06.ナオリ草1
「で、10階に行けばいいんだな」
「いいんだけど、あ、シャドウ君止まって」
「何だ?」
「いい草があったから」
ミヨはシャドウの背から飛び降りて草を食べる。
シッ草だ。素早さアップの薬草。
「お前、スライムのくせになんでポーションなんか作れるんだ?」
「それはミヨにも良く分からないけど、やってみたら出来た」
4階で今度はツヨ草を見つけた。攻撃力アップの薬草だ。
「混ぜ合わせて、速度強化&攻撃力強化のポーション(普通)を作ったよ!ボス戦で使うよ!」
後半まで使えるお役立ち薬だ。
ミヨは2つレベルを上げてレベル14になった。
「何、ボス戦あるのか?」
「うん。シャドウ君は強いけど呪われているから念のためね」
シャドウは強い。
今は5階だが敵なしだ。
魔物は大体シャドウを見ると逃げていくが、たまに逃げないで戦いを挑む魔物もいる。
シャドウは一撃で倒す。
反撃されてもほんの小さな傷を付けられるだけだ。
ミヨはお腹に蓄えたポーション成分を使ってすぐにシャドウを治療する。
「便利だな、お前」
「ふうー」
6階に到着し、ミヨがちょっと疲れた頃、シャドウが言った。
「おい、休憩するぞ」
「うん」
泉に行くと、やはりモーモの実が生えている。
「あの、シャドウ君は木に登れる?私、登れないんだけど」
「登れないが、任せておけ」
と言うと、風が吹いて、実が落ちる。
ミヨはあわててプルンボディを広げて実を受け止める。
「シャドウ君、今の風魔法のウイングカッター?」
「よく知ってるな。ダークウルフは風魔法使えるんだ。それより幾つ食うんだ?」
「三つ」
ミヨはモーモの実を、シャドウは戦いに負けた魔物の肉を食べている。
弱肉強食はダンジョンの掟だ!
モーモの実は一個は食べて、二つを使って中級ポーションを作る。
ミヨはレベル15になった。
「シャドウ君、レベル幾つ?」
「今は54だ」
「スゴい!」
「まあな」
とシャドウはまんざらでもない。
「ねえ、シャドウ君、基本的なことを知りたいんだけど」
「何だよ」
「シャドウ君はなんで喋れるの?」
「俺も詳しくはないが、中級以上の魔物がレベル50越えると意思疎通っていうスキルが発動するらしい」
「そうなんだ」
「だから、レベル15でスライムなのに喋れるお前がおかしい」
「シャドウ君、だから驚いたんだ」
「15階にこういうの詳しい奴がいるけど、会いたいか?」
「うん、会いたいな」
だが、取りあえずシャドウの呪い毒を治すのが先だ。
呪い毒のボスはマンドラゴラ。
レベル54のダークウルフにはザコな相手だが、油断してはいけない。
100階ダンジョンの内部は広く1階層抜けるのに半日以上かかると言われているが、シャドウは一時間ほどで駆け抜けていく。
最短ルートを通るのと、シャドウが強すぎて戦闘がほとんどないからだ。
「うわっ、こんな低層にダークウルフかよ!」
「皆、散れ散れ!」
大抵の冒険者も逃げていく。
シャドウとシャドウに乗ったミヨは悠々駆け抜けていく。
「ふぁ、スゴイ」
「ふふふ、これが俺の実力だ」
しかし、そんなミヨ達の行く手を阻む強者が現れた。
4人組の冒険者パーティーだ!
***
「ダークウルフだ」
「こんな低層で珍しいな」
「むしろラッキーじゃないかしら」
「相手は一体だが油断するな」
ミヨは息を呑んだ。背中からシャドウの耳元ににじり寄り、囁く。
「シャドウ君、この人達強い」
「ああ、分かっている」
ミヨは鑑定などのスキルは持っていない。だが、装備や身のこなしや匂いから彼らが強者であることを見抜いた。
ミヨより戦闘経験が多いシャドウも相手を見極めた。
レベル40。
一対一ならシャドウは負けない自信がある。
だが、一匹で4人を同時に相手する……。
「おい、ミヨ、お前は逃げろ」
「ヤダよ。ミヨも戦うよ。それより作戦があるの。聞いて」
「作戦て何だよ」
「まずあの左から2番目の回復魔法師ぽい人から倒す。あのね、ここって8階だよね。8階には……」