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第19話 怪しいビル

現場から百メートル程歩いた付近で、海斗は足を止めた。


「このビル。怪しいなー」


ビルの入口にある表札をみると「東法ビル」と表示されていた。


「東法ビル?」


海斗はビルの入口に入って行き、ビルに入っているオフィース名を確認した。

このビルは15階建てで、多くの企業のオフィースが入っていた。

その中で聞きなれない名前の企業名が、表示されていた。


「進政機構? 聞き覚えがない会社名だぞ」


「どんな仕事をしているか、拝見してみるか」


海斗は、「進政機構」のオフィースがある階へ上がろうとエレベーターを探した。


「和夫じいちゃん。エレベーターに乗るよ」


「海斗や待っておくれ。置いていかんでくれ!」


和夫は、海斗の後についていくのに精一杯で、ビルの名前などに気を止める余裕はなかった。

海斗は、和夫がエレベーター乗り場に到着すると、エレベーターに乗るために上階へ行くスイッチを押した。

エレベーターが一階に到着すると、海斗と和夫はエレベーターに乗り込み、「進政機構」のオフィースがある十五階のボタンを押した。

このエレベーターはガラス張りになっており、十五階へ向かうエレベーターから街の風景が一望できた。海斗は、その風景に関心は示さず、エレベーターが上昇していく階番号を見つめていたが、和夫は海斗とは異なり、エレベーターが上昇しながら見せる街の風景に見とれていた。

エレベーターのガラス越しから見える街並みは、単なるビルの雑踏とは違い、計画的に配置され、サークル状に弧を描いていた。そのサークルの中心には、超高層の建造物が建てられていた。


「海斗や、あのもの凄い、高い建物は何じゃ!」


「ああ、あれはニュータワーだよ」


「ニュータワー?」


「ニュータワーは、簡単に言えば情報発信塔だよ」


「情報発信塔?」


「ああ、人工知能の中枢だ。あの塔から日本全域にある人工知能端末と情報を送受信しているんだよ。言ってみれば、人工知能のマザーだよ」


「へえー」


和夫は、海斗の説明を聞いたものの、言葉の意味が分からず、ただ、遠方にたたずむ超高層の建造物を眺めていた。


「和夫じいちゃん、15階に着いたよ」


「おお、そうか」


二人はエレベーターから降りて、15階フロアーを歩き始めた。この階のオフィースは、「進政機構」のみであった。

15階フロアーを少し歩くと、「進政機構」というロゴが表示されており、受付用の端末が設置されていた。

その端末の前に海斗が立つと、自動で画面が映り、女性の映像が映し出された。


「いつもお世話になっております。進政機構へようこそいらっしゃいました」


と、その女性が話しかけてきた。

海斗は、その映像の女性に向かって話始めた。


「新聞社の者ですが、取材でお邪魔したのですが」


「アポイントは、取ってございますか?」


「いや、飛び込みで取材に来ました」


「アポイント無しでは、取材に応じる事ができません」


「どうしても取材したいんだけど、どなたか応対してくれる方はいませんか?」


「どの様な取材でしょうか?」


「御社の業務内容について、詳しくお聞きしたいのですが?」


「会社紹介でしたら、今からこの画面でお見せできますが、いかがいたしましょうか?」


「そういった事ではなくて・・・。御社の社会事業についてのお考えを聞きたいのですが」


「そのような用件でしたら、弊社の担当者とアポイントを取ってから、またお越しください」


「分かりました。では、アポイントを取るために担当者へ連絡しておいてくれないかね?」


「承知しました。会社名と、あなたのお名前を申して下さい」


「ソーシャルジャパン新聞社、社会部の山本海斗と申します」


「それでは、こちらから、ご連絡いたします」


「ああ、頼むよ」


海斗は、映像の女性を口説き落とせなかったことに、がっかりした表情を浮かべた。


「海斗や。取材はできない様じゃな」


「ああ、飛び込みの取材は、受けないようだ」


「それじゃ、仕方ないのう」


二人は取材を諦め、エレベーター乗り場へ歩いていき、一階まで降りようとエレベーターの下降ボタンをおして、エレベーターが到着するのを待っていた。

エレベーターが徐々に上昇して15階に到着し、エレベーターの扉が開いた。

エレベーターの扉の奥には、黒服のビジネスマンがたたずんでいた。

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