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No.73 悩み

1回戦が終わって……結さんを迎えた加奈さんには悩みがあるようで…?

「あ、帰ってきた。」


1回戦が終わって少しして、疲れた表情の結が席に帰ってきた。


「ただいまぁ…」


「おかえり。お疲れ様、結。」


「疲れたぁ……頑張ったよ…」


「ん、えらいえらい。」


「ふぁぁ……」


頭を撫でてあげると気持ちよさそうにする結。なんというか……


「結ってば、たまに猫っぽいところあるわよね…」


「はぇ…?」


「あ、私もそう思う。特に疲れた時なんかそうだよね。」


「ね。」


「そうかなぁ……」


うーん……自覚ないかぁ。


「ぅん……」


「…っとと。少し寝る?」


「ぅーん………ねる……」


「ん、じゃあおやすみなさい。」


「ん………」


そうして結は私に寄りかかって寝息を立て始めた。


「……よっぽど疲れたんだね。」


「そうね……集中力はあるけど持久力はあまりないものね、結は。」


「ね。」


……あ。


「……これ2回戦に私呼ばれたときどうしよ。」


「その時は私が預かるわよ。」


「…ん、その時はお願いね。」


「……全員呼ばれたらどうしようもないけれどね。」


「流石にそれはないんじゃないかなぁ…」


……流石に全員一気に呼ばれるはないと思うんだよね……多分。


こういうとき、結は短時間睡眠モードで数十分経てば起きるから長時間このままじゃないといけないってわけじゃないんだけど。


そんな事を思っていると奏さんがこっちを見てたのに気がついた。


「…それにしても、こうして見ると本当に普通の可愛い女の子ですね、結ちゃん……さっきまでのが嘘みたい……」


「霊能力持ちとか、天才なことを除けばただの女の子だもん。当然でしょ?」


「…それもそうですね。色々な要素を除いてしまえばただの女の子、かぁ…」


「奏さんだってそうでしょ?不運なことを除けばただの可愛い女の子じゃん。」


「ぅぇ……?そ、そんなこと初めて言われました…」


んー…?


「……普通のことじゃない?」


「多分だけれど、加奈が“人の原型”で考えすぎなんだと思うわよ?そうじゃなかったら昔の私のことまで“ただの女の子”とは言わないと思うわ。」


……そう、かなぁ…?


「私にとって奈々は昔からたまに少し言い方がキツくなる程度で根本は凄く優しい普通の女の子だったからねー…今の私にとっては大好きな奥さんだし。」


「う゛っ……」


「「「何この甘々空間……」」」


……甘い、かなぁ。


それはそれとして、奈々が尊死した影響で奈々も私に寄りかかってきてて……


「……なんか本気で両手に花状態になってるんだけど。」


「っ……///」


「「わぁ……」」


「あの、先生もしかしてそれ素で言ってます…?奈々さん顔真っ赤ですよ…?」


「あ…っと、ごめん…??」


「い、いえ……大丈夫よ……」


……でも、私からすると2人とも可愛いお花なのは間違いないからなぁ…


「そういえば先生、結ちゃんってあのセリフの出てくる作品見てるんですか?」


「あのセリフ…っていうとゲイ・ボルグの?」


私に問い返しに奏さんが頷く。


「いや、見てないはずだよ?インターネットのどこかで仕入れたのか…それとも私の真似なのかだね。」


「先生の?」


「ん。私自身“魔槍ゲイ・ボルグ”の所有者だし。」


私がそう言うと奏さんの表情が一瞬固まった。


「……えっ?先生って“魔槍ゲイ・ボルグ”の所有者なんですか?」


「うん。“神槍グングニル”も持ってるよ。実際、結がやったグングニルを必中のアンカーにしてワイヤーで敵を引き寄せてゲイ・ボルグで止めを刺すって私が教えた方法だし。」


「……えぇ…?それはまたどうして…」


「今回の光翼みたいにすごく速い相手だと“追尾”が追い付けない可能性があるからね。“必中”なら相手の速度を無視して中てられるからアンカーにはちょうどよかったりするんだよ。」


「…あ、なるほど……」


そう言ってから少し微妙な顔をする奏さん。


「…伝説の武器をアンカー……鋲にするとか畏れ多くて普通考えないと思いますけど。」


「使えるものは何でも使え、だよ。畏怖とか敬意とか貴重とか……確かに大事だけどそれで出し渋って負けてたら元も子もないでしょ。このゲームの全てのアイテムは使うためにあるんだし。」


「うっ、痛いところを……肝に銘じます。」


この感じ、奏さんは出し渋って使えないタイプなんだろうね…“死矢ミストルティン”とか“霊薬アムリタ”とか特に使えなさそう。まぁ、使わなくても基本詰みにはならないけど。


実際このあたりは例の“ラストエリクサー症候群”と同じような感じなんだよね。システム的耐久無限の一部武器と違って消費アイテムは全部消耗品だから言いたいことは分からなくないけど…


なおこのゲーム、全てのアイテムはやろうとすれば無限に手に入るからあまり気にしても…っていう部分ではある。入手可能上限数とか所持可能限度数とかあまりない。あるとして所持重量かな…


〔それでは2回戦を始めマス!まず、運営配信に乗るパーティは───こちら!〕


そんな事を考えてたら運営さんの声。2回戦が始まるみたい。


ルーレットが回って、Vtuberさんの顔と名前が出る。


〔運営配信はりりにゃんさん!続いて今回選ばれるプレイヤーは………コ・チ・ラ!〕


運営さんの言葉にスロットが回り、合図とともに止まる。


……今回は私達に該当はなしと。りりにゃんさんって拳術師ファイターだっけ?


〔ハイ!表示された番号を持った人は別室に移動してくだサイ!Go,Go,Go!!!〕


その声に会場内で動き始める人達。


「……それにしても、結があそこまで強くなってたなんてね…私を越えていくのも時間の問題かな。…嬉しいというか悲しいというか…悔しいと言うか。…わかんないや。」


「……悔しい、ですか?」


「それはまたどうして……」


咲月さんと悠奈さんの言葉に小さく笑う。


「当然でしょ?私が積み重ねてきた努力なんて軽々と越えていくんだから。奏さんなら分かると思うけど、このゲームのスキルで完全習得がある時点で“反復動作の鬼”。…この年齢でだよ?反復動作への忍耐力、仮想空間への適応力、周辺状況への判断力、各種攻撃への対応力、敵性存在への対処力、味方軍勢への指揮力……これらどれもがこの子は非常に高水準。それは花神の血と姫園の血もあるだろうけれど、それだけじゃここまで辿り着かないと思う。……この子は高い才能もあって、なおかつ努力の鬼でもある。自分の才能にあぐらをかかずに努力を重ねる。そうなったら、どれだけ私が努力したとしても、私が無能な時点でこの子の到達点に勝てるわけがない……」


「先生……」


「…年甲斐もなくこんな小さな女の子に…それも自分の娘に嫉妬してるんだろうね。」


そう言い切ると、奏さんが心配そうな表情で私を見ていた。


「どうしたの?」


「…苦しそう……」


「えっ?」


「苦しそうな表情してましたよ、先生。…ずっと。自分の娘に…結ちゃんに嫉妬してるのが、嫌…なんですね?」


「…それはまぁ、ね。嫌いな人ならともかく、好きな人に嫉妬なんてしなくないもん。…そんな、嫌いになる原因みたいなの作りたくないし。」


高い才能を持っている、っていう時点では奈々も一緒。じゃあ何故奈々には嫉妬せずに結には嫉妬してるのかというと……恐らく原因は花神家由来の霊能力。そのただ一点であっても、それは私の精神の中で一番弱い所を抉る。


明確に“無能の兄”、“妹の出涸らし”、“花神本家の恥”だとされてきた、その部分を。…的確に、精確に、深く抉っていく。今は“無能の父”、“娘の養分”、“子供以下の親”とかも言われてるから尚更か。


「結が私と一緒にいるのが嫌だって言うまで、私は結と一緒にいてあげたい。それが私自身の意志だよ。でも本能は……本心は、結を拒絶しようとしてるのかもね。」


「……」


「……拒絶、したくないなぁ…」


そんな事を話しながら時間は流れていく。

実は内側に秘めてるのが非常に暗い加奈さんでした。

意志と本能がすれ違うのは相当辛いはず…

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