんなに綺麗に弱点を避けるわけないから多分わざとよね…

:でもなんで?



『弱点を攻撃するとヘイトが向きやすくなるからかな?余計なヘイトを貰ってボク達に心配させないように…っていうのも考えてるんだと思う。』


ただでさえCL1で、攻撃が少し掠っただけでも即死する状態だから…


クエストが始まる前の段階でもちょっと揉めたというかなんというか…誰がななみちゃんを守るか、とかの話し合いみたいなのがあったからね。


……結局、ななみちゃん自身が誰かが護衛につくことを強く拒否したから今の状態になってるんだけど。


『ボクとしては心配で心配で仕方ないよ……』


「グォォォォ!!」


『っと、“シールドバッシュ”!!』


ボクに振り下ろしてくる軍刀を盾による押し出しで防ぐ、というか相殺。そこから───


『“シールドスラスト”!!!』


盾の先、尖っている部分をリザードマンの左脚に向けて突き刺す。


盾にはいくつか種類があって、先端が尖る十字盾とかだと突き技が使えるんだよね。


で、えっと……


『多分次の攻撃で脚部破壊ダウンする!誰か攻撃種別打撃系でボクと合わせてほしいっ!』


「任せてくれ、姫!魔術班、援護頼んます!」


「は、はいっ!」


ポイントマーカーを使ってくれた人が答えてくれたのと同時にボクは盾の先端を地面に突き刺して棒高跳びの要領で跳躍。その勢いのまま盾を引き抜いて───


「“オーガキング”!!」


「“ハンマーインパクト”!!」

『“シールドスマッシュ”!!』


「グォォォォォォ!?」


『頭部弱点降下!だけどそのまま両腕を狙って!』


「おうよ!」


「我ら仕えるべき姫君の要望とあらばっ!」


「我ら従者、従うのみぃぃぃ!!」


『我らが姫よ、おまかせあれー!』



コメント:


:草

:いや草www

:参加者全員全員癖強すぎるwww

:ななみちゃんもちゃっかりノッてんのよ

:あと低音に声変えたりせずにそのまま“ななみちゃん”で言ってるから可愛いのなんのって

:わかる

:んでコレ全員姫の視聴者やね…



『どっちかというとお姫様はななみちゃんの方な気が……ボク男だしさ…』



コメント:


:あー…

:ま、まぁ…

:言いたいことはわからなくはないけど…

:でも姫って普通に女子力高いから女の子って言われても違和感ない…

:ほとんどのメイドはその女子力の高さにプライドを粉々にされましたとも、えぇ。

:姫と結婚できた人が羨ましい…

:てかやっぱり姫の指揮能力高いよね

:それ思う

:そして姫、指揮能力だけじゃなくて戦闘能力も普通に高いのよ

:大盾って戦闘に向かんはずよね……

:タンクとしては向いてるけどアタッカーとしては役不足……なはずなんだけどなぁ。



『あはは、ボクの戦闘能力に関しては師匠のおかげかなぁ…』


一番最初の教えが“どんな武器種であっても剣にも盾にもなる”だったからね。



コメント:


:出た、お師匠様

:姫のゲーム配信で度々名前が挙がる謎の御方

:Vtuberになる前の姫に仮想空間での戦闘のイロハを教え込んだとされる謎の御方よね

:確かそのお師匠さんにはこのVtuber活動のこと話してないのよね

:お師匠様との対談コラボとか見てみたいわぁ



『その機会があったらね?…っと、部位再生!リザードマンロードが立ち上がるからみんな離れて!』


「「「「「了解っ!」」」」」

『りょーかーい!』


全員の反応があったのを確認してボクも安全な位置に下がる。ななみちゃんも…問題なし。


「グルォォォォ!!」


『……ッ!』


軍刀が青く輝く───スキル。


『“ヘイトデスポイル”!』


「姫、“ゴーレム”ッ!!」


『ありがと、“シールドパリィ”!!と、“ペネトレイトナックル”!!』


スキルのかかった軍刀をスキルで弾いて───右脚のヒールで地面を強く鳴らす。


『“天変地異(カタストロフィ)氷河(グレイシア)”!!』


そんなスキル宣言でリザードマンが凍る。そこからさらに左脚のヒールで地面を強く鳴らして───


「“天変地異(カタストロフィ)火山(ボルケーノ)”!!」


スキル宣言とともにリザードマンを火柱が包む。



コメント:


:うぉぉぉぉ!!

:出たぞ、姫の浸透拳からの天変地異魔法二連撃!!

:本職魔術師顔負けとまで言われる超高速展開…!

:片方のヒール鳴らして凍らせて、もう片方のヒール鳴らして焼き尽くすのは姫の得意技よぉ!

:ちなこれ結構難しいんよね

:それ

:足装備アクセサリの鈴をちゃんと鳴らさないといけないんだっけ。

:そうだっけ

:有識者ー!

:“マジックベルアンクレット”ね。足装備アクセサリで、鈴が鳴ると魔法スキルを起動できる触媒になる装備品。ただその状態で通常と同じ火力で魔法を使うのって難しいっていう

:ちょっと使ったことあるけど鈴の音結構小さい上に受付時間が短い、それでいて魔法の火力は杖で使うより弱くなるのが基本なんよね…

:まぁアレって一応補助用の魔法道具だから…

:そして姫ってVtuberモデルロードしてるから鈴の音聞こえにくいのにちゃんとそれ聞いて使うのって凄いのよ…

:ていうか男性なのにヒールで動いて転ばないのほんとすごい…



『慣れたら結構簡単だよ?ボクもこれ師匠に教わってすぐにできたわけじゃないし…』


そう話してたら火柱が消えて中から軍刀がボクに襲いかかってくる。


『おっとっと…炎と氷。同じ火属性に該当する攻撃だけど、方向性で効果が変わっちゃうんだよね…』



コメント:


:それなぁ…

:それ

:割と難しいよねこのゲームの属性。

:火属性は“熱源”に関する属性で、水属性は“湿気”に関する属性で…木属性は“植物”か、アレ?

:どっちかというと木属性は“自然”。土属性は“天災”かな。んで金属性は“鉱物”。

:木属性にも災害系の技ってあるけどね

:土属性は天災っつーか圧力?

:地震とかから考えて振動とかも考えられるけど…

:わからん……

:姫はどう思う?



『んー…ボクの考えでいいなら“動力”じゃないかな?本来の意味とは結構違うけど。』


地面を動かす力。電気を発する力。物を歪める力。そう言った、“何かを動かす力”そのものが土属性。


チャットではボクの解答に対して“それは営力で火山とかにも関係するやつじゃない?”とか“風力とかに影響するなら木属性もじゃない?”とかって言われたけど、火山は火属性の管轄だし、風は木属性の管轄だからね。


実際、このゲームの五行は各自受け持つ場所が定められていて、別の元素が加わってその現象を引き起こすみたいなのも結構あるから。


現実でも大地に関係する電気が風で起こせる、ってことを話したらちょっと納得してくれた。


…まぁ、風力発電は完全に風だけで電気を起こしてるわけじゃないけどね。正確には風を受けて風車が回って、内部で発電機が作動して電気を起こしてる…だったはず。水力発電も同じ感じじゃなかったっけ。


土属性に関してはホントになんて定義していいのかわかんないんだよねぇ。もう一つ候補を挙げるなら“磁力”かもしれないけど。それだと空間魔法が土属性の派生になる理由がわかんないんだよ。


『……ん!両腕破壊確認!続けて両足破壊お願いっ!』


「了解っ!」


「“ウォータージェイル”!動き、止めました!」


「“オーガキング”!物理班、やっちゃって!!」


「ブ、“ブレイクマーカー”…!部位破壊特化攻撃、行けます…!」


魔術師3人の声に応じてボク達はそれぞれ2人ずつ脚に向かう。ななみちゃんはステータスの差でちょっと遅れるけど。


「“クラッシュハンマー”!!」

『“シールドブロー”!!』

「“ジャッジメント・ディスティニー”!!」


ボクと大鎚使いの人───ハドラーさんは右脚に単発技。左脚に行った大鎌使いの人───ディルズさんは上位スキルの連撃技。多分、ななみちゃん1人だと力不足だからだと思うけど……


『やぁぁぁぁぁっ!!』


そんなことを思っているとななみちゃんが到着、鋭い一撃が左脚に刺さる。その一撃で、残り僅かだった左脚の耐久力は0になって破壊された。


「ギャォォォォ!!」


『大ダウン、背中弱点露出!』


「おっしゃ、畳み掛け───」


ハドラーさんがそう言ったところで、リザードマンロードが跳躍した。


「「「「「『えっ!?』」」」」」

『わっ!』


四肢を破壊したリザードマンロードは動けないはず!!なのに、なんで───




───いい?リザードマンロードの高難易度版は、クエスト開始後3分で大技の1つである“全方位火吹”を放ってくる。それはたとえ部位破壊していたとしても即座に再生して動く強制行動。リザードマンロードと戦う時はそれを忘れちゃいけないよ。


───最も行うべきは回避。防御だと耐えられるかわからないから。




不意に、師匠の言葉が蘇る。


それは、初めてボクがこのゲームに入った時、間違えて高難易度に挑んでしまった時の言葉で───


『……!!!まずい…っ!!』


今ちょうど3分だ……!!


『みんな、跳んでっ!!』


ボクが言った直後に視界の端に赤い光。


確認が間に合わないっ…!


『“ファイアシールド”ッ!!』


咄嗟に赤い光に向けて張った耐火属性の盾は───簡単に押し潰された。

括弧が『』の人がななみちゃんだけではなくユウさんも。これが何を示すか……お分かりですね?

はてさて不意の大技に対処が遅れ……一体どうなることやら。

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