第4話 護衛の人々の苦労
「助けてくれてどうもありがとう、おかげで助かったよ」
「いえいえ、こちらこそこんなに食事を頂いて、何だか申し訳ないです」
ケイが珍しく礼儀正しく話している。
ちなみに俺は数日分の飯を食いまくっている。
「家の護衛どもは役立たずです、変わりにお二人にこのくらいで残っていただけませんか?」
周りの護衛の人達はみんなかなり怒りと悔しさを混ぜた顔をしている
貴族さんはお金を提示すれば庶民は食いつくと思っている。気に食わん。
俺は飯を食うのを止めて
「「無理です」」
見事にハモった。
「何故?と訊ねてもいいですかな?」
「まず、あんたみたいな主はごめんだな」
と俺
「いくら仕事で雇っているとはいえ、守ってくれている人達を役立たずなんて言う主はごめんです」
とケイ
お屋敷の主さんが額に青筋を浮かべている。
「んで、俺達には旅の大事な目的がある」
「お金には変えられない大事な目的が」
と俺とケイ
青筋を浮かべながらもまだ誘ってきた。
「ふむ、ではさらにこれくらいでどうでしょうか?」
値段を上げてきた。
コイツ駄目だ、俺達は素直に嫌だと言っているのにまだしつこく言ってくる。
「だから無理だと言っているでしょう」
俺達の旅の目的はこんな金で諦めることが出来るようなものじゃない。
「それにあの護衛の人達も弱いってわけじゃありませんし」
あの人達はかなり強い、相手があの能力さえ持っていなければ護衛の人一人でもあいつらを倒すことが出来たはず。
「ですが、それでもさらに強い人を雇いたいと思うのは当然でしょう?」
もっともな話だ、確かに一回盗賊に金を奪われかけるといった体験をしたんだ、不安になっても仕方がない。
「だったらギルド長にでも紹介してもらえば良いでしょう?その辺りの町の」
あと一回誘ってきたらぶん殴ってやる。
ケイも同じような感じで目線で合図してきた。
「ですが、あのような能力の前では他の人間では意味が無いでしょう?さらにこれだけ差し上げますから」
ブチリッ!!!!
「いい加減にしろこのデブ貴族!!!!こっちが嫌がってるのもわかんないのか!?それとも相手の事情も察することが出来ないほどあなたの脳みそは腐ってるんですかねえ!?」
と俺は盛大に切れた。
「カイそんなこといったら失礼だよ、この人の脳みそは腐ってなんか無いよ」
とケイ
「そうだぞ、貴様!!無礼者め!!」
デブ貴族が吼える。
「この人は頭の先からつま先まで脂肪の固まりなだけだよ」
プッ!!!
周りの給仕の人達や護衛の人達みんな一斉に吹いた。普段からそんな感じに思っていたのか?
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!おい!!この2人を捕らえておけ!!」
「馬鹿だなぁ、俺達に敵うわけないのは、分かりきっているのに」
命令に背く訳にはいかないので渋々俺らの方に向かってくる護衛の人々。
「やっぱりそんなことも分からないなんて脳みそまで脂肪だね」
「ッッッッ!!!!!!!!!!!」
もはや声にも出せないほど怒っている。
「身分を弁えろ愚民が!!お前ら愚民なんぞ貴族の為に働くしかないのだ」
「さわぐだけで人望の無い主は嫌われるよ?」
ケイが言う。
「ちなみに俺達よりあんたの方がよっぽど愚民に見えるし、事実格下だし」
そう言って、Xランクと書かれたギルドカードを取り出す。
クロスランクの方が一般的にそこら辺の領主より偉い、ていうかギルド設立したの俺達だし。途中でギルドを誰かに押し付けてクロスランクってことにして悠々自適に過ごしてるんだよ俺達。国の機関になるほどのものだからその創設者ってのはかなりの権力者になる。
そこら辺の名家なんて目じゃないし、王様の次ぐらいかな?立ち位置としては。
ちなみに、王様とは友達だったりする、王様が子供の頃に知り合った。
「ほれ、俺達の方が格上なんだ。自ら率先して動こうとしない限り下の者はついてこないんだよ」
顔を真っ青にしているデブ貴族。
「仕方ないからあんたらの護衛の人達の訓練くらいはしておいてやるよ。お前はともかく給仕の人やお前の娘さんとかが危ないからな」
このデブはどうでも良いけどな