淡色の君
僕の幼馴染の美紗は、感情によって髪の色が変わる特異体質だ。普段はその髪は淡い桃色をたたえている。そして、僕はその桃色の髪が大好きだった。
高校生になったある日のこと。僕は美紗にこんなことを言ってみた。
「なぁ美紗。弁当余ったんだけど食うか?」
「え!食う!」黄色に染まる。
「何が残ってるの?」
「ブロッコリー。」紫に染まる。
「えー。いやだきらい。」
「知ってるよ。お魚あるよ。」また黄色に染まる。
「やったぁ!」
嬉しいと向日葵のような黄色に、怒ると燃えるような赤に、落ち着いていると新緑のような緑に。様々な表情を色として見せてくれる。そんな彼女の髪の変化を見るために、僕はこうして毎日のように話しかけていた。しかし、そんな日常も長く続くことは無かった。
雪の降るある日。僕が見た彼女の髪の色は、外に降る雪に染められたかのように白く美しく染まっていた。
彼女は髪色と同じ白い着物を着せられ、胸の前で手を組み、箱の中で安らかな表情で眠っている。彼女が再び目覚めることは、無い。
そんな美紗を見ることに耐えられなくなった僕はその場から飛び出し、気持ちを落ち着かせるために。涙をこらえるために何度も何度も真冬の冷たい水で顔を流した。まるで今の自分の気持ちを洗い流すかのように。顔を上げ、鏡の中の自分と目が合った時。僕は目を疑った。
悲しみで歪み切った顔にではない。深くまで底の見えない海のように。果てしなく続く空のように青く染まった僕の髪にだった。
それは、彼女の、美紗の体質だった。
美紗が自分の中にいるような気がして、心が少し暖かくなった。髪の色は落ち着いた緑に近づいた。
「……ありがとう美紗。ちゃんとお別れしないとね。」
そう呟き、最期に思い出と温もりの詰まった贈り物をくれた彼女の元へと踵を返したのだった。




