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No.119 小さな想い重ねて

なんか納得いったので投稿。

早めに納得いった感じになりました

“D.D.D.”という名前のユーザー。


それに実況席の人達の中で最初に気づいたのはリリアンお姉ちゃんだった。


〔あ、D3。こっちに出てくるなんて珍しいですね。〕



コメント:


:誰?

:どなた?

:リリアンさんのお知り合い?

:知り合いっつーか……

:リリアンさんの娘やぞ今来たこの方

:ふぁっ?

:ふぁ?

:娘!?

:いたの!?

:娘っつっても人間じゃないけどね

:正式名称Dream Drip Development Systems Leader───ドリームシリーズに存在している夢を抽出して技を開発するシステム群の長を務める女性型AIよ

:たまにだけどネット内をふらついてドリームシリーズの配信やってる人のチャット欄に出没する

:……ただホントにドリームシリーズ以外で見かけないからマジで珍しい

D.D.D.:[English]いろいろなことが起きていたので、私は母がそこにいるかどうか心配でした。(原文:With all the things that were happening, I was worried about my mother being there.)

:ん?

:ん…?

D.D.D.:[English]えっと…(原文:Um...)

:多分誤訳

:仕方ないんだよなこれ……

:DDDの既定システム言語が日本語じゃないから翻訳通すと訳が変になる



〔あ、それは本当に申し訳なく…〕


〔確かに分かりにくイよナ〕


〔う……〕


〔てカ、使えない技術ってどうイウことダ?〕


〔えっ…と、D3達は想撃を始めとするイメージ制御系がほぼ使えないんですよ。それもあって直接描画そのものはできても起動はできないという…〕


〔……他の想撃と違ってそこまで要求は多くないはずですが?〕



コメント:


D.D.D.:[English]“直接描画魔法”。それを発動させるのに十分な出力を生み出せないのです。(原文:"Direct drawing magic." We just can't produce enough output to activate it.)

:えっ

:そうなの!?

D.D.D.:[English]なぜなら、私たちの感情は真実と偽りの2つから成り立っているからです。(原文:Because our emotions are made up of two things: true and false.)

D.D.D.:[English]どれほど類似していても、お客様の複雑なフローに対抗することはできません。(原文:No matter how similar we are, we cannot compete with your complex flow.)

:……

:んーと…?

:えと……?



〔……リリアンさんヨ。せめて日本語言語に対応させトイてやれんかい……〕


〔あう……〕


〔翻訳文から察するに0と1のデジタル信号で成り立つD3さん達では複雑なアナログ信号を持つ私達に敵わない、というところですかね?〕



コメント:


:そうなの?

:そうなの………?

D.D.D.:[English]あなたは正しいです、解説者さん。(原文:You are right, commentator.)

:合ってるらしい

:合ってるんだ

:そうなんだ…



〔……実際の話、現行のAIではいくら多種多様な人格を持たせたところで生身の人間が生み出せる出力には勝てないんですよね……〕


〔リリアンさん製でモか〕


〔えぇ……実際、私製とか関係ない気がしますが…まぁ、そうですね。〕


そう答えてからリリアンお姉ちゃんが表情を暗くする。


〔…とはいえ、それは私が目指す理想が遥か遠いものであることを……いえ、叶うはずのないものであることを示しているようで。折れそうになることも、少し。〕


〔リリアンさん……〕



コメント:


:リリアンさん……

:リリアンさんの理想、か……



〘……小さな想いは細い糸〙


〔ン?〕


〘細い糸を重ね、束ね、織りなし大きな布を作る〙



コメント:


:ななみちゃん?

:ななみちゃん?

:これは…

:歌?

:なのか?



〘ななみ様……?〙


〘……ねぇ、“ダーズダズェル・デェナリン”。貴女は、皆と力を重ねようとしたの?〙



コメント:


:ダー……何?

:うまく聞き取れんかった

:ななみちゃんなんて?

D.D.D.:[English]!?なんでそんな名前知ってたの…?!?(原文:!?How did you know that name...?!)

:DDD?

:どしたのどしたの

D.D.D.:[English]その名前を知っているのは母とあの人だけ…!(原文:Only my mother and that person should know that name...!)

:???



〘責任感が強くて皆の期待に応えられるように頑張るのは貴女のいいところだけど……でも貴女は皆を頼らない節がある。……私が言えることでは、ないらしいけれど。〙


〔台無しじゃね?〕


〘単体で足りないのなら重ねてみなさい。それは確かに難しいけれど、成れば大きな力に変わる。……カナさんのところで起こっているように。〙


カナさんの映る画面ではユウさんの放った光によってカナさんの炎纏の大鎚が押されて少しずつプラズマスフィアを押し返しているのが映っていた。


〘息を合わせて一緒に……いける!?〙


〘はいっ!〙


〘…分かった、出力上げるよ!!〙


〘え!?でもどうやって……〙


〘ちょっとした裏技!!〙


そう言ってユウさんは手を広げた。


魔術紋様(マジックサークル)空中固定化解除、最大展開超高速回転開始…!!〙


……あれって


「嘘……変則変形回転魔法陣」


奏さんの呟いた言葉が正確に表してる。


巨大な魔法陣の中で変則的に回る。x軸、y軸、z軸を不規則に移動しながらその魔法陣を形成する。


そんな不規則な変形をしながらも()()()()()()()()()()()()()。逆に魔法を強化する。


〘せー……〙


〘……のっ!!〙


その強化された魔法はさっきよりも大きな光を放ち、光が衝突した炎纏の大鎚はプラズマスフィアをまっすぐに打ち返した。


〘───ギャァァァァ!!!〙


すぐに龍の悲鳴。



コメント:


:す、すげぇ……

:ガチで返した……

:でもって聖母様の大鎚の炎も消えた……

:染められていた赤色も消えて本来の白く可愛い大鎚が……

:デザイン可愛いけどあれ重量結構あるんよな……

:要求STRいくつやっけ

:さぁ

:知らん

:忘れた

:お前らな……

P-UI:150ですね

:おっと

:ありがと

:そっかそんなに高かったか

:てか待って、なんでういちゃんが知ってんのさ……

:確かに

P-UI:カナさんのリスナーですし、私

:なるほど

:なるほど?



……実際はこのイベントに来るまでにざっくり全員の現状を調べたっていうのもあるんだけど。運良く全員一昨日にこのゲームの配信しててスキル構成とか公開してくれてたからそこまで労力はかかってなかったし。


あと“乙女の破壊鎚(ガールクラッシャー)”系列の要求値は以前から知ってたし……


〘……〙


〔オイ、大丈夫か……?〕


実況さんの言葉の後、カナさんの身体がガクンと揺れて───


〘…っと!大丈夫、カナさん?〙


〘え……ヨウ、さん……?〙


いつの間にかそばに来ていたヨウさんがその身体を支えた。


〘……えっと、これは大丈夫…なのかな?〙


〘……これ。ななみちゃんに通じてるので…〙


その言葉がカナさんから発された直後、お姉ちゃんが口を開く。


〘カナさんは若干の精神疲労状態。少し休めば動けるようになるよ。〙


〘ななみがしばらく動けてねぇのは根本的な疲労の溜め過ぎだからな……ったくテメェは相変わらず1人で抱え込もうとするの変わってねぇよなぁ…〙


あ、お姉ちゃん反論できないみたい。


〘……ともかく、少し休んでおいて。お疲れ様、カナさん。〙


〘は、はい……〙


〘私は姫が戻ってくるまでのあいだここにいるから身体の力抜いててもいいよ、カナさん。〙


〘……では、ヨウさんのお言葉に甘えて……少し恥ずかしいですけど。〙


〘色んな人に見られてるからね…〙



コメント:


:ヨウちゃんのママ味は聖母様にも通用する、と…

:φ(..)メモメモ

:……んで姫は何やってんの?

:まだ滞空してるけど……

:何かを待ってる?

:待ってるとしても何を?



〘ユウさん、来るよ〙


〘了解〙


そのお姉ちゃんの声がしたと同時にユウさんの後ろでさっきとは別の幾何学模様──魔法陣が輝いた。


〘ガァァァァ!!!〙


それとほぼ同時にカナさんとヨウさんを映す画面に現れる龍。



コメント:


:ほぁ!?

:びっくりしたぁ!?

:襲撃!?



〘〘え……?〙〙


カナさんとヨウさんが困惑しているところに───


〘───ガッ!〙


龍の顔面に当たる光弾。その飛んできた方向には、魔法陣を複雑に回すユウさんがいた。


〘キミの相手はそっちじゃないよ。みんなが態勢を立て直せるまで、ボクがお相手してあげる!〙


〘ゥルルルル………!〙


反応を見ていたお姉ちゃんが口を開いた。


〘怒り状態…無理は禁物だからね〙


〘このくらいなら精神疲労も起こさないから大丈夫!〙


〘いやほぼ基礎に当たる“観貫(かんぬき)”で精神疲労起こした人が何言ってんの〙


〘うっ……で、でもこれは慣れてるから!〙


〘そう……〙


〘信用されてない気がするなぁ!?〙


〘信用してるよ、してる〙


〘嘘だっ!!〙


〘嘘じゃないから、集中!!〙


〘はいっ!!〙



コメント:


:草

:草なんよ

:草しか生えんぞ

:夫婦漫才か

:夫婦……はそれぞれ別の人となってるからなぁ

:そうねぇ

:……ねぇ、なんか今違和感あったような気がするんだけど

:ん?

:違和感?

:今ななみちゃん何で精神疲労起こしたって言った……?

:……んーと?

:えっと……

:かんぬき?

:閂?

:なんのこと?



観貫。見の目ではなく観の目で観たものを貫くもの。


……なんだけど。


「……お姉ちゃん、観貫を基礎って言うけどあれって言うほど基礎かなぁ。霊力操作は基礎なんだけど。」


「一応基礎だと思うよ、壊拳(かいけん)とか秘奥義使うのに必要だし。」


「あ、そっか…」


壊拳っていうのは滅敵術の一種なんだけど、破壊する物質の構造をちゃんと認識する必要がある。


秘奥義も似たような感じで、剣筋を正確に認識しないと本当の意味では使えないんだよね。


それらを正確に認識するのに必要なのが“観の目”……もっと言えば“観測者の視点”。


花神流における観の目を具体的に説明すると、対象の脆いところや集中の浅いところを見極める力。対象の真の弱点を見破る力、と言ってもいいかも?


視聴嗅味触の五感と第六感のどれか1つでも機能していれば“観える”。それが花神流の“観の目”。……味覚は使いにくいのは置いておいて。


〘そろそろスタン切れるよ〙


〘分かった〙


スタン…そういえばさっき元気に返事したあと、魔法陣から魔法弾連射してたっけ…


「……あの魔法なんだっけ…」


「“スターキャプチャー”。星を捕獲するもの、というところかしらね。加奈の得意な魔法陣なのだけど……」


……お姉ちゃんって本当にできないことないよね…


……って、言ったら否定すると思うけど。


〘魔術紋様正常起動、同種魔術紋様連動強化、異種魔術紋様稼働連結───魔術砲身構築正常。魔術紋様空中固定化解除、指定連結砲門自動追尾───〙


……えっと、ユウさん?何して……


〘常識破りの死神が遺した技術が1つ。魔法弾を強化する“砲身”の発展形であり、さらに構築難易度を上げた神技ともされるもの……!!〙


………ちょっと待って、それは


〘───“巨大砲身(マキシマムバレル)”!!〙


巨大砲身(マキシマムバレル)。砲身の強化系で、環状魔法陣じゃなくて円形魔法陣を使ったもの。


円形魔法陣に向かって弾を撃って、円形魔法陣に接触したと同時に砲身の効果を一気に付与する。


というか、円形魔法陣になると砲身(バレル)というよりは砲口(マズル)な気がするのは気のせいかな…


巨大砲身(マキシマムバレル)……ねぇ。」


「ママ?」


「…記録されている中で、常識破りの死神がこのゲームに遺した最後の技術。でも、それって“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだけど……ユウさんに扱えるのかしら……?」


……それは、どうなのだろう…本当に。


実際私も安定しないし……


〘小さな力を重ねて纏め、力の向く先を一点に整え、敵を打破する大きな力となす〙



コメント:


:……それって

:どっかで聞いたことあるぞ……

:んーと……

:常識破りの死神が遺した言葉……か…?

:あ、言われてみれば

:この巨大砲身と書いてマキシマムバレルとか読むシステム外スキルの説明に使ってた言葉だわ



〘……どんなに細い糸でも。重ねて束ねれば千切れにくい太い糸になる。その糸を使って織れば面を支えられる織布になる。……どんなものでも、重ねれば強靭なものになる。〙



コメント:


:……うーん?

:なんかどっかで聞いたことある言い回しなんだよなぁ

:どこだっけ……

:なんだっけなぁ

:なんか、出かかってはいるんよな……

:喉の辺りまで来ててちゃんと吐き出せないすごく嫌なこの感じ

D.D.D.:[English]“三本の矢”に似ていますね…(原文:It's similar to the "Three Arrows"...)

:三本の矢?

:三本の矢……って、えっと

:あー、それだ!!毛利元就が三人の息子に説いた故事成語!!



〘魔術紋様……魔法陣も同じでね。分解していけばそれぞれ独立した魔力導線になる。逆を言えば、無数の魔力導線を組み合わせて正常に成立させたものが魔術紋様なわけで。その魔術紋様をさらに組み合わせる多重連結魔術紋様はただ魔術紋様を構築するよりも強力な代わりに難度が高くなる。〙


そこまで言ってため息をつくお姉ちゃん。


〘“巨大砲身(マキシマムバレル)”はその多重連結魔術紋様の中でも特に広範囲かつ遠隔での破壊力を突き詰めたものだとされている。普通の魔術文様よりも遥かに巨大かつ複雑に絡み合う魔力導線を用いる分、その難易度はかの常識破りの死神が常用化を諦めるほどに難しい。〙


〔実際、常識破りの死神も多用はしなかったそうですね……〕


〔他の技もソコまで多用してたわけじゃないガナ。〕


〘けれど、構造自体は単純だから魔術紋様を重ねることの強さを示すにはちょうどいい。……いくら構造が単純だといっても難しいことには変わらないから構築できてる時点でユウさんの実力はかなりのものなんだよね……〙


〘あぅ……〙



コメント:


:ほへぇ

:はへぇ

:

:

:

D.D.D.:[English](原文:)

姫乃あかりん:

:照れ顔かわゆす

:はいかわいい

:何名か墜ちたぞ

:DDDまで落ちたな

:可愛すぎか

:戦闘中だから可愛さは少し抑えられてるけどふとした時に出るその可愛さがまた( ・∀・)イイ!!

:にしても重ねる、ねぇ…



〘……なのだけど。〙


〘けど……?〙


〘……巨大砲身(マキシマムバレル)が遺されたにも関わらず使用を推奨されなかったのは理由がある。それにちゃんと気づいてるのかな、ユウさんは。〙


〘…え、推奨されなかった理由?〙


〘あ、やっぱり気づいてないのね……〙



コメント:


:推奨されなかった理由?

:そんなのあるの?

:つーか常識破りの死神が遺したもんって全部難易度高いから割と推奨されてない部分はあるよな

:んね

:そーね



お姉ちゃんが少し悩んだ表情をした後、諦めたようにため息をついて口を開いた。


〘……ねぇ、ユウさん?多分だけどユウさんって花礼剣(かれいけん)の……“青の一”は使えるよね?〙


〘……!使える、けど……〙


〘やっぱり。なら危ないと思ったときはそれで対応してほしい。一時しのぎみたいな方法にはなっちゃうけど、流石に今理由と対処方法教えて早速本番……は不安だよね?〙


〘う……はい〙


〘だよね…とりあえず、カナさんが復帰するまで耐えて。カナさんと同時に私も復帰できると思うから。危ないと思ったらすぐに使うんだよ?いい?〙


〘わ、分かった!〙



コメント:


:ママ味

:ママ味

:ななみちゃんから凄くママを感じる

:正確にはパパなはず…なんだけどなぁ……

:んね

:ななみちゃんはママだった……?

姫華日奈子:強く否定できないのがなんとも……

:え

:え



「ママ?」


「う……ほぼ初対面の時に泣き止むまで待っててくれた印象がすごく強いのよ……その時の雰囲気がお母様に似ていたのもあって……ね…」


そっか……でもそこは否定しないとだめじゃないのかな…?

花礼剣(かれいけん)っていうのはそのまま“花神流礼剣術”の略称です。

今更なんですが……この作品、低めの順位とはいえども何度か日間ランキングに乗っててですね…皆様一体どこから見つけてきてるのか少し不思議に思っております、はい。

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