No.109 突きと鱗
短いかと思いきやそうでもなかった件。
「グォォォォ!!!」
「にゃーにゃにゃーん!!(ヨーウさーん!!)」
「あ、うん……」
りりにゃんさんの叫びに応じてバレーみたいな受ける姿勢。そこにりりにゃんさんが走ってきて───
「───ほっ!!」
そのまま跳ね上げる。りりにゃんさんの体はそのまま宙を浮く。
「にゃあー!!(やぁー!!)」
その空中でりりにゃんさんは両拳を握って。
「にゃーにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!!!(あーたたたたたたたた!!!!)」
そのまま空中で連続突き。
……なんというか。
「……ひゃくれつ〇球にしか見えない…」
コメント:
:いや草
:草
:www
:流石に草www
:草生えたwww
:確かにそうだけどもwww
:確かにそうだけどさぁ!!www
:言っちゃったよwww
:せっかく言うの我慢してたのに!!www
「いやだって私がっつり世代だもん……」
だってアレ思いっきり私の世代の作品だもん……
コメント:
:あー
:あー……
:そういやそうだった
:そういえばそうでした
:今26だからその14年前だと当時……あれ、ヨウちゃんって小学生……?
:だっけ?
:ん?
:ちゃう
:違うはず
:んーと……
:当時中学生か、ヨウちゃん
:ヨウちゃん早生まれやもんな
:平成13年生まれって聞いて小6かと思うけど1月生まれだから中1なんよなぁ…
:若干ズレる年月…
…若干面倒だよね、早生まれの計算。自分のことだけど。
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!!!(たたたたたたたた!!!!)」
……そういえば。
「そういえばりりにゃんさんのアレって“にゃんにゃんしき百裂拳”っていうらしいね。」
イベントの打ち合わせ中とかに言ってた。
コメント:
:お、おう
:う、うーん
:ううーん……
:ニャンニャン式?
:ちがう、“にゃんにゃんしき”なんよ……
:なんだろう、“にゃ〇〇ゃんぼう”味を感じるよね
:それ
:それなぁ
:そういやあの人……いやあの猫?……なんて言ったらいいんだりりにゃんさんって
:一応“人”やぞ
:一応“人間”やで
:公式の情報では“呪いで猫の言葉しか喋れなくなった人間の女の子”やな
:ほへぇ
:そうなんか
:んでそのりりにゃんさんがどうしたよ
:いや、そういえばあの人いっつも“にゃ〇〇ゃんぼう”系列使ってたなぁと
:ほう?
:そうなの?
:まさに猫やな
それだけ好きなのかな。
…さてと。9.7%ほど削れてるから…
『そろそろ形態変化が来るから注意してね、ヨウさん。』
「ん……気をつけるよ。」
ななみちゃんの声にそう答えて背中の羽を震わせる。
「にゃ……にゃーっ!!!(あ……あーっ!!)」
『“犠牲の盾”!!』
連撃を終えて落下し始めてるりりにゃんさんを転移した姫が空中で抱えて安全に降りる。それを見届けてから飛び立つ。
「ゴァァァァ…ッ!!」
「っ……」
赤い弾が複数設置される。でもそれを気にせずに飛ぶ。
飛び続けているとどこからともなく飛んできた弾が設置された赤い弾を消す。
コメント:
:流石
:流石やなぁ
:こんな事言うのもアレだが仲間を完全に信じることができるみんなも凄い
:それは確かにそう
:そう言われればそうね
狙うは逆鱗。
「“魔力剣”」
どこまで行けるかわからないけど
「“魔力纏”」
飛竜刀【恋慕】を真っ直ぐと構えて
「怨念と業火をその身に刻め」
私が今出せる全力の想撃───
「“獄憎怨・業火穿ち”!!!」
ななみちゃんによると火の結晶は壊れてないらしい。だからこそ火耐性は消滅してない。
それでも。
「貫け───怨念の刃!!」
火耐性を持っていても、2%くらいは削り取る!!
コメント:
:お、おぉう……
:やっぱ強ぇって、ヨウちゃん……
:一昨年の御前試合で姫が“ヨウちゃんの素質はこんなものじゃない”って言ってたけどこれ見るとホントにそうだったんだなって思うわ
:それな
:それね
:今年対峙した姫曰くまだ強くなれるって話だからね
:一体どこまで行くつもりなんだヨウちゃんも姫も……
「ゴォァァァ……!!!!」
「くっ……」
硬い……っ!!このままじゃ───
「───先に奔りすぎだぜ、小娘!!少し退きな!!」
「───!?」
今の、声は
『“魔力剣”!祟!!』
「おうよ!!“魔力剣”!!」
妖刀、と───ななみちゃん!?
「『“ファンゴ・ディ・アルコバレーノ”!!』」
放たれた技は、泥となって───龍人を傷つけずに縛った。
「どうして……」
『祟が行きたいって言い出したから私のせいじゃない気がする……』
そのななみちゃんの言葉に妖刀の方を見る。
「……あー…なんつーか……小娘がやりたぇことは分かってたからよ。あんま口出ししたくなかったんだが……」
……なんだろう、頭をかく男の人が脳裏に思い描かれたんだけど……
「あまりにもその刀が悲鳴あげやがったから流石にな……」
「悲鳴……」
……耐久力的には、大丈夫なはずだけど。
「……なんつーか、見たところあんま突き技得意じゃねーだろ、小娘。」
「うっ!?」
コメント:
:あっ
:あっ……
:あっ
:なぜそれを
:ヨウちゃんの弱いところ看破されてる!?
:うっそん
「た、確かに突き技苦手だけど……」
私がそう言うとため息が聞こえた。
「ななみ!突き技のやり方はなんだ!!」
『うん?力任せに撃ち込まないこと。速度に乗せながらも正確に、鍵穴に鍵を差し込むように精密に狙うこと。狙うなら───』
ななみちゃんがいいながら細剣を持って移動して───逆鱗の“縁”を刺す。
「ンギィッ!!」
『ここ。今回の場合で言えば逆鱗と通常の鱗の隙間を正確に狙うこと。もっと細かく言えば、繊維と繊維の隙間を狙って貫くこと。』
「え……」
『ヨウさんが使った今のそれはかなり力任せだから逆鱗を狙っても内側まで貫けない。だからこの龍人に痛手は与えられないよ。想撃だとしても火耐性付きだから尚更かな。』
「───!?」
そん、な……
コメント:
:!?
:はぁ!?
:嘘でしょ!?
『鱗っていうのはね……まぁ、種にもよるけど基本的にすっごく硬いんだよ。言ってしまえば天然の鎧だからね。だから、それを砕く術が必要になる。それを貫く術が必要になる。それを徹す術が必要になる。』
そう静かに言ったあと、ななみちゃんは私を見た。
『ヨウさんー。矢は持ってたよねー?』
「え?あ、うん……」
『一本もらってもいいかなー?』
頷いて矢筒から矢を一本抜き出してななみちゃんに渡す。
受け取ったななみちゃんはその矢をおもむろにさっき言った逆鱗と鱗の隙間に突き刺した。
「ガ───!!!」
「うぁ……」
コメント:
:うわぁ
:えっぐ
:絶対痛いよアレ
:さっきヨウちゃんと本配信見てる時からちょいちょい思ってたけどたまにやってることエグいよね、ななみちゃん
:それ
:んね
うん、それは私もそう思う。
『ヨウさんー。』
「ひゃいっ!?」
『……そんなに怯えないで欲しいんだけどねー。大鎚を構えてくれるー?』
言われるがままに熾天を構える。
…その、通常モードの声が今はすっごく怖い……!
『それじゃあねー。この矢を……うーんと、右からの横振りでいいかなー?大鎚で思いっきり叩いてみてー?』
「……へっ?」
コメント:
:へっ?
:へぇっ?
:矢を……
:叩く……?
:大鎚で……?
:それって何の意味があるん?
:ただ折れるだけじゃね?
「えっと……なんの意味が……?」
『意味…まぁ、もうすぐ形態変化だから意味なくなっちゃうけどねー。ちょっとやってみてー?』
「あ、はい……」
とりあえず理由もわからないけど言われた通りにする為に振りかぶる。
「い、いくよ…?」
『いつでもどーぞ…あ、スキル無しで大丈夫だと思うよー?』
「わ、分かった……」
スキルを宣言しようかと迷ってたけどななみちゃんの言葉に宣言をやめる。
そして───
「───えいっ!!」
ガツン、と矢を横振りで叩く。
───ベリッ、と音を立てて逆鱗が剥がれた。
コメント:
:えっ
:へっ?
:はっ
:はっ!?
:はぁっ!?
:剥がれたぁ!?
:はぁぁぁぁぁぁ!?!?!?
「………えっ」
「─────────!!!!!」
龍人から声にならない悲鳴が上がる。
「……えっ?えっ?えぇ……???」
えっと……え、どういうこと?
そう思ってたらななみちゃんが龍人を見て苦笑い。
『簡単に言えばてこの原理だよ。私は矢をそこまで差し込んでなくて、ヨウさんはその矢を強い力で叩いた。それも右からの横振りで作用点が上がる方向性にね。作用点と支点の距離より力点と支点の距離が遠ければ作用点にあるものを動かすために力点に必要な力の量は少なくなる。作用点=逆鱗、支点=鱗、力点=大鎚による横振り。大鎚自体の力がそれなりに強いからそれだけ作用点にかかる力も強くなる。』
まるで先生かのようにそう説明してななみちゃんが私を見つめる。
『そうして起こるのが───システム外スキル“鎧剥取”』
───!
コメント:
:……!?
:うっそ……
:そんなことできるの!?
::できる……からやれてるんだろうなぁ
:んな
『…ただ、今回これができたのは割と偶然。たまたま私が細剣で逆鱗と鱗の間を突き刺したから矢尻を刺すだけの隙間ができた。だから、本来なら先端のもっと細いもの……針とか楔とかでやるべき代物なんだよ。加えて武器の威力に耐えられる耐久性を持たないといけない。だから実用性が高いのは……今から見せるからよく見ててね。“ヘイトデスポイル”』
「グルァッ!?ゴァァァァァ!!」
咆哮にも怯まずななみちゃんは妖刀を納めてウィンドウを開き、さっきも使った大鎚を取り出す。それと同時に3本の針。
『祟、泥を解除して。』
「おうよ」
その掛け声で龍人の泥が解除され、ななみちゃんに対して龍人───いや、形態変化してるから龍だね、龍が襲いかかる。
それをななみちゃんはするりと避けて───
『“スロー”』
左手に持っていた3本の針を龍人の背に投げる。
そして大鎚を両手持ちして───
『───“インパクトハンマー”!!!』
スキル発動。その大鎚は針に向かって勢いよく振り下ろされて。
「ッ、ギィァァァァァァァァァァ!!!」
バキッという音とものすごい悲鳴。そしてHPが1%近く減ったのを確かに見た。
コメント:
:う、うわぁ……
:こっわぁ……
:何々何々今何したのななみちゃん!?
:今龍人のHPごっそり減らなかった!?
:た、確かに……
:今何したの……?
『…大きな岩とかを割る時に使う技術を応用したもの。小さな楔の代わりに針や矢、釘や杭など尖ったものを対象に突き立て、そこに真っ直ぐ力をかけて強引に防御を割り砕く技術。───システム外スキル“鬼砕”。』
「おに、くだき……」
『難しいけど極めれば最終的に破壊不可でなければどんなものでも壊せるようになる。実用性で言えばこっちのほうが上だよ。』
そう告げるななみちゃんに、底の知れない恐怖を感じてしまうのは───
……多分、間違いではないのだと思う。
さてここまでで龍人の体力を削ったのが10%ほどなのですが…
……これどこまで続きそうだろう。




