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第31話 NRGの陰謀

「犯人が、あなた方を襲った理由を教えて欲しいのだが・・・」


刑事の問い掛けに、素直に答えるべきか、それとも知らないふりをするか、困惑した。

そして、和夫に相談するかのように、和夫の方に視線をチラッと向けた。

和夫は、海斗の視線の奥にある想念を感じ取ると、自ら口を開いた。


「刑事さん。わしが説明しよう」

「犯人の男と最初に会ったのは、このわしじゃ。そして、犯人が落としていった、ある書類をわしが拾ったことが、この事件の発端なんじゃ」


「ある書類? その書類は、どんなものなんだね」


「それは、犯人が所属していた影の政府機関で、その名前は・・・」

「海斗や、何ていう名前じゃったかのう」


「新革命政府、NRGだよ」


「そう、そのNR・・・ 何とかじゃ」


和夫の説明が、しどろもどろになってきたのを見計らい、海斗が口を挿んだ。


「存在が噂されている影の政府機関です。刑事さんも聞いたことがあるでしょう」


「あぁ、名前は聞いたことがある」


「そのNRGが作成した極秘文書を拾ったんですよ。その極秘文書には、高齢者を殺戮する極秘プロジェクトの内容が書かれていたんです」


「高齢者を殺戮する極秘プロジェクトだと! それは本当か?」


「ええ、本当です。その極秘文書の裏を取ろうと取材していた時に、あの犯人に襲われたんです」


「そういうことだったのか・・・」

「その極秘文書は、今、どこにあるのかね?」


「原本は、私の会社の部長に渡してしまいました」

「後から気がついたのですが、その部長も恐らくNRGと何らか繋がりがあると思われます」


「それでは、直ぐにその極秘文書の原本を証拠として押さえなければ・・・」


刑事は、部下に連絡を取るため、腕に装着していたバンド型の通信機で連絡を取り始めた。


「あなたの会社は?」


「ソーシャルジャパン新聞社です」


「その部長の名前は?」


「坂田部長です。社会部の」


刑事は、海斗の答えた内容を部下に伝え、坂田部長を取り調べるように指示をした。


「あのー、刑事さん。極秘文書のコピーは、私の自宅のモニターのエミリーが管理しているから、確認することができますよ」


「そうなのか。そのコピーは貰えるかね」


「ええ、僕のバンド端末からエミリーを呼び出せば、コピーを見られますよ」

「僕のバンド端末は、どこだろう?」


海斗は、自分のバンド端末がないか、ベッドの横にあるテーブルを確認したが見当たらなかった。


「看護師さんに聞いてみますね」


海斗が呼び出しベルのボタンを押し、看護師を呼び出した。

呼び出しベルに付随するスピーカーから看護師が返事をした。


「どうかしましたか?」


「僕の左腕に嵌めていたバンド端末は、どこにありますか?」


「バンド端末ですか?」


看護師は、海斗のバンド端末の所在を思い出そうと、少しの間、沈黙した。


「あっ、あなたのバンド端末ですけれど、病院に運ばれてきてから、治療するために腕から外しましたよ。それは、今、あなたの私服と一緒にベッドの横にあるロッカーへ入れておきました」


「分かりました。ありがとう」


海斗は、ベッドの横にあるロッカーを開け、綺麗に折り畳んである私服の上に、バンド端末が置かれているのを発見した。


「あったぞ!」


海斗は、そのバンド端末を手に取り、スイッチを入れたが、何も反応しなかった。


「あれ、おかしいなー。何も作動しないやー。事故のせいで壊れてしまったようだ」


刑事は、その様子を見ながら、ため息をついた。


「私のバンド端末からエミリーを呼び出せますか?」


と刑事は腕に嵌めていたバンド端末を取り外すと、海斗に手渡した。

海斗は、刑事のバンド端末を左腕に装着すると、脈認証を照合させて人工知能ネットワークへアクセスし、エミリーを呼び出した。


「海斗さん、ご用は何でしょうか?」


「先日、僕の会社のアリスから送信した写真を見せてくれないか」


「承知しました。写真を映します」


刑事のバンド端末の画面に、極秘文書のコピー画像が映し出された。

海斗は、その画像を確認するとエミリーに質問をした。


「エミリー、この画像のセキュリティーに問題はなかったかい」


「不正なアクセスは、ありませんでした」


「安心したよ。エミリー、ありがとう」


海斗は、エミリーの返事に安堵の笑みを浮かべ、極秘文書のセキュリティーが万全であったことにホッとした。

そして、極秘文書の画像を刑事に見せた。


「これが、事件の発端となった極秘文書です」


刑事は、映し出された極秘文書の記載内容を確認し、その内容に驚愕した。


「こんな事があっていいのか」


と恐怖の念が徐々に怒りへと替わり、下唇を震わせながら、


「こ、これは、国の安全を揺るがしかねない卑劣な陰謀だ!」


と、声を荒立てた。


「この画像を証拠として、押収させてもらっても構ないかね」


「ええ、いいですよ。画像をコピーしてお渡しします。それと、その画像を渡す代わりに、私たち二人の身の安全を確保して欲しい」


「分かった。事件が解決するまで、護衛をつけよう」


海斗は、エミリーに極秘文書の画像コピーを、トレース認証コードを付与して作成するように指示をした。

トレース認証コードは、原本データを明らかにするためのセキュリティーシステムであり、コピー作成したデータの所在がコード化されるものである。


エミリーは、極秘文書のコピーを完了させると、刑事のバンド端末にデータを保存した。


「エミリー、ありがとう。これで終わりだ」


「どういたしまして、海斗さん」


海斗は、左腕に嵌めたバンド端末を外し、刑事に返した。

刑事は、バンド端末に保存された画像を確認すると、警察本部へそのデータを送信させたのだった。


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