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19.魔道士スライム(仮)

 31階の敵は中級のスライム達だった。特にミヨが選ばなかった攻撃系や変質系のスライムが多い。

 肉体派のどすこいスライム、二刀流の剣士スライム、ハリネズミスライムという背中に鋭いハリで覆われたスライムなどが相手だ。

 ドラゴンにザコ扱いされて怒り心頭のシャドウは襲い掛かる敵を、

「うらぁ」「どけや」「邪魔だ!」

 と蹴散らしていく。


「うひょう」

 今まで見なかった新草も生えていてミヨもテンション上げた。マホマホベリーという魔力が回復するベリーも生えている。

「図鑑に載ってた奴だぁ」

「ミヨ」「もう」「大丈夫なのか?」

 シャドウが心配そうにミヨを振り返った。

「うん。気分良くなったよ、シャドウ君、心配かけてご免ね」

 ミヨの体もつやつやショッキングピンクに戻っている。

「そんなこと」「気に」「すんなよ」


 敵はそこそこ強いし、初めてなので道も分からない。回り道もたくさんして、シャドウはレベルアップしながら進んでいく。

 思ったより、人間の冒険者達もいる。

 最高に強そうな熟練の冒険者達ばかりだ。

「やっぱりゲームとは色々違うんだなぁ」

「そうだな」とシャドウも同意した。

「そういえば俺達」「ザード達のこと」「助けただろう」

「うん」

「アンジェリーナって妹」「生きてるなら」「お前の言ってた過去バナってなくなったもんな」

 ミヨはハッとした。

「あ、そうか」


「うーん、でも良かったのかな。ゲームファンとしてはちょっと考えちゃう。でもアンジェリーナさんに死んで欲しくないし、そもそもゲームだと私、ヒロインに殺されないといけないし……」

 くよくよするミヨに、シャドウが言った。

「いいんじゃねえの」「ザードもアンダーソンも喜んでたし」「それに俺はミヨが死んだら悲しいぞ」

「あ、うん、ありがとうね」

「『月の光』を手に入れて」「一緒に人間の街へ」「行こうぜ」

「うん!」





 ***


 ダンジョンの内部は不思議な場所ばかりだ。

 シャドウ達が住んでいた27階は見渡す限りの草原だし、緑いっぱいの森もある。

 34階に降り立つと、そこは古い洋風の城の中だった。

 あたりは薄暗い。

 薄暗いのはダンジョンではむしろ当たり前なのだが、シンと静まりかえった空気は夜を思わせるものだった。時折見える小さな窓から外を見上げると、ダンジョンなのに一面の星空が広がり、月がこうこうと輝いている。

 すこしオンボロな絨毯が敷かれた石畳、石の壁に囲まれたどこかのお城の廊下のような場所をミヨ達は歩く。

「洋風のお化け屋敷みたい……」

 シャドウは夜目が利くので何てことない様子で進むが、そんなシャドウに乗っているミヨはおっかなびっくりだ。

 出てくる敵もジャイアント吸血コウモリやゴーストや人食いタランチュラ、ゾンビ犬などの夜行性のブキミ系魔物でが占められている。

 34階のボス敵は古城の主、吸血鬼だった。


 手下の吸血コウモリを呼び出したり、『吸血』というHPのみらずMPを吸い取って自分のものにしてしまう嫌な攻撃を使われたが、レベル28になっていたシャドウは辛くも勝利した。


「うー」「強かった」「でも勝った!」

「どこかいいところでレベル上げしないとね」

「そうだな」「あんな敵が」「下にはうようよしてるだもんな」


 ボス敵のすぐ後ろの部屋が次の35階に向かう階段だ。

 だが二人の目的地は古城の向こうに広がる大きな湖だった。

 二人は古城を抜けて湖へと向かう。


 節だらけのおどろおどろしい木々の生えた森を抜けて、湖に行くと、

「うわぁ」

 とミヨは大きな歓声を上げる。

 湖の上に大きな月が出ていて、湖面が月の光に美しく輝いている。

 湖の真ん中が、ひときわ美しく輝いている。

 シャドウはそれを見て、呟いた。

「なんかあるな」

「あ、あれが『月の光』かな。取ってくる!」

 背中から飛び降りたミヨをシャドウが止めた。

「待て!」「危ない敵がいたら大変だぞ」「道を作ってやる」

 シャドウは湖面に「フー」と息を吐くと、氷の道を作った。


「これを使え」

「うん」

 ミヨは氷の道をぴょんぴょん跳ねて、『月の光』を手に入れた!




「やった!これで私もレベルアップだ」

 ミヨは早速『月の光』を飲み込んだ。

 ミヨはクラスチェンジして、魔道士スライム(仮)LV.1になった。

「えっ、(仮)って何?」



 ミヨの体はまたまた縮んで、どんぶり鉢サイズだ。

 額の小さな星は二つになった。

「クラスチェンジ」「やったな」「ミヨ」

「……うん、でも、仮って何だろう」

 何となく釈然としないミヨだった。


「それはまだあなたが正式な魔道士じゃないからよ」

 と誰かが言った。

「そう、魔物は魔界魔道士協会に入らないと魔道士になれないの。だから(仮)よ」

 とまた誰かの声が辺りに響く。

「だっ、誰?」

 ミヨが驚いて声を上げると、風もないのに木の枝が動いた。

「あら私達よ」

「話しかけちゃ駄目だった?」

 声の主は泉の側の大木だった。


「ごめんなさい、木が喋れるの、知らなかったの」

「ダンジョン内の木も長く生きていると『意思疎通』が出来るようになるのよ」

「そうなの……」

 びっくりだ。

 シャドウも知らなかったようで驚いている。


「だからね、あなた正式に魔道士になりたいなら、魔界魔道士協会に行きなさい」

「一番近くの支部は35階よ」

「教えてくれてありがとう。何かお礼がしたいんですけど、欲しいものとかありますか?」

 ミヨがそう言うと魔界の木は言った。

「そうねぇ、私達菜食主義者だから、くれるんだったらマホマホベリーが食べたいわ」

「じゃあ、はい、ベリー」

 ミヨは摘み立てのマホマホベリーをあげた。

「ありがとう、あなた、いいスライムね」

 と魔法の木は喜んだ。

 枝を伸ばして器用に受け取ると、木のうろが口のようにあんぐり開いてモグモグと咀嚼している。

「ああ美味しい。ついでにいいこと教えてあげる。ここの魚は出世魚っていって経験値が多いのよ。釣って食べるといいわ」

「ありがとう!」


 シャドウはミヨを餌に釣りをした。


 シャドウはケルベロスレベル40になった!

 ミヨは魔道士スライム(仮)レベル40になった!

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