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No.66 秘匿されしものは解明に弱い -仮想世界側-

仮想世界側とあるように同じ時間を現実世界側でも書きます。

ひとまず今回は仮想世界側から。

「“ドローンヒール”!」


回復効果を持つドローンを召喚するこのスキル。回復師であることをメインとする私ですから、スキルレベルは19に達しています。


……いえ、最大スキルレベルの20じゃないのはこのスキルが取得したのが割と近めだからなんですけど…


「“アップヒール”!」


“アップヒール”は回復効果の上昇。こちらはスキルレベル20で熟練度も1000.0に到達していますからかなり早いのですが…


「“ブーストダメージ”、“カットダメージ”!!」


……ウイさんが使ってるあれ、スキルレベル20ですよね?


まず、このゲームの補助師のスキルというのは支援師、阻害師、交換師のスキルになります。


支援師のスキルで代表的なものはと言うと…


増加系支援スキルであるプラス、アップ、ブーストの三種。


減少系支援スキルであるマイナス、ダウン、カットの三種。


耐性系支援スキルであるレジスト、ハード、リダクトの三種。


計九種の全属性分、9×8の72スキル。


次に阻害師のスキルで代表的なものは…


弱点系阻害スキルであるウィーク、ソフト、ブラストの三種。


拘束系阻害スキルであるバインド、ケージ、ジェイルの三種。


封印系阻害スキルであるシール、ロック、イレースの三種。


計九種の全属性分、9×8の72スキル。


もっとも、どちらのスキルであっても使い方によっては支援にも阻害にもなるのですが…


ちなみに防御スキルはプロテクト、シールド、ウォール。防御スキルと似たものでヴェールなんてものもありますね。


「カナさん、危ないっ!」


「へ───」


ウイさんの声が聞こえたところで強い衝撃で吹き飛ばされる私。


「な……」


何が、と思って吹き飛ばされる前にいた方向を見ると、光翼が地面に降りて私に向かってくるのが見えました。


これは確か───光翼の捕食モーション。


「……っ!」


耐えられる、でしょうけど遺跡系の動きが分かりません…!どうすれば……



───コツン



「ミギッ」


……石?


「───“ラグズ”、“イサ”、“ハガラズ”ッ!!!」


「ギャァァァァァァ!?」


「えっ……!?」


石が光ったと思うと巨大な雹が光翼を襲いました。


……いや、待って…今ウイさんが使ったのって……


「───“ルーン魔術”……!?」


“ルーン魔術”。遺跡系のモンスターのダメージ無効ギミックを解除するために必要なスキル。


実際に必要なのは破壊系のルーンなのですが……


「……流石に、HARDでここまで硬いとは思ってなかったです。…あまり目立ちたくなかったのですけど。」


そう言って私の前に立つウイさん。私に背を向けているので表情は見えませんが───


「“アルジス”」


三叉矛を逆にしたような文様が出た直後にバキン、という音───そうです、“アルジス”のルーン。私はルーン魔術に詳しくないので分かりませんが、三叉矛を逆にしたような状態で発動することで一時的なギミック解除ができるとかって……


それから私の方に振り向いて屈み、私の手に文字をなぞる。そのなぞった形は、アルファベットのBに似ていて……私から見ると反対ですがウイさん側からはBと同じように見えてるはずです。


「“ベオーク”」


ウイさんが唱えると私の傷が癒えていくのが分かります。


その治癒力は、私と同等…?


「ルーン魔術はMPを注げば注ぐだけ効力を増すんです。同じ回復なら、回復魔法のほうが効率は良いですよ。」


「……」


回復師として不安になった部分を見透かされたみたいです。


……情けない。小さい女の子に助けられた挙げ句、フォローされるなんて。


「キェェェェェ…」


「…“アンスズ”」


唱えたかと思うと強い風が吹き、光翼が吹き飛びました。


「カナさん、他の人の治療をお願いできますか?私はボスの足止めをしますので。」


「え……」


その言葉に周囲を見渡すと、他のキャラクター達は少なからず傷を負って倒れていました。


パーティーのHPバーを見ると全員0にはなっておらず、それでも本当にギリギリで残っているような状態。加えて人が倒れるような状態異常マーク。


その状態は強制気絶(ファイント)───HPを限界ギリギリまで失ったことで動けなくなる状態。別の言い方では極限瀕死、とも言われます。HPギリギリ───より具体的には、HP10以下。


「……まさか」


「残り体力5割での形態変化。それに皆さん巻き込まれました。カナさんも同じく。あれは防御不可ですから……お願いできますか?」


残り5割の形態変化……それは、通常の光翼がしてくる行動ではありませんね……


「……分かり、ました。…気をつけてくださいね?」


「えぇ、そちらも十分に。」


そう言ってウイさんは再度飛び上がった光翼を見据える。展開されるは光の針───


「“標的全集中ターゲットオール・コンセントレート”」


ウイさんは標的集中のスキルでその光の針のターゲットを全部自分にしました。


それを見て私は大きく距離を取ります。標的を集中させたということは全部受け切るつもりなのでしょうから。その際、私が近くにいては邪魔になります。


「───“エオロー”!!」


ウイさんの宣言の後に射出された光の針はすべてウイさんに行きます。


「ウイさんっ!!」


「問題ありません───“敵視強奪(ヘイトデスポイル)”、“マジックヴェール”!」


土煙の中から聞こえたスキル宣言。


デスポイルは強奪スキル。盗賊系に近いですがヘイト管理によく使われます。ヴェールは確か飛行能力を持つ防御魔法スキル。それを使ったことが示すのは───空中戦。


それを証明するかのように、土煙の中から飛び上がる何かが見えました。


「……どうか、ご無事で…っ!」


私は私のするべきことを。普通のヒールであれば簡単なのですが、強制気絶状態からの回復は結構難しいのです。


強制気絶からの回復はほぼ蘇生に近いので最速でも1人あたり35秒。それに蘇生なんて慣れるとあまり使う機会がないので熟練度もうまく上がらないスキルですから…!


「“ファイントリムーブ”……!!」


熟練度41.3、“ファイントリムーブ Lv.1”。これを取得した頃には強制気絶する人も少なくなっていたので使うのすら久しぶりなスキル。熟練度が低いのでかかる時間は90秒……!


……ウイさんを信じて治療に専念することしかできないのがもどかしいですね……!


「…本当に、ご無事で……そうだ、配信…」


確かゲーム内からも配信は見れたはずです。事前説明で運営枠は戦闘している人を主に映すと言ってたはずなのでウイさんがメインで映ってるはず……


指を振ってシステムウィンドウを開き、メインメニューのINTERNETタブ、その中にあるSelf Streamingをタップして自分の配信画面を開きます。


「えっと、皆さんすみません…!運営枠ってウイさん映ってますか…!?」



コメント:


:映っとるよー

:映っとるよ

:くっそ強くて苦笑いするしかなくなってる

:運営の実況者もちょっと引いてる

:ぅゎょぅι゛ょっょぃ

:カナさんって空見上げればういちゃん見えません?

:詳細は見えないんよなぁ…



チャット欄の言葉にふと空を見上げればそこには空中で静止している光翼とウイさんの姿がかろうじて見えました。


「……ウイさん自身が小さいですから凄く見えにくいですね…」


ともあれ視聴者さんから運営枠に映ってるという話は聞けたので、メインメニューのINTERNETタブの中にあるOperation's Yourtubeのボタンをタップして運営さん側の配信を開きます。


…チャット欄は開いたままにしておきましょうか。


「う……」


「あ、目覚めましたね。えっと、何か気分が悪いとかは……」


「な、ない…です。」


「それはよかった……」


「…あ、ありがとうございます、カナさん。」


「いえいえ、私は私にできることしかしてませんから…」



コメント:


:こういうところが聖母と言われる所以

:やね

:せやな

:実際このゲームでも聖母様の魔法スキルって全部光属性の魔法と治癒の魔法で構成されてるのよね

:大鎚のスキルっていう異物めいた物はあるけどそれ以外はちゃんと聖母してるんだよなぁ…



別の人のところに移動して“ファイントリムーブ”。この人を含めてあと4人。


「……治療が終わったら、ウイさんを助けに行きましょうか。…正直、私が行く前に終わりそうですが。」



コメント:


:わからなくはない

:確かに

:手加減してるっぽいけどルーン魔術使う時点で遺跡系に有利だからなぁ…

:光翼には相手が悪かったってことで…

:しかもういちゃん、遺跡守護者:光翼の攻略情報熟知してるっぽいんだよね

:マジ?

:CL170は伊達じゃないのか……



「確かルーンストーンを当てるだけでもダメージになるんでしたっけ?」


朧げながらその情報を口にしてみますと、すぐに返答が返ってきます。



コメント:


:違う

:ちゃう

:厳密には違うで聖母様

:遺跡系へのルーンストーン投擲は投擲ダメージに加えてルーン弱点ダメージが上乗せされるんですよ

:ルーンストーンをただ当てただけじゃダメージは出ないけど当ててルーンを起動すればダメージは出る…あいや、これは当然か

:ルーンの刻まれたものを当てただけでダメージを出すならまず当てるものによってダメージを出さんといかん

:ルーン弱点ダメージ、っていうか実質ダメボやけんね

:ちなみにういちゃんが投げた石は投擲スキルを使った上にルーンが刻まれてたから小ダメージと怯みを引き起こした感じですかな

:射程範囲なら投擲スキルで最低限1ダメは出せるからね

:なお石はどちらかというと筋力投擲武器なのでういちゃんが投げるなら技量投擲武器の針とかが良かったっていう部分はある

:一番ルーンを刻みやすいのは石だって聞いたけどね



「なるほど……というか皆さん、ルーンについて詳しくありません?」



コメント:


:攻略サイトに乗ってますよ

:ただ情報が少ないのはちょっとした難点

:まぁ単字魔術師がそもそも少ないですしおすし

:ルーン魔術は不確定な要素が多い分情報が不足してるんですよね

:扱える人材が限られてるので検証班が不足してるルーン魔術…

:一応私ルーン魔術使えるんですけどういちゃんほど上手に扱えない……

:えぇ……

:ってことはういちゃんのPS結構異常?

:そもそもメインの立ち回りが補助師でCL170行ってる時点で割と普通ではないと思う…



「……本当に治療の間に終わりそうですね、戦闘……」


…補助師でこれなら、普通に魔法を使ったらどうなるんでしょう。



コメント:


:ほとんど回避ばかりしてるけど…

:ういちゃんの集中力が続くかどうかかなぁ…

:マジで足止めだけするつもりっぽいから戦闘終了はなさそう?

:火力が足りない可能性は十分にありますし助けに行くのはいいと思いますよ

:物理火力は絶対足りんよね

:魔術長杖は物理武器として使うなら打撃系になるのが基本だからなぁ…

:柄の方を使うなら刺突にもなるけど知恵補正は乗らないね

:そもそも普通の魔術師は物理攻撃をしないのが普通であってこのゲームの魔術師プレイヤーが割と異質というか

:純魔プレイヤーってほんとに少ないよねこのゲーム

:そうね



「そういえばSTR20でしたっけ……副武器槍とかにしてそうなんですけどどうでしょうね。」


ウイさんのステータスを思い出しながらそう呟きます。


「……」


その思い出したステータスで引っかかる部分もまた、見えてきます。


「……後で聞いてみるしかありませんか。」


戦闘が終わったあとでもいいので聞いてみることにしましょう。

配信回のようにしてると文字数多くなりがち…

次回は現実世界側。

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