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No.74 7回戦前休憩時間

時間が飛ぶので運営配信で誰が出てどんな敵と戦ったのかだけでも。さすがに全部書くと長すぎる…


2回戦:りりにゃん(拳術師)vs鉱石の人形

3回戦:鈴川リンネ(支援師)vs触手(物理攻撃無効)

4回戦:白黒モノ(剣術師)vs双大鎌の死神

5回戦:静歩カナ(回復師)vs古代の樹木

6回戦:音越ヨミ(描写師)vs十三の魔手

〔……ナーンか…パッとしねぇナァ……〕



コメント:


:あっ

:あっ

:言いやがった

:言いおった

:言うてやるなぁ!!

:でもまぁ言いたいことはわかる

:悲しいことに分かっちまう…

:いや確かにプレイ自体はみんな上手いんだよな…

:んね

:リーダーとして参加してるVtuberだけに限ってもパッシブスキル以外使わないりりにゃんさんとか、すごく緊張してるけど健気に頑張って戦う鈴川リンネちゃんとか、マルチが苦手でソロの時みたいなキレがないけど自分が仲間に合わせることでだいぶ解消した白黒モノさんとか…

:あと一参加者として参加してるVtuberさん達も軒並み上手いのよ

:5回戦で出てきた個人勢の桐羽マコトさんとか特にそうよね

:桐羽さんはそもそもCL200+40とかいうこのゲームの最上位勢だから…

:ただその桐羽さんから見てもういちゃんのレベルは非常に高かったらしいという

:実際、リーダー全員上位25%にいるだけはあるんよな、上手さ的には。

:ただ……

:ただなぁ

:…うん、なんか物足りない

:それよ

:それ



〔ナンだかナァ……1回戦の時みたいなドキドキ感?ワクワク感?みたいなのが足りねぇンだよな…〕


〔言いたいことはわかりますけどね……〕


「……私、なんかやっちゃったかなぁ…」


不安そうな声で呟く結の頭を優しく撫でる。


今はもう結も愛海も起きてる。3回戦中盤あたりで起きたかな。


「私は結構頑張ってたと思うよ?」


「何が悪かったといえば……呼ばれるタイミングかしらね。」


「トリに来てもおかしくないような盛り上がりでしたものね……」


「結ちゃんほんとすごかったですもんね…」


「途中なんて弾幕避けゲーム見てるみたいだった…」


「今日のは見てないけど結ちゃんってほんとすごいもんね…」


「………そこまで言われるとちょっと恥ずかしい…」


顔を少し赤くする結に私と奈々で小さく笑う。


「…実際、補助師の立ち回りとしては満点に近いんじゃないかな。私は補助師じゃないから正確な評価は言えないけど…」


「加奈お姉ちゃんは補助師どころか魔術師でもないから…魔術師なのはママだし…」


「加奈もルーン魔術は使えるけれどね。」


「いや奈々、私ルーン魔術は“アンスズ”とか“アルジス”とかの少ししか使えないからね?それにメインは近接戦闘だから…」


「あの、先生。少しって言いますけどルーン魔術を複数扱える時点ですごいんですけど…」


奏さんの少し呆れたような声に3人揃って苦笑い。


「奏さん、ルーン魔術スキルってそんなに難しいんですか…?」


「…そう、ですね……刻まれたルーンに込められた意味を読み解くのもそうなんですが、戦闘でメインで使うとなると戦闘中に刻むルーンの意味を強く意識しておかないといけないんですよ。基本的に“アルジス”のギミック破壊用に入れてるだけならまだしも、ちゃんと戦闘で使うとなるとルーンの意味を考え続けないといけないので。」


「意識…ですか。」


「基本的には文字を刻んでスキルを唱えるまでのコンマ5秒あるかないかの時間で文字に意味と役割を伝えないといけないわけです。…ルーンストーンやカナさんの大鎚にやったような方法は“文字を消されない”という大前提があるからこそできるわけで…特に魔紋印で模様を打った場合、そこに異物が入り込むとすぐに模様が消えてしまいますから…」


「…は、早…」


「ですから、結ちゃんは本当に凄いことをしているんですよ。大人でもそんな高速思考はできない……いえ、むしろ子供だから出来るんですかね…?」


その奏さんが咲月さんにした説明に結が困ったように笑う。


「慣れの問題かもですけど…」


「慣れだけでできるようだったら誰でもルーン魔術使ってる気がしますよ…特に結ちゃんは攻撃的な使い方のゲルマン式読みのスキルと防御的な使い方のアングロサクソン式のスキルを使い分けてるじゃないですか。」


「それは……まぁ、やるならとことん突き詰めたかったのでやっちゃいましたけど。…その影響で“ルーン・マテリアライズ”っていうスキルも取得しちゃいましたけど…」


「そもそも結って槍使い始めたのCL45あたりからだもんね。」


「偶然“ムーンライトスピア”を手に入れたから副武器は尖槍にしたんだよね……そしたらルーン魔術と組み合わさって“グングニル”とか“ゲイ・ボルグ”とか使えるようになっちゃったっていう…」


グングニルとか使えるようになったのは偶然だったって言ってたね、そういえば。


で、その槍のこと聞いた奏さんの大きなため息が聞こえた。


「よりにもよって初取得が月光武器とか……なんという代物を、また…」


「有名な武器なんですか?」


「まぁ月光はねー。…月光に限らずだけど、このゲームにおいては“月光(ムーンライト)”、“日光(サンライト)”、“星光(スターライト)”の三光(トライライト)と“闇月(ダークムーン)”、“闇日(ダークサン)”、“闇星(ダークスター)”の三闇(トライダーク)…それから“月蝕(ルナエクリプス)”、“日蝕(ソルエクリプス)”、“星蝕(ステラエクリプス)”の三蝕(トライエクリプス)に“月食(ルナイーター)”、“日食(ソルイーター)”、“星食(ステライーター)”の三食(トライイーター)といった月、日、星の“三界域武器(トライエリアウェポン)”とも呼ばれるものは特に有名だよ。その中でも月光はダー〇ソウルとかの例もあるから……ね。とはいえ全く別物ではあるんだけど。」


あとこっちのほうが後発だから見方によってはパクリに見える。実際あまり関係はないのだけど。


それから月、日、星の三界域武器だけじゃなくて宇宙関係の武器はそもそも結構有名だし、強い。三界域武器が有名すぎるだけで“天弓サジタリウス”とか“予言杖アルコル”とか結構名前聞くし。


確か開発者さんの中に宇宙とか神話とかが大好きな人が多くいるって聞いたことあるけど…


「そういえば加奈お姉ちゃん、“ムーンライトスピア”のステータス要求が18で、物理攻撃力が180なんだけど…これって多分……」


「あー…多分アレだろうね。」


「……だよね?」


「18……あぁ、なるほど……そういうことですが。」


「あら、奏さんもわかるのね。」


「分かる人には分かると思います。」


「「18…?」」


咲月さんと悠奈さんは分かってなさそうかな。


「「「“月”だよね。」」」

「“月”よね。」

「“月”ですよね。」


私達の声が重なる。…まぁ、そうだよね。でもまぁ、奏さんはちょっと意外。


「……?えっと?」


「月がどうか…?」


「えっと…2人は“大アルカナ”って知ってる?タロットカードの一部なんだけど。」


「「名前くらいは……」」


「タロットカード全78枚のうち、4種類各14枚の56枚で構成されているのが“小アルカナ”、全く違う絵柄22枚で構成されているのが“大アルカナ”ですよね?」


「奏さんの認識でも間違ってはないんだろうけど…まぁ、タロット占いといえば、っていうカードだと思えばいいと思うよ。私は専門じゃないからちゃんとした説明なんてできないし。」


「その大アルカナ内の番号で18番が割り当てられてるのが“月”のカードなんだよね、加奈お姉ちゃん。」


結の言葉に頷く。


「こういう小ネタみたいなのってよく隠されてるんだよね。」


「そういえばタロットカードってこのゲームにもありましたよね。魔法に使えるって書いてありましたけど…」


「“カード魔術”のことですか?カードの意味を理解して使うことで本領を発揮するスキルですよね?」


「……知ってるんですね、結ちゃん…」


「ママが使い手ですし…」


「………あのスキル群も結構難しいって聞きましたけど…」


「ルーン魔術ほどじゃないわよ?文字だけのルーン魔術と違って絵が描かれてるカード魔術は難易度が低め……」


そこまで言ってから何かを思い出したような表情をした。


「あぁ、違うわね。確かにカード魔術はルーン魔術よりも難易度は遥かに低いけれど、それはあくまで大アルカナの話。小アルカナはスート毎でそれぞれ性質が似通っているのもあって扱いが難しくなるのよね。」


「そうなんですね……」


「……実際、このゲームの“ルーン魔術”と“カード魔術”をどちらも万全に扱えるのって魔女くらいじゃないかしらね。」


「魔女……ですか。」


「その辺どうなのかしら、加奈。」


「いや、ここで私に振るの?」


でも…うーん。そうだなぁ…


「……魔女じゃなくて占い師でも十分扱えるんじゃない?占いにルーンとカードを使っているとすれば、だけど。魔女であっても方向性……専門が違えば理解はできないだろうし。逆に魔女や占い師じゃなくて創作者でも扱える人は扱えると思うよ。ただ単に理解度や想像力の問題だと思うから。」


「そういうものなのかしら…」


「ルーン魔術だって“ラグズ”じゃなくて“水”って書いてあるなら使える人が多いんじゃないかな。アーティファルのドリームシリーズほどじゃないけど、このゲームもイメージが重要だからね。」


「そもそも先生、アーティファルのあのシリーズは全VRゲームの中でも異質なんですよ……あの異質さが奥深くて惹かれる要素とも言えるんですが…」


「まぁ、実際異質だよね……チートがシステム上の魔法として登録されるとかさ……」


「あぁ、それ……1度使われたチートは“違反魔法”という名称で魔法として自動登録されるので一般プレイヤーでも対処できるようになっちゃうんですよね…魔法で防御するんじゃなくて魔力を纏った武器で違反魔法を斬る、砕く、貫くなどして無効化するとかいう超人染みた事をやってのける人もごく少数いますし…」


奏さんの言葉に少し苦笑い。


「だからって違反魔法を使ってるプレイヤー全員が悪いチーターってわけじゃないけどね。プレイヤーを守るためにチートを使う人もいるし。」


「チート行為ってオンラインゲームではダメなことですけど、特にドリームシリーズにおいてはチート行為をする=悪じゃないんですよね…ドリームシリーズをやってない人で、事情を知らない人からすれば悪いことをしてるようにしか見えませんけど。」


「そこは難しいところだよねー。まぁ、本当に悪いことをしてるようだったら運営や“執行者”あたりが動くんだけど。」


私がそう言うと怯えたような声が聞こえた。


「……し、執行者…ですか。確か運営に依頼されて動くプレイヤーのことですよね?」


「そ。高いプレイヤースキルを持つプレイヤー達の中でゲーム運営やゲームシステムからの依頼を直接受ける者。いつもは普通にゲームを楽しんでいるけど、運営やシステムから依頼を受けた際はゲーム内の秩序を守るために罰を与える存在。他のプレイヤー達から呼ばれてる“処刑人”の方が有名かもしれないけど。」


「……あまり執行者が出てくることはないですけどね…」


「それは当然でしょ……って言いたいけど、まぁチート行為する人って他のゲームでも結構いるもんね…特に荒らし目的。」


「です…」


ちなみにプレイヤーを守るためにチートを使うプレイヤーっていうのは“ホワイトチーター”って言って、自分がチーターの汚名を着てでもチートを使い、他のプレイヤー達に各チートへの対処方法を教え込むプレイヤーのことを指してる。ちょっとだけホワイトハッカーと似てるところはあるかもね。


そしてそのホワイトチーターで対処できない場合は運営や執行者の出番。執行者は運営に近い権限を持ってるから簡単に罰を与えることくらいならできる。


執行者でもダメなら外部管理者エクスターナルアドミニストレータの出番。外部管理者っていうのは執行者のさらに上位の権限を持つ運営外のプレイヤーのこと。外部であっても管理者だからほとんど出来ないことはない。


それでもまだダメなら総合管理者ジェネラルアドミニストレータ。早い話がゲームマスター。…なんだけど。


……実際、総合管理者がチーターへの対処のために出てきたっていう話は聞いたことがないなぁ。


〔じゃ……それでは最終戦!7回戦を始めマス!まず、運営配信に乗るパーティは───こちら!〕


ルーレットが回って、Vtuberさんの顔と名前が出る。…あ。


〔運営配信、大トリを務めるは姫川ユウさん!続いて今回選ばれるプレイヤーは………コ・チ・ラ!〕


運営さんの言葉にスロットが回り、合図とともに止まる。


「……あ、私だ。」


「あら、加奈ね…」


……大トリで私かぁ。しかもきっちりユウさんのパーティーだし…


〔ハイ!表示された番号を持った人は別室に移動してくだサイ!Go,Go,Go!!!〕


「…ま、パーティーを崩さない程度にやってくるよ。」


「お兄ちゃんって今CLいくつ?」


「最高CL200+141。最近やったから覚えてる。」


「あっ、化物だった……」


「先生、流石に高すぎません?」


「稼働初期からやってるからね。」


「そういう問題です…?」


そういう問題だよ、って言って席を離れる。


会場から出て近くにいる係員さんに番号札を見せると手元のタブレットで確認された後、別室に連れられる。


別室の中は業務用のVRマシンが1台とそれに接続されたカードスキャナが1台。


「準備時間は1分ですのでお急ぎくださいませ。」


「ありがとうございます。」


そう言って係員さんは退室。


私は鞄からカードを取り出してスキャナに通す。その後、VRマシンに腰掛けて赤いボタンで起動させる。


意識が一瞬落ちたあと、すぐに意識が復帰する。


そこは既に現実世界ではなく仮想世界の中。データ選択を要求する真っ暗な世界───“データセレクトエリア”、とも呼ばれる場所。戦ったり生活したりする場所は“ゲームプレイエリア”。


その真っ暗な世界の中に佇む1つの人影───


「………あっ。」


私はそれを見て重大なミスを悟った。


「……やっ、ちゃった…」


今回のイベントで使われてるのは店舗版。店舗版は一度ログインするとクエストを終えるまでログアウトすることができない。


だからこそ、アカウントを変えることができない。アカウントはカードごとだから。


「うー……とりあえず、アバター構築されたらちゃんと謝ろ……」


世界に佇む人影に触れると私がその人影に吸い込まれる感覚がする。


そこから感覚が消えてアバターの身体が分解され、データの粒子となってデータセレクトエリアからゲームプレイエリアに移動する───

加奈さんがなんかやらかしました。

なお途中でチャット欄に名前が出てきたVtuberさんは“桐羽(きりゅう)マコト”という名前です

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