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No.38 不幸な星

今回からオフコラボ配信に……と思った方がほとんどだと思いますが、その前にちょっとお話を挟みます。

“不幸な星”……さて、一体誰の事でしょう。

「……うぅ、また壊れた…」


“このファイルは破損しています”というエラーメッセージを見て凹む。


私は“星月(ほしつき) (かなで)”。自分で言うのも少しどうかとは思いますが、結構不幸な人間です。


「まだ初配信出来てないし…動画もファイル壊れるし……コミケ原稿もファイル壊れるし…」


Vtuber“星司そら”としてデビューしたはいいものの。配信しようとしたときに限って強制シャットダウンされたり、PCが非常に重かったり、画面がうまく映らなかったりと…そんな状態です。


…昔からそうなのです。“星河”という名前で絵師として活動していたときよりも前から。…いえ、その時よりも悪化しているといいますか。


神社やお寺に御祓いに行っても渋い顔をされ…御札を買った時も“うちのじゃ効かないと思うけれど”と言われ割引までされる始末です。


呪い……なのでしょうか。他人との繋がりを断つ呪い。…他人に不幸を振り撒く呪い。


10年前に友人を亡くし、8年前に両親を亡くし……その頃から親戚と4つ離れた妹とは別居で生活している私。別居とはいえ当時小学生ではバイトとかはできませんから、家賃等は親戚側に持ってもらっていますが……別居で生活しているからなのか親戚側に特に不幸は降り掛かっていないようです。


学校はどうなのかというと……そもそも容姿からして異質、その上周囲に不幸を振り撒くので孤立していました。……友人が10年前に亡くなったことで決定的に。まさに“触らぬ神に祟り無し”といった状況ですか。……誰かが私のことを疫病神と言っていたのもよく覚えてますし。


「はぁ……バックアップも駄目…」


バックアップも壊れていることを知って項垂れると長く白い髪が目に入ります。


───アルビノ。医学的な名では先天性白皮症。私はそれなのだそうで。


詳しいことは把握しきれていないので説明できませんが、身体が紫外線に弱いので夏であっても長袖を着なければ外に出られない私です。弱視はそこまで強くなかったので認識は問題ないのですが、強い光には弱いため部屋の中も割と暗く、4年程前にアシスタントさんをこの家に呼ぶのも申し訳なかったですね…


「……作り直しますか」


小さく息を吐いてから意識を切り替え。作画用のソフトを起動します。


実は記憶力は結構いい方なので内容は8割方覚えてます。…大丈夫、アシスタントさんを呼んだ時よりも状況は悪くないんです。今回もきっと何とかなります。……きっと。


…でも。


「……先生…」


脳裏に思い浮かぶのはつい最近まで私に授業をしてくれていた先生のことです。不思議なことに、先生とお話しているとPCの電源が落ちたりファイルが壊れたりはしませんでした。


今までは我儘を言って授業後も通話を繋いでおいてもらい、できる限り作業をさせてもらっていたのですが…先生が私の担当から離れる以上、もうそれはできなくなってしまいましたから。


先生に奥様と娘さんがいるというのも知っていますし、奥様を凄く愛してらっしゃるのも知っています。そんな先生を私の我儘で引き留めて申し訳なかったのもあるのですが…それを許してくれた奥様と先生の優しさに甘えてしまっていたのが私です。


一応、先生のことは恋愛対象として見ているわけではありません。ただ、なんというか……お父さんのような雰囲気を感じて心地よかったのは事実です。妹も同じ先生の授業を受けているようで、同じような感想になっているらしいので…どこか、お父さんに似ているのでしょう。


妹は私と違って通信授業ではなく対面授業ですから、先生との交流が絶たれるわけではないのが少し羨ましいです…


「かなた先生…」


“かなた”。それが先生の名前。


…先生は今、どこで何をしているのでしょう。


我儘を言ってしまうのであれば、今すぐにでも助けてほしい。確実に精神を削っていくこのループから一時でもいいから助け出してほしい。


…でも、もうそれはできません。先生は私の担当を外れたのですから。


もしかすると、私が知らないだけで私の不幸に巻き込んでしまったのかもしれません。もしそうなのだとすると……それは、私にとって凄く辛い。


誰かに被害を出すくらいなら、総ての関係を絶って1人でいる方が……



ピピッ



「…うん?」


スマートフォンからの通知。配信開始の通知でした。


「ななみちゃんの配信が始まるみたいですね……」


酷く落ち着く声と人を魅了する可愛さを持ったななみちゃん。声に対するイメージは人それぞれなのでしょうが、私は落ち着く声だと感じました。


……日奈子先生のように静かなわけでもなく、かなた先生のように優しい声でもないのに。どこか、落ち着くのです。


「……うん。頑張れそう。」


落ち着けるのなら……集中できる。ちゃんと、再構成できるはず。


……ただ、懸念点は。ななみちゃんは唐突にリスナーを声だけで殺しに来ることですけども。


ななみちゃんの配信を作業用として配信を聞く私も、尊死攻撃範囲内であることには変わりないのですから。

“かなた先生”という名前で気付いた人もいるかもしれませんが、彼女は彼方さんの教え子です。

教え子と教師が同じ時期にVtuberデビューするとは…何かの因果だったりするのですかね。

それで……この子、実は既に出てます。

No.9にて加奈ちゃんが彼方さんの声に寄せて授業をしてた子がこの奏ちゃんです。

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