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13.アンダーソン教授とザード先生

「シャドウ君、キラースコーピオンはお腹が弱点。風魔法でひっくり返してから倒して!」

「分かった」


 シャドウがキラースコーピオンと戦っている間に、ミヨはシャドウの背中から飛び降り、ぴよんと弾んでザード達の前に現れた。


「スライム?」

「そうなの。ミヨです。よろしくお願いします、ザード先生、アンダーソン教授」

 二人は驚いて目を見張る。

「君は、僕達を知っているの?」

「はい、それより今傷を治すよ」


 そう言うとミヨは二人に蜂蜜ポーション(回復大)を振りかけた。


「大丈夫?二人とも?ちゃんと治った?」

「ああ、あの、君は?」


「何だよ、ミヨ、知り合いじゃないのかよ」

 戦闘が終わり、ダークウルフのシャドウが戻ってくる。

 二人は、キラースコーピオンをあっという間に退散させたシャドウに思わず身を震わせる。


「一方的な知り合いなの。私は知ってるんだけど、二人は私のこと知らないよ。あ、この人はダークウルフのシャドウ君です」

「シャドウ君か、助けてくれてありがとう」

 礼を言うのはいち早く立ち直ったアンダーソンの方だ。


「君達は何故僕達を助けてくれたんだ?」

 恐怖もあるが好奇心が勝ったザードが尋ねる。

 初めて見るレア種のピンクスライム。

 額に小さな星があるから見習い魔道士スライムだろうが、下級スライムが人間と話せるとは聞いたことがない。


「うーん、知り合いだから?ミヨも聞きたいことは色々あるけど、二人はそんな時間はないよね」

 二人はハッと顔を見合わせる。

「そうだ、アンジェリーナ。ツヤツヤ草を取りに行かないと……」

「やっぱりそうなんだ。付いてきて、ツヤツヤ草はこっちだよ」



 ミヨの先導に従い、二人は後を追いかける。

 ザードは小声で友人に尋ねた。

「おい、あの子達は君の知り合いか?アンダーソン」

 二人は同じ大学の学生だ。

 アンダーソンは魔獣学を研究している。フィールドワークでダンジョンの中にも潜ることもあるが上層までしか行ったことはない。古代の文献や冒険者達の話をまとめるのが魔獣学だ。

「いや、ピンクのスライムはレア種だ。実物を見たのは初めてだ」

 ザードは魔法を使った発明を研究している。ザードの興味は魔法全体に及ぶ。

 新薬を作ったり、防具や武器、その他の道具も作り出す。何でもかんでも手を出すので、天才だが風変わりな男と認識されていた。

 このところ天才ザードが心血を注いでいるのが、妹アンジェリーナの薬だ。

 若い娘だけがかかる病気で、しおれるように衰弱し、最後は死んでしまう。

 その病気にダンジョンの28階だけに咲くツヤツヤ草が有効だとようやく分かったのだ。


「あのピンクの子は君をアンダーソン教授、僕をザード先生と呼んだな」

「ああ、君も私もまだ学生だ。人違いかね?」

 ザード達はまだ21歳の学生だ。

「二人を人違いなんかするものかな?」

「まあ分からないが、ついて行ってみよう。あの子達はツヤツヤ草のありかを知っているらしい」


 一方先を歩くミヨ達は。

「……ミヨ」

「何?シャドウ君」

「あいつらが王子様とか魔道士君てやつか?」

 ミヨはキッパリ否定した。

「違うよ、全然違うよ。攻略対象者君達はもっとキラキラしてるから。あの人達は脇役だよ。アンダーソンさんは魔導大学で魔獣学を研究する教授で、ザード先生は魔導学園のクラス担任の先生なんだ。二人は大学の同期で親友なんだよ」

「ふーん」

「ザード先生は天才で色んな発明をするんだけど、ドジっ子でその後始末にヒロインが頑張るの、アンダーソンさんは表向きは魔獣学の教授なんだけど、実は古代遺跡の研究家で、聖女と勇者を調べているんだ」

「聖女と勇者」

「あのね。30階にね……」

 ミヨはノリノリで熱弁を振るうが、敵が現れた。

 戦闘開始だ。




「ここだよ、ザード先生」

 ミヨはツヤツヤ草のある場所まで二人を案内した。

 ザードが駆け出し、這いつくばって草を見つめる。

「ああ、間違いない、ツヤツヤ草だ。これでアンジェリーナを助けられる……」

「良かったね」

「お礼をしたいんだが……ミヨ君とシャドウ君と言ったね。また会えるかな?」

 アンダーソンはそう尋ねるが、ミヨは困った。

「うーん、私達決まった住処はないの」

「ミヨ、ドルイド爺さんの家はどうだ?」

 とシャドウが言った。

「あ、そうだね。ドルイド先生の家を教えておくね」


 ドルイド爺さんは15階の秘密の隠れ屋に住んでいる。

 アンダーソン達を招き入れるかは家主のドルイド爺さんが決めるが、『アンダーソン教授達なら多分大丈夫』とミヨは思った。

 アンダーソンも失われた古代王国の末裔に興味津々だ。

「それは興味深い人物だな。是非会いたいよ」

「ミヨちゃん、こんなもので良かったら受け取ってくれないかな」

 とザードが肩にかけた自分の鞄を渡してきた。


「僕が作った亜空間収納バッグだ。上限値はあるが色々入れられる。亜空間で時の概念がない。生きているものを入れるのは厳禁だよ」

「あ、魔法ポシェット(小)だ。うれしい~欲しかったんだ」

 ゲームだとデフォルトで付いてくるポシェットだ。

 ミヨは今まで大事なものはお腹で保管していたがそろそろ限界だ。

「喜んでくれて嬉しいよ。さあ、これで邪魔にならないはず」

 ザードはミヨの体に合うように紐を調節してたすき掛けにする。


「じゃあ、ありがとう。本当に世話になったね」

「また会おう、ミヨ君、シャドウ君」

 と二人は転移魔法で帰っていく。



 ミヨは魔法ポシェット(小)を手に入れた!

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