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15.地下30階

 下の階に向かう途中でシャドウが聞いた。

「おい、ミヨ」「ザードは本当に『進化の実』を作れるのか?」

「うん、ゲームではね。聖女であるヒロインの精霊を大精霊にクラスチェンジするために作ったんだよ」

「ヒロインて」「前に言ってたお前を倒そうとする奴か?」

「うん。でももう私、レベルMAXの見習い魔道士スライムだからね、きっと負けないよ」


 シャドウは感心した。

「ミヨは」「何でも知ってるな」

「そんなことないんだよ。ゲームをやりこんだだけ。知ってる情報も30階までだから、下に行けば行くほどシャドウのお荷物になっちゃう……」

「それでもすごいぞ」「それに俺も楽しんでるんだからな」

「本当?」

「ああ、一人だったらクラスチェンジしようとは思わなかった」「下の階はダンジョンの外を駆け回るより楽しいぞ」

「ありがとう、シャドウ君」

「ああ、お前は」「十分役に立ってるからな」


 薬を作りつつ、戦闘しつつ、ミヨ達はまた24階に行く。

 ボス敵のダークウルフのオジさんはおらず、代わりに交代のダークウルフがいた。

「アニキ、久しぶり」

 代わりのダークウルフもシャドウの知り合い。ご近所のお兄さんだった。

 ダークウルフはシャドウを見て目を丸くする。

「えっ、まさかシャドウか?」

「ああ」「クラスチェンジしたんだ」

「ひゃー、スゲェな。頭二つあるぜ。いいぜ、通りな」

 と通してくれた。


 レベルアップに選んだのは、もちろん27階の『森の奥』だ。

 またラッキーラビットを狩りまくったが、オルトロスは必要経験値がダークウルフより多いらしい。シャドウがレベル65になった頃、狩りにも飽きてきた。


「先進もうか、60代でもダークウルフレベルMAXより強そうだよ」

「そうだな」「行ってみよう」


 29階。

 この階のメインザコ敵は前回は一度も戦わなかったゴーレムだ。

「よーし、バンバン戦っちゃうよ」

 と自分では戦わないのに気合い十分なミヨにシャドウが言った。

「前にお前」「戦うなって言っただろう」

「オルトロスになったシャドウ君はひと味違うよ。オルトロスは毒攻撃、石化の状態異常魔法を使えるでしょう」

「ああ」「使えるようになったぜ」

 シャドウは元から使えた風属性の攻撃が強化されて、雷系攻撃魔法も使えるようになっている。

「ゴーレムは状態異常魔法に弱いの」

「なるほど」「分かったぜ」


 ゴーレムには何故か毒攻撃が効く。

 シャドウの一つ目の頭が毒攻撃を放つともう一つの頭は物理攻撃を繰り出す。

 防御力の高いゴーレムだが、レベルアップしたシャドウの爪の方が固い。

「えい、よわよわ」

 ミヨか唱えた弱体化魔法、よわよわは見習い魔法のひとつだ。見習い魔法なので、よわよわもまたしょぼい。

 5%の効果しかないが、防御力もHPも全てのパラメータが弱体化するお得な魔法だ。


 襲いかかるゴーレムを10体以上倒した時、ミヨ達の前に、またゴーレムが現れた。

 だが、色が違う。レア種ストーンゴーレムだ。

 ミヨは目を輝かせた。

「これを待っていたんだよ!」


 ストーンゴーレムを倒すと、ミヨが狙っていたドロップが出た。

「やったぁ、『魔導の欠片』だ」

 ミヨが掲げたのは、文字が刻まれた石のようなものだ。

「なんだ」「それ」

「良く分からないけど、『進化の実』を作る時に使うんだよ」

 ミヨは大事にカバンの中にし舞い込む。


「へえ」「そんなのが『進化の実』になるのか?」

「うん、これと『竜の鱗』を使うっていうのは、覚えてるんだよね。とにかく全部30階までに手に入るの」


「『竜の鱗』っていうのは」「何処にあるんだ?」

「30階のボスがドラゴンなんだよ」

「そんなのと」「戦うのか?」

 シャドウは驚いたようだが、次にニヤリと笑った。

「それは」「楽しみだな」


 30階のボスはドラゴン。

 そのため、30階のザコ敵は、キングスネークやキラーリザードなどの蛇系魔物だ。強敵だったが、シャドウは難なく倒していく。


 そして30階の最奥の部屋ではボス、ドラゴンが待ち受けていた。


 シャドウはミヨに言った。

「ミヨは」「下がってろ」

 ミヨが強化するメリットより、ミヨを庇うデメリットの方が大きい。

 それにドラゴンの一撃はもうミヨには致命傷だ。


「分かった、シャドウ君、頑張ってね」

 ミヨはシャドウの背中から飛び降り、戦いを見守ることにした。


 ドラゴンはゲームの中でも最後から二番目の強敵だった。

 攻撃、防御ともに優れ、隙がないオールラウンダーな相手だ。だが、レベル98になったシャドウも強い!


「グギギャー!」

 断末魔の叫びを上げ、ドラゴンが倒れる。

 だが、「あれ?」「おかしいな」とシャドウが当惑している。


「え、なになに?」とミヨが跳ね寄ると、ドラゴンがいた場所には大きな鱗が一枚落ちているだけだ。

「あ、これが多分『竜の鱗』」

「それはいいんだが」「ドラゴンは何処に行った?」

「逃げられちゃった?」

 と聞くと、シャドウの二つの頭は首を横に振る。

「いいや、俺が逃す訳ないぜ」「それに経験値も入った。ついにレベルMAXだ」


「じゃあ倒したんだよね?おめでとう?」

 釈然としないが、そうなのだろう。

「どうする?ミヨ」「下の階に行くか?」

「うーん、ドラゴンのこともあるし、もしかしたらザード先生達がドルイド先生のところに来たかも知れない。『進化の実』のこともちゃんと知りたいし、一回戻ろう」

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