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22.試練の門の試練

 49階の奥、左に行くと試練の門、右に行くと下に行く階段だ。

 ミヨは試練の門を見上げ、ゴクリと息を呑んだ。

「これが、試練の門」

 大きな大きな鉄らしい金属で出来た扉だ。

 扉の中央に、炎のマークが付いている。



 46階の魔法使いの塔にはこの試練の門についての書物もあった。それによると、まず最初の試練は炎の魔人イフリートを倒すことだ。

 イフリートの弱点は、水だ。

氷草(こおりそう)が有効」と書いてあったので、二人はブルブル震えながら、47階のツンドラ平原で氷草(こおりそう)をゲットしてきた。

 シャドウは今、レベル77。

 試練の門に挑んでも重症は負うが死ぬことはない。ただあまりの力の差に破れた者は再挑戦することはないようだ。

 本にはそう書いてあった。

 ミヨは大いに安心したが、シャドウは眉をひそめた。


「何度だって挑戦する」「諦めたりは」「しないぞ」

 ミヨは不思議に思って聞いてみた。

 そこに山があれば登ってみたい。ミヨだっていつか大魔導士スライムになれたらいいなと思っている。

 でも辛くて大変そうな山は諦めると思う。

 だけどシャドウの決意は固い。

「……シャドウ君はどうしてクラスチェンジしたいの?」


「ミヨが人間に変身するなら俺もケルベロスになる」

 シャドウはまだダークウルフだった頃にそう言った。

 その言葉通り、ダークウルフからオルトロスになって今はケルベロスとなった。

 そして今はもっと上級の魔物にクラスチェンジしようとしている。

「どうして?」

「どうしてって」「ミヨが言っただろう」「マモーは元々はただの魔物だって」


「うん。回想シーンで言ってたよ。『俺は元々ただの魔物だった。守りたい奴がいたから、強くなりたかったんだ。なのに……肝心な時に俺は、そいつの側に居てやれなかった。俺はあいつを失ってもう何のために魔王になったのか、生きているのか分からないんだ』って」

 マモー押しのミヨは生まれ変わっても、長セリフをそらんじられるのだ。


「だったら俺も魔王になる」「マモーが出来るなら」「俺だって出来る!」

「あ、うん頑張って……」

 本当はシャドウに危ない目に遭って欲しくないからミヨはちょっと複雑だ。


 シャドウは何故か顔をしかめたままだ。

「なのに、マモーの奴」「ヒロインなんかにデレデレしやがって」「魔物の風上にも置けない」

「うーん、復讐はむなしいから止めたのかな。それで良かったよ。マモー様の好きな子もマモー様にいつまでも悲しんでいて欲しくなかっただろうし……」

 フェアプリはヒロインが主人公のゲームだから、というのもあるが、マモー様がいつまでも死んだ子を想っても報われない。だったら明るく優しいヒロインと新しい恋をして欲しい。

 マモーファンのミヨはそう思う。


 だがシャドウは首を横に振る。

「いいや、魔物は」「つがいしか」「好きにならない」

「つがい?」

「そうだ。一回好きになった魔物に全てを捧げる」

 と三つの首は一斉に言った。

「ふーん、そうなんだ。情熱的~」

「そうだ。魔物は一度つがいになったら心変わりなんかしない」


「そんな適当な奴を」「魔王にしてたまるか」「俺が魔王になる」

 とシャドウは憤慨している。

『シャドウ君が魔王になったら、フェアプリってどうなっちゃうんだろう……?』

 ふとミヨは思った。

 でも魔王になれるのかなんてまだ分からないし、『目指すだけなら良いよね』とプルプルと頭を振って気持ちを切り替えた。


「よし、シャドウ君、頑張って!」

「おう」「行って」「来るぜ」

 シャドウは、ミヨが作った炎耐性の高い氷草(こおりそう)のポーションを飲むと、試練の門に入っていく。


 扉はバタンと閉まり、ミヨに出来るのはシャドウの無事を祈ることだけだ。


 もし。

 もし、シャドウが魔王になったら、シャドウはヒロインと恋に落ちるのだろうか。

『そうだったら私……』

 キュンと震える胸を押さえてミヨは、試練の門を見上げた。







 ***


 シャドウは順調に試練を越えていった。

 時にはヒドい怪我をして負けて戻ってきたが、シャドウは諦めない。再挑戦して必ず勝った。

 ミヨも効果があるというポーションをせっせと作ってサポートした。次はいよいよ光の試練だ。

 だが、光属性はほとんどの魔物がどの属性より苦手とするものだ。

 その効果を抑えるものもダンジョンにはないらしい。

「大丈夫かなぁ?」

 とミヨの方がオロオロしている。

「何とかなるだろう」「駄目なら駄目で」「また挑戦すればいい」

 シャドウは達観している。


「でも、心配だよ。神様、女神様、どうかシャドウ君を勝たせて下さい」

 ミヨがお願いすると天上が輝き、どこからか、美しい声が聞こえた。

「乙女よ、祈りに応えましょう」


 天からお札のようなものがヒラヒラ落ちてくる。


 何となく神々しいお札だ。

「これなんだろう」

 ミヨにもシャドウにも鑑定の能力はない。

 二人して首をかしげた。

「うーん」「「何か役に立ちそうだし」「せっかくだからな」

 とシャドウは額にお札を貼った。


 シャドウは聖なるお札を手に入れた!

 光攻撃は全て無効化で、シャドウは光の試練の戦天使に無傷で勝利した!

 役目を終えた聖なるお札は消えた!


 勝利したが、あまりの完全勝利ぶりにシャドウはむしろ勝った気がしない。

「なんかズルぽい感じだったな」「天使も」「驚いてたぞ」

 そして戦天使と戦ってレベルは99(MAX)になった。

 ミヨはぷるんぷるん喜んでいる。

「えー、無事なら何でもいいよ~。女神様、どうもありがとうございました。次の試練は闇の試練。お願い、女神様、今度もシャドウ君を守って下さい!」

 ミヨがお願いすると天上が輝き、どこからか、美しい声が聞こえた。

「乙女よ、祈りに応えましょう」


「え、またかよ」「女神」「応えすぎだろう」

 シャドウは呆れた。


 天から落ちてきたのは、見覚えのあるアイテムだ。


「あ、『乙女の祈り』だ。効果は分かんないけど、役に立つかも知れないから、持っていって、シャドウ君」






 なんか恋愛ものっぽくなってきたよ(*゜∀゜*)

 オオカミ×スライムだけど。

 全27話です。もうちょっとー。

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