09.ミヨちゃん、進路で悩む
「爺さん、ミヨはスゴイ。ポーションを作れるんだ。見どころがあるからクラスチェンジしたらいいと思うんだ」
「ほう、クラスチェンジか」
そう言うと、老人は部屋の本棚から一冊の取り出した。
部屋も本だらけで、錬金釜もある。
『この人、魔道士なんだ』
ドルイド爺さんはクラスチェンジの書と書かれた本をペラペラとめくる。
スライムの項にはスライムから伸びるツリー構造のチャート図が書かれているが、結構複雑だ。
スライムから四つに分岐している。
「スライムは最初のクラスチェンジが重要じゃぞ。魔道士系、攻撃系、変質系……途中で進化の方向を変えることはなかなか難しいからのう」
「うーん、どうしよう」
「大事な選択だ。ゆっくり自分で考えなさい。お前さんの適性を見ると魔道士のようだが、将来何になりたいかにもよる」
「何になりたいか……あ、私、人間になりたい」
シャドウが不満そうにうなり声を上げる。
「人間?人間になんてなりたいのか?大体、魔物が人間になれっこないだろう」
「うーん、やっぱり無理かな」
「いやいや、ミヨさん、シャドウ。魔物は人間にはなれんが変身で人間に変化することは出来るぞ」
「えっ、やった!」
「うん、まあ、出来るか」
変身する魔物はシャドウも見たことがある。
「お前、人間になりたいのか?」
「うん。魔導学園行ってみたい」
「魔導学園?」
「人間の学校なんだ。ヒロインと悪役令嬢と王子様がいて、魔道士君と騎士君もいるから見てみたい。一番見たいのは隠しキャラのマモー様。せっかく『フェアプリ』の世界に転生したからマモー様の制服姿見たいなぁ」
「マモーって誰だ?」
「マモー様は魔王だよ」
シャドウには理解出来ない。
「おい、なんで魔王が人間の学校に行く?」
「よくぞ聞いてくれました。それには深いわけがあるんだよ。聞いて!」
「いや、興味ないし、長そうだから止めておく。それよりお前、魔王が好きなのか?お前はただのスライムだぞ。相手にされるわけない」
ミヨはぷるんぷるんした。人間でいうならくねくねだ。
「相手にされなくてもいいんだよ~。むしろ冷たい視線ならご褒美だよぉ」
「そんなのありか?そいつが好きなんだろう。好かれたくないのかよ」
「好きだし、好かれたいよ。でもマモー様は押しだよ。見るだけでいい尊い存在だよ」
「分からん……」
「押しの幸せを祈るのが真のファンだからね。一方的に好きなんだから相手にされなくてもいいんだよ。って、ダンジョン内にマモー様っているのかな?ねえ、シャドウ君、魔王様見たことある?」
「ない」
「魔王はな、ダンジョンには住まんぞ」
とドルイド爺さんが言った。
「ええ、そうなの?」
「そうじゃ、そもそも魔王とはいくつかの魔界の穴、ダンジョンを管理する領主のことなんじゃ。この地は魔界では8の国と呼ばれておるんじゃ」
「魔王って王様じゃないんだ」
「人間界も1人の王が支配しているわけではあるまい」
「あ、そうだね。色んな国があるもんね」
「マモーとかいったかね、その魔王様は」
「うん、マモー様」
「はて、不思議じゃのう。ミヨさんや、今この地に魔王はおらんのだ」
「えっ、そうなの?」
「そうじゃ。このダンジョンの主はキングスライムのオーだ。魔王になるにはこのオーを始め8の国の全てのダンジョンの主と戦い勝たねばならない。しかしオーが強すぎて魔王が現れないんじゃ」
「えー、じゃあ今、一体いつなんだろう。もしかして『フェアプリ』からうんと未来とか過去とかなのかな?」
とにかく魔界の王マモーがいないのは理解した。
多少落ち込んだ。
「せっかく『フェアプリ』の世界に来たのに残念~」