1.プロローグ/三途の川を渡って。
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「なんで………どうしてこんなっ……!!」
ザブザブと足で水を掻き分ける音と大きな雨粒が水面を叩き付ける音に交じって、泣き叫ぶ声が周りに響き渡る前に掻き消される。
投げ捨てたランドセルは激しい水流によってあっという間に下流へと流れていき、泣きじゃくりながら奥へと進む身体も持っていかれそうになる。
「母さんっ……父さぁんっ……!! あああぁぁっ……!!!」
手に掴んでいた紙切れはずぶ濡れでぐしゃぐしゃになっても手放さず、大雨が降り注ぐ中を少年は空を見上げて大声を上げて泣いた。
「返してよぉ! 帰ってきてよぉ……一人は嫌だ……ッ!!!」
雲行きは更に悪くなり、段々と風が強まって身体を波に打たれる少年の身体はふらふらと足元が覚束なくなる。
それでも少年は手紙を胸に抱いて、荒れ狂う大空へと叫んだ。
「お願い、神様!! ボクを……ボクを母さんと父さんと同じ所へ連れてって……!!!」
──瞬間、一際大きな疾風が少年を襲う。
身動きが取れないまま小さな身体は水中へと沈み深く激しい水流に飲まれていく。
やがて大雨が収まった頃に小石が並べられた河川敷ではけたたましい救急車のサイレンと人混みが囲んでいた。
そこには先日の夜荒れた川に落ちてしまったのか、溺死した幼い子供の遺体と濡れてボロボロになった一通の“遺書”が発見された。
*****
『拝啓、愛する息子へ。
お前を一人残すのは辛いが、母さんの治療費の借金を返す為、お前が大人になっても生きていける為にと私は旅立つ事にしました。
大人になったお前を見ることが出来なるのは悲しいけれど、どうか健やかに生きてくれる事を願うよ。
母さんを助けられなくてごめんな、こんなダメな父親ですまなかった。
達者でな。愛してるよ、一織。』
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身元が判明した少年の家には、父親らしき男性が首を吊っていた。