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No.115 今は名のなき結晶の本気(?)

No.63からここまでの間で同じ1日の間に起きてること……

実は長すぎるかなとか思ってるんですけどこうしちゃったからにはもうそのまま突き進むしかないのです

…なお。当初の予定ではNo.95くらいのところでイベントが終わっていたはずなんです…

「グォォォォォ!!!」


花神流の事を考えながらも周囲に響いた咆哮に龍人のいた方に視線を向けると、土煙の中からいくつかの魔力弾が飛び出してきた。


それをバックステップで避けようとすると魔力弾も照準を合わせてくる。



コメント:


:追尾弾か…

:だいぶ対処めんどくさいよなあれ

:でも姫なら……



盾がなくても魔法破壊でどうにかできる、って言いたいんだろうけど……


『…追尾弾なのか操作弾なのか分かりにくいけど、そう簡単に破壊はさせてくれないかな……』


仮にも“最強”の名を持つ存在だし。操作弾を使っててもおかしくないよね。


……ふむ。


『ちょうどいいかな、この記術石の本気みたいなのを試させてもらうね。』



コメント:


:へ?

:へ???

:本……気?

:しかも試すって……

:え……?



まずは立ち止まって手を伸ばし、ボクの周囲を回っていた9つの光球を前に集める。


その光球が円を描くように回り始めると、円が……というか恐らく光球が様々な弾を発射し始めた。



コメント:


:はへぇ!?

:何あれぇ!?



手の向きを変えると弾の発射される向きも変わって、相手の魔力弾を逃さず砕いていった。


『…なるほどこういう感じか』


この光球は発射体で、ボクの意思に応じて弾を発射してくれる。弾の種類は光球によって様々だから“弾”としておくけど。


……あと、光球が9個しかないのは多分……


『…ボクの練度不足かな。』


この光球は本来5()0()()はあるはずだから、単純にボクの練度不足だと思う。


……もしくは、まだボクの理解が足りてないか。


そんなことを考えていると、なんとなく大きなものが動く気配を感じた。


『コーデチェンジ』



コメント:


:おん?

:ん?

:コーデチェンジ?

:お着替えですか?

:生着替えですか!?

:おいこら

:こらこら

:生着替えだとしてもこっちからじゃ見えんぞ

:残念ながら姫視点なんでこの配信からじゃ見えませんねぇ



お着替えなのはあながち間違いじゃないんだけど……ボク、男なんだけどなぁ。


『───“赤薔薇”を補助表示、“星天河”を攻撃表示。』


そう呟くと赤薔薇の剣が光球に変わり、また別の光球が手元で“何か”に変わる。


「ゴォァッ!!」


『っ』


その“何か”の柄をとり、飛び込んできた相手に向かって振るうと、異様にしなって相手の片足に巻き付いた。


それを見て“何か”の柄を引いて相手を転倒させる。


「オグォ……」


『わ、痛そ……』


まぁボクがやったんだけど。


……というか、形態変化してるね。第五形態、中型龍か。さっきの破砕鳳仙花で形態変化条件満たしたみたい。


…それはそれとして、ようやく手に持ったものを見る。


『……鞭?』


鞭。なんかキラキラしてるけど、とりあえず鞭。


……星空。なんかモチーフはそんな感じがする。


『……星天河……河……うーん、流れるように舞うような戦い方をしろってことなのかな……』



コメント:


:言ってる場合っすか

:言ってる場合ですかねぇ

:てかなんで鞭使えるんですか

:いや姫は以前から使えるぞ

:使えるよね

:姫って割と色んな武器使えるよ?



『……使えなくはないだけで下手なんだよね……』


使える理由は主にVR版フ〇ムだし。ウィップとか血塗れたムチとかまだらムチとか仕込み杖とか茨鞭とか。下手なんだけど。


たまに使ってると“姫って魔術系特化じゃなかったっけ”って言われるけど、実際の話技術要求武器も好きなんだよね。


……ていうかボクが技術要求武器好きなのって明らかに師匠の影響だよねぇ。


「ゴァ、ァッ!!」


体勢を立て直した龍がボクに向かって突進してくる。それを横に避けて鞭を振るって───


『……あ。』


偶然だけど首のあたりを回って鞭の先がボクの手の方に戻ってくる。


『…………………ま、いっか。』


「グペッ!?」


悩んだけど、そのまま思いっきり後ろ側に引くことで無理矢理体勢を崩す。


……実際にやったら普通に危険だからね、コレ。龍も龍で絞首ダメージ出てるし。



コメント:


:ひぇっ

:ひぃっ

:絞首……!!

:たまにやることこわいよひめぇ!!

:首のあたりで一周回ったわけじゃないからダメージは一瞬だったけどさぁ!!



ちなみにやろうとすれば叩きつけもできる。その場合絞首ダメージは加速するし、激突ダメージも追加される。


……まぁ、そんなことはどうでもいいや。重要なのは体勢を立て直した龍が光らせた水の小刀。


水の小刀は魔法で作った武器。


そういう魔法で作った武器を使ってスキルを発動させるのはボク達もやることだけど、この龍もやってくるのか……


水属性スキルの光を纏った上段の構え……うーんと。


『……“滝壺”、かな?』


教わったのを思い出しながら呟く。…ななみちゃんだったらわかるんだろうけど。


滝壺は確か重撃系。重撃系っていうのは力任せの攻撃だから流石に鞭で受けるのは心許ない。


とはいえ、ボクはまだこの記術石の力の全貌を把握してるわけじゃない。攻撃表示を変えたところでまた鞭だったら受けきれない。


『“彼岸花”を防御表示に』


だから、攻撃じゃなくて防御に回す。1つの光球が光ってボクの服が変わる。


その直後、ボクに向かって剣が振り下ろされる───けど、そこまでの衝撃はなかった。


若干困惑してるような龍を蹴り飛ばして一呼吸。


『…なんかこの服、防御力高くない?』



コメント:


:言ってる場合ですか

:言ってる場合かね

:さらっと鳩尾のあたり蹴り飛ばして感想がそれですかい

:にしてもノーダメージなのはちょっと気になる

:確かに

:それはそう

:無敵時間でもあったんかね

:あー

:ありえるかも?



無敵時間かぁ…まぁありえなくはなさそうだけど。


……あと、思ってたけど。


『服が赤い……』



コメント:


:それはそう

:そりゃそうです

:モチーフ彼岸花でしょうからねぇ

:……想撃で作られた衣装って何かしら特殊効果があるって聞いたことあるような気がするけどどうなんだろ

:うーん……?

:分からん

:なんか姫が龍を蹴った時赤い何かが舞ってた気がするけど

:あれが特殊効果なのかねぇ

:赤い…あれなんだろ

:うーん…

:毒か?

:彼岸花って毒持ちだから毒があり得そう…麻痺の可能性もあるけど

:SCARLET L〇T…?

:いや流石に違うやろ

:それは流石にない

:あと攻撃表示とか防御表示とかなんなんだろ……?

:さぁ

:姫は理解してんのかな



『大まかには。まぁ全部把握してるわけじゃないし、使いこなせはしないんだけど。』


……この記術石の強化盛装で使用できるようになるコレはかなり複雑な構造をしてる。だから全部把握できてるとは言えない。


物理系の武器に変化するは攻撃表示。封じられた想撃をモチーフとした物理系武器に変化する。


特別製の服装に変化するは防御表示。封じられた想撃をモチーフとした特殊な効果を持つ服装に変化する。


発射体の光球に変化するは補助表示。単純な直線弾、かつ封じられた想撃によって違う弾種の弾を放つ光球に変化する。


魔法用の武器に変化するは魔術表示。封じられた想撃をモチーフとした魔法系武器に変化する。


加速用の装飾に変化するは加速表示。封じられた想撃をモチーフとした速度を上げる装飾に変化する。


そしてこれら5つを全部同じ想撃モチーフで組み合わせたフルコーデ。以前やってたゲームも関係してセットコーデって言っちゃいそうになるけど、多分フルコーデって言わないと伝わらないんだろうなぁ。


こんなすごく複雑な仕様になってるみたいだから使いこなすにはかなりの理解度と練度が必要になってくるわけで。まずぶっつけ本番みたいな状況で使うべき代物じゃない。


そもそもの話、武器が様々なものに変わるだけならまだしも服装まで様々なものに変わる強化盛装なんて聞いたことが……ない、わけではないけれど。はっきり言ってここまでの代物は規格外といって過言ではないと思う。


ていうか、光球が9個……正確には攻撃表示で展開されてた“赤薔薇の剣(仮称)”も含めて10個だったのも“今のお前では私の力の半分すら扱うことはできない”、と嘲笑われているような感じすらする。


実際、ボクの怒りの傾向である冷静化がこの力を扱えるようになってる理由でもあるだろうし。平常時だと扱いきれるかどうか。


『でもまぁ、今はこれだけでも十分かな。』


とりあえず前向きに考えよう。ななみちゃんも言ってた。あの時の“雅夜蝶”を中心とした姿は記術石が“君にはこれが似合う”って最適なものを選んでくれたものだ、って。


故に。嘲笑われているわけではなく、加減してくれたのだと。ボクの力に合わせて負担が少なくなるように調整してくれてるのだと。


“星空の鞭(仮称)”にしてもボクが完全ではなくとも扱えると信じてくれたからこそその形を成したのだと。


実際、少しの期間とはいえほとんどの武器に触ったことはあるから使おうとすれば使えるわけだし。


…そのあたりは師匠に感謝だね。あらゆる武器を操る師匠がいて、その師匠が嫌な顔1つせず様々な武器の練習に付き合ってくれたからこそ記術石も信じてくれたんだろう……なんて。


『……さすがに無理やりすぎるかな、っと』



コメント:


:おん?

:ん?

:姫?

:何かずっと考えてる風だったけどどしたんかね

:てかなんかずっと考えてたのに割と正確に鞭で弱点殴ってる姫よ

:なんかやっぱりななみちゃんと似てるよなぁ

:ねー



『あはは……』


「ゴァァァ!!!」


……ん、龍が水の小刀でスキルを起動したね。


〔姫!〕


え、ルーンストーンからヨウちゃんの声!?……ってやばい!


『“墨染桜”、フルコーデ!』


ボクが咄嗟にそう叫ぶとボクの服や鞭が光って姿を変える。


『“魔力纏”……っ!』


スキルの光は無敵時間と思われるその短時間で受けれた一撃では消えず。連続技と判断して現れた武器を魔力を纏ってそのまま振るう。


木属性の捩じるような軌道を描く切り裂き三連撃───“巻蔓(まきづる)”。


スキルが終わったのを見計らって纏っていた魔力をバネのように使うことで急加速。


『“ストレートキック”!!!』


「グォァァァ!?」


かなり力を込めて飛び蹴り。


『あ……あ………っぶなぁ……!』


〔…ご、ごめん……〕


息を整えてルーンストーンに触れる。


『大丈夫、なんとかなったから。…それより、どうしてヨウちゃんの声が?』


〔私もいるよ。ただ単に私のルーンストーンから話してもらってるだけ。〕


あ、ななみちゃんの声…


〔ヨウさんの方は回復終わったみたいで、すぐにでも行けるって。〕


『……ななみちゃんは?』


〔……私はもうちょっと。ごめん、その形態も完全に任せていい?〕


それだけ負荷がかかってたんだろうなぁ……


『ゆっくり休んでよ、ななみちゃん。』


ボクがそう言ったら小さく息を吐く声。


〔……事情があってゆっくりしていられないんだけどね。〕



コメント:


:事情……

:事情ねぇ

:なんか焦ってたっぽいのそれが理由かな?

:かもねぇ

:ななみちゃんの事情ってなんだろね



『……なら、できるだけ早くこの形態を終わらせるよ。』


〔お願い。ヨウさんも気をつけていってらっしゃい。〕


〔は、はいっ!姫、今そっち行くから!〕


それを最後に通信は切れた。……なんか、ななみちゃんがお母さんみたいだったのとヨウちゃんが子供みたいだったなぁ。


ふと自分の服装を見下ろす。


『あ、巫女服だ』


巫女服。白衣の緋袴……が一般的だけど、ボクが着てるのはピンク色の袴で、全体的に少し黒っぽい感じ。黒ずんだ、って感じかなぁ……


……あ。


『墨染桜……京都の伏見墨染にあるという伝説上の桜。上野峯雄(かみつけのみねお)という人物が藤原基経の死を悼んで詩を詠んだところ墨染色に咲いた……か。』


この薄い黒を薄い墨と解釈するなら、割とそれそのものなのかもしれない。


「グァァァ!!」


『っ、と』


咆哮しながら向かってきた龍を手に持っていた刀で受け止める。


……桜色の刀身。多分これは攻撃表示の武器。魔術表示の武器はまだ見てないけど、巫女さんってことは幣───おはらい棒か巫女鈴か……筆とかもあり得そう。


巫女服自体にも桜の花びらが描かれてるから全体的に桜要素を具現化した感じかな?


『桜の巫女さん、ってところかな…』



コメント:


:かねぇ

:かねぇ

:別視点見ると姫が動くたびに桜の花びらが舞ってるから桜の巫女であってると思うよ

:姫は男の娘だから巫より覡が正しいのかねぇ

:んー……

:どうなんだろ

:しかし桜の巫女って聞くと別のことまで思い出すな

:確かに



……別のことまで思い出すのはボクもだね。


そんな事を考えていたら、ガシャン、という特徴的な変形音がした。


『任せる!』

「任せて!」


ボクと同時に叫んだ彼女は紫色の妖しい炎を纏い、赤と青の刃を持つ大鎌を手に銀色の髪を靡かせて飛び出した。


『……久しぶりに見たな、ヨウちゃんの“強化”』


妖しき紫炎纏いし狐の巫女。


それが、ボクから見た記術石“九尾狐”の強化盛装の印象だ。

一応。ヨウちゃんの持ってる赤と青の刃を持つ大鎌は記述石の強化盛装由来のものではなく双剣“久遠”が変形したものです。

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