No.64 1回戦の確認
結構ざっくりとした導入…なはずなんだけどなぁ…
4000文字超えてる…こんな調子で大丈夫かな
〔ヘイヘイヘーイ!そろそろ準備ができたみたいなんで1回戦始めるぜーい!ちなみに俺達運営もまだプレイヤーの情報ってあんまり知らなくてな、今回出るのが初見になるぜー。〕
あ、そうなんだ…
〔ちなみにバフステータスとかも全部モニタリングしてるからチートとか使っても多分わかるようになってるんで。…ゆーて準備時間は1分くらいなんでチートツール導入とかできるか微妙ですけど。あ、言い忘れてましたが自分は各種解説で…〕
〔俺は実況だぜい!夜露死苦ゥ!〕
うん、それ最初に言って欲しかったな。
コメント:
:流石にイベントでチート使うのはギルティ
:流石に運営が借りてる業務用を改造するのはだめよ
:運営が借りてるのであって自分のじゃないんだからなぁ
〔それじゃ、オープン!………っておぉぅ!?〕
実況者さんの声が驚きに染まる。そこに表示されてるのは1人のキャラクターの姿とステータス。
その姿は木で出来た杖を持った背の低い魔法使いの女の子。服装は白生地にピンクのラインが入った制服みたいな感じの服。
この服装は割とプレイヤーが自由に変えられるから実況者さんが気になったのって多分……
〔ナンだこのキャラクター!?CL170ってどんだけだよ!?〕
コメント:
:は!?
:CL170!?
:カナさんより上じゃねぇか!!
:名前は…“UI”?ユーザーインターフェース??
:ユーザーインターフェースが参加してるってどういうこと???
:システムからの介入?
〔アー、イヤこれ普通にプレイヤーだな……PL84……?めちゃめちゃ強くねぇかこの女の子…〕
実況者さんの言葉にちょっと遠い目。
「……PL84ってそこまで高かったんだね、あの子。」
「そうね……」
「「「……えっ」」」
咲月さん、悠奈さん、奏さんの声が聞こえて首を傾げる。
「待ってください、あれ結ちゃんなんですか?」
「先生から一昨日聞いてたPLより10は高いんですけど…?」
「あのキャラクターが結で間違いないわよ。」
「何度も見てきたから間違いないよ。…それに、STR20で固定してるのも結の特徴だし。」
「STR……あ、確かにSTRは低めですね…?」
「あの子の杖がSTRよりもINTを要求するタイプの杖だからね。」
私がそう言うと、奏さんは結のキャラクターの姿を見て頷いた。
「なるほど、“世界樹の枝の長杖”ですか。確かにSTR要求は少ないですね。……でも、このステータスの振り方は……」
結のキャラクターのステータス構成はINT主体のDEX、AGI、VIT重視。やろうとすれば魔法防壁師にもなれる型。でも、VITは重視はしてるだけで優先度は低いからどちらかというか技巧攻撃師寄り。それでも十分高いんだけど。
「なんというか……速度槍術師、に近いような。」
「…槍術師、ね。」
実際、奏さんの指摘も間違いじゃない。このゲームの槍は基本的にDEX要求が高くて、DEXが上がれば上がるほど火力が上がる性質を持つ“技量武器”と呼ばれるもの。加えてAGIを上げれば上げるほどさらに火力補正がかかるものもあるからDEXとAGIを上げるのは槍の使い手には有効なステータス振りと言える。
でも、結の主武装は杖。もっと言うなら、その場で静止して大魔法を使うような動きを主目的とする魔術長杖。魔術師故、MP量と魔法火力に直結するINTを最優先なのはもちろんのこと、主に要求される役割は固定砲台であるため相手の攻撃に耐えられるようにVITを優先的に上げるのが基本。
同じ事が回復師で魔術長杖使いのカナさんにも言える。だけど、カナさんの場合はSTR要求の高い杖を使っているのに加えて副武装が大鎚。だからこそSTRに多めに振るというステータスになっている。…これだから撲殺天使って言われるんだろうな、カナさん。
結の話に戻すと、まず外見だけでは副武装が不明。魔術長杖なのにVITよりもDEXに多く振られてる。それどころかSTRも低くAGIに大きく振られている。さらに、結自身あまり私や奈々以外とのマルチプレイをしないから結の存在を知らない人の方が多い。それと、これはチャット欄で騒いでることだけどキャラクターから発せられてる声がどう見ても若い女の子のもの。
総合評価として、高速戦闘や高速魔法行使は魔術長杖には向かない。
恐らく“UI”はステータス振りを間違えたのだろう、というのがチャット欄の考察。
……けど。
「高速魔法は魔術長杖には向かない……本当にそうかな?」
「え?」
〔それじゃ、一回戦始めるぜぇー!〕
コメント:
:うぉぉぉぉ!
:がんばれー!!
:がんばえー!
:ふぁいとぉー!
:いっぱーつ!!
会場とチャット欄の熱気は最高潮に。一回戦が、始まろうとしていた。
───静歩カナ視点
「…それではお願いします。」
「はい、任せてください。」
第一戦闘フィールド。
私は私に割り当てられたパーティの戦力を確認しながら役割を決めていました。
流石に戦闘スタイルとかは本人に聞かなければ分からないところですので。あとゲーム内側からは他のキャラクターのスペックデータも分かりませんし。CLは分かりますが。
「…ふぅ」
パーティ平均CL90。こう聞くと高く見えますが、実際は私とUIさんという方のレベルで底上げしているだけ。他の皆さんのCLは60あるかないかくらいです。
……流石に同じ長杖使いのUIさんのCLが私よりも高いことにびっくりはしましたが。
あと話を聞く必要があるのはそのUIさんなのですが……
「えっと……」
「……?」
「……どう、お呼びすれば?ユーアイさん?ウイさん?」
「あっ、“ウイ”って読みます!ごめんなさい、分かりにくくて……」
「あ、普通にローマ字読みでいいんですね……人によってはユイと読ませる人もいますから……」
「あ、あ、あはは……そう、ですか……」
……?表情が引きつってますけど、何か地雷みたいなの踏みましたかね?
「まず、武器は…魔術長杖ですよね?戦闘スタイルはどちらに?」
「えっと、メインは補助師です!……まだ初級ですけど。」
「ふむふむ、補助師……支援師、阻害師、交換師の三側面を持った後衛魔術師職ですね。」
打てば響く、というような返事に少しほっこり。私も娘がいたらこんな感じなのですかね。
「キャラスペックを教えていただいても?」
「あ、はい!えっと……見せるにはこれでいいんでしたっけ。」
「口頭で説明してもらえればよかったのですが…見てもよいのであれば拝見します。」
表示してもらったウィンドウでスペックデータを確認する。…えと…
「……DEX優先…?」
補助師、というよりは槍術師に近い振り方に首を傾げます。いえ、確かにINTは非常に高いのですけど…
ウイさん自身を見ると何も変とは思っていないようで、恐らくウイさん自身が望む形なのでしょう。
「ありがとうございました、消してもいいですよ。」
「い、いえ…!」
そう言ってウィンドウを消すウイさん。いくら定石と違っても本人が望むのであれば否定するのは間違っていると思います。
それにしても……声が非常に若いですね。
「……つかぬことをお聞きしますが、おいくつですか…?私配信中なので答えなくても構いませんが……」
「えっと……11歳です。」
「えっ、ということは小学生……!?」
「え、あ、は、はい…小学5年生です。」
「わ、若い……」
その若さでCL170……しかも補助師。
そもそも補助師って難しいのです。仲間にいくつもの支援を振りまきながら相手を阻害する…それが補助師です。普通は絶対にスキルスロットとMPが足りなくなりますし、自分1人で戦う余裕なんてないです。
初期スキルスロット2つに支援スキルと攻撃スキルを入れるのは定石。ですがそこから攻撃スキルはそこそこに阻害スキルと支援スキルに振っていかないといけない、雑に説明してしまえば“戦えない魔術師”。
完璧な補助師を目指すならば攻撃を捨てろ、とはよく言われることで、このゲームに存在する各属性に対するステータス変化や防御を全取得しているのが条件とされています。
CL170ということは……スキルスロットは212個ですかね。このゲームの属性は木火土金水の五行と光闇無の相対・単一の計8属性。全部は知りませんが、このゲームの支援師・阻害師系スキルは初級ですらかなりの数が存在すると聞いているので…全て習得しているとすれば所持スキルのほとんどは支援師・阻害師系スキルとなるはずです。
非常に扱える人が少ないと言われる“あのスキル”であれば補助師でも十分に戦えると聞いたことはありますが……というか一応あれも補助師系のスキルでしたっけ。
このゲームは主に敵を倒すゲーム。補助師になるために攻撃手段を捨てるのはほとんど成長が見込めない。だというのにウイさんはCL170に到達している。…考え方の1つとしては、“寄生”。強いプレイヤーについていってレベルを上げるという考え方です。嫌われるタイプのプレイスタイルですが……
「……いや、流石にないか。」
「…?」
CL170。それは全プレイヤー中上位25%、その中でも更に上位層に位置するレベル。寄生プレイで挙げられるのはせいぜいCL70までだと聞いたことがあります。
「……期待、させていただいてもよろしいですか…?私は回復メインですので……」
「はい!支援は任せてください!」
そう答えたと同時に何かに気がついたように表情を変えて空を見つめました。その視線の方向には今回のクエスト設定を決めるスロットがあるのですが───
「っ…」
その、表情。そして気配。ただの女の子であったはずのウイさんが、一気に別人になったかのような錯覚を受けました。具体的には、元気な少女から…屈強な戦士へと。
なぜ驚いたのかというと、それを出したのがウイさんという小さな女の子であったことと───それは、ただの補助師が出せるような気配ではないからなのです。
「…“The Ruins Guardian Lightwing”……“光翼”……か。」
そう呟いたや否や一言“ガード”と唱えるウイさん。それは確か、支援魔法の基本中の基本───
「───攻撃来ます!!カナさん、上です!!」
「っ!?“プロテクト”ッ!!」
「“ライトシールド”、“ワイドエリア”!!」
咄嗟に防御魔法を詠唱したかと思うとそれより先に耐光属性の防御魔法が私の防御魔法ごと覆います。
その耐光属性の防御魔法に鋭い針が突き刺さり、私の防御魔法に到達するよりも前に威力が消えました。
「……うそ。」
───状況判断からの詠唱速度と発動速度が異常に速い!!それに魔法練度も……!
「“プラスダーク”、“マイナスライト”、“ターゲットマーカー”、“ウィークダーク”、“レジストライト”───お願いしますっ!!」
「───キュェェェェェェッッッ!!」
咆哮の発信源にいるのは輝く翼を持った巨大な鳥。
私は咆哮に合わせてクエスト設定のスロットを確認します。
Game mode:VS Boss
Difficulty level:HARD
Boss name:The Ruins Guardian : Lightwing
“遺跡守護者:光翼”……本来特殊な攻略が必要な遺跡系ボスエネミー!!今回は完全ランダムということで詰み防止のために特殊な攻略は必要ありませんが、代わりに体力が多くなっていると聞いています…!
それのHARD───推奨CL60以上!私やウイさんはともかく他の皆様には割と厳しいかもしれません…!
っていうかウイさん詠唱早すぎ……!?今の一瞬で5つスキル使った……!?
「“ダートバレット”」
「は、早……」
土属性の魔力弾……というか土団子。
その土団子は綺麗な軌跡を描いて巨大な鳥の顔に。
「キィィィィ!!」
「あのすみません、こんな事私が言うのもおかしいと思うんですけどずっと私の魔法見ていないで手伝っていただけませんか!?」
「「「「「……はっ!?」」」」」
その声にやっと私達も動きだす。自分より一回りどころか二回りも年下の女の子に叱責されないと動けないなんて、私ってば情けない……!!
幸い弓術師や銃撃師が多かったので空中に飛んでる相手でも不利になることはない……
……その、はず。
スキルの説明はこのイベントが終わったら一気にしていこうかと思ってたんですけどどうしましょうかね…
あと交換師って何?って方のために。
交換師:ステータスの一部を下げる代わりにステータスの一部を上げるスキルを使う魔術師を指す。例:STRを下げる代わりにVITを上げる。




