No.19 VRって怖い
ゲームの話になるまでに20話近く使うとは…
愛海に送ってもらって家に着いた私は、昨日初配信を始める前に作っておいたおでんを冷蔵庫から出して、状態を見たあとに再度冷蔵庫に入れておく。おでんって冷たくても美味しいからね、夏でも作ることがある。
それから洗い物をして、それが終わったら結に動画撮ることを伝えて自分の部屋に。
「……さて…と。」
ゲームソフト自体をゲーム機に入れておいて、PCの前に座って奈々と香月先生にそれぞれメッセージを飛ばしたあと、今日買ってきたゲームのパッケージを手に取る。
Gun's of Survival。Gun's、という名称が指すように銃がメインのFPSゲーム。多種多様な遠距離武器と少数の近接武器、それから多種多様なエリア・シチュエーションに多種多様な敵が一番の特徴。シリーズを重ねるごとに武器・敵・エリアは増えていって、既存プレイヤーを飽きさせないらしい。
シリーズ初期から常に周辺オブジェクトや敵、武器と銃弾のモデリング精度は高く、VRになるのを心待ちにされていた作品。この度VR専用ゲームとしてシリーズ最新作が出るということでファン達の期待度は非常に高かった…っていうのが、車の中で愛海から聞いた情報。
愛海自身このゲームは初見だし、そこまで情報も集めてなかったからファン達の動向は分からないんだって。…まぁ、ショップ側で人気って書かれてたから問題ない気もするんだけど。
「…HMDよし、トラッキングパーツよし、モーションキャプチャーよし…感覚伝達デバイスの接続よし、接着可能型VRモーショントリガーコントローラよし。ゲームのダウンロードもよし。」
VRコントローラっていってもいくつかの種類がある。
私が今回使うのは“接着可能型VRモーショントリガーコントローラ”っていって、トリガー…つまり引き金があるSTG向けのコントローラになる。接着可能型っていうのは、2台のコントローラを繋げて1つのコントローラとして扱うことができるコントローラのこと。P○O2で言うダブルセイバーとかEL○EN RINGで言う両刃剣みたいな使い方がやりやすくなるコントローラだと思えばいいかな。
それで……そもそもの話をすると、この接着可能型の本当の使い方は、両手持ちの長物を扱う点にあるんだよね。槍とか杖(杖って魔法の杖じゃなくて杖術の方の杖ね)とか……あとスナイパーライフルとかガトリング。だからこそFPSであるGoSにもこれが対応してるわけで。
……とまぁ、そんなことはさておき周囲に邪魔なものがないかを確認して、自己暗示をかけてプレイを開始する。
『わわ、すごーい……!綺麗ー!』
VRゲームは色々やってきてる私だけど、グラフィックが綺麗すぎて素直にそんな言葉が漏れた。まだチュートリアル、武器も何も持ってないから本番じゃないんだけどー…それでも相当力を込めて作られたのか上半身の動き以外に下半身の動きにも多少対応してて、座るとか足で4の形を取るとかも反映される。特に、座るに関しては座っていると動きにくくなるっていうところまで再現されてるねー…
『わ、武器のグラフィックもすごーい!それに持ってる感触もちゃんとあるよー!?あと……わ、ナイフで斬りつける感覚もちゃんとある!?ねぇこれ細かすぎないー!?』
感覚伝達デバイスから伝わる感覚だけどすごくリアル。…いやまぁ、ナイフで肉塊を斬りつける感覚に関しては多分マイルドになってるけどー…とりあえず、壁を斬りつけたときの反動とかは本物だと思うー…
それで、ダメージを受けたときの衝撃とかもちゃんとあるのすごい。そんなこんなで結構長いチュートリアルを終わらせて、初ステージ。
初ステージのエリアはいかにも幽霊が出そうな廃墟。ホラーは苦手じゃないから、ゾンビとか廃墟とかは大丈夫なんだよねー。
……なんだけど……
『ひぅっ……い、いやぁぁぁぁぁぁ!!!やだやだ、こないで、こっちにこないでぇぇぇぇぇぇ!!』
───私は、“虫”だけは本当にダメなんだよー…!!
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!こわいこわいやだやだやだやだ、こないでぇぇぇぇぇぇ!!!!あっ!?』
体勢を崩して尻餅をつく。さっきも体験したけど座ると動きにくくなる。特に尻餅はそれが顕著みたいで、お尻への衝撃と共に移動速度がガクッと落ちる。
『────!!!』
目の前に現れた巨大虫のグラフィックに、声にならない悲鳴が出ると共に私の意識が落ちた。
……そうして、意識が戻った頃にはゲームオーバーの文字が表示されてて、画面の中に敵の姿はなかった。
『……ぁ………生き……てる………?』
手元にコントローラの感触がなくて、HMDを少しズラして確認すると床に放り出された状態になっていた。
『…こわ、かったぁ……一種のホラーだよぉ……このゲームって一応ホラーじゃないんだよねー…?…うぅ……怖かったぁ……まだ震えが止まんない……』
……とはいえ、積むわけにもいかないし……対抗策を考えておかなきゃ……
『……極論、視認しなければいいんだよねー……視認しなければ……』
実際、羽音や移動の音はなんとか大丈夫。姿を視認するのが本当にダメなんだよねー…他のゲームでも目を伏せちゃうし、こればかりは昔からだから今から改善できるかと言われるとねー…
……一応の話をすると、自己暗示で虫苦手への耐性を上げることはできるんだよねー。無効化じゃなくて耐性上昇だから苦手のは変わらないんだけどー……それでもそれは慣れてるゲームの話で、初見のGoSは当てはまらないんだよー…
だから、今取れる方法としてはー…
『このゲームって移動音あったよねー…?あれから探知できないかなー…』
それって難しいんだけどー…多分、私の場合それができないとこのゲーム積みそうなんだよねー…
『トレーニングモード……はない、からー……うーん…まずは残弾数の確認とリロードの確認、それから近接攻撃の当て勘の確認が必要でー……片手にナイフ持った方がいいから長物は使えないかなー…』
今の装備はハンドガンにしてるんだけど、やっぱり威力は低いんだよねー。その威力をカバーできるのはゲーム中最強といわれてる近接攻撃か、残弾の多さか……
それから、ステージに入るまで敵がわからないのも怖いんだよねー…
『…うーん………って、あれ?ステージ選択でステージの情報って見れるんだ……え、エネミーの種類も見れる……』
色々調べてたらステージ選択画面でステージ詳細情報っていうのが見れて…エネミーの種類も見れた。正確にはエネミーグループって言って、私が苦手な“虫”の他に、例えば“死霊”、“死体”、“機械”みたいな感じの区分が表示されるみたい。
『…ていうか…機械に銃弾って効くのー?』
昔あったゲームみたいに戦車の砲弾とかなら分かるけどー…いや、あのゲームもマシンガンとかあったっけー?
『…とりあえず、これなら全ステージ目を瞑ってとかはしないでよさそうだねー…そんなの一種の縛りプレイだし…』
そんなことを呟きながら、2ステージ攻略したところでゲームを終わらせた。自己暗示も切って深く息を吐く。
「…ホラー以前に一種の死にゲーだよ、コレ…」
このゲーム、1ステージ自体は結構短い。…なんだけど、初手で出てくるエネミーがよりにもよって私が酷く苦手な“虫”な影響で、それに対する対応策を構築するのに凄く時間がかかった。
それにしても…昔TPSやっててよかった。音だけでどこから来るか判別できる……
Gun's of Survivalが簡単にどんなゲームかって説明しますと、まぁ…昔あった(今もあるのかな?)“TANK!T〇NK!TANK!”っていうゲーム(実在するゲームですから一応伏字にしてます)が一人称視点になって、さらにプレイヤーが戦車じゃなくて人間になったものですね。
…私も虫苦手だからこういうゲーム出たら積みそう。




