第22話 満腹食堂へ
海斗は、部長が影の政府機関NRGと繋がっているかを確認するため、ある罠を仕掛けることを思いついた。
「和夫じいちゃん。部長が情報を漏らしたということは、影の政府機関と何らかの関係があるんだと思う。それを確認するため、部長に罠を仕掛けようと思う」
「罠じゃと」
「あぁ、そうさ」
海斗は自分が考えた作戦に、少し得意げな口調で言った。
「その作戦は、いつから始めるんじゃ」
「今からさ!」
「その前に腹ごしらえでもせんか」
「そうだね。腹が減っていることを忘れていたよ」
「じいちゃん。何が食べたい?」
「お前の行きつけの満腹食堂でいいぞ」
「それじゃー。満腹食堂へ、レッツ、ゴー」
満腹食堂に着いた二人は、空腹を満たそうと早速、注文をした。
「すみません、注文いいですか?」
すると、顔見知りの若い女性店員が、二人がいるテーブルにやって来た。
「いらっしゃいませ! いつもご利用ありがとうございます」
「こんにちは。注文いいかなー」
「はい、どうぞ」
「僕は、唐揚げ定食」
「じいちゃんは?」
「わしは、刺身定食」
「注文は、唐揚げ定食と刺身定食ですね」
二人は、女性店員が注文したメニューの確認にうなずいた。
海斗と和夫は、注文した定食を待つ間、食堂に設置してあるテレビに目を向けた。
テレビではニュースが放映されており、今日の事件や事故などの記事が流れていた。
二人は、テレビ画面に映し出された映像をぼんやりと眺めていた。
すると、見覚えのある場所の映像に二人とも釘づけになった。
その場所とは、「東法ビル」であった。
ニュースでは、「東法ビルで発砲事件があり、二人の男性が襲われてケーブルテレビ局のオフィースに一時逃げ込み、発砲したと思われる男性は、その場から逃走し、現在その行方を捜査している」と報じていた。
海斗と和夫は、ニュースで報じていた「二人の男性」は自分たちであることが予想できた。
「和夫じいちゃん。あのニュース。僕たちの事だよね」
海斗は小声で和夫に話しかけた。
「その様じゃな」
「僕たちの事も、警察が探しているのかな?」
「たぶん、そうかもしれん」
二人は考え込むように沈黙した。
そこへ、若い女性店員が注文した料理を持って、テーブルにやって来た。
「お待たせしました。唐揚げ定食と刺身定食です」
「注文は以上ですね。それでは、ごゆっくりお食事ください」
「ああ、ありがとう」
二人は運ばれてきた食事を見るや否や、空腹の腹を満たすために無言で飯を食った。