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No.112 1回休み

非常に遅くなって申し訳ないのですがしばらく投稿遅延は続きます…

あと遅延した際の連続投稿を1日1話にしてたんですが少しの間だけ2日に1話の頻度に変えようと思ってます

連続で読めるか1日置いて読めるか…どちらがいいのか私にはわからないのです

第四形態───中型龍人・軍刀使い。


さっきの龍人よりも小さくなったことで威圧感が少し和らぎ、他の皆も少しホッとしてる印象。


とりあえず今は束縛系の魔法による足止めとマーカーの付け直しをしてるところ。


……ななみちゃん、一気に体力20%削るとか相当ヤバいダメージ叩き出してたけど。あの妖刀を使ってるといってもどこからあんなダメージ出せるのか……まぁ、想撃なんだろうけど。


で、そのななみちゃんはというと…


『………どう見ても大丈夫じゃなさそうなんだよなぁ…』



コメント:


:ん?

:ん??

:…あー

:あぁ

:ななみちゃんですか

:ななみちゃんか

:確かに

:マーカーの貼り直し進んでるけどまだななみちゃん動けてないもんね

:ねー

:てかだいぶ辛そうじゃない?

:…まぁ

:あんな動きし続けてればなぁ……

:流石のななみちゃんも限界か



『……限界、か。』


その表現は確かに正しいのかもしれない。


あのレベルの想撃のエネルギーはななみちゃん本人もそうだけど、ゲームシステムとゲームハードにもかなりの負荷をかけているはず。


中でも一番負荷が大きいのは生身の人間であるななみちゃん自身。……ん?あれ?ななみちゃんって公式情報で人間だよね…?……まいっか、今は。


ゲームシステムとゲームハードは元々生身の肉体からプレイヤーのアバターに様々な感覚信号を届ける性質上、そういった入力信号に対する強度は高く作られている。でも、生身の肉体にそんな強度は存在しない。


正直な話、今この瞬間精神疲労で倒れてもおかしくないはず。だというのに彼女は無理矢理にでも立ち上がろうとしている。


……ボクに、できることは。


『モノくん!!ヨウちゃん!!』


ボクが2人の名前を呼ぶと2人ともこっちを見て、ヨウちゃんがすぐに頷いた。


「分かったよ、姫!モノさん、行くよ!」


「え、あ、はい!」


ヨウちゃんがボクの意思を理解して、そのヨウちゃんの行動を見てモノくんが察する。


そして、ヨミさんも一緒に動く。


「“墨染”!!姫君様、防御は私に任せてくださいませ!」


『…ごめん、任せるね!!』


そう言ったあと、ボクはななみちゃんの元に。


『…えっと、大丈夫?』


『………大丈夫』


ななみちゃんの回答に妖刀が反応する。


「んなわけあるか!!少しは休め、馬鹿!」


『……』


……やっぱり、ダメそう。息を整えようとして整ってない。ボクみたいに精神疲労を起こしてるわけじゃないけど、妖刀を支えにして座っているのがやっと、って感じ。


その場で屈んでななみちゃんと目線を合わせる。


『少し休んでた方がいいよ、ななみちゃん。』


『そんなこと……できるわけ…』


『…ボク達が信用できないわけじゃないでしょ?信用できないんだったら最初から助けを求めないだろうし。』


ボクの言葉にななみちゃんが言葉に詰まる。


『今のななみちゃんには休息が必要だよ。7回戦からずっと、ななみちゃんは頑張りすぎてる。少しは休んでてもいいと、ずっと今日のななみちゃんの戦いを見てきたボクは思うよ?』



コメント:


:まぁねぇ

:そうね

:姫の言う通りよ

:ななみちゃん頑張りすぎよ

:普通だったらぶっ倒れてもおかしくないぞ

:それこそ7回戦の姫みたいに精神疲労で動けなくなるのが起きてもおかしくないのに起きてないしなぁ…

:なんつーか動けなくなる一歩手前で踏みとどまってる感じがする

:確かに

:というか一歩手前で無理矢理留まってる可能性も?

:ななみちゃんだったらやりかねないかも



あり得そうなのがね…


『何を焦っているのかはボクにはわからないけど。少し休んでも問題ないと思うよ。』


『…そういうわけには、いかない……』


そう言ってボクの目を真っ直ぐ見るななみちゃん。


『巻き込んだの……私、なんだから……ここで、休むわけには……』



コメント:


:……

:ななみちゃん……



『……そうは言ってもね。今のななみちゃんの状態で戦えるの?……いや、戦えそうだから何とも言えないけどさ……』


あぁもう、説得としては弱すぎるよ……


でもそれほどまでにななみちゃんの力は底しれない。


……ううん、違う。ななみちゃんは戦える。今、こうやって酷く弱っているように見えても。ななみちゃんは戦える。戦えてしまう。


そしてそれをななみちゃん自身もわかっているからこそ、動こうとする。


だからって───


『だからって、無理に動こうとしているのは見過ごせないよ?……奈々さんを悲しませたくはないでしょ?』


ななみちゃんの身体が大きく震える。…日奈子先生の名前出すの、ちょっと卑怯だとは思うけどね。


でも、そうでもしないとななみちゃんは止まらない。もしくは───


『……それでも。私は、休むわけには……』


そうしたとしても、ななみちゃんは止まらない。というか、止まろうとしない。自分に非があると思っているから。


真面目すぎることによる意地にも近いもの。別にそれ自体はいいんだけど、問題はさっきの想撃。


元より想撃そのものが危険といえば危険なんだけど、普通に使うならそこまで問題はない。でも今回の場合はピアースウィーカー・ノーネを想撃として連発したことが大きな問題になる。


恐らくあれはかなり無理矢理放ったと思う。かなり無理矢理放ったことによる負荷が全く抜けてない状況で動き出すのは相当危険。それこそ命を削るような行動になる。


だけど───それだとボク達が。…いや、ボクが参加してる意味がない。ななみちゃんに命を削らせないために参加してるのに、命を削らせてしまったら意味がない。


………仕方ない、か。上手くいくかわからないけど。



コメント:


:姫?

:姫…?



ななみちゃんの額に人差し指を当てる。


自己暗示調節、声域変更───


『───カンナ。“1回休み”、だ。』


『っ!?』


ボクの言葉を聞いたななみちゃんが驚きの表情を浮かべながら全身から力が抜けて崩れ落ちる。



コメント:


:!?

:えっ!?

:姫ぇ!?

:待って今何したの!?

:今姫ななみちゃんのこと“カンナ”って呼んだ?

:呼んだ呼んだ

:カンナ……どこかで

:しかも今の姫の男性声もどこかで聞き覚えが……



『なん……どう、して……それ…っ!!』


…どうして、か……正体、バレそうだけど。いっか、別に。


『……昔、ボクもMilkyRainさんにお世話になっててさ。当時のななみちゃんの……カンナさんの撮影風景を見かけたことがあったんだ。』


ボクが話すのをななみちゃんは静かに見つめている。


『撮影が一段落して、疲れた表情だったカンナさんに神代さんがやったのが今のだよ。……まぁ、当時は身体から力が抜けるというよりも気絶になってたように見えたけど、それは多分神代さんとボクの違いだと思うし。』


本物と偽物の違いだよね、その部分は…


『とはいえ、あれから長い時間は経っているけど。身体が覚えてたみたいだね。』


『……言い方』



コメント:


:言い方

:言い方ァ!!

:草生える

:やっぱ姫って時々言い方がちょっと無防備だわ…

:だがそれがいい

:うむ

:てかそうか“カンナ”ってMilkyRainの昔のモデルさんや

:んでそうだった、カンナってななみちゃん自身だわ

:……え、姫って現実のななみちゃん知ってたんか



「…現実の私を、知ってたんだ」


あ、雰囲気も声の質みたいなのの変わったから暗示外れたね。


『知ってたよ。ななみちゃんがカンナだってことはオフコラボの一件で知ったことだけど。今回のことに関しては特に印象に残ってた出来事だったから強く記憶にも残ってた。』


だからボクは再現することができたんだけど。


『でも、身体から力が抜ける程度で留まっているところを見るにボクじゃ効力が弱い。それでも確かに“効いた”ってことはそれだけななみちゃんが弱ってる証拠だよ。……若干自己暗示も解けかけっぽいし。』


『……』


あ、雰囲気戻ったから暗示かけ直したっぽい。


『逆を言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ていうか、神代さんだとしても多分弱ってないと効かないんじゃない?』


ボクの言葉に小さく頷く。


『だったら、ボク程度でも完全じゃないにしろ効くってことは相当弱ってるってことだよ。』


意識を飛ばせてない以上、これは完全じゃない。いや、意識を飛ばしちゃったらそれはそれで困るんだけど。


『…別にこのあとずっと参加するなって言ってるわけじゃない。動けるようになったら参加してきてよ。…それまでは少し休んでてほしいんだよ。どの道、この先もななみちゃんの力は必要になると思うし。』


『……』


『ななみちゃんもボクの…昔からの視聴者なら、ボクの性格とかよくわかってるはずだよ?』



コメント:


:確かにななみちゃん、割と見てるっぽいよなぁ

:誓約儀式とか幽騎士宣言とか知ってるあたりちゃんと性格もわかってそう

:姫すっごいわかりやすいからなぁ……

:ねー

:マジで数回配信見ただけで戦闘系の性格についてはわかっちゃう……

:でも多分ななみちゃんも似た性格なんだろうな

:まぁ確かに

:似た者同士って感じする



……似た者同士、か。どうなんだろう。


正直、ボクとしてはこんな方法しか取れないのを許してほしいと思うところだけど。


でも、何もできないのは…多分、ななみちゃんの精神上悪い。そんな状態で、ボクが取れる一手は。


『ななみちゃん。ななみちゃんが動けない間、大まかな指示はボクが引き受ける。大技の予兆と細かい指示だけに集中してほしい。』


『……というと?』


『動けない間、情報でボク達を助けてくれるかな。ボク達が見落としてる情報を逐次補ってほしい。』


『……』


『今のななみちゃんに必要なのは休息。だけど、休息中も戦いに参加するなとは言ってない。』


……これは、難しいことなんだけど……


『守るとは戦うのみにあらず。戦うとは力を振るうのみにあらず。…昔、そう言ってくれた人がいた。』


『…!』


『力を振るうのみが戦いなのではないなら、戦線の後ろから情報で補助するのも戦いになるはずだよ。』


それは、支援師・阻害師の在り方にも関係するもの。


『ボクが何かを忘れてると思ったら教えてほしい。誰かが危ないと思ったら教えてほしい。今は、ななみちゃんが身体を休めながらでもできることを。実働はボク達に任せてほしい。』


『………』


ななみちゃんは沈黙したまま。でも、受け入れられないって感じじゃない気がする。


『……わかった。でもそのかわり、ルーンでの破壊はできないからね。』


『それは大丈夫、さっきの準備時間で少しは買っておいたから。』


『……そっか』


……あ、それと重要なこと聞いとかないと。


『ななみちゃん、コレの使い方教えてもらってもいい?多分、使い方さえ分かればななみちゃん以外も声発せるよね?』


そう言ってボクが見せたのはさっきななみちゃんが作ってくれたルーンストーン製の通信機。


その作った本人であるななみちゃんはボクの言葉に小さくため息をついた。


『……気づいてたんだね…簡単な使い方はルーンストーンを軽く握ってトランシーバーのように話しかけるだけだよ。それで全員のルーンストーンに声が転送される。それぞれに声を飛ばすのは……必要ない?』


疑問気に聞くななみちゃんに苦笑い。


『ボクだと使いこなせないよ、そっちは。…ありがとね、ななみちゃん。少しの間だとしてもちゃんと休むんだよ。』


ななみちゃんが頷いたのを見て立ち上がる。


「……おい小僧」


『うん?』


「……悪ぃ、コイツを止めてくれて感謝する」


……“妖刀”という名前に似合わずホントに優しいよね……って思うけど言ったら怒られるんだろうなぁ…



コメント:


:ゆっくり休んでな……

:ほんまよく休んでや……

:てか優しすぎんか妖刀

:ねー

:小僧とか小娘とかななみちゃん以外を名前で呼ぼうとしないけどなんかあるのかねぇ

:さぁ



……さて。


ななみちゃんに言われたとおり、ルーンストーンを軽く握って。


『少しの間だけど大まかな指揮はボクが執る。細かい指示はななみちゃんから指示が飛ぶからそっちを優先で動いて。』


その声が届いたんだと思う、何人か驚いたようにボクの方を見つめて動きを止めたけど、ヨミさんが作ってくれた障害物で龍人の攻撃は届かなくされていた。


『ごめんだけど色々細かく説明してる時間はない。できればななみちゃんが休んでる間にこの第四形態を片付ける。少しの休憩でできるだけ長く戦えるように、少しでも多くボク達だけで削る。』



コメント:


:姫……?

:うん……?

:姫……だよね?

:だよね……?

:なんか……違和感



ボクはボクだよ。


『ヨウちゃんとモノくんは合図のあとボクと交代。ボクが相手の全攻撃を引き受けるからヨミさんは回復に専念。カナさんはヨウちゃんの回復から。ヨウちゃんは回復が終わったらボクと合流してほしい。…大丈夫だよ、死ぬ気はないから。』


そう言って通信を切る。ここでボクが死のうとすればななみちゃんの誓約をボクが原因で破ることになるからそれは絶対にするつもりはない。



コメント:


:なんか声が怖くない……?

:なんか、今まで聞いたことないような声してる……

:あ、違和感の原因わかった……声がなんか怖いんだ



……あぁ、そうか。みんなが言ってる意味が分かった。


『“エンハンス・ドレスアップ”』


変身バンクも介さずに起動されたそれは7回戦でも使ったのと同じもの。


頭痛を引き起こすこともなく、正常に起動する。


だけど、あの時みたいなカラスアゲハモチーフのドレスとオオムラサキモチーフの細剣じゃなくて、ボクの周りに9個の光が浮いてるような状態。


ボクの服装は真っ白なワンピース。


ボクに手にあるのは赤い薔薇の意匠が施されたさながら“赤薔薇の剣”とも言えるような長剣。


『……さて、やろうか。』


龍人を見据えて呼吸を軽く整える。


『“魔力纏”』


纏った魔力が瞬時にドス黒い赤に変色する。



コメント:


:ひっ!?

:ひぇっ!?

:なん……!?

:赤……いや、黒!?

:赤黒い……というかドス黒い赤!!

:変色するの一瞬だったぞ今!?

:てかまて、変色速度って確か意思の強さに比例するって……

:……え?ってことはもしかして……



───そうだ。ボクは、ボクにしては、非常に珍しいことに。


心の底から、怒りを覚えている。

霊界のお姫様、激おこ。

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