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No.22 寝静まる暗い時に

前回に引き続き甘い空気かも…

言うまでもない気がしますが彼方さん(=加奈ちゃん)と奈々さんは両想いです。

ちなみに作品内の日付や月齢は2027年を基準にしてます。多分所々でズレると思いますけど一応。

「…ん」


暗い時間に目が覚める。時刻は…3時。深夜、じゃなくて早朝ね。身体を起こして隣を見ると、結と加奈の姿がそこにある。


新しく作った結婚指輪を渡したあと、加奈に押しきられて一緒の布団で寝ることになったのよね。加奈と二人きりじゃなくて結も一緒に、だけど。いわゆる川の字、っていう寝方。私は三画目、加奈は一画目だから少しだけ離れてる。あの……向き合って寝てるとお互い恥ずか死しそうだったのよね。


寝る前は結と加奈と私で一緒にゲームしてたのだけど……この子ってば強すぎるのよね…私自身も一人の配信者、リスナー達と戦ってそこそこ鍛えてると思うのだけど(この子)には勝てない…どこでそんな格闘ゲーム技術学んだのかしら、結は…


「…ふふ」


でも、こうしてみると本当にただの女の子。元々は男性で私の夫である加奈も、即死コンボを軽々と扱う私と加奈の娘である結も。こうして寝ている姿を見るとただの女の子……どこにでもいるような仲良し姉妹にすら見える。…私も、寝ている時は姉妹に見えているのかしら…なんて。


…完全に目が覚めてしまったから、布団から出て加奈の隣に。結も言っていたけれど、本当に可愛い。結と一緒に寝ているからこそ、私の娘のようにも見える。…いえ、Vtuberとしては私の子供なのは間違いないのだけれど。


「……んー…」


「……」


……襲わないように気を付けないと。特にここは娘の隣だもの。


私は可愛いものが好きなだけでロリコン・ショタコンじゃない…とは思っているけれど、昔の彼方さんを知っていれば…それと、今の加奈に対して“大好き”と言っている私を見たら否定の方が難しいと思うもの。…実際、この人に対してだけよ。ここまでなるのは。


……とはいえ、そのまま寝顔を見続けていると耐えられなくなりそうだったから、2人を起こさないよう静かに居間を出て階段を上がる。入る部屋は東側にある私の部屋。


この家は四方に対してベランダがあるから、日の出とかが見やすいのよね。だからというわけでもないかもしれないけれど、ベランダへの窓を開けて外に出る。椅子を置いて空を見上げる。ついでにベランダに取り付けられている各方角の空を見れるモニターも起動。小さな明かり…常夜灯くらいの明かりは家の中だけじゃなく外にも点けてあるから暗闇の中でも見える。


「……あ、月……そういえば、下弦が近かったかしら。」


ちょうど半月くらいの月が南の空に浮かんでいるみたい。夜に見えるということは下弦の月よね。


「…………今日も、月が綺麗ね。」


「───ずっと月は綺麗だったよ。あなたと一緒に居れるなら、死んでもかまわない。」


「ごぼっ…!?」


噎せた。いや、1人で呟いたはずなのに背後から返答あるなんて思わないじゃない!?


改めて背後を見ると、そこには予想通りの人物。


「…か、加奈……?お、起きてたの…?」


「目が覚めたらちょうど居間を出て行く音が聞こえたから。どこに行くのかなって思ったらここに来てるんだもん。ごめんね、驚かせちゃったみたいで。」


「い、いえ……大丈夫よ。」


突然のことに動揺しながらも椅子をもう一脚用意する。手で示すと、ありがと、と言って加奈が座った。


……絶対私、顔が紅いわよ、今……


「…懐かしいな……」


「…?」


「うん?昔はよくこうやって星を眺めたよね、って。」


「……そうね。中学三年生くらいの頃だったかしら?」


「うん、そのくらい。付き合い始め当初だねー。」


「本当に、懐かしいわね……」


……そう、本当に。


「……当時はここまであなたのことが大好きになるとは思わなかったわね…」


「そう?…って聞いておきながら、私もそうなんだけどね。……でも、奈々はある程度は予測してたんじゃない?」


「その予想を大幅に越えてしまったのよ。予想外よ……まぁ、予想外でいえば…」


「……私が女の子になったこと、だよね…分かってる、私もこれは予想外だもん。」


予想なんて出来ないと思うけれど……まぁ。予想外には変わりないものね。


「それでも……たとえ女の子になったとしても私があなたを好きなことは変わらなかったわ。」


「…うん……ありがとう。」


小さく言った後に左手の指輪を見つめる加奈。その表情は不安じゃなくて安心。常夜灯くらいの明かりのお陰で表情までよく見える。


「……奈々。」


「…?」


「私ね……不安だったんだ。私が女の子になっても奈々を好きでいられるのかな、って。女の子になった私でも、奈々は好きでいてくれるのかな…って。一時的にとはいえ、結婚の証を喪う私を……奈々は、夫として認めてくれるのかなって。…女の子になるようになってからの3ヶ月、ずっと…ずっと、不安だった。」


「……」


「…でも………その不安の種を、他ならぬ奈々が取り払ってくれた。…信じても、いい…?」


そう言って、奈々は私をまっすぐ見る。


「こんな……こんな、女の子の私でも……娘みたいな私でも。奈々は、私を夫として愛してくれますか……?」


「…えぇ、もちろん。彼方さんであっても、加奈であっても。あなたは私の大切で、大好きな夫。その事実に変わりはないわ。あなたがどんな姿であれ、私はあなたを愛してるわ。」


そう言いきると、加奈の頬に涙が伝う。それに気付いて加奈が涙を拭うけれど、その涙は止まらない。


「や、やだっ、もう……!昨日いっぱい泣いたから、答えを聞いても泣かないって決めてたのに…っ!」


「……泣いてもいいのよ。」


「……じゃあ……」


加奈が不意に立ち上がったかと思うと倒れ込んで私の胸元に顔を埋める。


「せめて、声を殺させて…」


「……」


何も答えずに頭を撫でる。泣いているのも可愛いけれど、この状態で“襲いたい”と思うほど欲望に忠実ではないから。加奈が泣き止むまで、ずっと頭を撫で続ける。



そうしてしばらく泣き続けたあと、やっと涙が枯れたのか泣き止んで、私の胸から離れて椅子に座り、恥ずかしそうにしている加奈がいた。


「うぅ……2日続けて大泣きしちゃった……」


「別にいいんじゃないかしら……」


「……一応成人男性なんだもん……恥ずかしいよ……」


「…まぁ、言いたいことは分からなくはないけれど。」


それから“一応”ってちゃんと付ける辺り自分の状態を理解してるのよね…


「……泣きたい時、私の胸でよければいつでも貸すわよ。…私の貧しい胸でよければ、だけれど。」


「…ありがと。……あと私、奈々の胸好きだから小さくても別に気にしないんだけど…?」


「褒められてるのか貶されてるのかよく分からないわね……私、実はあなたをロリコンにしてしまったんじゃないかって心配になってる部分あるのよ…?」


加奈みたいな外見変化によるロリ化じゃない、私の場合は完全な合法ロリだもの。…自分で言うのもだけれど。そんな心配事を告げると加奈は少し悩むような表情をした。


「…うーん…どう答えるのが正解なのか分かんない……でも、間違いないのは私は奈々の胸だからこそ好きなんだよ?ロリコンになってるっていうのは否定できると思うけど……」


「う……」


喜んでいい、のかしら…?


「胸の話だったから一旦そこに限定したけど、実際私は奈々の全部が好きだもん。胸の大きさとか身体の大きさとか関係ないよ。奈々が奈々だからこそ好きなんだよ?」


「………うぅ」


は、恥ずかしい……顔が熱い……


加奈って愛情表現が分かりにくいとか結構言われているのを知っているのだけど、たまにこうやってすごくまっすぐに言ってくることがあるのよね……


「……言ってて恥ずかしくなってきた」


あぁもうなんなのよこの可愛い生き物……!いえ私の夫よね、そうなのよ…!そうなのよ!!!


と、そんなことをしていたら外側から明かりが差し込んでくる。日の出の時間になったみたい。


「……日も登ることだし、そろそろ朝御飯の支度をしようかしら。加奈は先にお風呂に入ってらっしゃいな。」


「え?いや、私やるよ、それくらい。」


「私がやりたいの。ダメ?」


「……それじゃあ、お言葉に甘えて。2回お風呂に入ることになるから時間かかるけど、いいの?」


「問題ないわ。待ち合わせの時間に余裕はあるもの。」


私がそう言うと加奈はそっか、と言って椅子から立ち上がった。


「それじゃあ、先に下に降りてるよ。」


「えぇ、私も片付けたらすぐに行くわ。」


そう言うと加奈は私の部屋を通って下に降りていった。それを見届けたあと、椅子を片付けてモニターの消灯を確認してからベランダから私の部屋の中に入った。



ピポンッ



「……メール?」


持ってきていた私のスマートフォンが通知を知らせる。何か仕事の依頼だったら忘れてはいけないから、すぐにスマートフォンを取り出して開く。


「………案件依頼…?」


届いていたのは企業案件の依頼。クリエイターとしての“姫華 日奈子”宛ではなく、配信者としての“夢園ヒナ”宛に。今はまだ詳細を明かすことはできないけれど、依頼を受けてくれるかどうかの提案。


流石にそんな詳細不明の依頼なんて受けるわけにはいかない、それが普通……なのだけど。文面から見るに、元より相手さんもこのメールで確定させるつもりはないみたい。


…それより。


「株式会社アーティファル……推薦者、“リリアン”…」


その企業名と、推薦者名は確か───


「…………莉愛ちゃん、よね…?」


加奈の義理の妹である、莉愛ちゃんの所属している企業と莉愛ちゃんのクリエイターとしての名前だったはず。

加奈ちゃんが泣き止んだ直後の話題が割と最悪な部類だった気もする…

あと奈々さんって“好き”が先なのか“推し”が先なのか微妙に分かりにくいんですよね…

一応、彼方さんが明確に“推し”になったのは高校生時代からだったらしいです。なので多分“好き”が先だと思うんですけど…うーん。

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