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No.72 1回戦の後始末

これにて1回戦終了……割と長かったような気がするのはたぶん気のせいじゃないですよね。

……いやどうなんだろう

「す……っごい……」


「なんだあの一撃……」


「マジで仕留めっちまったよ……」


地上にて本配信を見ていた私達はウイさんのその一撃に呻きました。


それほどまでに繊細で、静かで、華麗な一撃。たった11歳の女の子が出せるような代物ではない、達人と呼ばれる人間が出すような代物…にも思えてしまいます。


「んっと」


そのウイさんはというと、技を放ってから自由落下してきていて、今地面すれすれで背中の翼によって激突回避をしていました。


「「「「「………」」」」」


「……あのー……私の顔に何か……?返り血とか付いててもおかしくないですけどこのゲームにそんなのありましたっけ…?」


その雰囲気は戦闘中の時のものとは違ってただの女の子のもの。…言ってることはちょっと物騒ですけど、雰囲気は戦闘開始前のものと同一になってます。


豹変……いえ、バトルスイッチ…?


「本当に、ななみちゃんに似てる……」


「……そ、そう…ですか…?」


「えぇ……って、顔が引きつってますけど大丈夫ですか…?」


「えぇ、まぁ……ななみちゃんと似てる、かぁ…」


「……?」


………なんか、嫌なんでしょうか…?踏み込まれたくなさそうな雰囲気を感じるのでこれ以上は踏み込みませんけど…


「あっ、CL上がったー!」


「俺もだ…」


「こっちも……」


「…ほとんど何もしてないのに……」


「私も上がってますね。CL160台に行ったのは素直に嬉しいですけど…」


ほとんど何もしてないのは私も同じ……って呟いたら全員からそれは違うって言われました。


解せません。


「……あ、CL上がってる…」


「あ、おめでとうございます。」


「ありがとうございます。…スキルとポイントどうしようかな…」


そんなこと話してるうちにブン、と音がしてSOUND ONLYのウインドウが開きました。


〔ヘイヘイヘーイ!長時間お疲れ様ぁ!早速聴きたいんダガ、静歩カナ!今回のMVPは誰にするんだい?〕


「えっと……」


周囲を見渡してみると、ウイさん以外の全員が頷きました。


「……ウイさんで。」


「えっ、私?」


「「「「「異議なしっ!」」」」」


〔Ah…ヤッパリか……〕


〔なんとなくそんな予想はしてましたもんね…〕


〔ナ。とまぁリョーカイ、今回のMVPはウイだ。ンで、本来ならここでMVP報酬が贈られるんだがよ……〕


……?少し歯切れが悪いですね?


〔……すまねぇ、ウイ!あんたに合う装備が見つけらんねぇんだ!報酬贈呈はしばらく待ってくれねぇか!?〕


「へ?あ、はい、それは別にいいですけど…」


〔すまねぇ、恩に着る…!〕


「ちょっと待ってください、装備が見つけられないってどういうことですか…!?」


「た、たしかに…」


このゲームには万を超える装備があるはずです。それなのに見つけられないというのはどういう……


「杖なら“ケリュケイオン”とかあるよね……?」


〔ケリュケイオンなぁ…持ってんだよナ、この子。〕


「「「「「………えっ?」」」」」


〔おまけに“医神の長杖ワンド・オブ・アスクレピオス”も所有していらっしゃいますのでやろうとすれば回復役になれますよ、彼女。〕


「それSTR足りないんですけどね……」


〔それに関しては貴女のSTR値が低すぎるだけかと……〕


……あの、“医神の長杖”って回復役が喉から手が出るほど欲しい代物なんですが……


〔…っつーわけで、すまねぇ!アンタには後日報酬品とともに謝罪金を送らせてもらう…!それで許してくれ…!〕


「あ、はい……?分かりました。」


「……ウイさんって私より聖母の資格ありません?」


「え……?」


〔“聖母”本人が言うのかヨ。〕


〔チャット欄でも総ツッコミ受けてますよ…〕


と、言われましてもね…


〔……あーっと。…その、ウイ。1つ聞いてイイカ?〕


「なんでしょう?」


〔答えたくなかったらいいんダガ……“終撃奪いの単字魔術師”、ってナンダ?〕


実況さんのその言葉を聞いた途端、ウイさんの表情が曇りました。


「終撃奪いの単字魔術師…?」


…どこかで、聞いたような。


「……それ、ですか。それは私の通り名ですよ。」


〔お、おう…?〕


ウイさんは小さくため息を付いて、手元の槍を軽く回しました。


「先程見せたように私は単字魔術師かつ、スキル“ゲイ・ボルグ”の使い手なので…パーティで戦っているところを見られた場合、主に後衛である単字魔術師が最後の最後だけ前衛に出てきてLAボーナスを奪っていくように見える…のだそうです。」


〔……ほーん?〕


「その名前を知ってる人はこっちの姿の方が知ってるんじゃないですかね。」


そう言ってウイさんはウインドウを操作して、ローブの上から赤いフーテッドケープを被りました。


……あぁ、やっと思い出しました。“終撃奪いの単字魔術師”とは赤いフーテッドケープに身を包み、ルーンを用いてパーティーをサポートしていたかと思えば、最後には赤い槍を用いてボスモンスターのLAボーナスを奪い去っていくとある1人のプレイヤーの悪名ですね。リスナーさんが話してた覚えがあります。


……その“終撃奪いの単字魔術師”が、ウイさんだということですか……?今回一緒に戦ってみて、そうは見えませんでしたが……


「……実際、LAボーナスを何度も頂いてるのは間違いではありません。私のステータスにおけるスキル“ゲイ・ボルグ”は致死の槍。それは必然的にLAボーナスを頂くことになってしまいます。…今回と同じように。」


〔なるほどナ………ン?今チャット欄の反応見たんだが、あんたソレ双方合意の上でやってんダナ?〕


その実況さんの言葉にウイさんが頷きます。それと同時にフーテッドケープも脱ぎました。


「“ゲイ・ボルグ”は同じパーティの人達がどうしても倒せないときにだけ出す奥の手です。私自身はLAボーナスに興味はありませんし……大体、攻略のために協力しているだけの部外者にLAボーナスを頂く資格は本来ないと思っていますから。」


〔おっふ……まぁ言いたいことはわかる……じゃあなんで合意の上なのに“奪い”なんて言われてンダ…?〕


言われてみれば……合意であれば“奪い”ではない気がしますね?今回の場合も全員合意の上でしたし。


「それはクエスト内の声が聞こえない外部モニターから見た人からの視点だからですね。声が聞こえなければ状況を理解することもできないでしょう?」


〔……あー…〕


〔なるほど……そういうことですか。〕


……あぁ。そういえば。外部モニターでは映像しか流れないんでしたっけ。ゲーム公式が配信する時やプレイヤーが配信するときに音声が入る程度でそれ以外は映像のみ……


……これって運営さんのせいじゃないです?


「割と広まってる悪名ですからもうあまり気にしてはいませんけどね…それでもLAボーナスはクエストの主役の誰かのものだと思ってるので私が受け取るのは違うと思うのです。」


……なるほど。グングニルの前に言った悪目立ち、というのはそういうことですか。


「それでもクエストをクリアしたいという気持ちはわかりますし、LAボーナスが得られなかったからといって詰む要素がそこまであるわけでもない。…LAボーナス狙いの人や何も知らない人に敵視されようと、私はパーティの人達が求めるならば本来私が受け取るべきではないLAボーナスを受け取ってでもクエストを終わらせるだけです。」


〔……そうか。…ナァ、ウイ。あんたホントに未成年か?〕


「れっきとした小学5年生ですけど……」


〔ブエッホッ…!?ハァ!?小学生かよ!?〕


「ですよ…?」


「「小学生に負けた俺等って……」」

「「「小学生に負けた私達って……」」」


「私も最初に聞いて驚きましたもん…」


〔静歩カナさんはそこまで驚いてなさそうですね…〕


「開始前に聞いてましたから……」


開始前に聞いていなかったら多分同じ反応をしていたんでしょうね…


〔小学生に見えねェ……いやアバターは確かにそれくらいだけどよ…精々中学生高校生くらいだと思うダロ……〕


「パパやママからもよく言われますよ、それ……」


〔そーかい……ななみちゃんにどこか似てるからななみちゃん本人じゃないかとは思ったケドな……〕


〔そうですよね…でもあの方大体私達と同じくらいですから彼女本人ではない…〕


「……あの、私ってそんなにななみちゃんに似てます?」


「「「「「〔〔似てる。〕〕」」」」」


「「そんな全員ハモらなくても……」」


思わず私も言ってしまってからウイさんとハモったことに顔を見合わせて苦笑いします。


「でも似てる……似てる、かぁ。」


「……ウイさんってななみちゃんのこと苦手だったりします?」


「へっ?どうしてそう思うんですか?」


「さっきもですが、ななみちゃんのことになると歯切れが悪いので……」


「……あぁ、なるほど…」


私の言葉に少し悩んでから口を開きます。


「えっと……ななみちゃんのことは好きですよ?ただ、個人的な事情で…ちょっと、今は。」


「…そうなると無理に聞くわけにはいきませんね。」


「……ごめんなさい。」


「いえいえ……配信中ですから。」


「……配信が関係するかと言われればしない気もしますけど…」


それはそうかもしれませんね。


〔ま、いーや。そんじゃ皆さんおつかれサマー!静歩カナにゃ悪いが10分休憩後次の戦場ダ!…いやマジで悪い。一旦ログアウトするか?〕


「私は問題ありませんよ。いつも連続でやってますから。他の皆さんが大丈夫ならすぐにでも。」


〔あんたって割と体力あるよなぁ…ま、そーかい。んじゃ10分後に2回戦始めるぜーい!参加してくれた奴らはほんとアリガトなー!〕


その実況さんの言葉と共にウインドウが消え、一緒に戦ってくれた皆さんも順にログアウトしていきました。


「……“破壊の祈り”、か。」


1人になった空間で呟きます。


武器に付属していたスキルで、使うことがないだろうと思っていたスキル。


今回初めて使ってわかりました。…このスキルの破壊力は凄まじいです。総体力の増加している光翼のHPを、一気に3割近く削ったのですから。


私自身、エクストラスキルを使えなかった影響で本当の全力にはなれなかったというのに、それでも3割。


……このゲームの計算順序はスキルの宣言順。四則演算の順番ではありません。正直、あの時どれほどのSTRになっていたかは分かりませんが…


「……STR、もっと上げましょうかね。…この子を“破壊の祈り”込みで持てるように。」


この子を片手で持ちたいからこそ225にしていた私ですが。破壊の祈りを含めるとまだまだ足りません。


いずれ来るかもしれない火力不足のために───破壊の祈りを使えるようにしておくのもいいかもしれません。

ウイちゃんの悪名の原因は運営です。異論は……どうしましょうかね。認めますか。

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