第21話 狙われた理由
そして、急いで駐車場まで走り、海斗の車に飛び乗った。
「じいちゃん、大丈夫かい?」
「ああ、わしは大丈夫じゃ」
「海斗こそ、大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
「早くこの場所から離れよう」
海斗は車のエンジンを始動すると、手動運転に切り替え、アクセルを踏んだ。
車は加速し駐車場から大通りへ突入した。
「海斗、運転が少し荒くないか?」
「ああ、黒服の男が追ってくるかもしれないから」
海斗はそのまま加速し、スピードを上げた。
そして、何度もバックミラーを見て、不審な車が後をつけてこないか確認した。
四、五キロは走行しただろうか、海斗は不審な車が追って来ていないことが分かると、落ち着きを取り戻し、和夫に話しかけた。
「もう少しで死ぬところだった」
「そうじゃ、あの黒服の男は、わしらがあのビルにいることを知っておったんじゃ」
「恐らくそうだと思う。でも、どうしてあの東法ビルにいるのが、分かったんだろう?」
海斗は、朝からの出来事を思い返していた。
和夫から渡された極秘文書を社会部の部長に渡し、それから極秘文書の取材に出かけ、黒服の男に狙われるまでの一連の出来事の関連性を考えていた。
「あの黒服の男は、僕のことを知っていたのだろうか? それとも和夫じいちゃんのことを狙ったのだろうか?」
「わしが、おまえにあの文書を渡したのがいけなかったんじゃ」
「そんなことはないよ。和夫じいちゃん」
「きっと、わしを狙ったんじゃ。わしがあの文書を拾ったから」
「じいちゃんがあの文書を拾った時、あの黒服の男は、じいちゃんが文書を拾った所を見ていたのかい?」
「今思うと、黒服の男とぶつかった時、黒服の男が持っていた封筒が落ちて、書類が散乱したんじゃ。そ
れをわしが散らばった書類を拾って封筒に入れ、あの男に渡した。そして、あの男はその封筒を受け取ると、急いで走り去ってしまったんじゃ。その後で、あの極秘文書を拾い忘れたことに気がついたんじゃ」
「それじゃー、じいちゃんが極秘文書を拾った所は、見ていないことになるんだね!」
「そうなるのう」
「そうなると、黒服の男は、僕を狙ったということになる!」
「なに! 海斗を狙ったじゃと」
海斗は、どうして自分が狙われることになったのかを考え始めた。
あの極秘文書のことを知っているのは、自分と和夫と部長の三人だけである。
消去法で考えると、部長が情報を漏らしたのではないのか、という結論に至った。
「和夫じいちゃん。恐らく僕の会社の部長が情報を漏らしたと思う」
「エッ、おまえの部長が情報を漏らした!」
「信頼できる部長と言っておったはずじゃが」
「僕も部長のことは、信頼していたんだけれど・・・。本当に部長が情報を漏らしたのか確認しなくてはいけない」
海斗は、信頼していた部長が本当に情報を漏らしたのかどうかを確認し、もし、情報を漏らしたのであれば、部長と影の政府機関NRGとの関係を突き止める必要があると思ったのだった。