No.5 納品されました
ついに納品されます。
果たして結果は…?
時間が経つのは速いもので、Vtuberになるという話をした日から2ヶ月が経過した。
足りなくて買い揃えたのはキャプチャーボードとマイク、それから全身モーションキャプチャーだったりVRゴーグルだったり…それから性転換後の手に合う小さめのコントローラーにマウス、最新ゲームハードとか…色々買ったけど今までそんなにお金使わなかったからね、割と余裕はあったんだよ……あ、パソコンはとりあえず新しく作ったんだよね。今まで使ってたパソコンは結が色々やりたいって言ってたからフォーマットとか色々して結に譲渡してある。
それで……あの時にした提案のことも全部進んで、コメント欄の仕様とかいろいろ調べて私が欲しい機能を搭載したソフトを作って、軽く試して………あとは納品待ちだったのが今の現状。
おじさんに戻った後に洗い物を始めて、洗い物を終えた直後に新しいパソコンからポコン、と音がした。ちょうどよかったから手を拭いてからパソコンの前の椅子に座る。それだけで姿は栗色の長い髪の女の子に変わる。…この現象謎すぎて、ホント。一応髪型はハーフアップにしてるけど。
「とりあえず、ホントに無理してないといいんだけど…」
既に慣れた手つきで着信メールを開く。ストレージへのアクセスURLがあるからそこからダウンロード。その間に莉愛に電話をかける。
〔…もしもし?〕
「あ、莉愛?えっと…彼方だけど、分かる?」
〔…加奈で伝わる……大丈夫。〕
あ、そうなんだ…
「奈々の方、どう?無理してなかった?」
〔…大丈夫。無理しそうになった時は気絶させてでも中断させたから。〕
「あっ…ご、ごめんね…?」
〔菜々お義姉ちゃんが無理するのは予測の範囲内だから…〕
「あはは……」
〔えっと……加奈お義姉ちゃん。〕
「うん?」
〔自信もっていいよ、可愛いから。でも、無理しないでね。〕
え?と聞き返す前に電話が切れた。それと同時にダウンロードが終わる。大分長かった気がするけど、ファイルを展開してみる。
若草色の髪に桃色の瞳。前髪が姫カットで後ろ髪がハーフアップ。髪を留めているのはリボンじゃなくて花飾り。
見た感じ、年齢設定は10歳くらい…というか、今の私と同じ身長だって聞いた覚えはある。
衣装としてあるのは露出少なめのワンピースとドレス。標準として色とりどりの花が複数の場所に散りばめられている。靴はワンピースではブーツ、ドレスではローヒールになっている。
胸はそこまでない。あってもどう動いていいか分からないからそれはいいの。
……いいんだけどさ。モデルとしてはいいんだよ。初見で可愛いし私も好きだと思ったよ?でもね?
「…奈々───ワンピースやドレスに付ける花をカスタマイズできるのは流石にやりすぎだよ」
なんでこんなのが2ヶ月で仕上がってんのあの2人は!!特に奈々、自由に着脱カスタマイズできるボーン入れてるのなんで!?花パーツが大体20種類、モデル全体で20ヶ所くらい変えられるから合計で400パーツくらいあるんだけど!?
「……これ、私やっていけるの…?」
ちょっと頭が痛くなってきた……一応、依頼額として定義されてる金額の倍額払ったんだけど、コレはそれじゃあ足りない仕事量じゃない…?
少し時間が経って、気を取り直して奈々に電話をかける。
〔もしもし?〕
「もしもし、奈々…?」
〔気に入ってくれた?髪色、ワンピース、ドレスの3ヶ所は自由に色を変えられるようにしてあるわよ?〕
更なるカスタマイズ要素を知って机に頭をぶつけた。
〔…だ、大丈夫…?〕
「一体誰のせいだと思ってるの…」
…とりあえず、落ち着いて深呼吸。
「…とりあえず、感想ね。全体的に…というか、総合的に見て可愛いし、私としても好きな感じの子だからうれしい。」
〔それはよかった。私の望みを詰め込んだような子だったけれど、喜んでもらえたのね。〕
「ちなみにこれ、イメージは?」
〔“こんな娘がいたらいいな”、よ?もちろん結のことも大好きだけれど、それ以前に私達の創作者としての望みを詰め込んだ結果があなたに渡したモデルになるわ。デフォルトの姿として置いているのはその姿になっているわね。〕
なるほど…
「…それで、このすごい量の花のデータは?」
〔各モデルの各設置可能部位に設定できる花達ね。設定用ファイルと設定用の仕様画像もあるから参照しながら調整してね。〕
「ちなみにそれってモデル破綻とかは…」
〔安心なさい、ちゃんと破綻しないように作ってるわ。〕
「……だと思った。」
奈々だもん…完璧超人だもん、分かってたもん!!
「……とりあえず、私頑張るね。」
〔頑張って、私も愛ちゃんも…みんなあなたのことを応援してるから。…あ、それと。例の提案に関するものもファイルに詰めておいたけれど気がついた?〕
「え?…あー……ちょっと待って」
提案。実は、奈々でも愛海でもない絵師さんにも絵の依頼をした。待機画面とか休憩画面とかの関係で。それで奈々たちと連絡を取りながら進めてもらってたんだけど……あ、見つけた。
「うん、あったよ。」
〔最初の方は怯えられててちょっと困ったわね…〕
「あー、私も最初教えた時“格が違いすぎるんですけど!”って抗議来てたよ。」
でも私、もしもVtuberになるとしたらあの人の絵で私のことを見てみたかったんだよね。…うん、こっちの私も可愛い!
〔……絵師はそれぞれ、異なった絵柄を持ってることが多いもの。得意なんて全員違うのよね。だから、私や愛ちゃんがどんな存在でも気にしないで自分の絵柄を突き詰めればいいのよ。…そう言ったら、変な力が抜けたようで生き生きとしてたわ。〕
「…そっか。…ありがとね、奈々。」
確かに緊張してるような感じがしないし、いつもの感じが出てていいな。
〔それじゃあ、あなた?チャンネルとかの用意ができたら教えてくれる?こっちでも宣伝はしておくから。〕
「わ、わかった……でも、前に言ったけど……」
〔分かってるわ。それじゃあ、頑張って。〕
そう言って奈々との通話は切れた。
奈々さんは色々とぶっ飛んだ人です。でも“まだ”色々と抑えてます。
暴走開始はいつになるだろう…
あ、なんかして欲しいこととかあったら教えてくださいねー。
…それにしても、書いてる最中にロリ×ロリ神カプ降臨とかって脳裏に聞こえてきたの何でしょうね。