No.53 前日入りした東京で衣装合わせ……うん?
ところで……他作者さんの作品の完全接続型VRゲームにななみちゃんを送り込んだらどうなるんだろう、と思ったことがあります。
まぁ………うん。ななみちゃんが敵になった場合、他作者さんの作品の主人公達で立ち向かえるのかなぁ……立ち向かえると思いたい。
当作品でメインに扱う完全接続型VRゲームである“アーティファルから配信依頼されている現在制作中のゲーム”でない以上、弱体化はすると思うんですけどね……怖いなぁ…
……あ、ちなみに当作品のメインとなるお話はそのアーティファルのVRゲームではなくななみちゃんの配信とその周囲なのでそのVRゲームはそのVRゲームメインのお話を新たに作ろうと思ってます。こちらの作品にも大きく関わる特徴的な出来事でなければそちらで物事を進めていくような感じで。
……まぁ、あくまで予定の話です。同時進行にすると余計に執筆速度遅くなりそうですが。
VRゲームの話を作るためにもまずそのためのストーリー進行度まで到達させないとなんですが…先が長いのなんのって。(現在の予定:夏コミ→帰省→案件撮影→姫園宅来訪→二学期始業式→雑談配信→コラボ配信→案件ゲーム)
奈々の雑談配信を結と一緒に見た次の日。
私達は今回の東京行動の拠点となるホテルに来ていた。
時間的には夕方に近くなってるかな。チェックインが15時だし…
「私の方はこれでよし…と。奈々、結、色々荷物整理終わった?」
「私は大丈夫よ。」
「私も大丈夫だよ、お姉ちゃん!忘れ物もないもん!」
「そっか…それならよかった。逆に二、三回確認したのに忘れ物あったらそれはそれでびっくりだけど…」
「あはは…」
「もし忘れ物していたとしても取りに行くのは難しいもの、忘れ物はない方がいいものね…」
その声に頷く。
「ここからだと割と時間かかるからね。…帰れないわけじゃないけど。」
「そうね……それにしても、結構大所帯になったわよね…」
そう言う奈々の表情は苦笑い。釣られて私と結も苦笑いする。
「えーっと…私と、ママと、加奈お姉ちゃんと…悠奈さんと咲月さん、愛海お姉ちゃんとおばあちゃん、おじいちゃんとひいおじいちゃんで……9人?」
「莉愛ちゃんが足りてないわよ、結。」
「あ、そっか莉愛お姉ちゃん……だから…ええと、10人7泊8日旅行…?」
旅行なのかどうかはともかく総勢10人って結構いるよね、やっぱり。
その結論に至った結が少し不安そうな顔をする。
「…んー……お姉ちゃん、あんまり心配はしてないんだけど…10人分って大丈夫なの…?」
「大丈夫だよ、おじいちゃんだし。」
「…大丈夫よね……」
………うん。大丈夫だよ…おじいちゃんだし…
「…だよね……ひいおじいちゃんだもんね…」
結もそれを理解してるから諦めてるもん。
このホテル……特に私達のいるお部屋って1泊40,000円近くするはず───ちなみに莉愛が同じタイプの一人部屋なんだけどその莉愛の部屋でも1泊辺り30,000円近くしたはず───だからお高いはずなんだけど…それを大人10人7泊分ポンと出すのは普通におかしいと思うんだ、おじいちゃん。
ちなみにこれ、おじいちゃんの意地とかじゃなくて私の家系関係だったりもする…かな。……うん。
「…そういえば奈々、お義母さん達から昨日電話あったんだよね?お義母さん達は何か言ってた?」
「いいえ、特には…いつも通り精一杯頑張って来なさい、とだけ…」
「そっか………私の帰省終わったら一緒に奈々の実家行こうね。」
「変なことが起こらなければいいけれど。」
「…ママ、それフラグだよ?」
結に言われて奈々が詰まる。
「…確かに、そうね。……盛大にフラグを立てた気がするわ。」
「そうだね……ん」
私のスマホに通知が来る。内容を軽く見てスマホをしまう。
「誰からだったの?」
「神代さんから。みんなも呼んで行こっか、東京に着いたみたいだから。」
「分かったわ。結、忘れ物なければ出かけるわよ。」
「えっと………大丈夫!」
「ん、じゃあ行こっか。…ここからじゃちょっとだけ遠いけど。」
そう言って私達はホテルの部屋から出た。
そうして、ホテルから大体電車で40分くらい。
「こ、ここが…」
「ん、“MilkyRain 系列ブランド総合オフィス東京支店”。東京支店、っていう名前だけど所在地は原宿……本当の名前で言えば神宮前なんだよね。」
「実際色々なファッションが集まる場所なのは間違いないから、ここにあるのは特におかしいことじゃないのよね。」
「そうなんですね……」
「ちなみに裏原宿の方に総合オフィスじゃないのもあるよ。」
「お客さんの分散用だったかしら?結構近いところに総合オフィスとそうでないオフィスがあるのは割と珍しいのだけど……あっちの方が人多いわよね、確か…」
奈々がそう言った後、咲月さんと悠奈さんが首を傾げる。
「……そういえば、宇都宮でも思ったんですけど…あまり目立ちませんよね、ここ…」
「大手企業のオフィスなのにここまで目立たないってあります?」
「いや普通オフィス自体は目立たなくないかな?」
そういう私達に咲月さんと悠奈さんがさらに首を傾げる。
「「………ビル一棟丸々オフィスなのにそんなに目立たないもの……?」」
「「「「「………あー。」」」」」
なんか言いたいことは分かった。
「先々代…60年前の社長が言っていたんだがね、総合オフィスは特に目立たないようにされているらしいよ。設計というより立地なのか……よくはわからないが、人の死角に入るような状態になっているらしい。」
「死角……ですか?」
「うん。僕らが思わず見逃してしまうような…そうだな、人払いの結界に近いものがあるらしい。信じられないとは思うけれどね。」
おじいちゃんが今言ってくれたのは私も聞いたことあるなぁ…
「まぁ慣れれば気にしなくなるから。咲月さんと悠奈さんもそのうち慣れるよ。」
「そうだね。」
「そ、そうですか……」
「人払い……人払い…??」
「……???」
微妙に納得してないような2人に私達は苦笑いするしかできない。
「…ともかく、純達を待たせてるんだから、早く入らないとね。でも…」
「あ、それならお母さん。私と奈々で悠奈さんと咲月さんの様子見ながら行くよ。」
「そう?…まぁ、加奈は悠奈さんと咲月さんの娘だから適任かもね。お願いしてもいい?」
「うん。」
「奈々ちゃんもお願いね。」
「はい、お義母様。……っと?」
急に奈々をお母さんが抱きしめて、奈々が困惑する。
「…お義母様?」
「奈々ちゃん。…今も加奈と一緒にいてくれて、本当にありがとう。」
…聞こえてるんだけど…ちょっと恥ずかしい
「それじゃあ、2人のことはお願い。結ちゃんはおばあちゃんと一緒に行きましょ?」
「うん!ママ、お姉ちゃん、また後でね!」
「うん、またあとでね。」
「いい子にしてるのよ?」
「うん!」
そう言って私と奈々、咲月さんと悠奈さん以外の6人は建物の中に消えた。
「…さてと。咲月さん、大丈夫?」
「……はい、なんとか。…その、加奈さん」
「うん?」
「……夏樹さんって、本当に70歳行ってるんですか…?」
「え?…あぁ…」
咲月さんが言った夏樹というのはおじいちゃんの名前。お母さんが桜、お父さんが秋。まぁ…とりあえずおじいちゃんもお父さんも女性名っぽいのは私も分かる。実際私も元々の名前が“彼方”だから女性名でも通用するし。
それで、咲月さんの問いへの答えはというと……
「…うん、凄く若く見えると思うけど77歳だよ、おじいちゃんは…」
「…見えない……」
「あはは……」
そう、若く見えるのは奈々達姫園だけじゃなくて私達花神もなんだよね…
……というか、“若く見える”というより”男性なのに女性に見える“が正しいのかもしれない。私もそうだけど、身長を考えなければ女性にしか見えない…らしいからね。
ちなみに花神の血筋なのはお母さん。だからお父さんは普通に男性に見える。
「……なんとか落ち着きました、加奈さん…」
「ん。…奈々、悠奈さんの方は?」
「そろそろ大丈夫そうかしら……加奈、処理能力を鍛える方法ってあるかしら?」
処理能力かぁ…うーん…
「……慣れ?」
「…よね。実際一番効率的なのってそれよね…」
そうなんだよね…どんなことでも“慣れ”って重要で、慣れれば慣れるほど1処理に対する時間は速くなってく。私のトランス状態は…まぁ、うん…何かが違うのか全く慣れないんだよね。起こす可能性が低いというのもあるのかもしれないけど…
…個人的に私のトランス状態と他の物事への処理能力の違いとして考えてるのは、私のトランス状態は“内部への防衛処理”…つまり、内側からの攻撃への対処みたいなものであること。奈々が言った処理能力は“外部への防衛処理”…えっと、外側からの攻撃への対処だからなのかなって。ほら、防衛戦とかするとき、砦の外からの攻撃には強いけど砦の中で反乱とか起こされたり守るべきものの近くにいきなり敵が現れたら弱いでしょ?そんな感じなのかなって。
「………それにしても咲月さんと悠奈さんって精神的衝撃に対して弱すぎない?」
「逆になんでそんなに強いんですか、お二人は……」
「同じく……」
「……色々と慣れすぎてて比較的強い方なのは理解しているけれど、それにしても弱すぎじゃないかしら?」
「ね。…咲月さんと悠奈さんって学校とかは…?」
「……高校は女子校でした」
「「…………あー……」」
それかもしれないなぁ………
「…ま、いっか。じきに慣れると思うし……とりあえず、中に入らないとね。」
私がそう言うと全員が頷く。
建物の中に入るといつものように受付さんが出迎えてくれて───
「…ん」
誰かが走ってくる足音。
「か~ん~ちゃ───」
「ほいっと」
「───んんんっ!?」
跳びかかってこようとしたその人を避ける。その人の先には誰もいなかったから派手に転ぶ。
「いたたた…」
「……相変わらずだね、みっちゃん」
呆れながらそう言うとその人は少し泣き顔でこちらを向く。
「うー…かんちゃんなんでそんな簡単に避けるのー…」
「みっちゃんの軌道が分かりやすいのが悪いと思うよ。私を見たらまっすぐ突撃してくるんだもん。みっちゃんの場合、気配を消さないと無理だと思うよ?」
「無理難題言うなぁっ!!昔のかんちゃんならともかく今のかんちゃんだと無理難題でしょっ!!」
「…あと、今は女の子の身体だから突進してこないでもらえると…」
「かんちゃんの耐久力なら大丈夫でしょ…」
「どういう意味?」
小さくため息を吐いて奈々達の方を向く。
「紹介するね。この人は“神代 三乃”さん。修二くんの妹で……愛海と同い年。いたずら好きだけど悪い子じゃないから───」
「すきあ───あぁぁっ!?」
「───まぁ、安心してね。」
後ろから掴みかかろうとしたみっちゃんの手をとって、みっちゃんの後ろに回って軽く押さえる。なんでこれで動けなくなるんだろうね。ちゃんとした関節技とかじゃないんだけど…
「今ので余計安心できなくなったんですが…」
「というか加奈さん対処早い…」
「20年会ってなかったとはいえ、この子の扱いには慣れてるからね。」
「かんちゃんってホント私を女の子扱いしないよね…女の子だと思われてないんじゃないかって思うくらい…」
「女の子扱いしてないわけじゃないんだけど……」
「普通は女の子を拘束技で動けないようにするとかしないと思うよ…?」
「みっちゃんが懲りないのが悪い。」
「………はい。そろそろ解放してくれる…?」
その言葉に手を離してみっちゃんを解放する。
「ふぅ……かんちゃんの拘束技ってなんか不快なんだよね…」
「不快?」
痛いじゃなくて?
「うん、不快。なんだろうね、じわじわ痛めつけられてるっていうより…蝕まれてる?みたいな感じ?」
「蝕む………?」
どういうことだろう…?
「…ま、いっか。あ、ええと…かんちゃんと同じくらいの身長の人がかんちゃんの奥さん…姫華日奈子先生ですよね?私、かんちゃんに対する気持ちって友達以上にないのでご心配なく…」
「…そう」
「実際私結婚してますし…」
「あ、してたんだ」
「してたよ。子供もいるし。…旦那と一緒に地元にいるけど。」
「…ねぇみっちゃん、いつからこっちにいるの?」
「昨日かな?コミケの手伝いでこっちに来たんだよ。コミケ終わったらすぐに帰るし。」
修二くんと同じで慣れるの早すぎないかな…
「…ねぇ、加奈?この人も加奈の小学生時代の知り合いなのよね?」
「うん。」
「言葉……慣れるの早すぎないかしら?」
「だよね…奈々も思ってたんだ…」
「…加奈も早いとは思っていたけれどそれ以上がいるのね…」
1週間くらいかかった気がするからそこまで早かったような気はしないんだけど…
「…まぁいいや、みんなをお父さん達の所まで案内するよ。特に……ええと、香川さんと夢川さん、でしたっけ。彩香さんが着せ替えさせたくてうずうずしてましたから多分大変になると思いますよ。かんちゃんはいつも通り。」
「…着せ替え人形化かぁ。」
いつも……というか、昔に私を着せ替え人形化してたのって主にみっちゃんだった気がするんだけどね。
鶴丸さんは私達の地元の人じゃないはずなんだけど、不定期に私達の地元の方まで行ってるんだっけ。それだからみっちゃんも鶴丸さんを知ってるってところかな。
…MilkyRainの総本店がそっちだからっていうのもあるかもだけど。
「……咲月さん、悠奈さん…覚悟しておいてね。こういう時の鶴丸さんってホントに暴走するから…」
「「は、はい…」」
咲月さんと悠奈さんに警告したあと、みっちゃんについていく。
…まぁ………夜ご飯の時以外は活動限界まで色々着せられました、とだけ。
なお、その夜ご飯は私が全員分作った。久しぶりに大人数分作ったけど楽しかった。
ホテルは…あの……調べたんですけど……
流石に…参照してる2027年(つまり3年後)の予約受付なんて出てるわけがないので今調べられる限界の時期を7泊分の料金で調べてそれを書き込んだ感じです。
ちなみに総額どれくらいかというと…まぁ……とりあえず100万行きますね(遠い目)




