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No.68 花神と姫園

ゲーム内部の詳細描写はちょっとおやすみ。

大画面で流されてるので配信の音声入らないわけがないんですけど…まぁ。

「だ、大丈夫ですか、先生…?」


「……大丈夫、噎せただけだから。」


流石に私のVtuberとしての名前が出るとは思わなくて、噎せて変な声が出た私を心配そうに見る奏さんと奈々。


…あ、だいぶ落ち着いてきた…


割と今更だけど、私達の座り方はこんな感じ(敬称略)。



空席 愛海 奏

結(不在) 私 奈々

咲月 悠奈 空席



何気周りに人はあまりいない。私達の周囲だけ綺麗に切り取られてるかのような感じ。


会場全体で見れば結構人は来てるんだけどね。


…それはそれとして。


「……流石に本人がいる中でその実の娘が本人に似てるって言われると思わないじゃん…」


「あの子が娘だってことは明かしてないものね……」


「言われてみれば……11歳の娘がいる、とだけしか明かされてませんものね。」


奏さんの言葉に頷く。


「……それにしても加奈さん。」


「ん?どしたの?」


「結ちゃんってなんであんなに強いんですか…?まだ小学生…なんですよね?」


「確かに…」


「え?あー…」


……結が強い理由かぁ。


「まぁあの子も花神だからねぇ。」


「血筋的には姫園も混じっているから相当よね…」


「……?」


「…?あの、血筋が何か関係あるんですか…?」


「あれ、知らない?…って、こういう話になると愛海がよく説明してる気がするんだけど……」


愛海は私と違って華麗神社巫覡の正式な後継者だから花神家については私よりも詳しかったりする。だから私よりも愛海が適任なんだけど……


「愛海さんならずっと寝てますよ。」


「……やけに静かだと思ったら。奏さん、一応確認だけど生きてる?」


「えっと…はい。脈はあります。」


「それは良かった。…たまに静かすぎて心配になるんだよね。」


「その気持ち、分かるわ…昔、愛ちゃんと初めて一緒に寝たとき静かすぎてすごく心配になったもの…」


「奈々も経験者だった…」


私がそう呟くと奈々が苦笑いする。


「心配になりすぎて一緒に寝る時は抱きついて寝るようにしたもの。」


「そして私と同じことしてるのね…でも今のでわかると思うけど寝息が静かすぎてホント心配になるからね。」


「私も愛海さんのこと見るまで寝てることに気が付きませんでしたし、音が全然聞こえないので咄嗟に脈取っちゃいましたし……」


「そ、そんなになんですね…」


「私にとって愛海は大切な妹だからね。恥ずかしかったとしても抱きついて心音でも聞いて生きてるか確かめてないとお兄ちゃんとしては心配になるんだよ。」


「その気持ちホントによく分かるわ…もう私にとっても大事な義妹だもの。寝ているときに抱きついてる理由って結局心音が理由だものね…」


「それだけ……ですか?」


「理由はそれだけだよ。むしろそれ以外に何かあるの?」


「えっと、その……」


「……寝込みを襲ったり、とか?」


「ないない。愛海に対して恋愛感情持ってないし。別にやましい理由なんてないからね。…あー、でも……」


「「「でも?」」」


「……襲うよ、って言われたことはあるかな。」


「「えぇ……」」


「逆にですか…」


そ、逆に。今はともかく小さい頃は素の身体能力だと愛海の方が上だったし。……女の子の状態だと愛海のほうが上なのは変わらないか。


「何も言わず静かに寝落ちしたってことはそれだけ疲れてたんだろうね……そのまま起こさないであげて、奏さん。」


「は、はい。」


「ありがとね。…それはそれとして、結の話だっけね。」


一呼吸置いて画面に目を向ける。


光翼が放つ光の針をひらりひらりと避けながら確実に魔紋印を打ち込むウイの姿。


その打ち込みも普通ではなく、片手につき1本の魔紋印を回しながら移動し、打ち込むときにだけ停止させる言わば曲芸。


光翼の攻撃、怒り状態なのか追尾する光の槍みたいなの混じってる気がするけどそれにも正確に対処してほぼ無傷。


いやまぁそもそもCL170な上にVIT値高めな影響でHPの総量が大きいから推奨CLが100以上も下である難易度HARDの通常攻撃で致命傷になるかと言われると、って話ではあるけども…


「……“花神は生まれついての戦士である”」


「「「え?」」」


「昔から言われることだよ。花神は生まれついての戦士である。昔々……それこそかつて武士の存在しなかった時代から伝わると言われる伝承。聞いた話によると弥生あたりから続いてるんじゃなかったかな?」


「や、弥生…って…」


「卑弥呼様とかがいた時代じゃ……」


「流石にその時代は口伝での伝承だったと思うけどね。でも、最初に書かれたと思われる伝承にこんな一文がある。───“我等一族軍神末裔也”。」


「軍神……」


「って、かの謙信公とかですか…?」


「違う違う、そのさらに上……っていうのもなんか変だけど、武甕槌神(たけみかずちのかみ)様とかのことらしいよ。…まぁ、流石に神様の末裔、っていうのは言いすぎかもだけどね。」


「…名前に神は入っているけれどね。」


「それを言うなら戦いの神様じゃなくてお花の神様とかだと思うんだけどな…」


私がそう呟くと奈々が小さく笑う。


「話を戻すけど、花神が生まれついての戦士である、というのはほぼ事実なんだよね。私達に比べて相当若い結でもあの強さだし。」


「サ◯ヤ人……」


「なんでさ。…まぁ、あまり間違ってないか…でも正直な話、身体自体は普通の人間だからね?」


「普通……」


「…普通ってなんでしたっけ」


「手から糸を出す女の子が普通…?」


「身体自体は、って言ったでしょ。身体の作りというよりは───」


「脳の作り、よね?」


奈々の言葉に頷く。


「そ。脳の作り───情報処理や行動選択が戦闘に対して強くなってる。だからこそVR空間内戦闘が非常に強い。…これだけだとただの戦闘民族なんだけどね。」


「「「…けど?」」」


「知っての通り、結は私と奈々の娘でしょ?ということは私の持つ花神の血の他に、奈々の持つ姫園の血も流れてる。それで……ここは奈々が言うべきかな。」


「そうね。……“姫園は生まれついての軍師である”。奇しくも、加奈の花神家と似た伝承が私の姫園家にも存在するのよ。」


「軍師……ですか。」


「もしかしたら花神と姫園の起源は似た場所なのかしらね。それはそれとして……姫園の脳の作りというのは分析と采配に長けるものとなっているわ。」


「分析と采配……ですか。」


「これらを全部戦闘に置き換えて説明すると“花神”は物理的な戦闘行動に。“姫園”は概念的な戦闘行動に長ける一族となるのよ。…となると、この2つの血が混ざった結は…どうなるかしら?」


「「「………」」」


あ、黙っちゃった。


「まぁ血の濃さで言えば姫園の血の方が濃いんじゃないかな。」


「身体の成長はもうそろそろ止まると思うものね…」


「ん。……そういえば、身体の成長が止まるんじゃないかって話をしたとき、“このまま大きくなったらパパに嫌われるんじゃないかって思ったからよかった”とかっていうなんか複雑な喜ばれ方したんだけど。」


「……それは…」


「すごく複雑ですね……」


「先生がロリコンとでも思われてるんでしょうか……実の娘ちゃんに…?」


「私自身はロリコンのつもりはないけど、完全否定はできないんだよね……実際に合法ロリに当たる奈々と結婚してるわけだしさ。」


私がそう言うと奈々が微妙な表情をした。そんな奈々を優しく撫でる。


「そんな顔しないの。私が異性として好きなのは奈々だけなんだから。…今は同性になってるけど。」


「……うん」


「「ア゛ッ」」

「ウ゛ッ」


「あっ」

「あっ……」


断末魔聞こえたよ……奈々ってコミケ2日目みたいに本気で演技したり、すごく安心したりするといつものクールっぽさが抜けるんだよね。


で、そのギャップ萌えで周囲を尊死させるのが割といつものこと。…たぶん奈々の素ってこっちのクールじゃない方なんじゃないかなぁとは思うんだけど。


とりあえずみんなを起こして…と。


「ていうか年頃の女の子ってお父さんのこと嫌いになるものじゃないの?割と嫌われるの覚悟してたんだけど?」


「「「あー…」」」


「年頃……って年齢的には早すぎません?」


「いやまぁ、流石にまだそんな時期じゃないと思うけど“お父さんに嫌われるのが嫌だ”って言われるとは思わなかったわけで…」


「今はそう言ってるだけなのか……それとも本当にそう言ってるのか、というところかしらね。」


「実際、結に嫌いって言われたら耐えられるか分かんないけどね。あと女の子になってから余計に距離が近いような気もする…」


「結ちゃん、加奈さんと奈々さんのこと大好きですものね……」


「ね……」


…そこまで言われると恥ずかしい気が…


「結×加奈と結×奈々……」


「「奏さん?」」


「っ……な、何でもありませんよ?」


「いや本人から許可取れれば別に私は構わないけど……」


「私もそうね……ただあの子はまだ小学生だから…ね?」


「せめて作るなら高校生になってからにしてあげて?」


「は、はい……」


そもそも親子でCP作るかなって話ではあるけども。


しかもCP指定が加奈ってことは百合だよね…それに結の名前が先ってことは結が攻めなの…?


星河先生の同人誌ってどんなのだっけな……ま、いっか。


「……でも割とそういう話興味持ちそうなんだよね、あの子。」


「……そうよね…」


奈々のシチュボ台本書いてるのあの子だもんねー…


「あとは……実際あの子の身体能力って割と平均的だよ?」


「そうなんですか?」


「だよ?」


「あの子、霊力操作とか霊能力を除けば普通の女の子だもの。体育の成績とかも上位ではなかったわよね?」


「どちらかというと低い方だって言ってたね。…この辺は私達に似たのかな。」


「身体を動かすのは昔から苦手よね、私達……」


「んね。柔軟性とかはともかく俊敏性とか筋力はね…霊力強化してれば話は別だけど。」


そう言ったら咲月さんと悠奈さんが小さくため息をついた。


「……霊力強化ってすごいんですね。」


「結ちゃん…あれで運動苦手かぁ……」


「VR空間だと肉体の制約に引っかからないから運動苦手はあまり関係ないんだけど…」


愛海の話では脳の処理が早すぎて肉体がついてこれてないんだとか……それを霊力で疑似神経みたいなのを構築して補うんだよね。


「実際、霊力強化してれば現実でもあんな感じの動きはできるだろうからね……結でもあんな状態なんだから、花神家って割と危険なんだよ?」


「そ、そうなんですね……」


「ん。だって、無能な私ですら人を殺しかけたことあるし。」


「「「………え?」」」


「待って、初耳なのだけれど?」


「だって奈々にも言ってないし。」


…言ってない、というか……


「…実際その時の記憶ってほとんどなくて、愛海や警察の人から聞いた話がほとんどなんだよ。死人は出なかったけど通報を受けた警察が到着するまでに相手グループは全員気絶。まぁその気絶したのって誘拐・強盗なんかの指名手配犯だったんだけどさ……」


「し、指名手配…」


「私が当時の記憶があるのはリーダー格を気絶させて愛海に声をかけられてからなんだ。単純に考えて暴走みたいな状態だったんだろうね……この事件の結果、できたのが“花神彼方は絶対に怒らせてはいけない”なんだって。オフコラボ終わった後に愛海が教えてくれた。」


「あぁ……そういうこと。」


「だから私は割と今でも危険人物だよ。当時……9歳の頃から成長して力は強くなってるはずだから余計にね。」


まぁ女の子の状態だと当時とあまり変わらないかもだけど、と付け加えておく。


「なんというか……」


「規格外…」


「これが超人か……」


「超人ではないよ、流石に。……ま、逆鱗触れなければ大丈夫じゃない?」


「怒ったところを見たことがないから逆鱗が何かわからないのだけど……」


んー……


「……まぁ、とりあえず奈々は大丈夫だよ。絶対に、ね。奏さん達は…まぁ、大丈夫だって信じてる。」


「「「信じてる……?」」」


「私は絶対に……?」


「うん、絶対に。」


「あの、それはまたどうして…?」


「奏さんはともかく私と悠奈はまだ出会って日が浅いですよね…?」


「咲月さんと悠奈さんに関してはただの勘かな。奈々が絶対に大丈夫なのは……ちょっと恥ずかしいからないしょ、かな?」


私が口元に指を立ててそう言うと奈々が胸を抑えた。


「可愛…すぎるのよ、もう…っ」


「先生と同じ列にいる奈々さんは大分辛そうですよね…」


「尊死しかけたのは私だけ…?」


「大丈夫、咲月。私もなりかけた…」


「ふふ。さ、そろそろ戦況が動くはずだよ?」


私がそう言って画面の方を見ると、ウイの側に新たな、でも見覚えのある人影があった。

なんか百合CP作ろうとしてる人が……

そろそろ1回戦は終盤…

あと公式で言います、奈々さんは可愛い方が完全な素です。本人もそこまで気づいてないけど。

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