03.ポーション完成!
カキーン、カキーン、ズシャーー!
「ピェー!」
重い金属がぶつかる音、何かを切る音、そして魔物の悲鳴。
遠くないところでそんな音が聞こえた。
「戦闘だ!」
ミヨはあわてて魔法水と薬草でお腹をチャポチャポさせながら、隅っこの穴に逃げ込んだ。
冒険者達のパーティーはミヨがいる泉には脇目も振らず、足早に通り過ぎて行く。
彼らを見てミヨは呟いた。
「なかなかの手練れだよ……あれは上級者だね」
『フェアプリ』ではダンジョン内で一度到達したチェックポイントと呼ばれる場所までは転移魔法で移動出来た。だが、その魔法コストは少々高いのだ。
ザコ敵を倒しながら足早に駆け下りるか、転移魔法を使うかはいつも悩みどころだ。
あの冒険者達は最小限の戦闘で歩くを選択した組だろう。
「よいしょ」
ミヨはお腹チャポンのまま穴から這い出ようとし、苦しそうなきゅうけつコウモリがよろめきながら泉に近づくのを見た。
さっきの冒険者達にやられたのだろう。
瀕死のきゅうけつコウモリは水を飲もうとする。
泉の水には少々の回復効果はあるが、致命傷を負ったきゅうけつコウモリは瀕死の状態だった。このままでは死んでしまう。
「どうしょう。可哀想だけど、ミヨに出来ることは……あ、あった」
ミヨはきゅうけつコウモリに近づき、あんぐりと大きく口を開けた。
きゅうけつコウモリは通常の状態なら攻撃したか、ミヨを避けただろう。
ダンジョン内では弱肉強食。
きゅうけつコウモリの方が強いが、瀕死の今ならミヨのような小さなスライムでもきゅうけつコウモリを十分に屠れる。
だが、ミヨは、きゅうけつコウモリの体にポーションをかけた。
きゅうけつコウモリのHPが回復した!
ミヨはレベルアップした!
「良かった~!え、レベルアップ?」
***
ミヨはレベル2にレベルアップした。
でも何でだろうか?
やったことと言えば、きゅうけつコウモリにポーションをかけたこと。
「あ、『調薬』かも」
『フェアプリ』は恋愛がメインのゲームなので、戦闘部分はそこまで作り込まれていない。
戦闘経験値は剣や魔法で敵を倒した時、あるいは『調薬』した時でもアップするのだ。
ゲーム内の『調薬』では、瓶にポーションが入って完成した時に経験値を得た。
「やったよ、レベルアップ。あ、きゅうけつコウモリさんも良かったね」
だが、きゅうけつコウモリは「キー」と鳴くだけだ。
「言葉を喋れない子なのかな?」
不思議に思って見ていると、きゅうけつコウモリは木になったモーモを食べ始めた。
「あ、いいなぁ」
羨ましげに見ていたのが分かったのだろうか、モーモの実をくわえてモーモをミヨのところに一つ、二つ、三つと置く。
「お礼かな。ありがとう」
もらったモーモをミヨはモグモグと食べた。
「おいしい。見た目桃で味も桃だ~」
野生種だからか多少小ぶりな桃だが、十分に甘い。
「あ、そういえばモーモは水と合わせると中級ポーション(効果中)になるんだっけ」
フェアプリでは良く作った。後半まで大活躍のマストアイテムだ。
「でも入れ物ないしなー、消化しちゃおう」
吐き出したらレベルアップになるかも知れないが、勿体なくてそんなことは出来ない。
その時、またヨロヨロと今度は魔界カラスがやってきた。
第二の急患だ。
「丁度良かった。魔界カラスさんにかけよう」